1998年,冬。
普通の学生であったオレの中に,不意にもうひとつの世界が生まれる。
それはしんしんと積む雪のように,ゆっくりと日常を埋めてゆく。
そのときになって初めて,気づいたこと。
繰り返す日常の中にある変わりないもの。
いつでもそこにある見慣れた風景。
好きだったことさえ気づかなかった,大好きな人の温もり。
すべてがオレをこの世界に繋ぎ止めていてくれるものとして存在している。
その絆を,そして,大切な人を,初めて求めようとした瞬間だった。
時は巡り,やがて季節は陽光に輝きだす。
そのときオレはどんな世界に立ち,そして誰がこの手を握ってくれているのだろうか。

〜解説より〜

 
 『ONE』は『KANON』や『AIR』を作成した現Keyスタッフが1998年にTacticsで制作したゲームです。

 もっとも,私がこのゲームの存在を知ったのは,翌年の1999年のことです。『To Heart』をやり終えた後にインターネット上で色々と情報を収集していたとき,数多くのゲーム系サイトで目にしたのが,この『ONE』というゲームでした。
 曰く『面白い』....曰く『泣ける』...曰く『謎だ』....,
 これを見て俄然やる気になり,さっそくShopへ行ってみたのですが,ジャケットの絵を見て愕然としてしまいました。「な,なんだ,このヘンな絵は!」。こりゃダメだと思い,その日は買わずに帰りました。しかし,家に帰ってからもなんだかとても気になってしかたがないんですね。で,結局次の日にまたShopに行って買ってきてしまったというわけです。

 実際にゲームをやってみると....結論「このゲームは面白い!」。
 最初,幼なじみの長森瑞佳が主人公を起こしに来るところでは,「なんだ,これ『To Heart』の物真似か?」と思ってしまったのですが,ギャグの破壊度は凄まじく,またその後の展開が予想だにしなかったもので,あっという間に『ONE』の世界に引き込まれてしまいました。
 初めの頃は違和感ありまくりであった所謂いたる絵も,ゲームが進むに連れてまったく違和感を感じなくなり,クライマックスを迎える頃には「この絵でなければだめだ!」とさえ思うようになってしまいました。
 そして,そのクライマックスでは....泣きはしませんでしたが,目頭がじ〜んと熱くなり,涙がこぼれそうになったことは事実です。

 このゲームが人気を博した理由は,『笑い』と『涙』だけではありません。もうひとつ『謎』という要素がそこにあるのです。日常の中に突然挿入される異世界。「えいえんのせかい」とはいったい何なのか?
 結局最後までその謎はわからないままでした(私の理解力が足らないせいだと思いますが(^^;)。しかし,だからといってそれはこのゲームの面白さを損なうものではありません。かえって,謎が残っているからこそ面白いとも言えるのではないでしょうか?
 母親が新興宗教に走ってしまったという点では前作『MOON.』との共通性を感じますね。

 音楽も『KANON』や『AIR』と同じ折戸伸治氏が担当していますから,当然他のゲームの比ではない素晴らしさです。個人的には『A Tair』『雨』『雪のように白く』といった曲が好きですね。ただし,このゲームにはオープニング・テーマ曲はありません。

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