2005/05/22
Another Setting / Durutti Column 1982

 英国のPunk&New Waveのレーベルとして知られるFactoryからデビューをしながら,所謂Punkとは対極的な静かで内省的な音楽を作り出しているバンド(実体はVini Reillyのソロですが)の3rdアルバム。Vini Reillyがコーラス&ディレイの効いたギターを中心に作り出すシンプルかつ繊細なサウンドの持つ美しさは,発売されてから20年以上も過ぎた現在でも少しもその輝きを失ってはいません。いや,繊細さに欠けた音楽が主流である現在だからこそより一層輝きを増しているのです。特に『Spent Time』の夢と現実の狭間を漂うような美しいサウンドはVini Reilly以外には作り出せないと言っても過言ではないでしょう。
 また,このCDには『Amigo em Portgal』から5曲,『Dedications for Jacqueline』から2曲ボーナストラックとして収録されているのですが,これらの曲からは何故かスクラッチノイズが聞こえるんですよね....もしかして盤起こしなのでしょうか? BACK

2005/06/02
Do It Youself / Ian Dury & The Blockheads 1979

 2000年に56歳でこの世を去った故Ian Duryが1979年にBlockheadsと共に産み出したこのアルバムこそ彼の代表作....と私は思っています。Blockheadsの奏でるファンキーで小粋なサウンドとIan Duryのまるで浪曲師のような濁声のヴォーカルは,一見水と油ように思えるのですが,この両者が合わさると,不思議なことになんとも味わい深い独自のサウンドへと昇華するんですよね。また,このアルバムに収録された曲(ボーナストラックを除く)はすべてIan DuryChaz Jankelによって作られていますが,このChaz Jankelという人は,Quincy Jonesがヒットさせた『愛のコリーダ』の作者でもあり,彼の作り出すPOPなメロディーもまたこのアルバムの魅力のひとつなのです。
 なお,このCDにはヒット曲『Hit Me With Your Rhythm Stick』を含む7曲のボーナス・トラックも収録されていますが,これがまた名曲揃いなんですよね。 BACK

2005/06/23
The Best Of Bothy Band / Bothy Band 1988

 1970年代アイリッシュ・トラッドの中心的バンドのひとつであるボシー・バンドのベスト盤。1975年から1978年にかけて録音された伝統的楽器よるトラディショナルな演奏と歌が12曲収録されているのですが(Liveヴァージョンも含む),すべてが心地よく心に染み込んでくる名曲ばかりです。このバンドはアイリッシュ・トラッドを代表するような名うてのミュージシャン揃いですから,インスト・ナンバーが聴いているだけで踊り出したくなるような魅力に溢れているのは当然ですが,ヴォーカル・ナンバーがまた良いんですよね。聴いているとなんかこう心がほのぼのと暖かくなるんですよ。まぁ中には『Fionngghuala』のような緊張感漂う超絶アカペラ・ナンバーもあるんですけれどね。
 こういう素晴らしいトラッドを聴いていると,音楽にとって『古い』『新しい』は何の価値基準にもならず,ただ聴いていて『気持ちの良い音楽』と『そうでない音楽』があるだけなんだなぁ...とつくづく思うわけであります。 BACK

2005/07/08
英國戀物語エマ Silhouette Of Breeze / 梁邦彦 2005

 まだ身分制度が色濃く残っていた19世紀イギリスを舞台としたメイドと上流階級の男性の恋愛を描いたアニメ『英國戀物語エマ』のサントラ盤です。しかし,このCDを聴いてアニメのサントラだと思う人は誰もいないでしょうね(本作品を知っている人を除いて)。このCDに収録されているピアノ,ストリングス,アコースティック・ギターそしてリコーダー等で演奏される楽曲は,所謂アニメの音楽のイメージからかけ離れたエレガントなものばかりで,まさに舞台となった19世紀イギリス(ロンドン)の風景にぴったりです。特に東京リコーダー・オーケストラによるリコーダーの演奏が良い雰囲気を醸し出しています。アニメの方も大人向きのアニメでしたが,このサントラもまた大人向けのアルバムといえますね。 BACK

2005/07/20
The Gentle Soul / Gentle Soul 1968

 Pamela PollandRick Stanleyの男女デュオ(元々はバンドだったみたいですが)が1968年にリリースしたアルバムですが,最近ではTerry Melcherがプロデュースし,Jack Nitzcheが数曲をアレンジしていることで,所謂ソフト・ロック・ファンの間で評価の高いアルバムです。またVan Dyke ParksRy CooderLarry Knectelといった名うてのミュージシャン達がバックを勤めていることも評価を高めている一因となっているのです。それでは肝心のサウンドはどうかといえば,基本的にはアコースティックメインの洗練されたフォーク・ロックという感じで,時折漂うサイケな香りが程良い香辛料となっています。そして何よりもソフトなハーモニーで歌われる牧歌的なメロディー心地よいんですよね。ところで,1曲目の『Overture』ですが,クレジットこそないもの,かなりVan Dyke Parks色が強いような感じを受けるのですが,実際はどうなんでしょう?ちなみのこのCDにはボーナストラックが9曲収録されています。 BACK

2005/07/27
Lia's Cafe "Prologue" / Lia 2005

 2000年にゲームとして発売され,2005年に劇場版及びTV版アニメとなった『AIR』の主題歌である『鳥の詩』と挿入歌である『青空』を歌いながらも,何故かその姿を表に出してこなかったシンガーのLiaが2005年1月28日にSibuya O-Eastで行った初Liveを収録したDVD。あまりLive経験がないせいか緊張している様子は見られるものの,Liaの魅力であるのびやかで透き通った歌声は十分に楽しむことができます。バックはギター,ベース,ドラム,キーボードがそれぞれ1名ににプログラミング担当が1名というシンプルな編成であり,どちらかといえばJazz&Fusion系の人達って感じですが,派手さはないものの的確な演奏を聴かせてくれます。とはいえ,このDVDのハイライトはアンコールナンバーとして歌われた『鳥の詩』と『青空』であることは間違いないでしょう。『AIR』ファンならば,この2曲をLiveヴァージョンで聴くことが出来るだけでも,DVDを買う価値があるといっても過言ではありません。しかし,このDVDに収録されているのはLiveで歌われた曲全曲ではないんですよね。特に『Nostalgia』がカットされているのは残念で仕方がありません。HPからDLできるボーナス映像ではこの『Nostalgia』だけではなくLiaヴァージョンの『Last Regrets』も見ることができるのですが,どうせならこれらの映像もDVDに収録して欲しかったものです。 BACK

2005/08/05
Live '78 SF / Stranglers 2005

 ストラングラーズがまだパンク・バンドと認知されていた1978年にサンフランシスコで行ったLiveを収録したDVD。これが画像は悪い(海賊版並みでしかもモノクロ),音は悪い(モノラルなのに何故か『5.1ch Surround』の表記が(^^;),時間は短い(20分に満たない)とまったく良いところ無しの作品なんですが,この粗い画像に映し出される1978年当時のストラングラーズの演奏姿が実にカッコイイんですよね。1979年の初来日,後楽園ホールで見せてくれた猛禽類のような猛々しくも誇り高い姿をこのDVDで見ることができるのです。このよらば切るぞ的凄味は,もはやPunk(チンピラの意味あり)じゃありませんよね。個人的には『London Lady』のLiveヴァージョンが聴けただけでも満足です。
 このDVDは,ストラングラーズ初心者には絶対にお薦めできませんが(初心者には『Video Collection 1977-1982』がお薦めです),初期ストラングラーズが大好きという人ならば見る価値は十分にあると思います。 BACK

2005/09/20
A Tribute To Polnareff / V.A. 1999

 1970年代に一世を風靡したフレンチポップの雄,ミッシェル・ポルナレフのトリビュート・アルバムです。いや〜,こんなトリビュート盤が出ているとは知りませんでした(^^;)。このCDは当然ながらフランス編集なのですが,イギリスやアメリカ,そして日本のミュージシャンも参加しています。Saint EtienneLouis Philippeのようないかにもといった人達だけではなく(もちろん,これはこれで良いのですが),NIck CaveResidentsPeter Hammillといった想像すらしなかった人達のカヴァー・ヴァージョンが収録されているのが,このトリビュート盤の面白いところです。アレンジも原曲に近いものから原曲からはるか彼方のものまで多種多様なのですが,素材が良ければどんな料理をしても美味しくいただけるということが良くわかります。ちなみに日本からはNeppu Tokyo SalonPizzicato Fiveが参加しています。 BACK

2005/10/03
Live At The Roxy / Michel Polnareff 1996

 ミッシェル・ポルナレフが1996年にアメリカの有名なナイトクラブ『Roxy』(Frank ZappaもここでLiveを録音していますね)で行ったLiveを収録したアルバム。当時ポルナレフがLive盤を出したという話は聞いた覚えはあるのですが,おそらく声も衰えているだろうし,そんな老いさらばえたポルナレフのLiveなんか聞く気がしない....という思いが強く,まったくもって聞く気にはなれませんでした。ところが,実際に聴いてみると...すみません,私が間違っていました。確かに1970年代前半の全盛期の頃に比べれば若干の衰えはあるものの,あの美しいファルセットはしっかりと健在ではないですか!しかも演奏されている曲がまるでベスト盤のような選曲ですから,思わず最後まで聞き惚れてしまいました。いや〜,実際にこのLiveを体験していたら,感動で涙が止まらなかったでしょうね。しかし,こうして改めて聴いてみると,ミッシェル・ポルナレフという人がいかに稀代のメロディー・メイカーであったかが良くわかります。なお,このCDには『シェリーに口づけ』の新録ヴァージョンも収録されていますが...う〜む,こちらは...あくまでもオマケとして受け止めた方がいいかもしれませんね(^^;) BACK

2005/10/23
Lost Treasures / Herb Alpert & The Tijuana Brass 2005

 1960年代にアメリアッチ・サウンドで一世を風靡したハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの未発表曲(一部未CD化作品も含む)の中からハーブ・アルパート自身が選曲したコンピ盤。1曲目の『Up Cherry Street』からラストの『Whistlestar』まで,いかにもティファナ・ブラスらしい洗練されたPOPナンバーばかりで,どうしてこれらの曲が今まで未発表だったのか不思議でならないくらいです。このCDの一番の注目曲はカーペンターズよりも早く録音されながらもお蔵入りとなった『遥かなる影』(アレンジもテンポもカーペンターズ・ヴァージョンとはまったく別物です)ですが,それ以外にも『Killing Me Softly』『Fire And Rain』『Alone Again』『Popcorn』(あの元祖テクノ・ポップをブラス・サウンドで演奏しています(^^;)といった1970年代初期の曲のカヴァー・ヴァージョンが収録されているのが興味深いですね。というのも,1970年代のティファナ・ブラスて,今まで聴いたことがなかったからです。しかし,そのいずれもが完璧にティファナ・ブラス・サウンドとなっているのはさすがって感じですね。 BACK

2005/11/17 
The Old Grey Whistle Test Vol.2 / V.A. 2003

 1971年から1987年にかけて英国BBC2で放送された音楽TV番組『The Old Grey Whistle Test』で放映されたLive映像を収録したDVDの第2弾です。これも前作同様お宝映像満載で...というか,収録されている映像のほとんどがこれまで見たことのないようなお宝映像なんですよね。その中でも個人的に印象深かったのが,Mike Oldfield在籍時のWhole Worldをバックに名曲『May i ?』を歌うKevin Ayers,長髪姿が珍しいFerryさんが歌うRoxy Musicの『Ladytron』,Kissのカヴァーでも知られる『God Gave Rock'n'Roll To You』を演奏するArgent,『プー横町の家』をアコギ2本で歌うLoggins & Messina,『Disney Girls』をピアノの弾き語りで歌うBruce Johnstonの映像です。くどいようですが,それ以外の映像も,他のDVDに収録されていたら目玉になるようなものばかりなんです。もっとも,曲によっては演奏を別に録音してそれに合わせた所謂口パクの映像もあるのですが,それでも貴重な映像には間違いはありません。 BACK