2011/02/02
Spring Session M / Missing Persons 1983

  フランク・ザッパ・バンドのメンバーであったテリー・ボジオ(ds)、ウォーレン・ククルロ(g)、パトリック・オハーン(b)、そしてザッパのアルバム 『ジョーズ・ガレージ』のレコーディングにも参加した経験のある当時テリー・ボジオの妻であったデイル・ボジオを中心に結成されたバンドのデビュー・アル バム。タイトルはバンド名のアナグラムですね。
 このアルバムがリリースされると知ったとき、バンド・メンバーの内キーボードのチャック・ワイルド以外はフランク・ザッパ関係のミュージシャンというこ とから「きっと超絶技巧炸裂のサウンドを聴かせてくれるんだろうな」と思っていたのですが、実際に聴いてみたら、これが想像とは真逆の見事なまでにシンセ POPなサウンドじゃないですか。いや、ほんと、これには吃驚しましたよ。それじゃぁガッカリしたかといえば、とんでもありません。1曲目の『ノウティサ ブル・ワン』からガッチリとハートわしづかみ状態でした。唯一残念だったのが、パトリック・オハーンがベースを弾かずにシンセ・ベースを弾いていたことぐ らいです。そのかわりといっちゃなんですが、テリー・ボジオはドラム叩きまくってますけれど(^^:)。
 今聴くと、さすがにチャック・ワイルドが弾くシンセやパトリック・オハーンが弾くシンセ・ベースの音から1980年代という時代を感じてしまうのも事実 ですが、超絶技巧のミュージシャン達が本気で作り上げてPOPミュージックが放つ輝きは少しも失われていません。
 ちなみに彼等のLiveアルバムである『Late Nights Early Days』のジャケットは、この1stアルバムをデュシャン化したものです(^^:)。 BACK


2011/04/20
Quinteto Ternura / Quinteto Ternura 1974

  ジャケットに写っているメンバーと思わしき男性3人女性2人全員がいかにも1970年代初期ソウル・ミュージック風アフロ・ヘアーなのに、バンド名や曲名 がもポルトガル語にしか見えず、もしかして、ブラジルのソウル・バンドなのか?と興味をそそられて購入してみたのが、このブラジリアン・ソウル・コーラ ス・グループ、キンテート・テルヌーラが1974年にリリースしたアルバムです。
 『ブラジリアン・ライト・ソウル・サウンド』という帯のうたい文句通りのMPB(Musica Popular Brasileira(ブラジリアン・ポリュラー・ミュージック)) とソウル(フリー・ソウル)が融合したサウンドに、同じ編成である5thディメンジョンを彷佛とさせる男女コーラスが加わることによってソフト・ロック的 な味わいも醸し出しており、ブラジルの音楽が好きな人やソウル・ミュージックが好きな人は当然として、ソフロ・ロック好な人も一聴の価値があるアルバムで す。
 MPBの大御所の一人であるカエターノ・ヴェローソの『Baby』のカヴァーも収録。 BACK

2011/05/07
Octave / Moody Blues 1978

 1978 年のリリース当時、前作『Seventh Sojourn』から実に6年ぶりに発売される新作だということで、期待に胸を膨らませて購入したのですが、いざ聴いてみると、何だかそれまでのムー ディ・ブルースのイメージとは異なるサウンドだったので、正直ガッカリした記憶があります。その違和感の一番の原因はムーディ・ブルース・サウンドの肝と もいえるメロトロンの音色が少なくなってしまったところにあるのですが、それもこのアルバムの制作途中でメロトロン奏者のマイク・ピンダーが脱退してし まったのだから当然だと、今だったら納得できます。しかし当時はムーディ・ブルースのサウンドから神秘性が失われたようなガッカリ感が強く、そのため私の 中ではこの『Octarve』というアルバムは長い間無かったものになっていました。
 ところが、最近CDを買って改めて聴き直してると、これが実になんとも名曲揃いじゃないですか。特にジャスティン・ヘイワードが作った哀愁メロディーと哀愁ヴォーカルのダブル・コンボ曲は私の『好き』のツボを突きまくりですが、中でもラストの『The Day We Meet Again』はバンドを去ってしまったマイク・ピンダーに捧げた曲として聴くと、ぐっと胸に来るものがあります。
 当時このアルバムに違和感を覚えてしまったのは、ムーディ・ブルース=プログレというイメージが強過ぎたためなんですが、実はそのイメージこそが間違い だったのです。ムーディ・ブルースはメロディアスでちょっぴり神秘的で心安らぐサウンドを聴かせてくれるロック・バンドであり、それは1967年の 『Days Of Future Passed』から現在まで一貫して変わっていません。  BACK

2011/09/07
You're Awful, I Love You / Ludo 2008

  セントルイス出身のロック・バンド、ルードの3rdアルバム。Wiki等によればルードはオルタナテイヴやパンクのバンドとして分類されていますが、この アルバムを聴く限りにおいては、イナフ・ズナフ等と同系列のパワー・ポップ・バンドじゃないかというのが個人的な感想です。
 実のところ、このアルバムはジャケットのおバカさに心惹かれて買った所謂ジャケ買いであり、正直内容については全然と言って良いほど期待してなかったん ですが、試しに聴いてみたら、ジャケットからは想像もつかないポップでキャッチーなサウンドが飛び出してきたんで吃驚…つ〜か、このアルバム、ジャケット でかなり損してるんじゃないでしょうか(もちろん私はこ〜ゆ〜バカジャケは大好物なんですが)。もっとも、メロディーやサウンドはポップだけれど、歌詞の 方は捻くれているみたいだし(何しろ1曲目のタイトルが『Love Me Dead』ですよ(^^;)、youtubeで見た映像はジャケット以上におバカだし、一筋縄ではいかないバンドのようです。 BACK

2011/10/11
Cast Thy Burden Upon / Stillroven 1996

  米国ミネアポリスの伝説的ガレージ・バンド Stillrovenが1966年から1968年の間に録音した曲の中から18曲を収録したSundazed編集のコンピ盤。音質を向上させながらも、ガ レージ・バンドの魅力である荒々しさと瑞々しさを損なわないサウンドになっているあたりは、さすがにガレージ・サウンドを知り尽くしたSundazedだ けはあります、
 収録されている曲にはカヴァー曲も多く、『Hey Joe』や『(I'm Not Your)Stepping Stone』といったガレージ・バンド御用達曲もカヴァーしていますが、その一方で初期ムーディ・ブルースやサイモン・デュプリー&ビッグ・サウンドの曲 をカヴァーしたりと、マニアックな面も見せてくれます。だからといってオリジナル・ナンバーがつまらないわけではなく、逆にStillrovenの魅力は オリジナル・ナンバーにこそあると言って良いでしょう。特に『Sunny Day』『Cast Thy Burden Upon』『Have You Got A Penny』のようなPOPでなおかつサイケな香りのする曲は、この手の曲が好きな人間(たとえば私のような)にとってはたまらないものがあります。  BACK

2011/11/03
Sacred Songs / Daryl Hall 1980

  ロバート・フリップの『Exprosure』、ピーター・ガブリエルの2ndとともに『MOR3部作』のひとつとして1977年に録音されながらも、ホー ル&オーツの音楽性と違いすぎるという理由から1980年まで発売されなかったという曰く付きのアルバム。そういう理由から先にロバート・フリップの 『Exprosure』とピーター・ガブリエルの2ndを聴いた後、このLPもリアルタイムで購入したのですが、正直当時はあまりピンとこなかったという か、何かこう期待したものと違う感じがしてガッカリした記憶があります。
 というわけで、最近までこのアルバムは個人的には長らく残念アルバムのひとつだったんですが、先日Amazonで輸入盤リマスターCDが安く売っていた んで、とりあえずという感じで購入し、改めて聴いてみたら、これが凄く良いじゃないですか。当時は何とも言えない違和感を感じたフリップ翁のギターとダリ ル・ホールのサウンドが、時代を経て私の耳が熟れてきたのか、その違和感が逆に気持良く感じられるんです。ダリル・ホールのポップなメロディーに突然ロ バート・フリップのフリッパートロニクスが侵入してくる所なんか、ゾクっときちゃいますよ。そして『The Farther Away I Am』『Without Tears』のような浮遊感のあるバラード・ナンバーとフリッパートロニクスとの融合がまた心地良くて、どうして当時このサウンドの良さがわからなかった のだろう、と当時の自分がわからなくなってきました(^^;)。
 このリマスターCDにはロバート・フリップの『Exprosure』でダリル・ホールが曲作りとヴォーカルで参加した『You Burn Me Up I'm a A Cigarette』と『North Star』の2曲がボーナス・トラックとして収録されています。正直アルバムとしては蛇足感は拭えないものの、この2曲を聴けば、このアルバムが 『MOR3部作』のひとつとして制作されたということが実感できるという点では意味があるのかもしれません。 BACK