2010/02/07
No, Let's Start Over / Violent Femmes 2006

 米国ミルウォーキー出身の3人組バンド、ヴァイオレント・ファムズが1984年にロンドンで行ったLiveを収録したDVD。
 へなへなヴォーカル&ギターのGordon Gano、スタンディング・ドラムのVictor De Lorend、そして引き捲りベースのBrian Richieの3人編成のときはPOPでアコースティックなパンクといったサウンドなのに、ホーン・セクションが加わると途端にアヴァンギャルトなサウンドになったりと、一筋縄ではいかないヴァイオレント・ファムズというバンドの魅力を見せてくれます。また、ラストの『Kiss Off』では途中でヴェンチャーズでもお馴染みの『Pipeline』を挿入するというお遊びぶりも見せてくれます。
 ただこの映像が撮られた時代が時代だからでしょうか、時折演奏とは関係のないいかにもMTV風のイメージ映像がカットインされるのが残念といえば残念ですね。 BACK

2010/03/12
そらの庭 / 新居昭乃 1997

 新居昭乃のシンガーとしての魅力は菅野よう子の作品群(『Voice』等)を通して認識してましたが、彼女のソング・ライターとしての魅力を知ったのは、実は彼女のソロ作ではなく、『ロードス島戦記』のサントラに収録されている『光のすあし』『さかさまの虹』(シンガーは石橋千恵)だったりします。あまりにも良い曲なんで、これも菅野よう子の曲だろうと思ってクレジットを見たら、実は新居昭乃の作品だったんですよね。
 それじゃあってんで、試しにベスト盤である『sora no uta』を買ってみたら、彼女の歌声そのままの透き通った空に漂う浮き雲のような浮遊感のある曲にすっかり心を奪われてしまったというわけです。
 さて、『そらの庭』ですが、これは1stから11年ぶりにリリースされた2ndアルバムで、新居昭乃が全曲、作詞作曲だけでなくプロデュースも担当している、真の意味でのソロ・アルバムです。帯の謳い文句ではないですが『(11年)大切にあたためてきた』曲だけあって、全11曲すべて熟成された作品に仕上がっています。実はその内には少女的な残酷さも秘めているのですが、それでいながらそういったものをまったく感じさせない透明で無垢な味わいであるところが、新居昭乃の凄さであり、そして魅力でもあるんですよね。
 ちなみに2曲目の『小鳥の巣』と10曲目の『人間の子供』は菅野よう子が編曲していますが、個人的には菅野よう子の編曲が新居昭乃の曲には一番しっくりきますね。もちろん、これは私が菅野よう子好きというバイアスがかかっているせいもあるんですが(^^;)  BACK

2010/04/18
Live In Chicago 12.19.98 / Dave Matthews Band 1999

 本国米国では年間観客動員数全米1位を記録したりプラチナディスクを獲得する等非常に人気の高いバンドでありながら、何故か日本では不思議なくらいに認知度の低いデヴィド・マシューズ・バンドですが、その原因がこのアルバムを聴いて少しわかったような気がしました。彼等の本当の魅力はLiveにあるんです。いやもちろんスタジオ・アルバムだって十分に魅力的なんですが、それでもLiveの方が何倍も魅力的なんですよ。音源だけでさえこれだけ魅力的なんだから、実際にLiveを体験したら、そりゃもう病み付きになるのは当然で、年間観客動員数全米1位というのも大いにうなずけます。そんなLiveを体験できる国とできない国では温度差があっても、これは仕方がないことかもしれません。かつてのフーがそうでしたからね。
 このLiveアルバムは2枚組で2時間以上の演奏がびっしりと詰まっており、しかもその内5曲が10分以上の長尺物であるにもかかわらず、ダレた部分というのがまったくありません。もちろん曲が長い分だけインスト部分も多いのですが、これがまた皆良い演奏を聴かせてくれるんです。各個人のプレイヤーとしての力量は超一流とはいえないかもしれませんが、全員の音が合わさるとこの上も無く素晴らしいバンド・サウンドへと昇華するんです。彼等のLiveは一度生で体験してみたいものですが、日本における知名度を考えると、なかなか難しいでしょうね。 BACK

2010/06/11
ゴールデン☆ベスト / あのねのね 2005

 あのねのねという京都産業大学の学生二人からなるフォーク・デュオのデビュー曲にして最大のヒット曲である『赤とんぼの唄』は、シュールでナンセンスな歌詞の所謂コミック・ソングですが、そのB面に収録されていた『魚屋のオッサンの歌』とともに、我々の世代(現在50歳前後)の笑いの秘孔突きまくりで、大袈裟でなく死にそうになるくらいに笑わされたものです。しかし、今『赤とんぼの唄』を聞いて笑えるかと言えば、これが不思議なくらいに笑えません。今の若い人達に聞かせても呆然とするだけで、おそらくクスリともしないんじゃないでしょうか。まだ『魚屋のオッサンの歌』の方がいかにもの関西的ネタで笑いがとれるんじゃないですかね。とはいえ『赤とんぼの唄』の「赤とんぼの羽をとったらアブラムシ」「アブラムシの足をとったら柿の種」と続き、「赤ん坊に羽をつけたら赤とんぼ」と終わる、さながら輪廻転生を思わせるような歌詞のシュールっさぷりは唯一無二のものであると言わざるをえません。
 このCDは1978年に『あのねのね5周年記念盤』としてリリースされたアルバム『青春旅情』の復刻盤で、上記のようなコミック・ソングだけではなく叙情的な『雪が降っています』や、自分達の立ち位置を自虐的に歌った『ピエロの歌』のような曲も収録されており、彼等のシリアスな一面も見せてくれます BACK

2010/07/21
Yeah / Wannadies 2000

 スウェーデン出身のポップ・バンド、ワナダイズがプロデューサーに元カーズのリック・オケイセックを起用し、米国ニューヨークにある伝説的スタジオ、エレクトリック・レデイランド・スタジオで録音したアルバム。
 それにしても、『Wannadies』とは凄いバンド名ですよね。日本語にしたら『死にてえ』ですよ(^^:)。バンド名だけを見ると虚無的で攻撃的なパンク・バンドって感じですが、実際のサウンドは、いかにもスウェイデッシュ・ポップのオリジネーターらしいメロディアスで生きの良いポップ・ロックであり、ワナダイズの他のアルバムは聴いたことがありませんが、このCDで聴くことのできるポップだけれど湿ったところのないサウンドは、かつてリック・オケイセックが在籍していたバンド、カーズにも通じるものがあります。
 しかし、その一方で歌詞の方はといえば、サウンドとは裏腹な虚無的である意味『Wannadies』というバンド名にふさわしいもので、このあたりのギャップもまたワナダイズというバンドの魅力のひとつなのかもしれません。もっとも、ちょっと聴いただけでは歌詞の内容まで把握できない私のような人間にとっては、この生きの良いポップだけでも十分に魅力的なんですけれどね(^^:)。

2010/08/31
Edward Bear / Edward Bear 1973

 1973年に『ラスト・ソング(Last Song)』のヒットを放った(全米3位、本国カナダでは1位)カナダのバンド、エドワード・ベアの3rd アルバム。 『クマのプーさん』からバンド名をつけた(作品中プーは『エドワード・ベア』と呼ばれることがある)エドワード・ベアは本国カナダでは1969年から1974年の間に4曲のTOP10を放っていますが、その内の2曲(『Last Song』と『Masquerade』)がこのアルバムに収録されています。 彼らの最大のヒット曲である『ラスト・ソング(Last Song)』は身も蓋もない言い方をすれば普通のポップ・ソングなんですが、これが聴けば聴くほどじわじわと心に染みて来るんですよね。
 このアルバムに収録されている曲1曲を除いてはドラム&ヴォーカルのLarry EvoyとギターのRoger Ellisが作っているのですが、彼らが作るシンプルだけれどメロディアスな曲はPOP ROCK好きにはたまらない魅力があります。そしてLarry Evoyの歌声がまた彼らのPOPなメロディーにぴったりの少年ヴォイスで、これもまた彼らのサウンドの魅力の一つであると言えるでしょう。  BACK

2010/10/29
Rare Tracks / Gilbert O'sullivan 1992

 現在でもCM等でしばしば使用される大ヒット曲『アローン・アゲイン』で知られる英国のシンガー&ソングライター、ギルバート・オサリバンの未発表曲、別テイク、アルバム未収録曲の中からギルバート・オサリバン自身が選曲した日本独自のコンピ盤。
 悪く言えばお余り曲をかき集めたマニア向けのCDってことになるけれど、これが見事なまでにPOPでメロディアスな曲ばかりで、何故これらの曲がお蔵入りになっていたのか不思議でなりません。中には初期のマネージャーであったゴードン・ミルズとの契約上の問題でリリースできなかったものもあるにせよ、それにしてもお余り曲ですらこれだけの名曲揃いとは、1970年代のギルバート・オサリバンのメロディー・メイカーとしての才能にはただただ脱帽するのみです。
 ギルバート・オサリバンは現在でもマイ・ペースで音楽活動を続けていますが、もし、ゴードン・ミルズとの裁判までに発展するゴタゴタによる停滞期がなかったら、1980年代以降もソングライター及びシンガーとしてもっと活躍していたはずだと思うと、つくづく残念でなりませんね。
 ちなみに、CDのライナーにはギルバート・オサリバン自身による曲の解説が書かれています。  BACK

2010/11/01
坂本真綾15周年記念ライブ "Gift" at 日本武道館 / 坂本真綾 2010

 坂本真綾の30歳の誕生日である2010年3月31日に日本武道館で行われたデビュー15周年記念Liveを収録したBD。坂本真綾のLive映像としては2009年にリリースされた『Live Tour 2009 "We Are Kazeyomi !』に続く2作目となります。坂本真綾を自認する私ですから当然の如く前作も初めてのLive映像ということで多大なる期待を持って買ったのですが、これが実になんとも残念なサウンドで(坂本真綾自身もあまり声が出てなかったし)、それ故この武道館ライブも発売されたことは知っていたのですが、これ以上ガッカリしたくないという理由から買わずにいました。
 ところが、偶然YouTubeにUpされていたこのLive映像を見たら、なんと菅野よう子のピアノをバックに歌っているシーンがあるじゃないですか。これを見ちゃったらもう買うしかありません。というわけで即Amazonで購入したのですが、実際に視て聴いて『Live Tour 2009 "We Are Kazeyomi !』とのサウンドのあまりの違いぶりに吃驚(もちろん、良い意味で)。メンバーはほとんど変わらないのにこれだけサウンドが違うのは、ミキシング・エンジニアの手腕の違いが大きいのかもしれません。というのも、このBDのミキシング・エンジニアは菅野よう子の『Cowboy Bebop』を手がけた藪原正史なんですよね。菅野作品が半分を占める(時間的にはそれ以上です)Liveを菅野作品を知り尽くしたエンジニアがミキシングしているんですから、そりゃぁ違って当然だといえます。
 また、『"We Are Kazeyomi !』にはいなかった女性コーラス二人組が参加していることも、サウンドを充実させた大きな要因のひとつといえるでしょう。特に菅野作品はハーモニーやコーラスを重視したものが多いので、二人のコーラスが入ることによって、より再現度が高くなっています。
 こんな言い方をすると変かも知れませんが、『Live Tour 2009 "We Are Kazeyomi !』は声優歌手としての坂本真綾を前面に出した作品であり、それに対してこの『5周年記念ライブ "Gift" at 日本武道館』は15年の経歴を持つミュージシャンとしての坂本真綾を前面に出した作品といえるかもしれません。
 もちろん、このLiveのハイライトは11分間にわたる『坂本真綾と菅野よう子のコラボ』であることは言うまでも有りません。
 いつの日にか、ぜひともまたこの二人でアルバムを作っていただきたいものです。  BACK

2010/12/01 NEW
Mr Love Pants / Ian Dury & The Blockheads 1998

 2000年にこの世を去ったイアン・デューリーの遺作となったアルバム。録音当時はすでに癌の告知を受け闘病中であったそうですが、そんなことは微塵も感じさせない充実感あふれる作品となっています。その一番の要因は何っといってもイアン・デューリーの代表作である1st,2ndアルバム時のブロックヘッズの面々が録音に参加していることにあると言っても過言ではないでしょう(ドラマーであったチャーリー・チャールズだけはすでにこの世を去って参加できなかったのは残念ですが)。チャズ・ジャンケルがブロックヘッズを脱退した後のイアン・デューリーの作品は正直今一つ生彩に欠いたものが多かったのですが、そのチャズ・ジャンケルも復帰したブロックヘッズとイアン・デューリーががっぷり四つに組んで作られたこのアルバムは、1st,2ndアルバムと比べても遜色のない輝きを放っています。
 もしかしたら、イアン・デューリーはこのアルバムの録音時、これが最後のアルバムになるかもしれないという思いがあったかもしれません。なのにこのタイトルでこのジャケットですよ。『パンティー』に始まり*1『パンツ』で終わるとは、常に前向きなユーモアと反骨精神を持ち続けていたイアン・デューリーらしい遺作じゃないですか。

 *1Ian Dury & The Blockheadsの1stアルバムのタイトルが『New Boots And Panties!!』 BACK


  BACK