2008/01/15
Blue Jays / Justin Hayward & John Lodge 1975

 1972年にアルバム『神秘の世界(Seventh Sojourn)』をリリース後活動停止状態となっていたムーディ・ブルースのメンバーが久々に,しかも曲作りの要であるジャスティン・ヘイワードジョン・ロッジの二人が組んで制作したアルバムということで,発売当時,ワクワクドキドキしながら針を落としたのですが......正直期待はずれでした。というのも,ムーディ・ブルース・サウンドの要であったメロトロンはおろかシンセさえ使われておらず,プログレ的要素が皆無だったからなんですね。曲の方もシングルになった『昨日の夢』と『リメンバー・ミー』はそこそこ良い曲だとは思ったのですが,「これはプログレじゃないよなぁ」という想いが強く,結局アルバムとしての評価は低いまま,その後ほとんど聴くことはありませんでした。
 ところが,先日たまたまYouTubeにUpされていたジャスティン・ヘイワードの弾き語りによる『昨日の夢』を聴いたところ,これが実に良くて......なんだか胸の奥深くまでじわ〜っと染みてきてて......こりゃぁCDを買わんといかんな......と,すぐさまAmazonで注文してしまったというわけです。
 そして,約20年ぶりに『ブルージェイ』(邦題)を聴いてみたわけですが,1曲目の『The Morning』からラストの『Blue Guitar』まで,美しいメロディーと歌声に溢れており,どうしてあの頃このアルバムを好きになれなかったのか,我ながら不思議でなりません。確かにこれはプログレではありませんが,大人向けの音楽という意味では,優れたAORであり,『神秘の世界(Seventh Sojourn)』後にリリースされたムーディ・ブルースのどのアルバムよりもムーディ・ブルースらしいアルバムだと思います。  BACK

2008/01/22
On Your Side / Magnet 2003

 北欧出身のミュージシャンといえば,古のスプートニクスから北欧メタルまでサウンドは多々あれど,メロディーに関していえば,日本人好みの哀愁メロディーを紡ぎ出す人達が多いという共通点がありまが,ノルウェー出身のシンガー,マグネット(本名(イヴァン・ヨハンセン))が2003年にリリースしたこの2ndアルバムもまた,北欧らしい魅力あるメロディーに満ちています。とはいえ,実はこのCDを買うまで,マグネットというミュージシャンについてはまったく知りませんでした。ただジャケットがあまりにも素晴らしいという理由で,所謂ジャケ買いをしてしまった物なのですが,実際に聴いてみると中身の方も,ちょっぴりミステリアスで美しいという,まさにジャケット通りの逸品だったというわけです。確かにサウンド的にはレディオヘッドビョークからの影響が大きいことは否めませんが,マグネットが紡ぎ出すメロディーと切なげな歌声そのものに,単なるフォロワーではない魅力があることは間違いありません。こうゆうことがあるから,ジャケ買いって止められないんですよね。 BACK

2008/02/19
Ring Ring / ABBA 1973

 1970年代後期から1980年代前期にかけて一世を風靡したスウェーデン出身の男女4人グループ,アバのデビュー・アルバムです。といっても,このアルバムにはアバ結成以前のビョルン&ベニー時代の曲も含まれているんですけれどね。実は私,人気絶頂時のアバのディスコ風サウンドはなんとなく苦手で,まともに聴いたことがありません。このアルバムも1970年に日本限定でヒットしたビョルン&ベニーの『木枯らしの少女』が収録されているという,それだけの理由で購入したものであり,他の曲は刺身のツマというか,全然期待してませんでした。ところが,しばらくすると,自然にこのCDをかけている自分がいるんです。理由は簡単,それはPOPな魅力に溢れた曲が何曲も収録されているからなんですね。『木枯らしの少女』は当然として,『恋のカルーセル』という邦題でシングル化された『Merry-Go-Round』や『Santa Rosa』『Another Town,Another Train』といった曲が実になんとも私のPOP心をくすぐるんです。とはいえ,プログレだハードロックだ,グラム・ロックだ,というあの時代にあって,このCDに収録されている曲はメロディーといいアレンジといい,あまりにも真っ当過ぎるポップ・ミュージックで,正直,1973年に聴いていたら,古臭いサウンドとしか思えなかったかもしれません。しかし,現在ではその古臭さすらもが魅力に転じ,素直に良いPOPだなぁ〜と思えるわけです。
 それにしても,このジャケットに写っている4人は垢抜けない田舎の兄ちゃん姉ちゃんという感じで,まさか数年後に世界的大スターになるとは思えませんね(^^;)。 BACK

2008/04/21
Yellow Balloon / Yellow Balloon 1967

 ゲイリー・セグリー率いる米国の5人組バンド、イエロー・バルーンが1967年にリリースしたアルバム『イエロー・バルーン』は、現在でこそソフト・ロックの名盤として高く評価されていますが、発売当時はシングルとなった『Yellow Balloon』が全米25位になったものの、アルバムはさほ話題にもならず、その後1990年代にソフト・ロックの隠れた名盤として発掘されるまでは、時代の波に埋もれた数多くのアルバムの1枚でした。しかし、さすがはソフト・ロックの名盤といわれるだけはあります。1曲目の『How Can Be Down』からドリーミーなメロディーとブライアン・ウィルソン直系のコーラスでPOP好きの心を魅了し、そして2曲目の『Stained Glass Window』の、これぞソフト・ロックというクラシカルで美しいメロディーと「パパパ」コーラスでPOP好きの心をメロメロにしてくれます
 確かにゲイリー・セグリーが生み出した曲からはブライアン・ウィルソンの影響が強く感じられ、もしかしたらそれ故に同時代にあっては評価が低かったのかもしれません。だからといって、ゲイリー・セグリーが生み出した曲がブライアン・ウィルソンの亜流かといえば、決してそうではないんですけれどね。逆に同時代にあって、ここまでブライアン・ウィルソンのサウンドを咀嚼し取り入れたことが凄いんですよ。
 ちなみに『Noollab Wolley』という曲はタイトル通り『Yellow Balloon』を逆回転再生しただけの曲ですが,これが許されてしまうのも,またあの時代らしいのかもしれませんね(^^;)。 BACK

2008/05/10
Natures Mortes〜Still Lives / V.A. 1982

 1982年に日本独自に編集された英国のレーベル4ADのコンピ盤。このアルバムが日本に4ADというレーベルを広く知らしめたといっても過言ではなく,私もまたこのコンピ盤(もちろんアナログ盤)を通して4ADという存在を知った一人です。収録されている曲は『暗黒の舞踏会』という邦題がぴったりなダークでゴシックなサウンドが中心で,正直言って,演奏技術の面からいえばローテクなものが多いのですが,それでも,どの曲も『普通ではない』サウンドを作り出そうという意欲に満ちあふれています。これはある意味『音響系』や『ポスト・ロック』の先駆的存在といえるかもしれません。Rema Remaの『Feedback Song』やMassの『You And I』は,当時大好きだった曲ですが,その混沌としたサウンドには,今聴いてもゾクゾクするような魅力がありますね。なお,2007年にCD化されるにあたって,ボーナス・トラックが5曲追加されています。 BACK