Lien日記

 『Lien〜終わらない君の唄〜』はPurpleから2000年に発売されたゲーム(18禁)です。
 ネット上の色々な所で面白いという評判を見ていたので,以前からやってみようかな,と思っていたものです。中古で4200円と,えねま的にはちょっと高かったけれど,まあせっかくだからというので(何がせっかくなのだか(^^;)買ってみました。
 そして,これはそのリアルタイムなゲーム記です。
 当然ながらネタばれ有りですので,これからやってみようとする方はそのつもりで読んでくださいね(^^;)

7月8日

 
我が家の恋愛ゲーム専用機,SOTEC PC STATION M246にインストゥールする。容量が約280MBというのは,最近のゲームとしては少ない方ですね。インストゥールは問題なく終了。さっそく始めてみる。
 このゲーム,音声はCDを使用しているようですね。ふむふむ,だからゲーム本体の容量が少なくて済むんだな。確かに,音声をフル・インストゥールしてギガバイトになってしまうようなソフトよりはマシってもんです。

 なんと,しょっぱなから主人公(志郎)はクルマにはねられて死んでしまいます。そして気が付いたら幽霊になっているんだけれど,これがまたなんとも幽霊の自覚に欠けた(そもそも幽霊に自覚があるのかどうかはわかりませんが(^^;),お気楽な幽霊です。
 特に主人公の父親(住職にして霊能者。何故かエレキ・ギター(フライングV)を背中に背負っている)と主人公の会話は,あまりにもハチャメチャで,とても父親と幽霊の会話には思えませんね。

 最初に登場してくる女の子は幼馴染みのですが,この娘も霊能力があるせいか,主人公が現れても少しも慌てることもなく,素直にその状況を受け入れています。彼女の特徴はなんといってもウサギの耳のようなリボンですが,リボンと幼なじみといえば,どうしてもTo Heartのあかりちゃんを思い浮かべてしまうのは,これはいたしかたのないことでしょう(^^;)。が,は性格的にはあかりちゃんタイプではなく,同じ幼なじみでもどちらかといえばまじアンの結花タイプですね...すぐに暴力ふるうし(^^;)
 また,クラスメイトも順応性が高いというか,主人公が幽霊として登校してきても,それを何の驚きもなく受け入れています(「生きていても死んでいてもつかえない」とか酷いことも言われてますが....(^^;)。

 前半はギャグが主流だとは聞いていましたが,いやぁ,飛ばす飛ばす,しかもマニアックなネタがどんどん出てきます。ビル・ラズウェルならまだ少しは認知度があるかもしれないけれど,フレッド・フリスなんてよっぽどのロック・マニアじゃないと知らないと思うぞ(^^;)(注1)....それをクラスの全員が知っているというのも凄い話だが....(^^;)。
 居間にマーシャル・アンプの2段重ねってのも良いなぁ(^_^)
 それにしても音楽ネタが多いですね....ジョン・マクラフリンの『火の鳥』(正確にはマハビシェヌ・オーケストラ)....って,30代後半以上じゃないとわからないと思うぞ(^^;)
 
作者はよっぽどのロック好きなのでしょうね。

 ところで,ヴォイスが時折出たり出なかったりするのはどうしてなんでしょうか?バグかな?(^^;)....それともそういう仕様なのかな?

 とりあえず,最初は某こみパのちゃんに似ているというファースト・インプレッションを受けた楠若葉狙いでやってみることにしましょう(作者は「ときめも」の如月さんだと言ってますが(^^;)。
 この娘はやたら順応性の高いクラス・メイトの中にあって何故か幽霊である主人公のことを恐がっていたのですが,先生から(強引に)指名されて,泣く泣く幽霊お世話係りになります。ところが
若葉は主人公の姿を見ることができず,会話しかできません。初めの頃は泣くしかできなかった彼女ですが,ある事件から主人公に心を許すようになります(このイベントがなかなか良いんですよね)。
 その後,
若葉の死んだ双子の妹にして守護霊の青葉が登場するのですが,若葉と青葉,そして主人公の関係って,Airにおける美凪とみちるそして往人の関係に良く似ていますね。もちろん,Lienの方が先なんですが...
 やがて,
青葉の力を借りて.若葉は主人公と結ばれるのですが,この時点ではこのままTrue Endになるんだな....と思っていました(普通のゲームなら結ばれる=True Endですからね)。ところが,なんだか良くわからないままにゲームは終了してしまったのです。エンディングのクレジットも何も出ないから,これはいわゆるバッド・エンドなんでしょう。
 なんとなくあそこで選択枝を間違えたのかな?と思い当たる箇所があったので,セーブしてあった所に遡りやり直してみたら,こんどはちゃんとTrue Endを迎えることができました。
 このTrue End(
青葉が消え,主人公が消え,しかしそれでも若葉は未来に向けて強く生きていく)がまたAirにおける美凪シナリオのTrue Endに良く似ているんですよね(くどいようですがLienの方が先です(^^;)。
 ラストの主人公が消えるシーンは良いですね。
若葉は悲しみにくれることなく旅立つ主人公を見送るのですが,それゆえに切なさ倍増です。
 それにしても
若葉ちゃんのへろへろヴォイス(青葉と一人二役らしいです)は腰がくだけそうになっちゃいますね....もっともそこが良いのですが。でも,一番はなんいってもあのへろへろなツッコミでしょう(^^;)。あれで萌えちゃった人は多いんじゃないかな?


7月9日

 
続いては幽霊娘の近衛柚さんにチャレンジ。何やら古めかしい名前なのも当然,彼女は数十年前に自殺をした女学生の幽霊なのです。学校の桜の木の下には彼女の悲恋にまつわる石碑が建っているのですが,彼女自身は何故かその悲恋の物語と自殺を否定しています(本人曰く「食べ過ぎのための事故」)。
 その真相についてはシナリオが進むうちに明らかになってきますが,これがなかなか泣かせるんです。
 ところで,この幽霊娘の
近衛柚さんですが,主人公同様なんとも幽霊らしくない幽霊でして,そのふにゃふにゃヴォイスは若葉ちゃんのへろへろヴォイス以上に腰が砕けてしまいます。特に「う〜う〜」歌われる鼻歌は,聞く方の背骨が無くなってしまいそうです。
 それ故でしょうか,生徒を脅かそうと思っても,誰も相手にしてくれず,幽霊としてのアイデンティティに悩んだりもします。
 しかし,Sexに対しては非常に積極的で,煩悩の固まりのような主人公が思わず腰が引けてしまったくらいです。もっとも,結局はゲーム中3回もいたしてしまうのだけれどね(^^;)
 それにしても,幽霊との恋愛物というのは記憶にあるけれど,幽霊同士の恋愛物ってこれが初めてですね。
 ラストの二人背中合わせになったまま昇天していく場面は,なんだかとてもじんわりしてきます。

 シナリオ全般概ね問題なく進んだのですが,途中『外出イベント』の所で,いつまでも外出できずに堂々巡りをしてしまうことがありました。そこで,このイベントを起こすために必要なみなものシーンまで戻ってみると,途中「とりつき」のボタンが発生しているのを発見。みなもにとりついて見たところ,目出度く(^^;)『外出イベント』が発生しました。
 この「とりつき」ってのが良くわからないんですよね。いつ何時発生するかわからないし,また,発生しても非常にわかりにくいんです。そもそも「とりつき」についての説明が解説書にもほとんど書いていないのだから,こりゃどうしようもないです。いやほんと,この解説書はあまりにも簡単すぎます(^^;)。
ここまでそっけない解説書は見たことがありませんね。


7月13日

 
笹木みなもシナリオ終了。絵柄もヴォイスもあまり好みでないため,あまりというかほとんど期待せず,とりあえずやっておこうかという気持ちで始めたのですが,すみません,私が間違ってました。いや〜,良かったです,みなもシナリオ。個人的には今までやった3つのシナリオの中で一番楽しめました。
 特に,ラストの,明日はないことを知りながらも,互いに「また,明日」と笑顔で別れるシーン(この場面のCGがまた良いんです),そして志郎が消えた後で
みなもがひとり「今日だけは,さようなら」とつぶやくシーンには泣けました。

 シナリオ途中,みなも早香という人形に身体を乗っ取られ,自分自身が人形になってしまいます。普通ならここからオカルト路線まっしぐらなんでしょうが,これは「Lien」ですから,そんなことにはなりません。早香が,不幸にして若く亡くなってしまった自分の元の持ち主のお嬢さんに「恋愛成就の思い」を届けるためにみなもの身体を乗っ取ったことを知ると,志郎とみなもは,1週間の期限付きでその手伝いをすることになります(みなもは嫌々ながらですが)。
 1週間後,
早香は満足のままみなもに身体を返して消えていくのですが,そのときに早香の元の持ち主が近衛柚であることが判明します。「Lien」ではこのように各シナリオ間に微妙なつながりがあることが多く,それがまたシナリオに深みを与えているんですよね。
 また,
みなもシナリオにおいて,この早香の存在は非常に大きく,彼女の言動が後々のみなもや志郎の考えに大きな影響を与えていることが,後々わかります。

 さて,9日の日記で『「とりつき」ってのが良くわからないんですよね。』と書きましたが,この「とりつき」というコマンドは,みなもシナリオのために存在しているといっても過言ではないでしょう。
 何しろ,志郎は
みなものために3回も沢田先輩(盗撮マニア(^^;)にとりついているのですから....しかし,とりつかれた沢田先輩にしてみれば,とんだ災難ですね。もっとも沢田先輩は盗撮マニアにしては人間ができているのか,笑って許していたようですが....

 初めに書いたとおり,最初のうちはみなもについては単なるお笑いキャラとしてしか認知せず,ほとんど魅力を感じていなかったのですが,ゲームを進めるうちに,徐々にみなもが可愛らしく見えるようになってたんですよね。これもシナリオの力なのでしょう。
 もちろん,お笑いキャラとしての見せ場も多く,特に眼鏡を頭に乗せたまま「めがね,めがね」と捜す,お約束シーンは,お笑いキャラの面目躍如って感じですね。

 ゲーム的には選択枝等特に難しい所もなく,最後までスムーズに進めることが出来ました。

 エピローグにおいて,みなもは母校の教師になっていましたが,そういえば,『あずまんが大王』の黒沢先生もみなもでしたね....って,関係.....ん〜...ないんでしょうね(^^;)(^^;)。


7月15日


 
本作のメイン・ヒロインである鷹取晶の攻略が終了しました。これで一応Lienのシナリオはすべて終了したということになりますね(CGの取り残しはありますが(^^;)
 さて,
鷹取晶シナリオですが,さすがにメイン・ヒロインだけあって良くできていると思います。
 特にラスト・シーンのかくれんぼと,晶が夢の中で志郎の葬式の日を回想するシーンでは,その切なさに涙涙でした(葬式の日の回想シーンでは父(玄照)と晶と恭子の会話も泣けました)。
 また,他シナリオとの関わりとしては
若葉との絡みがあるのですが,そりゃ確かに晶としては若葉をそう簡単に許すわけにはいかなかったでしょうね。このあたりのシナリオは本当に痛いものがあります。

 ところで,シナリオの重要なシーンとして『公園のかくれんぼの想い出』というものがありますが,これってTo Heartのあかりシナリオにも似たようなものがありましたね。そうえいばの『うさぎグッズ・コレクター』ぶりはあかりの『くまグッズ・コレクター』ぶりに良く似ているし,幼なじみでありなおかつリボンをしているというところもあかりに良く似ています。
 と思ったら,作画担当の山いもとろとろ氏がインタビューで「あかりがベースである」と語っていました。まあ,正直といえば正直ですね(^^;)。
 個人的には
あかり結花という印象を受けたのですが....

 また,ゲーム中においてシナリオが一番音楽ネタ(しかもディープ)が多かったように思います。たとえば,前にもちょっと書きましたが,志郎がクラスメイトの関心をそらすために放った「あそこでビル・ラズウェルとフレッド・フリスとチャールズ・ヘイワードがバンドを組んでいる!」という台詞は,よっぽどの音楽通でないとわかりませんよ。
 その他にも屋上のお弁当シーンで晶が言った「少しぐらいてれぐらむ・さむ」という駄洒落は,T・レックス知ってる世代(30代後半以上)でないとわからないだろうし,同じく弁当イベント中に出てきた「This Heat」が,イギリスの暗黒系ニュー・ウェイブ系バンドであるということを知る人も少ないと思いますね(某HPの辞典にもこれらミュージシャン・ネタについてはまったく載っていませんでした)。

 このシナリオをやっているときに恭子さんとの絡み(文字通りの意味で)のシーンが出てきたのですが,ううむ,これってちょっと危険?(^^;)。エピローグで出てくる玄照と恭子の子どもが,このときにできた子どもだと考えると面白いかもしれませんね(^^;)


7月17日

 このゲーム『Lien』のタイトルってリエンじゃなくって『リアン』って読むんですね(^^;)。
 さて,それでは最後にこれまでに書かなかったことを徒然書いてみたいと思います。
〜主人公(志郎)〜

 この手のゲームで主人公が眼鏡をかけているのって珍しいですよね。というより,主人公がはっきりと顔を出しているゲームそのものが珍しいといった方が良いかもしれません。いわゆるギャルゲーの主人公が画面に登場するときは『前髪で顔を隠してわからないようにする』というのがお約束になっていますからね。
 『ポエム無頼派』を名乗る主人公ですが,その破天荒な言動とは裏腹に,女の子達の気持ちに対しては非常に敏感です。このあたりもいわゆる『ニブチン』な主人公が多いギャルゲーの中にあっては珍しいキャラだと思います。
 ゲーム冒頭で,気付いたら幽霊になっていたというシチュエーションに対して少しも動揺しなかったのは,主人公が生前から霊的能力の高い人間だったからなのでしょうね(だってゲームなんだからといわれたらそれまでですが(^^;)

〜父(玄照)〜

 いわゆるギャルゲーの中で,
これだけ強烈な父親が登場するゲームって他に知りません。というより,主人公の父親が登場するギャルゲそのものがほとんどないのではないでしょうか?たとえば『To Heart』『Kanon』は両親とも仕事のために主人公の元から離れており(『同級生』も似たような設定ですね),『One』『痕』『Air』では両親とも死去しています。つまり,ギャルゲーにおいては,親が不在であるということが基本的な設定であるといえます。その中にあって玄照は極めて特異な例といえるでしょう。
 しかし,あの姿のどこが父親で住職なんでしょう?(^^;)。あれじゃあ,どうみても着流しロッカーじゃないですか(そんなものいませんが(^^;)。もっともジミヘンやジョン・マフラクリンが好きである等,音楽的な好みは年齢相応なんですけれどね....。ちなみにいつも背負っているギターはギブソンのフライングVですが,実はこのギターとても重いんです。ですから,あのようにいつも背負っていると,かなり腰に負担がかかるのではないかと心配してしちゃいます(^^;)。

〜ゲームシステム〜

 『Lien』で不満があるとすれば,このシステム面ですね。
 まず,ゲームを何回かやっていると,ゲーム上あまり重要でない繰り返しの台詞はどうしても飛ばしたくなるものですが,『Lien』の場合,台詞を飛ばす機能はあるものの,これが既読未読に関わらずに飛ばしてしまうので,非常に扱いにくいのです。やはり『一度読んだ台詞は飛ばす』という機能にしてほしいですね。
 また,シナリオを遡って読む機能がないのも辛いですね。これって案外使うことが多いんですよ。
 それから,セーブできる場所が限られているってのも面倒ですね。特に選択肢の直前でセーブできないってのは辛いですよ。
 音声はCDから出しているのですが,この音声の立ち上げが遅いのもまた減点対象ですね。同じようにCDから音声を出しているPSのソフト(たとえば『To Heart』)ではそのようなことがないだけに,とてもイライラしてしまいます。
 また,音声をつけるのならば,すべての台詞に音声をつけて欲しいですね。台詞によって付いていたり付いていなかったりでは,なんだか流れが悪く感じられます。
 音といえば,効果音が少ないのも寂しいですね。たとえば,晶のはりせんなどは,音付きの方がもっと楽しいと思います。

〜総評〜

 とまあ,システム上では不満が残りますが,ゲームとしては非常に楽しめたゲームです。
 
シナリオ的には今年やったゲームの中ではダントツの1位ですね。
 何よりも,すべてのシナリオの別れのシーンにおいて涙がなかったのが素晴らしい。通常のゲームであれば,ヒロインの涙でゲームをする者の涙をさそうようなシナリオにするところを,『Lien』ではあえてそうせず,ヒロイン達は皆笑顔で志郎の旅立ちを見送りました。しかし,笑顔であるが故に切なさは何倍にも増し,私は涙を禁じ得ませんでした。もっとも,涙とはいっても,『Air』のときのような号泣に近いそれではなく,目頭が熱くなるくらいのものだったのですが,哀しいという気持ちではなく,かえって爽やかな気持ちにさせるものでした。

 しかし,万人向けのゲームかといえば,それは難しいかもしれません
 というのも主人公はゲーム開始の時にはすでに死んでおり,いつかは消える運命にあるのです。ということは,どんなに愛し結ばれても,普通のハッピー・エンドを迎えることは絶対に不可能だということです。
 これは,主人公とヒロインが結ばれてハッピーに終わるというエンディングを好む人には絶対に受け入れられないでしょうね。実際そういう不満もネット上で見ることができます。

 とはいえ,人生の卑猥....ではなく悲哀を味わってきた不良中年ヲタクにとっては,単純なハッピー・エンドのゲームよりは『Lien』の方が絶対に楽しめると思います。少なくともギャグのキレだけでも買う価値十分に有りと言えますね(^_^)

(注1)後日えねま亭掲示板にシナリオ担当の荒川工さんから直々に書き込みがありまして,彼のHPをおじゃましたところ,かなりコアなRockファンであることが判明いたしました。

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