narcissuナルキッソス

 このゲームは,ねこねこソフトから発売された『銀色』でシナリオを担当していた片岡とも氏の個人サイト『ステージ☆なな』からDLできるフリー・ソフトです。フリー・ソフトといっても体験版などではなく,本編全部が入っている完全版です(CD-ROMによる製品版も発売されていますが)。
 某所でなかなか評判が良かったのでDLしてみたのですが,HPの『ストーリー紹介』に『現代,暗い,主人公とヒロイン,どっちも死にます』とはっきり書かれていたのには吃驚しちゃいました(^^;)。

CG

 HPにも書かれていますが,このゲームには基本的に絵はありません。ゲーム中ほとんどの場面は背景素材にテキストが表示されるだけで,所謂立ち絵というものはありません。ヒロインの絵すら必要最小限の場面で使われるだけです。
 しかし,このゲームにおいてはそれは決してマイナス要素ではなく,かえって読む者の想像力を刺激されるように思えるのです。

BGM

 BGMはオリジナルと別のゲームで使用されているBGM(ねこねこソフトのゲームが多いのかな?)をアレンジしたものが使われています。ちゃんと歌入りの曲も1曲収録されています。内容が内容ですから静かめの曲が多いのですが,場面場面にぴったりと填っており,同人ソフトとはいっても,さすがにプロの手が入っているって感じですね。下手な商業ソフトよりもレベルが高いのではないでしょうか。

Voice

 Voiceは有り,無しを選択できます。作者自身は『無し』を推奨していますが,あれば『有り』でやってみたいというのが人情でして,とりあえず『有り』でやってみました。といっても,Voiceがあるのはヒロインだけなんですけれどね。で,Voiceを聴いて最初に思ったのが『綾○レ○』です。ま,個人的にこの手の話し方って嫌いじゃないんですが,ヒロインの絵から受ける印象とはちょっと違うんではないかと....(^^;)。

シナリオ

 最初っから『主人公とヒロイン,どっちも死にます』と思いっきりネタバレされちゃってますが,主人公とヒロインのどちらもが末期ガンの患者なのです。主人公は20歳,自動車免許を取った次の日にガンとわかり入院。ヒロインは22歳,中学1年に入院して以来ずっと病院で暮らしています。そんな二人が出会ったのは病院7階にあるホスピスの休憩室。
 ある日,主人公の父親が置き忘れたクルマのキーを使い,主人公とヒロインは病院を抜け出し,クルマに乗ってあてどもない旅に出ます。数日後,二人が目的地に選んだのは,テレビで見たナルキッソス(水仙)が一面に咲く場所。
 いわゆる映画でいうロードムーヴィー的展開なのですが,ともに明日のない二人の旅ですから,当然ハッピーエンドはありえません。かなり心に重いラストを迎えることになります。しかし,自分で自分の道を選んだヒロインにとっては,そしてそれを見届けた主人公にとっては,これはある意味ハッピーエンドなのかもしれませんね。

 タイトルの『ナルキッソス』には,二人が目指した場所に咲いていた花の名とともに,ナルシスとエコーの哀しい神話の意味も含まれているんですね。しかし,ナルシスの話は有名ですが,エコーの哀しい話はすっかり忘れてましたよ。

 この作品のように死をあつかったものには常に賛否両論がつきまといますが,少なくともこの作品は『死』でもって泣かせようとする作品ではないと思います。また,ヒロインの最後にも賛否両論があるでしょうね。彼女が選んだ第3の方法を非難することは簡単ですが,しかし,彼女のあの決意を否定することは難しいと思うんですよ。自分の最後は自分で選ぶというのも人としての権利だと思うんですよね。
 とはいえ,ゲーム終了時にはずっしりと重いものを感じてしまいました。

 テーマがテーマですからかなり重いゲームですが,ぜひとも10代の若い人達にやっていただきたいですね(18禁ではありませんから)。もちろん大人でも十分に楽しめる作品であることも保証します.....ゲームの対象も『大人』になってますしね(^^;)。

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