鬼橋日誌(おにはしにっし)
鬼界事務所の構成員、鬼界と橋本が書く日誌です
。                    

・2000.5.12〜12.31の日誌は、こちら
・2001.1.4〜5.31の日誌は、こちら
・2001.6.1〜10.21の日誌は、こちら
・2001.10.22〜2002.3.30の日誌は、こちら
・2002.3.31〜8.31の日誌は、こちら

12月31日(火よう日) 日直・鬼界
ついに大晦日です。
今年も本当にアレな1年でした。
個人的にもアレだったし、鬼界事務所的にもアレでした。
アレはやっぱり、皆様のアレがアレしてるから、アレなんだと
つくづくアレしてます。
来年は4月にアレするんで、どうぞナニしてください。
このHPも日々アレしますし、新しいアレをアレしようかとも思っております。
1年間アレしてくださって本当にありがとうございました。
感謝のアレでいっぱいです。
来年もどうぞよろしく。
よいお年をアレしてください。

鬼橋日誌は、新春1月5日よりアレしまーす。


12月30日(月よう日) 日直・鬼界
昨日の新聞にこんな記事があった。

「お茶の水スクール・オブ・ビジネス」校長が緊急逮捕された。
出会い系サイトで知り合った16歳の少女に数万円を支払い、
みだらな行為をした上、写真撮影をした疑い。

あーあ、年末にこんな容疑で逮捕されちゃって・・・。
どうすんだろ?
致命的だな、写真まで撮ってるもんな。

警察の事情聴取が何度かあっただろうから、
いずれ逮捕されるのが、本人にはわかっていたはずだ。
「すまん。実は、女子高生を金で買ったのがバレたんでオレは逮捕される。許してくれ。」
などと、奥さんに打ち明けられるわけがない。
フツーどおりに奥さんに接していたはずだ。
クリスマスには、子供達にプレゼントを買い、いい父を演じたはずだ。
もしかしたら、クリスマスの夜は久し振りに奥さんが求めてきたかもしれない。
うわぁ、地獄だ!
何も知らない奥さんは、いそいそとお正月の準備をしてたんだろうな。
門松を飾り、大掃除をし、おせちの買出しもした。
そんな奥さんを見て、どう思ってたんだろう?
「女子高生のエロ写真を撮った罪で逮捕され、家庭はめちゃくちゃになるから、、正月の準備はしなくていい。」
なんて言えないもんな。

奥さんは玉の輿に乗ったと思ったのに、最低の離婚だ・・。
子供は学校に行けなくなるぞ・・。
僕がその子供だったら、一生、父を恨むに違いない。
でも、その前に、撮った写真を見せてもらおう、絶対。


12月29日(日よう日) 日直・橋本
 「『ぼんの青春』へのご感想をお寄せください」
という私のお願いに、1名の方が応えて下さった。
N様、ありがとうございます。
1名。
淋しくなんかありません、少しも。
ご紹介させて頂きます。

「毎日読むの楽しみにしてました。
これ、絶対に橋本さんの作りだ!と思える箇所はたくさんありましたが、
(例えば、
ブルーフィルムのタイトルとか、折敷瀬センセイとぼんの中国語とか。)
ぼんの“青春のきらめき”を、堪能しました。
ただ、
恋愛について少ない、というか、まったくないという感じが・・・。
鬼界さんは、学生時代に恋愛はなさらなかったんでしょうか?
おモテにならなかった・・・?」

おモテにならなかったんでしょうな、おそらく。
モテモテだったら、
きっと“恋のエピソード”満載だったはず。
取材中、モテた話はイッコもなかったもんな。
でも、待てよ。
モテなくても、
「ぼんが、女の子を好きになった」ことは、きっと1度や2度ではあるまい。
“大学生”といえば、飢えた狼だ。
服を着たケダモノだ。
女の子に恋しない大学生など居たら、そいつはカタワだ。
大学生なんて、みんな、そんなよ。
ぼんだって、そーだったはず。
確かに、『〜恋ヶ窪篇〜』で、
入学当時ぼんがホの字だった‘小巻ちゃん’という女の子が登場したが、
別に‘ぼんと小巻ちゃん’が‘どうなったこうなった’という話はなかった。
でも、
たとえ付き合わなくても、
「好きになった相手」とのエピソードって、
なにかしら有るのでは?
私はといえば、大学時代、
3人、好きな人が出来た。
(「1年4ヶ月に1人、好きな人を作ってた」計算になるね。)
だーれとも付き合えなかったが、
(1人目、2人目には、恥ずかしくて打ち明けられなかった。
3人目には「彼女が居るから」とフラレタ。)
それぞれの人との‘嬉し恥ずかし・悲し悔し’の想い出のエピソードは、
いくつか有る。
「おかしいぞ?
鬼界さん、何か隠してるのか?
話したくない暗い過去でもあるのか?」

って、
皆さんに思ってもらえたら、なんか鬼界さん、得してるじゃん。
私の理論のおかげで。


12月28日(土よう日) 日直・橋本
 クリスマスの25日に、後輩から、こんな返信メールが届いた。
「や〜ん、うれしかったです、クリスマスメール。
なんせ昨日(24日)は、昼も夜のバイトもお休みにして、
昼は自分へのクリスマスプレゼントとしてパソコンを買いに行き、
夜はひとり宴会!あは。
30才のクリスマスにひとり、これもいいかなとおもいます。
一昨年、去年はひとりになりたくなくって、早々に予定を入れてましたけど。
ちなみに今日の夜もひとり。あは。」
この子は、
一昨年のクリスマス前に、8年間付き合った彼氏と別れた。
ようやく、今年の夏あたりから立ち直った。
今年のクリスマスはどうしているかな?とメールを送ったところ、
こんな返事をくれたのだ。

掲示板にも、何人かの方が、
「イヴもクリスマスも仕事。ひとりでケーキを食べて寝ました。」
と、書いておられた。

昨日の日誌に書いたY美もそうだし、私もそうだ。
ほかのメボシイ友人らも、皆、そうだ。
「クリスマス?
家でケーキ食うのが関の山よ。」
「ミレナリオ?
やだ、寒い。さっさと家に帰る。で、寝る。次の日も仕事だから。」

テレビや広告で、よく見聞きする
「彼と一緒に過ごすステキなクリスマス♪」
を実行している人って、一体どこに居るの?
でも、居るんだよねぇ。
だって、クリスマスって、街にはカップルがいっぱいだもんねぇ。
おっかしーなー。
私の周りにだけ居ないのかなぁ。
あのアベック達は、ちがう星から来たのかい?
そんで、クリスマスが終わると、また自分の星に帰っていくのかい?

すんませんね、いつまでもクリスマス‘ネタ’で。
ちょーっと気になったもんで・・・。


12月27日(金よう日) 日直・橋本
 23日に、
友人であるY美のライブに行った。
『クリスマス・イヴ・イヴ ディナーショウ』と銘打って、
お食事付き。
飲み放題。
ステージが始まる前に、
Y美が音頭をとり、お客さん全員がシャンパンで乾杯。
そのあと、
それぞれ、好みの酒を自由にお替りしつつ、
スープ・オードブル・サラダ・メインディッシュ2種を、歓談しながら食う。
最後のデザートを配り終えたところで、
いよいよ、ステージが始まる・・・
っつー趣向のライブ。
その“シャンパンで乾杯”の直後、
ウェイトレスさん達が、
「シャンパンのあとの飲み物は何にするか」を、
客席を回り、各お客に尋ねる。
そして、
ビールでもウィスキーでもワインでも、リクエストした酒を、速やかに持って来てくれる。
Y美も、ホステス役として、
1人のウェイトレスと一緒に客席を回っていた。
「乾杯のシャンパンのあとは、何をお飲みになりますか?」
という意味で、
ウェイトレスが、私の後ろのテーブルの男性客に尋ねた。
「このあと、どうなさいます?」
一瞬の間をおいて、
Y美も、その男性客に尋ねた。
「私と生きていきます?」

Y美は、若い男性客すべてに、もれなく、声をかけていた。
「このあと、どうなさいます?」
「私と生きていきます?」
各テーブルでは、
Y美のいつものジョークとして、「アハハ」と笑って受け流されていたようだ。
でも、私には判った。
ヤツは、マジだ。
疲れた身体で、ひとりトボトボと帰ってくる自分の部屋。
ベッドも、起きた時のまんま、
パジャマも、脱ぎ捨てたまんま、
マグカップも、飲み残したまんま。
なにもかもが、冷え冷えと、疲れた私を迎えるのだ・・・。
イヴ・イヴもイヴもクリスマスも・・・。
「あぁ、私は、このまま一生ひとりで生きていくのっ?」
Y美よ。
尋ねなさい。
思う存分、尋ねなさい。
「私と生きていきます?」


12月26日(木よう日) 日直・鬼界
クリスマスが終わり、気になることがある。

ケーキ屋はもちろん、パン屋、デパ地下、スーパー、コンビニ、
ありとあらゆるところで山積み状態で売られていたケーキが
すべての店で完売したとは思えない。
大量に売れ残ったはずだ。
売れ残ったケーキはどこへ行ったのだろう?
捨てるには、もったいなすぎる。
ケーキ屋の地下にある秘密の部屋で、
売れ残りケーキの生クリームを削り取り、別のケーキに再利用してるのだろうか?
ケーキにのってたイチゴはどこへ?
今日、うちの近所で
FUJIYAの隣のスーパーがイチゴの特売をやっているのだが、買う気にならない。

さらに、これまた、ありとあらゆるところでトリのモモ焼きを売っていたが、
考えてみると、
トリ1羽からモモは2本しか取れない。
あれだけ大量のモモ焼きを日本全国で売ってたのだから、
想像を絶するほどのトリが殺されたわけだ。
そのムネ肉はどうなったの?
東京ドーム1000杯分くらいのムネ肉があるはずだ。
年末にムネ肉の大特価セールがあるわけでもなし、
“おせちもいいけど、トリのムネ肉もね!”なんていうCMも見ない。(すっげえ字余りだし・・)
行方が気になる。


12月25日(水よう日) 日直・鬼界
クリスマスだ。
近年すっかり忘れ去られ、
特に今年はイブ前が3連休だったので完全に無視されてるけど、
今日がホントのクリスマスだ。

なぜクリスマスをクリスマスに祝わなくなったのだろう?
僕が子供の頃は、
25日に、‘クリスマス・キッズお楽しみ会’をやり、
夕食には七面鳥の丸焼きを食べたものだ。(ウソ。トリのモモ焼きでした・・・)
それがいつの間にか、24日がメインになっている。
キリスト教に関係のない日本でバレンタインが定着したのは
チョコレート業界の陰謀だが、
イブを特別な日と全国民に思い込ませたのは誰の策略だったのだろう?
ケーキ屋さん?宝石屋?ホテル業界?丸井?
どれも違うみたい・・・。
ま、いいか。とにかく、メリー!クリスマス!!


12月24日(火よう日) 日直・鬼界
新宿へクリスマスのイルミネーションを見に行った。
すごい人だ!
台風中継でおなじみの新宿駅南口前の横断歩道が
まず、渡れない。
幅20メートルくらいのかなり大きい横断歩道なのに、
あまりに多くの人があっちとこっちから渡ろうとするので
途中ですし詰め状態、動かなくなってしまうわ、
横断歩道の真ん中にいるのに、信号は赤に変わってしまうわ、
クラクションがプップービービー鳴らされるわ、
戦場にいるようだ。

なんとか横断し、通勤ラッシュ状態で歩道を進むと、
歩いている全員がイルミネーション広場へと、歩道を離れて左折する。
そこから先の歩道には人っ子一人歩いていない。
大雨で氾濫した濁流が堤防を越えていくようだ。

イルミネーション広場に足を踏み入れた途端、みんなが声をあげる。
「うわっ、キレイっ!!」
「うわっ、すごい人っっ!!」
明治神宮の初詣を上回る人また人なのだ。
この寒いのにご苦労なこった!(含む、自分)

イルミネーションの中ほどに、
なんか、オブジェがあって、なんか、手を入れると、
なんか、見えたり、なんか、音楽が鳴ったりする、なんか、そういうものに
長蛇の列だ。
結局、ちょっと、なんかなるだけでしょ?ご苦労なこった!(含まず、自分)

イルミネーションは、遠目に見たらとても美しいけど、
近くで見ると、豆電球がただならんでるだけで、あまり美しくない・・・。
当たり前のことに今さら気付いた夜だった。


12月23日(月よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その35

 3月初旬。 
一橋大学卒業式。
ぼんの、4年間の大学生活に終止符が打たれる日。
1年生の夏から劇団の養成所に通い始め、
4年生では自らが創った劇団の活動が忙しく、
ほとんど大学には行かなかった・・・とも言える、ぼん。
「大学生活4年間」
というよりも、
「演劇に打ち込んだ4年間」
と言った方が正解かもしれない。
だが、
そんなぼんにとっても、この「大学生活」の中には、
これからの人生の折々に、きっと懐かしく思い出すであろう出来事がいくつもあった。
京都高島屋で一式揃えた“腐れトラッド”な“いでたち”で出席した入学式。
なにをトチ狂ったかパンチパーマをかけたのも大失敗で、
「一橋のちんちくりん」
「パンチなデコっぱち」
「トラッドの面汚し」
と石を投げられ、
入学式の後、1週間も下宿に引きこもったっけ・・・。
あの頃は、
ダサダサで不恰好なカッペ君だったなぁ、僕・・・。
(鬼界さん、ちょっといいですか?
「あの頃は」って・・・・・。「今も」です。)
そんな僕にも、こうして卒業していく今は、何人かの友も出来た。
たった4人だが、いい奴らだ。
「卒業式の日は、思いっきり飲もうな!」
と約束した。
 しかし、
ぼんは、卒業式には出られなかった。
その日は、劇団の公演の本番日だったのだ。
「今までだって、ほとんど学校に行ってないんだし、
今さら別に、卒業式なんて。」
という気持ちと、
「ほとんど学校にも行かず、卒業式にも出ず。
僕にとって‘大学’は、まったく無意味な、無価値なものだったのか・・・?」
という一抹の虚しさのような気持ちとで、
ぼんは、その日を終えた。
 卒業式の3日後。
公演も終わり、ぼんは、大学事務局に卒業証書をもらいに行った。
「鬼界です。」
「はい、これね。」
事務のオッサンが、
丸めた証書を入れた筒と、
「卒業生 就職先一覧」と書かれた小冊子をくれた。
中庭のベンチに座って、開いてみた。
商社・官公庁・大手メーカーなどがズラズラ並んでいる。
最後に、
【その他 1名(俳優)。】
と、あった。
ぼんのことだった。
全卒業生700余名のうち、就職しなかったのは‘ぼんだけ’だった。
「さ、行くか。」
ぼんは、声に出して言うと、立ち上がった。
正門を出るとき、校舎を振り返ってみた。
そして、2度と来ることはないであろう一橋大学をあとにした。
さらなる‘演劇の道’をひた走るために。
ぼんの青春は、続く。
             (おわり)


12月22日(日よう日) 日直・鬼界
今日はとても寒い。
いっぱい重ね着して、外へ出ると、
小学生が道端に座ってマンガを読んでいた。
Tシャツに半ズボンだ!!
うっひゃあー!寒くないの?
真夏と同じカッコじゃん。
走り回ってるならまだしも、じぃーっと座ってるだけだぜ。
どういうこと?
子供は暑さ寒さを感じる神経がないのだろうか?
そのくせ、インフルエンザやOー157で死ぬのは、子供と年寄りだ。
どういうこと?
子供は強いの?弱いの?
そんなことを考えると、わたしゃ夜も眠れないんです。(古っ!)


12月21日(土よう日) 日直・鬼界
今年の10大ニュースがあちこちで発表されているが、
僕が2002年で一番ビックリしたのは

‘ボツワナ共和国の平均寿命は、25.4歳’というニュースだ。

25.4歳ですぜ!
25歳の誕生日が過ぎて半年たたないうちに、死ぬんですよ!
これを書いてる僕も、これを読んでるあなたも、既に死んでるのだ。
どうするどうする?
25のときは何してた?
僕は劇団を始めて間もない頃で、
毎夜毎夜、大酒を飲んでは(その頃は飲めたのだ!)
なーんの役にも立たないバカな演劇論議をしていたぞ。
あのまま死ぬってこと?
・・・・・・・たまりません。

今やボツワナは国民の3人に1人がエイズなのだそうだ。
そのため、十数年前に60歳以上だった平均寿命が
40歳も短くなったのだそうだ。

でもね、考えてみるとね、
ボツワナ人は、ものすごーくやりまくってるってことじゃないの?
確かにエイズは母体から子供へうつるし、輸血でもうつるけど、
それだけじゃあ、3人に1人が感染しないでしょ。
ボツワナはアフリカだから、真冬でも男も女もパンツいっちょうだし、
当然、電気も通っていないんで、(たぶん・・)
夜になったら、ついついやっちゃう、てゆうか、やるしかないんだろうけど、
ちょっと考えればわかるじゃん。
「やったら死ぬ」って。
ちっとはガマンしようと思わないかね?あんたたちはケダモノ?
自業自得ってとこ、あんじゃないの?

そんなボツワナに思いをはせる年の瀬です。


12月20日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その34

 卒業論文提出期限まで、残り15日。
ぼんの友人らは、
とっくに書きあげて余裕で遊んでるヤツ、
推敲に余念が無いヤツ、
とにかく、
いつでも提出できる状態のヤツばっか。
「まだ1文字も書いてない」なんつーバカは、
ぼんだけだ。
原稿用紙100枚だよ、100枚。
100枚書かなきゃいけないんだよ、15日で。
単純計算しても、
1日に、○○枚も書かなきゃいけない。
(・・・暗算、苦手。計算して。)
ホント、バッカじゃないの?
(と、実は、私も人のことは言えない。
私、橋本の‘卒論地獄’は後日に。)
しかも、
まだテーマも決まっていなかった。
「卒論さえ提出すれば、ゼミには1回も出席しなくて良い。」
と折敷瀬センセイのお許しが出たゆえ、
お言葉に甘えてゼミに1回も出席しなかったぼんに、
テーマについてセンセイに相談する時間は、
もはや無かった。
ぼんは、
思い切って、センセイの自宅に電話した。
受話器を握って、センセイが電話に出るのを待つぼんの耳に、
子供のギャーギャー騒ぐ声に混じって、
センセイの「こんなメシ時に電話をしてくるヤツは、誰だ。」と、
ブツブツ言う声が聞こえてきた。
「あ、もしもし、センセイ!
僕、センセイの本を買った鬼界です。」
「おっ、なんだ、キミか!
電話なんかして、どうした?」
「卒論のテーマのことなんです。
実は、
“〜私の中国文化・歴史への探求に多大な影響を及ぼした1冊の本〜
【折敷瀬 興(おりしきせ おこる)著 日中辞典】”
を書き始めはしたものの、
センセイの本は深すぎて、僕には無理でした・・・。」
「そうか。
じゃ、中国に関係ないテーマにしても良い。
とにかく、なんか書いて出せば単位をあげよう。ウェイ シェンマ ナー。」
「えっ?!まったく中国に関係ないこと書いても?!」
「チェンマ チェンマ。」
「あぁ、やはり、センセイは僕の水先案内人です。チョーサン ワンチャン チーマーマ。」
(まーた、規則破ちゃったよ、このセンセイ。
こうなると、
「一橋大学の規則」なんて、無いも同然だ。)
ぼんは、
数日前に自分の劇団でやった公演の台本を、
卒論に使うことを思いついた。
座付き作家Y氏(当時25歳)に電話。
「こないだの台本、卒論に使ってイイ?」
Y氏は、快く言ってくれた。
「いいよ。」
台本をところどころ引用し、
そこから鬼界クンなりの演劇論を展開していくのだろう・・・
というY氏の予想、大ハズレ。
鬼界クン、台本を“まんま”提出。
「僕が、書きました。」
って。
ぼんが書いたのは、卒論の‘題名’だけ。
それと、1箇所だけ書き直した。
折敷瀬センセイに喜んでもらう為、
「いろんな英雄達が、力を合わせてピラミッドを建てる」シーンの、
‘ピラミッド’を‘万里の長城’に。
センセイは、
ぼんの卒論を読んで、こう言った。
「キミ、これは、なかなか面白い話じゃないか!」
ぼん、難なく、単位を取得。
・・・大学なんて、こんなもんだ。
(ちなみに、
ぼんの卒論【お芝居における言葉の有効性】は、
一橋大学図書館で閲覧できるそうです。
折敷瀬 興センセイの【日中辞典】は、大きな本屋なら置いてあります。)
 そして、
とうとう、卒業式を迎えることとなった。
         (つづく)


12月19日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その33

 バサ
立ち上がりかけたぼんのヒザの上から落ちたものは、
1冊の本だった。
本は、あたかも、その表紙を見せるように、
センセイとぼんが向かい合っていた机の真横に、落ちた。
「ん?」
と、ソレに目をやったセンセイが、叫んだ。
「あっ!私の本だ!!」 
表紙には、
【日中辞典  折敷瀬 興(おりしきせ おこる)著 定価5800円】
とあった。
「鬼界くん、キミは、私の本を買ったのか?!
これは、まさに意外なことだ・・・。コーテル イーガー。」 
「はい。
毎晩、読んでます。
少しでもセンセイに近づきたくて。
僕の人生の羅針盤です。メンマー リャンガー チーマーマ。」
ヤンボー マーボー 天気予報。
ぼんは、
めでたく単位がもらえた。
「中国にはこんなコトワザがある。
“西から太陽が昇れば、黄河は干上がる”
不正を許せば、
大国でさえも一夜にして滅びるっちゅうことだ。チーポン チーポン。」
と、ぼんを諭した折敷瀬センセイは、
‘赤点’のぼんに、コッソリ‘合格点’をあげてしまったのだ。
単位をもらう為の、
ぼんの“奥の手”は、まんまと成功した。
5800円は、ちょっと痛かったが、
買った甲斐があったというものだ。
噂によると、
センセイの本は、まったく売れず。
一橋大学内で、その本を買ったのは、おそらく、ぼんだけ。
センセイは、ぼんが買ってくれたことが、
よっぽど嬉しかったに違いない。
 
 そんな、折敷瀬センセイとの想い出に浸り、
A定食を食うハシを、しばし休めていたぼんに、
素(す)うどんを食い終わったセンセイが、気がついた。
「あ!キミは、確か、私の本を買ったキミだね?!」
「はい、鬼界です。
センセイの本、大切に大切に読んでます。」
うそ。
1ページも読んでない。
箱から出してもいない。
でも、5800円もしたから捨てるには惜しい。
スピーカーの台にしてある。
「元気でやってるか?」
センセイは、
ぼんの、盛りだくさんの昼メシメニューを見つめながら聞いた。
「・・・・・。
実は、困ってるんです。」
ぼんは、
‘4年生になったので、ゼミに入らなければいけない’こと、
‘ゼミは絶対出席が規則だが、
劇団活動で、折々の欠席はやむを得ない’こと、
‘だとしたら、卒業をあきらめるしかないのか・・・’
と悩んでいることを、
センセイに打ち明けた。
「アーイー アーイー」と中国語でアイヅチをうちながら、
静かに話を聞いてくれたセンセイは、
ぼんに、こう言った。
「じゃ、私のゼミに来るか?
1回も出席しなくて良い。
卒論だけ書いて出せば、単位をあげよう。チャーシー シェンマ。」
「えっ?!まったく出席しなくても?!」
「チェンマ チェンマ。」
「あぁ、やはり、センセイは僕の羅針盤です。ジンテン ハオハオ。」
(なんだよ、なんだよ。
黄河が干上がってもイーのかよ。)
こうして、
ぼんは、またまた折敷瀬センセイの(不正の)おかげで、
首がつながったのであった。
 と、喜んでゼミを欠席しているうちに、
あっという間に9ヶ月が過ぎた。
卒業論文の提出期限まで、残り15日。
ぼんは、まだ1文字も書いていなかった。
          (つづく)


12月18日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その32

 4年生になったら“ゼミ”に入るのが必須だ。
どの教授のゼミでもイイ。
とにかく、ゼミに入りゃOK。
言い換えれば、
ゼミに入らなきゃ、卒業させてくれない。
一人の教授と、数人の学生が、
なんか研究テーマをゴチャゴチャと話し合うのがゼミだが、
学生にとっては、
“就職先への糸口”でもあるので、どのゼミに入るかは考えどころだ。
「そこのゼミに入ってた先輩がイイところに就職し、そこから‘引き’がある」ゼミは、
超人気。
逆に、
学生はたった1人・・・というサミシ〜ゼミもある。
ぼんは、就職のことは考えてなかったので、
とにかく、どの教授のゼミでもよかったのだが、
問題は、
「ゼミは、絶対に欠席してはならない」という規則だ。
1度でも欠席したら、卒業させてくれない。
劇団を創立したてのぼんは、
当時、ガンガン、公演を打っていた。
ゼミは週に1度だが、本番日に当たったら、出席は絶対に不可能だ。
「どうしよう・・・・・」
ぼんは、目の前真っ暗・・・
になりつつ、学食で昼メシを食うことにした。
コロッケ・メンチ・ハンバーグが盛り合わせてある‘A定食’に、
ひじき煮・カボチャ煮・筑前煮、あと、納豆のオプションを付けて。
(付けるなよ、オプションを。
ちっとは途方にくれろよ。)
 ふと、
ぼんは、向かい側に座っている人に目が行った。
その人は、
ぼんが1年の時、担任だった「折敷瀬 興(おりしきせ おこる)」教授だ。
(ヘンな名前。)
折敷瀬センセイは、
素(す)うどんに、納豆をオプションで付けていた。
シケた昼メシだ。
(家でも買うのか?
それとも、子供の教育費か?)
折敷瀬センセイは、「痩せた毛沢東」に似ている。
こう見えて、
センセイは、そのスジでは有名な、中国語研究の権威だ。
長年の中国研究のせいで、
センセイは「年月をかけて中国人化」してしまったのか?
ぼんには、
1年の時センセイに教わった中国語のうち、身についたフレーズが2つある。
「チーマーマ」(ごはん食べさせて、お母さん)
と、
「ジンテン シンテン ハオハオ」(今日も明日もイイ天気)
ちなみに、日常で活用したことは1度もない。
実は、
ぼんは、その、1年の時の‘折敷瀬センセイの中国語’の授業を、
本当ならば、2年生の時も受けなければならないハズだった。
1年の時に単位を取得すれば、
もう2度と中国語の授業など受けなくてもよいハズなのに・・・。
なぜか?
ぼんが、テストで‘赤点’を取ったから。
ふつー、赤点を取ったら単位はもらえない。
単位をもらえなければ、また次の年にソノ授業を受けて、単位を取るしかない。
めんどーだ。
「なんとかならないかしら・・・」
ぼんは、
折敷瀬センセイの部屋へ、お願いに行った。
「養成所に通うため、来年は授業に出られないんです。
なんとか、センセイのおちからで、
僕に単位を・・・!」
ペコペコ頭を下げた。
「キミ。
バカなことを言っちゃイカン。
規則は規則、いかなことがあっても許すことは出来ない。ツェーイーツェーイー。
中国にはこんなコトワザがある。
“西から太陽が昇れば、黄河は干上がる”
不正を許せば、
大国でさえも一夜にして滅びるっちゅうことだ。チーポン チーポン。」
「・・・・・・・・わかりました。」
ぼんは、
ガックリと肩を落とし、
部屋を退出すべく、立ち上がろうとした。
その時、
ぼんのヒザの上から、何かが落ちた。
           (つづく)


12月17日(火よう日) 日直・鬼界
事故を目撃した!

デパートの1階を歩いていると、
両手に食料品をいっぱい持ったオバサンがエスカレーターで地下から上がってきた。
フロアに踏み出す時、オバサンは段差にけつまづいて転んでしまった。
慌てて立ち上がったために、バランスを崩し、
「アレェ〜」という悲鳴とともに、後ろ向きに倒れ、4,5段ころがり落ちた。
この間、わずか3秒。あっという間の出来事だった。
オバサンを助けるために、僕は走り出した。
「エスカレーターの途中で巻き込まれたりしたら大惨事だ。素人の僕には手におえないかも」
そんな心配を抱きながら
エスカレーターを駆け下りようとすると、
「ちょっとぉー、だれかぁー」という叫びとともに
仰向きに倒れたオバサンがエスカレーターで運ばれてきた。
フロアに到着したオバサンに手を伸ばし、僕は難なく助け起こすことができた。

その夕方、僕は駅前の交差点を横断していた。
青信号が点滅し始めると、
自転車に乗ったオバサン(またオバサンだ!)が猛スピードでやって来た。
そこへ3歳くらいの子供がフラフラと飛び出したのだ。
子供は自転車の側面にまともに突っ込んだ。
「パキッ!」
ペットボトルを踏み潰すような音がして、子供はその場にうずくまった。
泣きもしない、声もあげない。
顔面をおさえ、固まったようにうずくまった。
「だいじょうぶ?だいじょうぶ?だいじょうぶ?」とパニックに陥るオバサン。
すぐに母親が駆け寄り、子供を抱き上げた。が、
子供は顔面をおさえたまま、動きもしない、うめき声もあげない。
これはかなりマズイ・・・
すると、

時間がなくてここまでしか目撃できませんでした。
気になるなぁ。
師走は、なんだかしんないけど意味もなくバタバタしてます。
どうぞご注意ください。


12月16日(月よう日) 日直・鬼界
 〜ムカつくぜっ!
歩いていたら、突然、熱いものが手をかすめた。
タバコの火だ!
歩きタバコの火だ!!
ホントにホントにホントにムカつくぜっ、歩きタバコ!
おまえらはバカか、ボケか、ウンコたれか!
喫煙場所で吸うとか、人の来ない歩道の隅で吸うとか、
ちっとは考えろよ!
人ごみの中で歩きタバコしていいわけねえだろうが!!
おまえらでも脳はあんだろ?頭に詰まってんのは、ウンコなのか?
歩きタバコの火は危ないし、煙はけむいし、灰が飛んでくるし、
すっげえ迷惑してんだよ。
最低限のマナーだろ!
そんなに歩きタバコしたきゃ、ゴビ砂漠にでも行きやがれ!
死ぬほど歩きタバコしても、誰も迷惑しないから。
そして、そのまま死んでしまえ!

マジな話です、
歩きタバコしてるあなた、ちょっと周りを見てください。
ムカついた顔をして、あなたを睨みつけてる人がいっぱいいますから。


12月15日(日よう日) 日直・鬼界
今日もネコのお話。

成城のお屋敷街を歩いていると、
駐車場の片隅でネコがなにかを一生懸命なめていた。
見ると、生まれて間もない子ネコだ。
あまりに可愛いので、思わず一歩近づくと、
母ネコが鬼みたいな顔になって「シャァーッ」と僕を威嚇する。
これぞ母の愛!
畜生でも子を思う気持ちに変わりはないのだ。
我が子を虐待する人間の母親に見せてやりたい。

どうしても子ネコを見たかったので、
「僕はね、悪い人じゃないんだよ。大丈夫。ちょっと子ネコを見たいだけなのよ。いいよね?」
と、優しくささやきながら、もう一歩踏み出した。
その途端、
母ネコは子ネコを置き去りにして、逃げてしまった。
なんだよ!やっぱ畜生は畜生だ!!
あとに残された子ネコは、つぶらな瞳で僕を見上げている。
疑うことをまだ知らないんだなあ。

子ネコの頭をなでてやり、その場を離れると、
母ネコが舞い戻り、子ネコを再びなめ始めた。
もう手遅れだと思うよ。
子ネコに芽生えた母への不信は生涯、消えないと思う。


12月14日(土よう日) 日直・鬼界
ニャアぁぁ〜にゃーミャア〜ニャアァー
と、どこからともなく聞こえてくる(縦書きにしたら、感じ伝わる?)ネコの鳴き声で起こされた。
時計を見ると午前3時。
それから夜が明けるまでずっと、色っぽい声でミャアミャア鳴きっぱなし。
一睡もさせてもらえなかった。
ったく、こんな季節にサカリやがって!
が、考えてみると、
春と秋の発情期に関係なく、年間通して、いつでも、好きなときに
快楽のためだけに、交尾ができる、人間並みに進化したネコかもしれない。
それはスゴイぞ。
ネコは学校にも会社にも行かなくていいし、
見られたら恥ずかしいなんてことも思わないから、
朝から晩まで、あらゆる場所で、やりっぱなしのやりまくり。
楽しいだろうなあ、きっもちいいだろうなあ、人生バラ色だなあ。ネコになりたいっ!
が、考えてみると、
今のところ、進化したネコは昨夜鳴いてた一匹だけだ。
この寒空に「やろうよぉ、やろうよぉ」と一生懸命鳴いてみても、
誰からも相手にされないんだ。
春までできないんだ!
地獄だろうなあ、気が狂うだろうなあ、人生真っ暗だなあ。ネコじゃなくてよかった・・・。


12月13日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その31

 映画『PSYCHO(サイコ)』を『プサイコ』と自信満々で読んだBクンは、
28歳、独身。
コイツは、バカなくせに、司法試験を5回も受けていた。
弁護士志望。
「今年は、6回目に挑戦するんだぁ」
と喜々として、ぼんに言った。
試験に5回も失敗しながら、
毎日、元気に‘本の仕分け作業’に励んでいる。
「予備校とかに通って、勉強に身を入れたほうがいいんじゃないですか?」
と、ぼんが言うと、
「俺は、独学で受かってみせるぜ。
それに、
こうやって‘社会で働いた経験’が、弁護士になってから役に立つんだ。」
と、もっともらしいことを言いつつ、
いつもバイトに持ってきている参考書を、ぼんに見せ、
「鬼界くん、鬼界くん、これ、なんて読むの?
どういう意味?
“犯人蔵匿罪、証憑湮滅罪、偽証罪、贓物に関する罪とその本犯の罪が
事物管轄を異にする数個の関連事件の上級裁判所係属となる場合”」
ふつー、
司法試験5回も受けたヤツが、シロウトに聞くか?
なにがどう‘脳’に作用して、こんなバカが「俺、弁護士になろう!」と、なったのか?
まかりまちがって、
Bクンが司法試験に受かって弁護士になったとする。
私が、まったく身に覚えのない“殺人の罪”で裁判にかけられるとする。
で、私の弁護人として、このBクンがあてがわれたとしたら・・・
あたしは、確実に“死刑”だね。
自分で弁護したほうが、まだマシな結果になるね、きっと。
Bクンは、
いつの間にか、社員である事務員のY子とデキた。
ぼんやAクンと同じように、
3階の作業場にこもりっきりだったBクン。
いつ、社員のY子と話す機会があったのか?
どうやら、社員の働く2階のトイレで出会い、
その後もトイレで、ちょこちょこ逢い引きしてたらしい。
Y子は婚約者が居て、結婚目前だったが、
Bクンとのことがバレて、破談。
「アルバイトの青年をそそのかした」罪で、会社もクビ。
新潟の実家に連れ戻されてしまった。
Bクンの「俺、将来は弁護士。」という言葉に、
目がくらんだのか?
でも、Y子さん、あなた良かったよ、新潟に帰って。
今から7年ほど前。
ばったりBクンに会ったぼんは、近況を聞いた。
Bクンは、
「‘本の仕分け’のバイトを続けている。」と言っていた。
司法試験は、「受けたり受けなかったり。」
(なんだ、そりゃ?‘趣味’でやってんのか?)
しかし、その会社も、「倒産寸前なんだ。」と。
原因の1つとして、
バカ部長の“先物買い”で、大損こいた。
シャロン・ストーンの映画『ガラスの塔』のノベライゼーションを、
「これは売れるぞ!」と見込んで、大量に輸入。
結果、
まったく売れず。
シャロンの1本目の映画『氷の微笑』がヒットしたもんだから、
「2本目もヒットするぞ、きっと!」と思っちゃったんだね。
部長は、まったく映画を知らないくせに、
妙に‘ノベライゼーション(映画を小説化したもの)’に関心を持つ。
ダスティン・ホフマンの映画『靴をはいた天使』のノベライゼーションも、
クサルほど輸入し、
1冊も売れず仕舞い。
シャロンとホフマン、合わせて500冊の本は、ホっコリだらけで棚に積んである。
「部長が、‘倒産したら、皆、何冊づつか持って帰ってくれ’ってさ。」
そう笑ったBくんは、
それでもナントカ持ちこたえた会社で、
それから7年後の今も、‘本の仕分け’のバイトをしている。

いよいよ、ぼんも‘大学卒業’です。
ということで、
この『ぼんの青春』の連載も終わりに近づきました。
エピソードに関するご感想など、お寄せ頂けると嬉しいです。
           (つづく)


12月12日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その30

この“本の仕分け作業”のバイトは、
ぼんにしては珍しく、
っていうか、初めて、長く続いた。
公演前、
「稽古で忙しいので、バイトをしばらく休みたい。」
と申し出ると、
「いいよ、いいよ。」
と好きなだけ休ませてくれるのが、何より有り難かった。
バイト仲間のAクンBクンの“普通じゃない”ところも、
ぼんの波長と合ったのかもしれない。
 映画『PSYCHO(サイコ)』を『プシチョー』と、何の疑いもなく読んだAクンは、
37歳、独身だった。
当時ぼんは22歳だったから、15も上だ。
しかし、
英語を話せるぼんを尊敬したのか、Aクンは、
28歳のBクンのことは「B。」と呼び捨てるのに、
ぼんのことは「鬼界さん。」と呼んだ。
ぼんが「Aさん」と呼ぶと、
「鬼界さんに“さん付け”されると、困るなぁ・・・」
と、本気で困っているので、「Aクン」と呼ぶことにしたのだ。
Aクンは、エラク無口で、
ぼんやBクンとは、ほとんど会話しない。
春夏秋冬、いつでも「サングラス・マスク・白の軍手」をしていた。
15分に1回くらいの頻度で、
マスクをはずし、中のガーゼを確認する。
鼻汁でも付いているのか?
そして、
やはり15分に1回の頻度で、軍手をパンパンしてホコリをはたく。
手を洗う時も、異常なほどゴシゴシこする。
“潔癖症”か?
が、その割には、
スゴイ汚い格好をしていた。
マスクも薄汚れて、ゴムひも、真っ黒け。
軍手も、なんのシミなのか、黄ばんでいる。
白っちゃけたような水色(買った時はおそらく青色)のトレーナー&ジーパン、
このコーディネートも、春夏秋冬、毎日、着たっきり。
近寄ると、臭い。
薄気味悪いが、
ぼんの指図を素直に聞く、おとなしいヤツだった。
 ある寒い冬の日、
ぼんとAクンBくんは、
いつものビルの3階の作業場ではなく、
外の、ほったて小屋のような倉庫の整理をさせられることになった。
会社からホカロンが1人3個ずつ支給されたが、
ぼんとBクンは、寒さに備え、家から防寒対策をバッチリして来た。
が、
Aクンは、いつもの格好。
トレーナーとジーパン。
上に羽織るものは持っていない。
寒風吹きすさぶ中、Aクンは、その薄着のまま作業を続けた。
3時間後、耐え切れなくなったのか、
Aクンは、ゴミ袋を着出した。
ゴミ袋(当時は‘黒の’)の底辺に、
両手と頭を出すための3つの穴(角と角と真ん中)をあけた、
ポンチョ型の上着。
もう1枚は、両足を出すための2つの穴をあけ、ズボンのようにはく。
そして、
荷造りヒモで縛る。
異様な格好のAクンが、一体、何の作業をしているのか、
道行く人々にとって、まったく不明。
通報されたらしく、交番のオマワリさんも様子を見に来たりした。
 Aクンは、翌日からバイトに来なくなった。
風邪をこじらせ、肺炎になり、入院したそうだ。
その後どうなったか、ぼんは知らない。
風の噂で、
「故郷の鳥取に帰った。」
「病気で死んだ。」
「オホーツク海でカニを捕ってる。」
などと耳にしたが。
15も年下のぼんを「鬼界さん」と呼び、「Aクン」と呼ばせていたAクン。
ぼんは、寒い時期になると、
Aクンを思い出す。
                (つづく)


12月11日(水よう日) 日直・鬼界
 〜ムカつくぜっ!
クリスマスグッズを買いに行った。
リース売り場には2人の先客がいて、その横に僕が加わった。
つまり、リースの前に3人が横に並び、あれこれ選んでいたわけだ。
すると、女が僕の隣にやって来て、リースを選び始めた。
なにを確認しているのか、リースを、乱暴にやたら引っ張ったり、振ったりしている。
「壊れちまうよ、このバカ」と思ってたら、
その女は突然、僕とリースの間に体を割り込ませ、
先客2人の向こうにあるリースをとろうとした。「すいません」の一言もなく。
なにしてんだよ、このバカ!邪魔だよ!
足があるんだろ?オレたちの後ろをまわって向こう側へ歩けよ。
かなりムカついたが、
「聖なるグッズを買うときに怒っちゃダメだっ」と自分に言い聞かせ、
カード売り場へ行った。
カードを物色していると、僕の後ろから強引に手が伸びてきてカードを無理矢理つかもうとする。
振り向くと、さっきの女だ。
‘待つ’とか‘譲る’って言葉を知らないのか?
またまた「怒っちゃダメっ」と自分に言い聞かせ移動すると、
今度は横から無理に手が伸びてくる。見ると、やっぱり、あの女。
なんだよ、おまえ、ストーカーか?
迷惑防止条例で死刑にしてやろうか?
さすがの僕もガマンできない。
女のあとをくっついてって、タイミングを見計らい、人に押されたふりをして、
女のケツにひざ蹴りしてやった。ざまあみろだ!オレはこういうの得意なんだよ!
と、本来の僕なら、こうするはずですが、
「クリスマスなんだから」と自分を抑え、ひざ蹴りせずに帰ったのです。
なんてエライんだろう!
いいことしたなあ。サンタも僕をほめるに違いない。


12月10日(火よう日) 日直・鬼界
“女性は十代のときに下半身を冷やすと、将来必ず悪影響が出る”
のだそうだ。
妊娠に恐ろしい問題が発生したり、更年期に恐ろしいことになるらしい。
昨日といい、今日といい、この寒いのに
女子高生は足を丸出しにしている。下半身を冷蔵庫に突っ込んでるようなもんだ。
あーあ、日本はやがて滅びるね。楽しみだよ。

今日はそんなことを書こうとしたんじゃないんです。
ちょっと疑問があるんです。

僕は缶コーヒーとかでやってる、グッズプレゼントに応募するのが好きです。
最近、「印刷されてるバーコードを切り取り、応募ください」
というのが多いんだけど、
コンビニのレジみたいに、ピッピッってやって、いちいちチェックしてるのだろうか?
何百万通もハガキがくるのに、いちいちやる?
バイトのおねえさんを雇って、朝から晩までピッピッってやらせるの?
やりがいのまったくない、気の狂うような仕事ですよ。
やってんのかなあ?
やってないのなら、そっくりなバーコードを貼っちゃえばいいってこと?
それと
「応募はハガキのほかにインターネットでも受付中!」
のあとに、おまけみたいに「FAXでも可」って書いてあるんだけど、
FAXってどうなんだろう?
「おいおい、本当にFAXなんかで送ってきやがったぜ。今どきいるんだね、こんなヤツ。」
などと、係の人にバカにされそうじゃない?
そして、ハガキ・ネット・FAXの振り分けはどうなってんだろう?
たとえば、1000名に当たるのなら、
ハガキ応募者から600名、ネットから398名、FAXから2名選ぶというふうに
配分されてるのだろうか?
そしたら、どんなにバカにされようとも、応募者が少ないってことでFAX応募は得なの?
それとも、FAXは応募者が少ないだろうと考える屈折した人が意外に多くて、かえって損なの?

とても気になってるんです。


12月9日(月よう日) 日直・鬼界
なんてこった、大雪だあ!
6チャンも8チャンも10チャンも、昨日の夕方のニュースの天気予報では、
「もしかしたら東京でも雪が降るかもしれません」とか
「まっ、降ったとしても、うっすら白くなる程度でしょう」とか
「こんな時期に大雪なんか降るわけありません。
もし降ったら、明日はパンツいっちょうで天気予報をお伝えします」とか
言ってたんですよぉ。
ホントに天気予報って当たらない!

大雪で思い出すのは、
十数年前の大雪の日、ある小劇団のお芝居を見に行ったことです。
道路は大渋滞、電車もマヒ状態で、
さんざん苦労して、ようやく開演5分前に劇場に到着してみると、
受付けの人がとても慌ててるんです。
「い、い、い、い、いらっしゃいませ。おひ、おひ、おひとりさまですか?」
ヘンだなと思いながら、客席に入ってみると
客は僕だけ!
そして、受付けの人が楽屋へ走っていく音がして、
「お客様がいらっしゃいましたぁーっっ!!」と叫んだかと思うと、
楽屋から歓声と拍手。
これはマズイと思いました。
もしこのまま、お客が僕だけだったら、僕のためだけにお芝居をするってこと?
すべてのセリフは僕のため?
すべてのギャグは僕のため?どんなにつまらなくても、笑わなくちゃなんないの?
あくびなんかしたら、あとで仕返しされるかもしれない。
だって、出演者は全員、僕の顔を覚えるだろうから。
これはマズイ。ほんとにマズイ。とにかくマズイ。
と苦悩してたら、
お客さんが3人やって来て、僕は最悪の状況を脱することができたんです。
しかし、
出演者は9人、お客は4人。
あれほど気をつかってお芝居を見たのは、このときだけです。


12月8日(日よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その29

 伝票を見ながら、
2冊め以降のタイトルを、試しにAクンBクンに読ませてみた。
タイトル名“XAVIER”。
Aクン「・・・・・“クサバー”?」
Bクン「ちがうよ。
    “サイコ”みたいに、最初の文字‘X’は発音しないんだよ。な?
    とすると・・・“アバー”。な?」
ぼん「・・・・。
   “ザビエル”と読むの、これは。」
AクンBクン「へぇ〜〜!」
次。
タイトル名“YACHT!”。
Aクン「“ヤチト”。」
Bクン「だから、最初の文字は読まねぇんだっつーの。
    “アチッ!”だよ、“アチッ!”。な?」
ぼん「いや。“ヨット”。」
AクンBクン「へぇ〜〜!」
 この2人に“タイトル読みあげ係”をやらせていては、
探せる本も探せなくなるので、
今度は、ぼんが“読みあげ係”になることにした。
ぼん「“ジーザス・クライスト・スーパースター”。」
数分後。
AクンBクン「ねーよぉ?!」
「ない?そんなはずはないよねぇ・・・」と、ぼんも探すのに加わった。
あった。
“JESUS CHRIST SUPERSTAR”とタイトルが書かれた本が・・・。
「あっ!」
ぼんは、重大なことに気がついた。
「AクンBクンには、これが読めないんだ!」
そう。
“読みあげ係”になろうが“本を探す係”になろうが、
AクンBクンには、
どうあっても“ジーザス・クライスト・スーパースター”とは読めないのだ。
仕方ない。
AクンBクン式に読みあげるしかない。
ぼん「あと2冊あるはずなので、探して下さーい。
   “ジェスス・チュリスト・スペルスタ”。」
AクンBクン「あった、あった♪」
ぼん「次。
   “ゴー”。」
AクンBクン「あった、あった♪」
ゴー。
郷ひろみの本ではない。
正しくは、“ゴッホ”なのだ、“GOGH”と書いて。
         (つづく) 


12月7日(土よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その28

 卒業論文のテーマも、無事「僕は、スイカ頭」に決定し(ウソ)、
ぼんはバイトを再開。
(この時、既に、
ぼんは、養成所の生徒ではなく、某若手劇団の創立メンバーとして、
バリバリ舞台に立っていた、ちっこい劇場の。
なので、
なにしろ金が要るのだ。)
海外(おもにイギリス・アメリカ)から本を輸入し、
「大きな本屋に卸す」、
「大学などに語学のテキスト用として販売する」、
そういう会社でのバイト。
アルバイトニュースに載ってた
「キレイな職場で、簡単な作業。
持ってけ、ドロボウ!時給は1000円!」
の言葉どおりの、ラクチンな仕事だった。
線路沿いだが、
駅からやたら遠い場所に、一応‘自社ビル’があった。
その最上階である3階が、ぼん達アルバイトの作業場。
ぼんを含め男3人のアルバイトだけが、
その20畳ほどの作業場で、
本の仕分け作業をする。
社員は、絶対、3階には上がって来ない。
なので、
やりたい放題。
30分ほど作業をしては、屋上でひなたぼっこをして居眠りしたり。
仕分け作業は、スグ終わっちゃうので、
のんびりゆっくりやらないと、やることがなくなっちゃうのだ。
“仕分け作業”とは、
どんな作業かというと・・・
  輸入されて来た大量の原書。
  同じ本を何冊かづつ輸入するのだが、
  同じ箱に入っているとは限らない。
  80箱ほどのミカン箱に、
  どれもこれも、バラバラにランダムに入っている。
  それを全部箱から出し、同じ本ごとにまとめ、
  かつ、
  伝票の冊数どおりに本があるか、チェックする。
という作業。
アルバイトは3人なので、
1人が「本のタイトルを次々と読みあげ」、
あとの2人が「それと同じ本を、たくさんの本の中から探し出していく」
という方式をとることにした。
な〜るほど、簡単ラクチン・・・
ではあるが、
“原書”というのが、たまにキズ。
当然のことながら、タイトルが“英語”。
最初に“タイトル読みあげ係”になったAクン、
このバカ男のせいで、
1冊めでエラク時間がかかってしまった。
Aクン「じゃ、1冊めのタイトルを読みまーす。
    えーと・・・・・・“プシチョー”。」
Aクンの読みあげた“プシチョー”なるタイトルの本は、
ぼんとBクンが、いくら探しても見つからない。
5冊あるはずなのに。
Bクン「タイトル、間違ってんじゃねーの?
    ちょっと伝票見せてみ。
    なんだよ、やっぱ間違ってんじゃんかよ!
    “プサイコ”だよ、“プサイコ”!」
ぼんは「げっ!もしかして!」と気がついた。
2人の所へ行き、伝票を見た。
タイトル名“PSYCHO”。
やっぱりだ。
ぼん「“サイコ”だよ、これ。
   映画『サイコ』のノベライゼーションだ、これ。」
AクンBクン「えっ?これで“サイコ”って読むの?」
ぼん「“Psychology”は、“サイコロジー”って読むでしょ?」
AクンBクン「へぇ〜!初耳!」
・・・こいつら中学生以下だ。
          (つづく)


12月6日(金よう日) 日直・鬼界
新聞にこんな記事があった。

ハンバーガーとフレンチフライの食べすぎで肥満になったのは、
大手ハンバーガー・チェーンの責任だと、
ニューヨークに住む少女が米連邦地裁に訴えを起こした。
「高カロリー食品への注意を呼びかけた会社側の警告が目立たなかった」
ために、身長146センチの少女は77キロにまで太ってしまった。
少女の肥満の原因は会社側にあるというのである。

すごいよ、アメリカ人。言ったモン勝ち?
少女が裁判に勝ちそうだというから、さらにすごい!
ハンバーガー屋は、どうすればいいのだろう?

「ご注文を繰り返します。ハンバーガーとフレンチフライですね?
これをお召し上がりになると、すっげえデブになりますが、よろしいですか?」
と確認すればいいのだろうか。
そして、作り置きがなくてお客様を待たせたときは
「番号札14番でハンバーガーをお待ちのお客様ぁ〜。
太るハンバーガーをご注文のお客様ぁ〜。ハンバーガーを食べて肥満したいお客様ぁ〜。」
と店内中に触れ歩かなければならないのだろうか。

やっぱ、アメリカ人はバカだ。


12月5日(木よう日) 日直・鬼界
 〜ムカつくぜっ!
電車を降り、自動改札を出ようとしたとき、
僕の前を歩いていたオバサンふたり連れが突然、立ち止まった。
僕はよける暇もなく、オバサンの背中に激突。
さらに、後ろからきたサラリーマンが僕に激突。玉突き人身事故だ。
すると、オバサンは
「あーら、ごめんなさい。ここで止まると邪魔ね。」
「ホントホント、邪魔よ邪魔よ。」と笑いながら、移動した。
が、3歩ばかり進んで、また立ち止まった。
「待ち合わせは改札の前でしょ?」
「そうなの。でも、この人ごみよ。わかるかしら?」
「ホント、都会は人が多すぎて困るわ」

困るのは、オメエらだよっ!

コンコースのド真ん中に立ちはだかって、
自分達がどれだけ邪魔なのか、ぜんっぜんっわかってない。

道でも、商店街でも、
ものすごく邪魔な位置につっ立って世間話をしているのは必ずオバサンだ。
ある年齢になると、周囲を見る能力がなくなってしまうのか?
それとも、
ある年齢になると、自分達の話に夢中になりすぎるくらい集中力が養われるのか?
どちらにしろ、すっげえムカつく。
え?ってことは小倉優子も仲根かすみも市川由衣もそんな風になっちゃうの?
なんか、すっごく悲しい・・・。


12月4日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その27

 ぼんも、早、大学の4年生。
就職は目前に迫った。
友人のほとんどは、既に、会社から“内定”をもらっている。
例の「北欧ブルーフィルム」仲間の、
横田クンは三井物産。
佐々木クンは三菱商事。
梶本クンは住友銀行。
すげー、超一流ばっか。
「ぼんと一緒になってポルノ狂い」と思いきや、
やることは、やる。
3年生の時からの「汗と涙の就職活動」のタマモノだ。
そういえば・・・
3年生の夏、
横田クンの下宿に遊びに行った折、
各社から郵送された‘会社案内’が大量に積まれているのを、ぼんは見た。
ざっと500冊ほど。
「これって、会社案内?」
「うん。鬼界んとこにも来るだろ。」
「ううん、1冊も来ない。
‘送ってください’って、電話とかすんの?」
「いや、連絡なんかしなくても、
ドンドン送られて来るんだよ。」
「・・・へぇ・・・。」
ぼんは、就職を考えていたわけではなかったが、
会社案内が1冊も送られてこないことに一抹の寂しさを感じた。
「なぜ、僕にだけ送られてこないのかしら?」 
わからない。
考えられる理由は、
“「演劇活動をしてるから、コイツはダメだ。」と、はぶかれた”。
きっと、そうだ。
「興信所が、一人一人のあとをツケて調べてるんだ!」
そう思い、ぼんは、あきらめた。
 “内定”をもらった友人達は、
次なる課題「卒業論文のテーマは何にするか」を、模索していた。
これには、ぼんも真剣だ。
出来の悪い卒論だと、「卒業不可」も有り得るのだ。
どうやら梶本クンは、決めているらしい。
聞いてみた。
「マルクス主義とアダム・スミスの相克  〜資本家と人民の歴史〜」。
(・・・なんじゃ、そりゃ?
マルクスさんが、
「お金に執着せず、皆で平等に仲良く暮らしましょう」
と言ってるのに、
アダムが、
「バカ言ってんじゃねーよ。
金はバカスカもうけようぜ!
もうけたヤツは金持ちだ。もうけられないヤツは貧乏人だ。それのどこが悪いんだ?
俺ァ、学者だ!グダグダ批評してりゃ、もうかるんだ!ザマーミロ。」
と反論し、ケンカする・・・っちゅーよーな内容ですね?簡単に言うと。
この内容を、
伸ばしに伸ばして原稿用紙100枚にはしなきゃならないんだから、大変だにゃ〜。)
横田クンのテーマは、
「〜ホッピーからチューハイへ〜 居酒屋にみる日本経済の変遷」。
オイオイ、キミも。
100枚書けんのかよ〜?
ぼんも仮テーマを決めた。
「寛政時代の歌舞伎におけるシェイクスピア悲劇との類似点 
〜言語のユートピアに関する諧謔的考察〜」。
って、
意味、わかんねーよ!
          (つづく) 


12月3日(火よう日) 日直・橋本
〜これって、“プチ祟り”?! 

 一昨日、つまり12月1日のことです。
「出かける前に、1本ビデオを観よう」と早起きした私。
なんのビデオかというと、
『風と共に去りぬ』。
中学生の時観て以来。
「また観てみようかな」と、なんとなく思い、レンタルしたものだ。
前日に、2巻組みの1巻目(前編)を観ていたので、
「間をあけずに2巻目(後編)を観てしまおう」ということで、
朝食もそこそこに、
朝っぱらからビデオ鑑賞となったのだ。
いざ、観ようと思ったら、
ビデオが巻き戻ってなかった。
私の前に借りた人が観たまんま。
「巻き戻しは無用!こちらでやります。」を謳ってるビデオ屋のくせに、
巻き戻してないじゃんかよ!
なんだよ、なんだよ、ちゃんとしろよ!
ブツブツ言いながら、倍速で巻き戻し開始。
10秒後に、突然、
バシャッとビデオデッキの電源が切れた。
と同時に、当然のことながら、
ガタタッと不吉な音と共に、テープの巻き戻しも中断。
なんだ?なんだ?!
古いテープを倍速で巻き戻したので、テープがからんだか?!
何度ボタンを押しても、電源は入らない。
ウンともスンとも言わなくなっちゃった。
コンセントやらコードやらの接続をチェックし直すも、
やはり無反応。
電源が入らなきゃ、テープが出ないよ〜。
出ないと返せないよ〜。
マズイよ〜。
神様に祈った。
「お願いします、もう、一生『風と共に去りぬ』の後編、観られなくてもイイです。
いえ、観ません。
なので、どうか、このテープを無事に出してくださぁ〜い!」
床にひれ伏して、祈った。

祈りは、まだ通じてないようだ・・・。
テープは、にっちもさっちも行かない状態で、入ったままだ。
ヤバイ。
返却期限は、明日の12月4日だ。
今日中に何とかなるのか?!
11月30日の日誌の最後に、
「Hさんを襲ったものは、・・・」
って書いたことへの“プチ祟り”なのか、これは?!


12月2日(月よう日) 日直・鬼界
アイスホッケーを見に行った。
僕の前列の席にお母さんに連れられた子供が2人座っていて、
製氷している整備員さんを指差しては
「ねーねー、あの人、スケート上手だねー」と叫んだり、
「ママー、ホカロンもう1個ちょーだーい」と叫んだり、
「早く始まんないかなー」と叫んだり、
とにかく試合開始前から叫びっぱなしで大はしゃぎだ。
そして、いよいよ試合開始!
が、子供たちが試合を見ていたのは、わずか2分ほどだった。
あっという間に飽きてしまったのだ。

ま、仕方ないんですけどね、
とにかく試合展開が速くて(サッカーの50倍くらい)
大人の僕でさえ、パックが今どこにあるかわかんないんですもの、
子供が見るスポーツじゃないっす。

飽きてしまった子供たちは
じっとしていられない。
「ケンちゃん、ダメ!じっとしてなさい」
「ほら、コーちゃん、イスに乗っちゃいけません」
と母親にしかられても、全然へっちゃらだ。
そして、場内音楽で『スモーク・オン・ザ・ウォーター』が流れると
それに合わせて、「キャッ、キャッ、キャァ〜〜」と奇声をあげ始めた。
焼き芋屋が来たときに遠吠えする犬と同じだ。

しばらくすると、二人はにらめっこを始めた。
「にらめっこ、しましょ、ブッブッブッ」
‘アップップッ’じゃなかったっけ?ま、いいか。
二人は一生懸命、おかしな顔をする
てゆうか、しているつもりだが、全然フツーのまんまだ。
これじゃどちらも笑わない。
すると、ケンちゃんが白目をむいた。
その瞬間、コーちゃん、大爆笑。
ケンちゃんは笑わすコツをつかんだのだ。
何度やっても、ケンちゃんが白目をむくたびにコーちゃんは爆発的に笑う。
まるで、パブロフの犬だ。

やがて、二人の遊びは‘怪獣の名前しりとり’になった。
「ゴジラ」
「ラドン」
「‘ん’って言ったあ、コーちゃんの負けぇ!じゃあ、次はコーちゃんから。」
「キングギドラ」
「ラドン」
「‘ん’って言ったあ、ケンちゃんの負けぇ!」
僕は絶句した。犬以下だ・・・。

すると、“ピピーッ”とホイッスルが鳴った。
げ、試合終了?
僕は試合を見ないで、子供ばかり見ていた・・・。


12月1日(日よう日) 日直・鬼界
  〜ムカつくぜっ! だそうです。〜
おとといの日誌に書いたピザを食べながら聞いた話。

その友達が最近、ムカついているのは、
日曜日の朝にやって来る、物売りや廃品回収の車だそうだ。
毎週毎週なんと朝8時からガンガン回ってきて、
スピーカーから垂れ流される大音量でたたき起こされる。

「それは、確かに、ムカつくぜ」と僕が言うと
「だろ?だから、実力行使してやったんだ」
「え!『うっせえんだよっ!』って怒鳴りつけたとか?」
「いやいや、廃品回収代をまけさせたんだ」
「・・・・・」

これを実力行使というかどうかわからないが、
とにかく、友達は古自転車の回収代1000円を500円にまけさせて、
勝ち誇った気になったそうだ。

すると、次の日、警察から電話がかかってきた。
「おたくの自転車が歩道橋の下に放置されていたので、盗難かと思いお電話しました。」
廃品回収業者は、友達の自転車を道端に捨てていたのだ!

「なるほど、廃品回収に出されたんですか・・・おかしいとは思ったんですよ。
8台もの自転車が一度に放置されてるんですから。」
廃品回収業者は、回収した自転車を全部、捨てていたのだ!

「では、ともかく、自転車を引き取りに来て下さい」

言うまでもなく、友達のムカつきはピークに達した。
500円、丸損だあ!!


11月30日(土よう日) 日直・橋本
  一昨日の日誌について、
「北陸のホテルで、真夜中、俳優Hさんに何が起こったのか?!
‘顔中、傷だらけ’の真相は?!
続きを知りたーい!」
このようなご要望を、掲示板やメールでいくつか頂きました。

「怖くて、書けにゃい。
怖ひ!マジ、怖ひ〜!
ヤバイので書くのやめみゃす。」

一昨日の日誌の最後に、こう書いた‘私の真意’は、
“Hさんの身に起こった恐怖の出来事を描写する”のが「怖い」
のは、もちろんですが、
それ以上に、
“書いたことによってふりかかる災い、すなわち祟り(たたり)”が「怖い」
ので、書けなかったのであります。
書いたら「ヤバイ」ことが起こりそうで・・・。
私が、こう思うのには理由があるんです。

ぼん達は、
北陸での旅公演を終え、東京に戻った。
いつもどおりの養成所の授業が再開。
授業の後、
これまたいつもどおり、先生に引き連れられて飲みに。
そこで先生は、生徒達に、
‘あのホテルでの恐怖の一夜’を語って聞かせた。
もちろん、‘Hさんの体験’も。
詳細に。
生徒達の多くは旅公演に同行しなかったが、
皆、‘Hさんの、異常に強い霊感’を知っていたので、
いやでも、先生の話を信じないわけにはいかなかった。
次の日。
先生に異変が生じた。
ツエをつき、左脚を大きく引きずっている。
「昨日の飲み会の帰り、自転車で転倒した。
今まで、どんなに酔っても、そんな失態は無かったのに。
しかも、
昨夜は、すりむいた程度に思われた脚の傷が、
今朝起きたら、切ったようにパックリと割れ、
左脚全体がパンパンに膨らんで、
歩けない状態になっていた。」
「これは、“祟り”か・・・?」ということになり、
この話は、以後、封印したそうだ。
今回、
「さすがに、もう時効だろう。」と鬼界さんは、取材で話してくれたわけなのだが、
実は、
【旅公演 北陸の巻】の取材の翌日、
鬼界さんは、ベットと床の間に足を挟まれ、グギッたらしい。
直後は、歩けないほど痛かったらしい。
「あれから月日も経ってるし、“大たたり”はかわいそうか?」ということで、
“プチたたり”?
プチでも、怖ひ〜!
と、こーゆーわけなんです。
私はといえば、
取材の翌日から、
夜寝る時、部屋の電気つけっぱなし。
クローゼットの扉、開けっぱなし。
夜中、おトイレ行ったら、戸あけっぱなし。
おトイレ出る時、戸が開かなくなりそうで・・・。
スッゴイ怖がりなんですわ〜、私〜(泣)。

皆さんの‘ご想像力’にお任せします。
Hさんを襲ったものは、人間ではありません。


11月29日(金よう日) 日直・鬼界
友達んちで宅配のピザを頼むことになった。
「ピザを頼むのはいいんだけど、
住所を、絶対、聞き間違えるジジイが電話に出るから注意しろよ」と言われた。
自慢じゃないが、
僕は鬼界と名乗っても、「北井さん?」「近井さん?」と聞き間違われる、
聞き間違われのプロなのだ。
少々の聞き間違われにはビクともしない。
自信満々で電話した。

「まいどありがとうございます、ドミノピザです。ご住所とお名前をどうぞ。」
住所は、大田区、おおもり、みなみ
これでもかと、ハッキリクッキリしゃべってやった。すると、
はいはい、おおもり、きた
とハッキリクッキリ聞き間違われた。
なんで?どういう耳してんの?
「南」って言ってんのに、なぜ「北」になる?
1文字もかぶってないし、だいたい、リズムが違うじゃん。
「南」は‘タタタ’で、「北」は‘タタッ’でしょ。フツーは絶対間違えないぞ。
恐るべし、ドミノピザ!ツンボが電話番!
他に人はいないのか!
そもそも、ピザ屋の電話に相当高齢のジジイが出るのはどうなんだろう・・・?印象ワルッ。

その後、番地の‘3−10−21’をジジイにわからせるのに、
大変な苦労をしたのは言うまでもない。


11月28日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その26

【旅公演 北陸の巻】
 「絶対、このホテル、まずいよ・・・」
シラフじゃ、怖くて、とても寝つけそうもない。
酒飲んで、気まぎらわして、寝てしまうしかない。
3グループくらいに別れ、
それぞれ、部屋で酒盛り。
「‘酔うために’飲む」ごとく、さんざん酒をあおったが、
ぼんは、あまり酔えなかった。
こういう時、
よせばいいのに、なぜ人は、あえて“怖い話”を聞かせ合うのか・・・?
例の‘霊感が非常に強い’俳優Hさんは、
今まで自分に起こったさまざまな‘霊体験’話を、ぼん達に聞かせた後、
最後に言った。
「このホテル、・・・。
おまえら・・・気をつけろよ」
 Hさんの部屋を出て、
皆、それぞれの部屋に戻った。
ぼんは、同室のS君と、
ベットに入ってから小1時間ほど、他愛ない話をし、眠りについた。
 真夜中。
目覚し時計が鳴った。
ぼんとS君は、とび起きた。
確か、ベット枕もとに備え付けてある目覚まし時計は、壊れていたはずだ。
調べてみる。
やはり、9時20分をさしたまま止まっている。
昼間見たときと同じだ。
少しでも針が動いた形跡は、ない。
はずして置いた自分達の腕時計を見た。
午前3時だった。
ぼんとS君の背筋に冷たいものが走った時、
目覚まし時計は、ようやく鳴り止んだ。
 翌朝。
寝れなくなった2人は、
夜が明けるのを待って、隣の先生の部屋に行ってみた。
そこには、
生徒、制作、若手女優・・・計6人の女性が、集まっていた。
話を聞くと・・・・
生徒の女の子と制作の女性は同室で、
やはり、なんとなく怖くて、寝れずに2人で起きていた。
夜中の3時。
鏡の横に置いてある洋服ダンスの扉が、ギィ〜とひとりでに開いた。
あまりの恐怖に、それ以上部屋に居ることができず、先生の部屋に。
一方、若手女優2人の部屋では、
やはり、午前3時頃、
洋服ダンスの中からなのか、その奥の壁からなのか、
ガサッガサッ
という音が聞こえ、怖くなり、隣の部屋の女優2人に声をかけ、一緒に避難してきた・・・
ということだった。
 朝7時。
ぼん達は、そのまま先生の部屋から、朝食をとりに大広間へ。
食事が始まって10分ほど経って、
Hさんが遅れてやって来た。
そのHさんの顔を見て、ぼん始め全員、息をのんだ。
Hさんの顔面は、傷だらけだったのだ。
「Hさん、夜中に何があったんですかっ?!」
「実は、・・・

怖くて、書けにゃい。
怖ひ!マジ、怖ひ〜!
ヤバイので書くのやめみゃす。
       (つづく)


11月27日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その25

【旅公演 北陸の巻】
 その日、ぼん達一行の宿泊先は、古〜い古〜いホテルであった。
廊下。
赤いカーペットが敷いてはあるが、今にも穴が開きそうに、すりきれている。
両側の壁は、シミだらけ。
妙に、薄暗い。
廊下を明るく照らすはずの、天井の電球が、1つおきに抜いてある。
節電なのか・・・?
見るからに
「なんか出そう・・・」なホテル。
部屋も、廊下に負けず劣らず、暗い。
奇妙な部屋だ。
大概のホテルにおいて、
姿見(大きな鏡)は、
部屋の出入り口横の壁や、あるいは、
同じく出入り口そばの、作り付けのクローゼット横などに取り付けられているのが普通だ。
が、
奇妙なことに、このホテルでは、
部屋に入るべくドアを開けると、
奥(突き当たり)の壁・真正面に、大きな姿見がある。
その横に、
木製の古い洋服ダンスが置いてあった。
タンスの扉を開いてみる。
中の‘空気’が、ジト〜と、濡れている感じ。
天井が異常に低い。
ベットも古い。
ベット枕もとに設置してある目覚し時計を見た。
壊れている。
午後5時なのに、9時20分をさして止まっていた。
 部屋にもユニットバスはあったが、
ヒビとサビで、使用不可能。
階下の大浴場へ。
暗い。
腐ったような風呂桶。
どこもかしこもヌルヌルしている。
身体を洗う気になれず、5,6人で、ただ、じっと湯につかっていた。
‘霊感が非常に強い’ことで有名な俳優Hさんが、
あとからやって来た。
Hさんは、脱衣場で服を脱ぎ、
タオルで前を抑え、
風呂場に入ろうと、ガラガラと戸を開けた。
1歩入った瞬間、
「ここは、ダメだーーっ!」
と叫び、再び、脱衣場へ。
バーッと服を着、サーッと出て行ってしまった。
ぼん達は、急に怖くなり、
どこも洗わず、Hさんの後を追って、逃げるように風呂を出た。
 大広間での夕食もヒドかった。
ごはんカチカチ、煮魚さめさめ、味噌汁つめたつめた。
一体、いつ作れば、こんなに冷めさすことができるのか?
給仕の仲居は、たった1人しか居ない。
全員、打ちひしがれたように、食事を終えた。
「・・・じゃ、部屋に戻るか・・・」
となったところで、
それまで一言も口を利かなかった、その仲居が、
不気味なほど低い声で
おそまつさまでした・・・
それでは、おやすみなさい・・・
ひぃ、ひぃ、ひぃ〜

と、笑った・・・。
          (つづく)


11月26日(火よう日) 日直・鬼界
 (きのうのつづき)
そのあと、披露宴に出席した。

同僚による新郎の過去暴露大会や新婦の友人の歌で場内が盛り上がったあと、
司会者が
「次は新婦のお父様に何かお願いしましょう」と突然、宣言した。
新婦のお父様は
「えっ!そんなこと聞いてないよ。勘弁してくださいよ。」と言いながら
渋々、マイクの前にやって来た。
「こんなことをさせられるとは、何も聞いてなかったので・・・・。困ったなあ・・・。」
しばし考える間があって、「よしっ」と決意したように
マイクスタンドからマイクを抜き、
水割りのグラスを左手にマイクを右手にしゃべりだした。

「私の口から言うのもなんですが、
娘の久美子は本当に、けなげで、素直で、かわいい、いい子です」

僕はイスから滑り落ちそうになった。
おいおい、日本一の親バカ登場か?いくつなんだよ?
結婚式でフツー、自分の娘をこんなに誉めるか?

「しかし、私のたったひとつの心残りは、
久美子に強い‘男の背中’を見せてやれなかったことです。
頼りになる男の背中。オレについて来いと無言で語る男の背中。
誠くん(新郎の名前)、私に代わって久美子に‘男の背中’を見せてやってください。
私は久美子の門出に歌を唄います。
増井山大五郎、『男の背中』」

すると、前方にスルスルとスクリーンが下りてきて
『男の背中』のカラオケが映し出された。

用意してんじゃねえか!
なにが、「聞いてない」だよ。
つくづくあきれる、お父様だ。

その歌がまた、すっげえ上手いの。
こぶしはきかすし、サビにくると新婦に流し目送るし、
間奏では小指を立てて水割り飲むし。
よっぽど練習したにちがいない。
ただし、カラオケボックスじゃなくて、カラオケバーで。
ノリがあきらかにカラオケバーのノリなんだよな。

『グラスの底にぃ〜』って歌詞のときに、
お父様はグラスをちょいと持ち上げて振ってみせたんだけど、
カラオケボックスのくせで
全員がスクリーンを見てるんで、
誰もお父様の粋な振り付けを見てなかったんだよね。
お父様がすごく淋しそうにしてんのが、可笑しかった。
カラオケバーでは大ウケなんだろうね。

お父様、ご安心を。僕はしっかり見ておりました。
失礼ながら、「アハッ」って声出して笑っちゃいました。


11月25日(月よう日) 日直・鬼界
結婚式に出席した。
エレガントなホテルのステキなチャペルで、牧師はとてもハンサムな外人。
ロマンティックの一言だった。
牧師がまともな日本語をしゃべりさえすれば。

とにかくすっげえの、この牧師。
「ジーザス said LOVE is power、LOVE is forever・・・・・」
と英語で聖書を朗読するんだ。
そんで、こっちが「おっ、カッコいいじゃん」とか思ってたら、
いきなり、たどたどしい日本語で
「ワラウシはニホンゴでソーローといいまぁす」って言い出しやがんの。
「ワラウシは日本語で早漏と言います」
ワラウシってなんだよ?何語だよ?
よく聞くと
「私は日本語にすると言います」って言ってんだよ。
つまり、「(今、朗読した聖書を)私が日本語にして、言います」って言いたいんだ。
‘てにおは’と目的語がムチャクチャだよ。
日本語、勉強しろよ。
しょうがねえから一生懸命聞いてやってたら、今度は
「カラクレーローォママッリィ〜」って、言うんだ。
なんだよ、それ?イタリア語のまじない?
「固く貞操を守り」って言ってるつもりなんだ。いっこも合ってねえよ。
悪いけど、「アハッ」って声出して笑っちゃったよ。

チャペルもチャペルだよ、顔だけで牧師を選ぶなっつーの。


11月24日(日よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その24

【旅公演 京都の巻】
 いわゆる「移動日」は、「本番」が無いので、
昼頃、ホテルに到着してしまうと、
以後は、特別やる事も無く自由な時間が持てる。
ぼんは、
「せっかく京都に帰ってきてるんだから」と、
高校時代の友人である、おまんクンと高橋クンに連絡をとり、一緒に夕飯を食うことにした。
おまんクンは、
万福(まんぷく)寺の坊主のセガレ。
親父の跡を継いでボウズになる修行中。
(“おまん”は、高校時代からのあだ名。
鬼界さんが、彼の本名を忘れてしまった。仕方ないので“おまん”と書きます。)
高橋クンは、
京都西陣織の呉服屋の跡取り息子。
あだ名は“ネンデル”。(関西弁のイントネーションで読んでね)
「ネアンデルタール人に似てる」から。
 夕方5時半に、
四条河原町の阪急デパート前で待ち合わせ。
おまんは、坊主の修行中なので、当然、ボウズ頭。
どんなセンスをしてるのか、アディダスのジャージの上下を着て来た。
坊主というよりも、どう見ても、‘ヤクザの休日’。
高橋クンは、
小唄のお稽古の帰りということで、
おキモノで登場。
もちろん、西陣織の。
 木屋町(きやまち)の有名なチャンコ屋へと向かった。
途中、
街中で、主役俳優Aさんにバッタリ。
「おう、鬼界!
友達とメシに行くのか!ゆっくり楽しんで来いよ!
明日、頼むぞ、ピンスポ!ワハハ」
Aさんは、ゴキゲンで京都の街に消えていった。
 大いに盛り上がったチャンコ屋を出て、午後9時。
帰りは、近道である、
2,3軒のラブホテルがヒッソリと建つ‘抜け道’を通ることに。
ぼん達は、
ホテル“祇園(ぎおん)”の前で、
今まさにホテルに入らんとするアベックにバッタリ。
アベックとぼん、ビックリぎょうてん。
アベックは、
主役俳優Aさん(妻子あり)と、若手女優Mさんだった。
「あっ!あっーーー!!ま、また鬼界!!」
「お、お、お疲れ様です」
「き、きさま・・・、俺をツケているのかっ?!」
「ぐ、偶然です!」
「い、いいか、
このことは、絶対、言うなよ!わかったな!」
「は、はい!絶対、言いません!」
 ‘内緒にしておく’のは、けっこうキツかった。
ホテルの部屋での、毎日の飲み会は、
「誰それは、ヅラだ。」とか、
「誰と誰はデキてる」とか、 
そんなゴシップネタで盛り上がる。
今ここで
「AさんとMさんがラブホに行った」ことをバラせば、
「こんな身近で、芸能人の‘火遊び’発見!」
と、ますます盛り上がれること間違いなしだ。
しかし、
ぼんはグッとこらえた。
耐えられなくなった時は、実家に電話し、
「誰にも言ったらあかんで。」と、父と母に繰り返しチクった。

実は、ぼんのそんな努力と苦労は、まったく無駄だった。
東京に帰ってきてから判ったことだが、
AさんとMさんの情事はスゴーク有名で、みーんな知っていたのだ。
「旅公演に行くと、スキさえありゃ、ホテルへ入る2人。」と。
AさんMさん、そして、ぼん、この3人だけが、
「みーんな知っている」ということを、知らなかったのだ。
アホらし。
           (つづく)


11月23日(土よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その23

【旅公演 京都の巻】
 “仕込み&バラシ”のお手伝いの他に、
ぼんには、重大な仕事があった。
本番中、
ラストのクライマックス・シーンで、主役の俳優に“ピンスポ”を当てる仕事。
(って、簡単に書いたけど、
ヤダねー、そんな仕事!スッゴイ緊張しそう・・・。)
<ピンスポ・・・・・ピンのスポットライト。
         特定の俳優(あるいは‘物’)めがけて、スポットライトを当てる。>
ピンスポには2パターンある。
1.舞台が真っ暗な中、突然、一筋のスポットライトが・・・パターン
2.舞台が薄暗い中、ある人(物)をキワ立たせる為に・・・パターン
仕事としては、「1」のほうが「2」よりも難しい。
なにせ、真っ暗だから。
ぼんが今回やるのは、その「1」パターン。
劇中で、
主役の俳優Aさんが、真っ暗な中、タバコに火をつけるシーン。
ライターをカチッ。
ライターの炎が出た瞬間、
出たと同時に、その‘炎のみ’に直径8cm程のピンスポをスッと当てる。
そして、
徐々にライトの直径を広げ、人物を入れ込んでいき、
物憂げにタバコを吸う主役の全身が浮かび上がったところで、
最終的にピンスポがピタッと決まる。
流れるような、スムースな‘あかり(照明)’操作だ、
ウマクいけばね・・・。
そう。
ぼん、失敗の連続。
不器用なのか、仕事が難しすぎるのか。
ライターの‘炎’をねらうのだが、いざライトをつけると、
まったく見当違いの場所に当てている。
本番初日、
初めての時は、舞台の端っこに置いてあった、セットの机の脚を照らしてしまった。
2回目は、同じくセットの、置物‘鮭をくわえたクマ’のおケツを。
3回目以降も、引き続き、セットの‘まったく無意味な物’を、
しょうこりも無く照らし続けた。
が、
だんだん人物に近づいてきてはいた。
10回目で、ようやく人物に到達。
ただし、
ライターの‘炎’ではなく、俳優Aさんの‘鼻’。
惜しい!
あきらかな‘ピンスポ・ミス’に、客席から笑い。
真っ暗な中、ポッと鼻が浮かび上がったら、チョッとオカシイかも。
頭のてっぺんを照らしたこともあった。
カッパみたいになっちゃって、これには、ぼんも笑った。
頭の横っちょを照らした時は、客席、爆笑。
頭の1部分だけ照らされて、まるで10円ハゲのように見えるのだ。
‘カッコよくてシリアス’であるはずのシーンは、
‘必ず笑いを取れるシーン’と化してしまっていた。
初日の失敗の時、
「まっ、素人だから仕方ない。」
と許してくれた照明係のオッサンも、
2回目にクマのケツを照らした時は、
「オマエ、ワザとだな?!」
と腹を立て、
3回目以降は、
ピンスポ機のぼんの所まで、ツカツカと歩いて来、無言でぼんにケリを入れた。
ぼんは本番中、毎日、照明室でオッサンに蹴られた。
主役を‘カッパ状態’にした時は、
「楽しいか?楽しいか?」
と、何度も蹴られた。
30数回あった本番で、
最後の3回だけ、‘炎’を照らすのに成功した。
 移動日なので「今日は本番は無し」という日。
京都出身のぼんは、
「せっかくだから」
と思い、懐かしい地元の友達とメシを食うことにした。
         (つづく)


11月22日(金よう日) 日直・鬼界
  〜ムカつくぜっ!
この連載(?)を待ってたかのように、ムカつく女が現れた。

昨日、見に行ったお芝居で、隣に座ってた女だ。
お芝居が始まった瞬間から笑いっぱなし。
どんなにつまんなくても、笑わそうとしてるところで笑ってるなら、
僕だって文句は言いません。
その女は違うんです。
とにかく意味なく笑いっぱなし。
俳優が登場するたんびに大笑い。
太った女優が出てきたときなんか、場内に響き渡る高笑い。
(注:太った女優を出して笑わそうとしてるのではありません。出てきた女優がたまたま太ってただけ)
脇役がしゃべるだけで笑うし、
コミカルな曲がかかるだけで笑うし、暗転になっても笑ってる。
キチガイだ。

さらに、その女の笑い声がカンに触るんです。
色キチガイのお姫様が美少年剣士を裸にしたときのような、
キンキンとした超音波の笑い声です。
完璧にキチガイだ。

そのくせ、途中からは笑い疲れたのか、
ずっと枝毛チェックをしてるんです。
何しにきたんだよ!
そのスプレーくさい髪の毛をハサミでちょん切ってやろうか?

こいつのせいで、せっかくのお芝居が台無しだ。
こんなキチガイは殺しても罪にならないと思う。


11月21日(木よう日) 日直・鬼界
  〜ムカつくぜっ!  その1〜
垂直一本足チャリンコにすっげえムカつく。

説明が必要ですね。
自転車を止めるとき、自転車が倒れないように、スタンドを使います。
ママチャリや新聞屋さんチャリでおなじみの、
後輪を浮かせて止めるスタンドは安定性があるのですが、
後輪の片側についてる棒状のものを下におろして自転車を支えるタイプ、
いわゆる‘一本足チャリンコ’は倒れやすいものです。
‘一本足チャリンコ’の中でも、
自転車をかなり傾かせて止めるタイプのものは
自転車をなんとか安定させようという誠意が感じられますが、
問題なのは、最近多い
スタンドをおろしても、チャリンコがほぼ垂直のままの‘垂直一本足チャリンコ’です。

あれはヒドイ!
ちょっと触っただけで、すぐ倒れるんです。
ほとんどスタンドの役目を果たしてません。
ていうか、誰かに倒させようとする罠みたいなもんです。

駅前や銀行の前に並んだ自転車の列に隙間を見つけ、
そこにチャリンコを止めようとすると、
なぜか必ず隣にあるのが、‘垂直一本足チャリ’。
細心の注意を払い、充分気をつけてはいるけれど、
どうしても、ほんのちょっとヒジがかすったりしちゃいます。
そうすると、ビンゴ!地雷を踏んだようなもんです。
バタバタバタバタバタバタ
と、‘垂直一本チャリ’を起点に自転車が次々に倒れていくんです。
急いでるときにかぎって、いっつもこうなります。
そしてまた、急いでるときにかぎって、倒れた自転車が絡まるんです。
こっちの自転車のペダルがそっちの自転車のチェーンに入り込み、
あっちの自転車のハンドルがこっちの自転車の車輪に食い込みます。
あーっ、もぉーっ!!ムッカーっ!!
オマエがしっかり立ってないから、こんな惨事を招いたんだっ!
とののしりながら、
倒れてしまって‘水平一本足’になった‘垂直一本足チャリ’に蹴りを入れてやります。
ホントあったまくんだもん。

と、僕はかなりムカついてんですけど、
わからない人にはさっぱりわからないエピソードかもしんない・・・。


11月20日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その22

【旅公演 京都の巻】
 ぼんを含む生徒5人は、関西方面への旅公演に同行した。
まず、京都に。
一行の宿舎は、劇場のそばのビジネスホテル。
2人部屋。
同室は、生徒のT君。
ぼんは、何が嬉しかったって、
部屋にユニットバスが付いていたのが、エラ嬉しかった。
成田東の下宿は、‘風呂無し’だ。
ぼんは、常々、
‘なんかっつーとシャワーを浴びるアメリカ人’をやってみたいと思っていた。
なぜか?
シャワーが大好きだったから。  
早速、浴びまくり。
ホテル到着後は、さっさと劇場に行き、
ぼん達生徒らの旅公演における主要な仕事である、
“仕込み(舞台装置・大道具、照明・音響機材など、本番の為の舞台づくり)”
の手伝いをしなければいけないのだが、
ぼんは、
劇場に向かう前に、まず、1回目のシャワーを浴びる。
そんな偉そうなことしてるのは、おそらく、ぼんだけだ。
本番が終わり、
“バラシ(仕込みと逆で、すべての装置・機材を取り払い、劇場を何もない状態に戻す)”
を終え、ホテルの部屋に戻って、2回目のシャワー。
夕食(ホテルの大広間か、外の飯屋か、その日によってマチマチ)から戻って、
3回目のシャワー。
誰かの部屋に集まって飲み(人数、メンツは、その日によって、これまたマチマチ)、
部屋に戻って、4回目のシャワー。
翌朝、起きてすぐ5回目のシャワー。
で、次の土地へ移動。
で、その土地のホテルの部屋に到着して、1回目のシャワー。
(以下、繰り返し。)
1日5回のシャワーは、3週間の旅公演中、欠かしたことはなかった。
 ここで余談だが、
‘シャワー好きの鬼界さん’のエピソードを1つ。
ずっと前、
区民集会所の中にあるお部屋を借りて、稽古してた頃のこと。
その集会所には、普通のお部屋の他に、
地下に、20人以上の団体が借りる大きな体育室があり、
体育室の横にはシャワールームが完備されていた。
もちろん、
このシャワールームを使用できるのは、体育室を借りた人だけに限られる。
(それだけに、体育室のレンタル料は高かった。)
私達は、「稽古のあと、シャワー浴びたいねぇ」と話しつつも、
「体育室使用者以外、シャワーの使用厳禁!」を知っていたので、
「シャワー浴びちゃえ!」などと大それた規則違反を実際に遂行する者は、
私達13人中、誰一人居なかった。
鬼界さんを除いて。
そう。
鬼界さんだけは、「規則は破るためにある。」と豪語し、
シャワーを毎日“盗み浴び”。
下宿にお風呂が無いもんだから、ここぞとばかりに“浴び溜め”。
‘稽古の始まる前&稽古終了後’と、きっちり毎日2回ずつ。
ある日、
こそこそと‘稽古前のシャワー’を浴びに行く姿を、
体育室の‘ママさんバドミントンクラブ’のオバサン達に目撃されてしまった鬼界さん。
鼻唄まじりにシャンプーしていたら、
突然、ドアをドンドンドンドン叩かれた。
「キミ!ちょっと出て来なさい!」
オバサン達が、管理事務室の恐いオジサンに通報したのだ。
「い、いま、ちょっと・・・」
「なーにを言ってるんだ、キミは!いいから出て来なさい!」
バスタオルも洋服も、今オジサンが居る脱衣場に置いてある・・・。
仕方ないので、
ぼんは、身体を洗うボディスポンジで前を隠し、
シャンプーの途中で出てきた。
「キミねぇ、管理規約、知ってんでしょ?!
どーゆーつもり?!」
延々10分間、オジサンの説教。
鬼界さん、スポンジ、あてがったまま。
シャンプーの泡、ダラダラ垂らし。
揚げ句、
私達13人全員呼び出され、キツイお達し。
「今度こんなことさせたら、オタクの団体、出入り禁止にします。
一切、お部屋は貸しません。」
鬼界さんのせいで、危うく貴重な稽古場を失うところだった・・・。
以上、余談でした。
旅公演の話に戻ります。
 1日5回のシャワータイムは、ぼんにとって“お歌の時間”。
シャワーを浴びると、なぜだか無性に歌いたくなる。
「その頃は、自分が音痴だということを、まだ知らなかったんだ・・・。」(by鬼界さん) 
同室のT君にも聞かせてあげるつもりで、
ぼんは、大声で、レパートリー10曲を順繰りに歌い続けた。
ある日、
ぼんは、先生の部屋に呼ばれた。
「鬼界。シャワーを浴びるのはいいが、歌はよせ。
Tが、“ツライんで、部屋を替えてほしい”って言ってきた。」
ぼんが、
自分の歌のドヘタクソさを自覚し始めたのは、この時からだった。
            (つづく)


11月19日(火よう日) 日直・鬼界
スーパーの鮮魚売り場を通りがかると、
ババアがアジの干物に向かって、
ゲボッゲボッと悪ぅーいセキをしている。
‘本日の特売品’のアジだから、トレイにパックされておらず、
山積み状態。
むき出しのアジにババアのツバとウィルス直撃。
あれじゃあ、干物でさえ風邪がうつっちゃうよぉ。
いい歳してんのに、エチケットとかマナーを知らないのかよ!

サンジェルマンに行くと、今度はジジイが悪ぅーいセキをしている。
エゲッヘ、グゲッへ、ゴボゴボ、ウエッヘ、ヒェーグジョンッ。
湿り気の多そうなクシャミ混じりのセキを
まんべんなくあっちこっちへまき散らしている。
なんだオメエ?
さっきのババアとグルなのか?
こういう嫌がらせが年寄り仲間で流行ってんの?
それとも、風邪ウィルスで世界征服するつもりかよ?

“セキをするときは手で口を押さえましょう”
って、常識だろ?
そんなこともできないんだったら、その口をセメントで固めてやる!

が、昨日の終電でブレザーの制服の女子高生が
コホッコホッと申し訳なさそうにセキをしているのを見ると、
そばに寄って、
「キミのウィルスを全部もらってあげる」と思いっきり深呼吸してあげたくなった。

まっ、ケース・バイ・ケースですかね・・。


11月18日(月よう日) 日直・鬼界
友達んちで開催された飲み会あけの早朝、
オレンジジュースを買うためにコンビニに出かけた。
髪の毛はヤニでコテコテ、顔は唐揚げみたいに油でテカテカ、
友達(とても長身)の紫のジャージを着てるから、お父さんの服を着た子供みたいにダブダブ、
寒いから、その上にまっ赤のダウンベストを着用。でも、足は茶色のサンダル。
サイズも季節も色もチグハグ!
ひどい!ひどい!最低のカッコだ。
こんな姿は絶対、人には見せられない。見られたら死ぬ。
でも、朝っぱらだし、足立区だし、誰にも会わないだろう
と思ったら、
会った。
玄関を出た瞬間に、ヤクルトレディにばったり会った。
そして、
「あっ!どーもっ!!おはようございまーす」と親しげな笑顔で声をかけられた。
だ、誰?知り合い?
でも、見覚えない・・・ってことは、お芝居を見てくださったお客さん!?
絶対そうだ。
いくらヤクルトレディでも、いちいち見知らぬ人全員に挨拶するわけがない。
つまり、向こうは僕を知っていたのだ・・・。

こ、これはマズイ!
「鬼界さんがキチガイみたいなカッコで早朝の町を徘徊していた」
なんて言われるに違いない。
しまった!まともなカッコをしてくるんだった・・・
チクショー!!もう死ぬしかない・・
しばし道の真ん中でぼう然としていたら、
角を曲がってやって来たチャリンコ5人組に
「おはようございまーす」「おはようございまーす」「おはようございまーす」
「おはようございまーす」「おはようございまーす」と
挨拶された。
ヤクルトレディの一団だった。全員笑いながら挨拶し走り去った。

友達をたたき起こして尋ねると
「角を曲がったとこにヤクルトの販売所があって、
なんだか知んないけど、あそこの人たちは会う人みんなに挨拶すんだよ。
もちろん、人がいっぱいいたら、いちいち挨拶しないよ。うるせえもん。
まばらに人がいるときは必ず挨拶すんだ。
サービスなのかね?」

ヤクルトレディの方、お教えください。
そうなんですか?
もしそうなら、相手のカッコを見て、挨拶しない方がいい場合もあると思います。


11月17日(日よう日) 日直・鬼界
うちの近所に落書きのすさまじいところがある。

白石美穂我命

と書いてある。
公園のトイレの壁、滑り台の滑る部分の横っちょ、ベンチの座る部分・背もたれ
ガードレール、公園の隣の児童館の壁。
ありとあらゆるところに
白石美穂我命だらけ。
よほど白石美穂が好きに違いない。

落書きを書かれた方に確かめたいのは、
「白石美帆と間違ってませんよね?」ということだ。
白石美穂という名の、ヤンキーで茶髪のネエチャンがいるならいいのだが、
もし、タレントの白石美帆のつもりで書いてるんだったら、すっげえハズカしいぞ。

でも、落書きを書かれた方は、とてもいい人であることは確かだ。
公園の隣の児童館の隣の一般民家の壁にも落書きがしてあるのだが、
‘白’という字が
となっているのだ。
愛に狂って落書きしまくっているうちに、
「げっ、ここはひとんちの壁じゃん!まっじいなあ・・・怒られちゃうぞ・・・」
と気付き、いったんスプレーを止めてしまったに違いない。
が、しかし
「美穂はオレの命だ!怒られたってかまうもんか!!」
と自らの愛を再確認し白石美穂我命と書ききったに違いない。
いい人だあ。
しかも、その民家の壁には
あと7個くらい白石美穂我命と書けるスペースが残っているのに
はしっこに1個書いてあるだけなのだ。
絶対いい人だあ。
気が小さいとも言えるけど・・・。
白石美穂さんとうまくいきますように。


11月16日(土よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その21

 開場時間まで‘あと1時間’をキッタというのに、
俳優Bさんは、一向に姿を現さない。
Bさんともあろう人が、
何の連絡もなしに、こんな時間まで劇場入りしないのは、どう考えてもおかしい。 
事故か?!
当時、携帯電話はまだ存在せず、
こんな場合は、どうにも連絡のつけようがなかった。
「もしかして、Bさん、事故ったの?!」
も気がかりだったが、
それよりも何よりも、とりあえず今一番の難題は、目前のことだ。
そう。
「今日の本番、どーすんの?!」だ。
開場まで、もう、あと1時間もないのだ。
今、来ないところをみると、
‘Bさんは、今日はもう来ない’と思って間違いない。
だからといって、急きょ「休演」出来るはずもない。
開場40分前といえば、
本多劇場での観劇に備え、
既にもう下北沢で、ご飯を食べたり、お茶したりして時間をつぶしているお客さんも多い。
いざ劇場に来てみたら、
「都合により、本日の公演は中止となりました」じゃ、
きっとお客さんはカンカンだ。
「こんなことなら、下北沢くんだりまで来てご飯食べる必要なかったのにっ。
しかも、劇場の近くにはロクな店無いしっ。」
「そーよ、そーよ!
お芝居観る前の‘時間つぶし’って、結構、お金かかるんだから!」
非難ごうごうに違いない。
「代役を立てて、やるしかない。」
「そうだ。Fにやらせるしかない。」
「よし!Fにやらせよう。」
首脳陣の決断は早かった。
 開場30分前。
主役からなにから、偉い人たちも、
とにかく、キャスト全員が舞台に集合して、F君のために‘セリフ合わせ’をすることに。
F君、キンチョー。
照明・音響も本番さながらに。
F君、すごいキンチョー。
本当ならば、皆さん、メイクの真っ最中の時間。
なので、
メイク未完のまま舞台にかり出された、特に、女性キャストの方々は、
エライ不機嫌。
F君、死ぬほどキンチョー。
自分の番になっても、セリフがいっこも出てこない。
稽古中、代役した時は、セリフは完ペキだったはずなのに。
極度のキンチョーのせいで、頭がマッチロケになったらしい。
震え。発汗。顔面蒼白。
「どうしたっ?!
セリフは覚えたはずじゃないか!
・・・仕方ない、プロンプしてあげて。セリフ合わせを続けよう。
F!このセリフ合わせの間に、セリフを頭に叩き込め!いいな!」
(注:「プロンプ」・・・セリフを覚えていない役者に、台本を見ながらセリフを教えてあげること)
舞台のソデからプロンプしてもらう。
F君、オウム返し。
棒読み。
「ああしろ、こうしろ」と舞台上での動きも指示されるが、
どう見てもムリ。
プロンプしてもらいながらセリフを言うだけで精一杯。
F君の“容量”は、「舞台上に立っている」ということだけで、既に、めいっぱい。
稽古場で、ノビノビ・イキイキと、
自由な演技で皆を楽しませていたF君は、見る影も無かった・・・。
 定時より10分遅らせた開場時間ギリギリまで、セリフ合わせは行なわれた。
開場してから開演までの20分間(本来ならば30分間なのだが。)は、
F君にとって、地獄だった。
メイク・衣裳、セリフ練習、動きの確認・・・
どれもこれも、キンチョーでまったく手につかない。
刻々と、開演時間は迫ってくる・・・。
 とうとう、本番開始。
F君の出番は、幕が開いてから15分後にやって来る。
キンチョーは頂点に達し、F君は、楽屋で吐いた。
と、そこへ、
なんと、
俳優Bさんが到着。
案の定「バイクで事故った」そうだ。
ということで、
F君、用なし。
ゲロ、吐き損。
死ぬほどのキンチョーを味わうわ、
「肝っ玉のちっちゃい、本番に弱いヤツ」とバレるわ、
大舞台のチャンスを逃すわ、
F君って、ホント、ツイてないヤツ。
(ちなみに、
F君は、この時のことをバネに(?)、現在も演劇を続けている。)
 養成所を運営する劇団が、旅公演をすることになった。
生徒も、裏方として数人が同行する。
ぼんは、もちろん立候補した。
「旅行気分で、なんだか楽しそう〜♪」
       (つづく) 


11月15日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その20

 本公演に出演する俳優の誰かが、
何かの用事で稽古をお休みする場合、
養成所の生徒が、その日の稽古において、その俳優の代役を務めることになっていた。
どの生徒が、どの俳優の代役をやるのかは、
あらかじめ決められている。
俳優Aの代役は、ぼん。
俳優Bの代役は、F君。
というように。
すなわち、
「今日、俳優Aさんは稽古に来られません。」となれば、
その日の稽古では、ぼんが、Aさんの代わりにAさんのやる役を演じるのだ。  
といっても、
当時、舞台俳優が「稽古を休む」ことは珍しく、
従って、ぼん達“稽古中の代役さん”の出番は、ほとんど無いに等しかった。
ところが。
その本公演に向けての稽古期間中は、
幸か不幸か、たまたま、俳優Bさんが稽古を休んだ日が4日もあった。
すなわち。
幸か不幸か、Bさんの代役であるF君が、4日間もBさんの役を稽古した。
ということになる。
Bさんの役は、
セリフが比較的少ないので、
F君は、代役2日目には、セリフをスッカリ覚え、台本を手放すまでになった。
普通、
代役は、本役(ほんやく:この場合で言えば、Bさん)をマネて演じる。
そうしないと、
他の俳優の稽古にならないからだ。
代役は、あくまでも、本役の“代わり”をするのだ。
(「‘本役が演じたと同じように演じてみせる’ことは、
ある意味、1つの勉強になる」
と言う人も居る。)
しかし、
F君は、そうじゃなかった。
「セリフも少ないし。
まっ、セリフさえチャンと言ってくれれば。」
という先生のお許しが出たこともあって、
F君は、Bさんの役を、
自分の思うように、好きなように、自由奔放にやった。
「実際舞台に立つ本役ではないので、かえってノビノビやれる」
ということは、よくある。
「稽古中、ふざけて、役を交代して演ってみた時、なぜか皆イキイキ」
するのは、
‘責任’がないからだ。
いろいろなことを考える必要がなく、‘無責任’に、ただソノ場だけ‘楽しんで’やれるからだ。
先生はじめ、ぼんら見学の生徒達も、
F君の、そんな代役ぶりを、
「おもしれぇなぁ、F。」
と、感心して見ていた。
 いよいよ、
下北沢本多劇場での2週間あまりの本公演が幕を開けた。
その5日目。
開場1時間前になっても、
俳優Bさんが、劇場に現れない。
普通、遅くとも開場2時間前には着到(ちゃくとう:業界用語)するものだ。
それに、
Bさんは、前日までは、2時間半前にはチャンと着到していたのだ・・・。  
          (つづく)


11月14日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その19

 定食屋「アットホーム」は、格安だった。
その頃、550円〜600円が相場の安価定食が、 
「アットホーム」では、“オール350円”。
(超デフレの現在、‘290円の牛丼’‘65円バーガー’なども有り、
激安ランチは可能だが、
当時、
‘「おかず&ご飯&味噌汁&タクアン2切れ」で350円’の定食は、かなり安かった。)
メニューは、
●コロッケ定食
●メンチ定食
●ミックス・フライ(コロッケ&メンチ)定食
●目玉焼き定食
●サバの味噌煮定食
の5つ。
皆、これを毎昼、順番に食った。
連日来てくれるぼん達養成所の生徒らに、
お店のオバちゃんは、素晴らしい‘特典’を付けることに決定。
「生徒さんだけに、‘特別一品サービス’するずら!
‘なま卵’‘納豆’‘のり’、この中から一品選んでちょーよ。
しかも、ご飯は‘おかわり自由’にしてあげるだぎゃ!」
(私のイメージで、「オバちゃんは名古屋出身。」にしてみました。)
塩かけご飯、しょうゆかけご飯も出来るぞ。
ラッキー!
さすが、日本語に訳すと「家で。」という意味の「定食屋アットホーム」だ。
しかし、
こんな「夢の激安食堂」にさえ、1度として行ったことがないほどの貧乏人が居た。
F君だ。
F君は一人稽古場に残り、朝買って来た菓子パンで昼食を済ます。
毎日、カレーパン1個と甘いパン1個のカップリング。
カレーパンは‘決め’だが、
甘いパンのほうは、「あんパン・ジャムパン・クリームパン」のいずれか1個を日替わりで。
そして、‘ドリンク’は、
先生たち用のインスタントコーヒーを‘盗み飲み’。
稽古場には、
電気湯沸しポットとネスカフェ・プレジデントが常備されていた。
先生たちが飲む為のものだ。
ポットのお湯は、生徒達がカップラーメンなどの為に使用するのはOKだが、
ネスカフェは、絶対、使用禁止。
なにしろ、「プレジデント」だから・・・。
F君は、
誰も居なくなるのをいいことに、毎日毎日、こっそりコーヒーをチョロまかしていたのだ。
 ある日の昼休憩。
Fくんが「今日は俺もアットホームへ行く!」と、誇らしげに言った。
皆、ビックリ。
F君が‘外に食べに行く’のは、誰一人見たことがない。
どうやら、バイト料が多めに入ったらしい。
‘初めての外食’に大はしゃぎのF君。
「コレ食うの、何年ぶりだろう・・・」と感激の面持ちでサバ味噌に箸をつけた。
3口ほど食った時だっただろうか、
F君が「あっ!」と叫んで、箸を置いた。
水をガブガブ飲み、白飯の塊を夢中で飲み込んでいる。
そのうちに、
ノドを両手でおさえ、「ケェー、ケェー」と変な声を出し始めた。
涙目で「俺、先行く・・・」と言い残し、F君は転げるように店を出て行った。
ほとんど食べてないも同然のサバ味噌定食を残して・・・。
 F君のノドに刺さったサバの骨は、結構大きかったとみえ、
午後の授業中ずっと、
F君は「ケェー、ケェー」言って苦しんでいた。
戯曲ロミオとジュリエットを使っての“演技の授業”。
バルコニーのシーンで、F君は、
「F!オマエはどこ見てセリフ言ってんだ!
相手はバルコニーに居るんだぞ!なんで横向いてんだ!」
と、先生に怒鳴られた。
F君は泣きそうな顔で、訴えた。
「上を向くと、骨が突き刺さるんです。
左斜め下を向いてると、骨のスワリがイイのか、痛みが軽減されるんです。」
「洗面所で骨取って来い!」
 なぜかF君は“晴れ舞台”に弱い。
喜び勇んで臨んだ“晴れの”外食、
念願のサバ味噌3口目で、ノドに骨を刺し、死ぬ苦しみを味わうような男だ。
そう。
あの“晴れ舞台”も、そうだった。
ぼん達の養成所を運営する劇団が、
下北沢本多劇場で本公演を打つことになった。
その稽古において、ぼんやF君も含め、生徒の数人は、
各俳優の代役を務めることになっていた。
         (つづく)


11月13日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その18

 ぼんは、この時期、貧乏のドン底だった。
そりゃそうだ。
バイトを、
‘やり始めては辞め、やり始めては辞め’していたのだから。
どこもかしこも続きやしねー。
「この根性なし! 
ええか、
‘働く’っちゅうことは、タイヘンなことなのだぞよ。
ラクして金もらおうなんて、アマいんじゃ。
ちょーっとツライことがあると、スーグ辞めおって。
バカタレが!」
(きゃっ!お耳が痛ーい。
ちなみに、この‘説教ジイサン’は、
映画『男はつらいよ』 の‘ごぜん様(笠智衆)’の口調で、どうぞ。
別に意味はないんです。
ちょっと登場させてみました。)
ぼんの主食は、パンの耳。
近所のパン屋が、タダでくれた。
ぼんが「耳、下さい。」と行くと、
いつも、
オヤジは「おう!持っていきな」と、
20〜30枚分の耳をギッシリ詰め込んだ袋を、手渡してくれた。
「“お世話になったアノ人この人〜懐かしの再会〜番組”に出演したとしたら、
僕、絶対、オジサンを呼ぶね」
と、毎回、心の中で語りかけつつ、パンの耳を有り難く受け取った。
パンの耳をもらったその足で、
今度は、輸入雑貨店へ。
‘定価450円’が大幅値下げされ、
‘セール!150円’で売られていたブルーベリージャム大ビンを買うためだ。
なぜ、
ブルーベリージャムは、そんな値下がっていたのか?
答え。
「チェルノブイリ事故」後に作られた、“ロシア製ジャム”だから。
放射能をタップリ浴びたブルーベリーを原料にしているジャムなのだ。
怖っ。
でも、ぼんはヘッチャラ。
ロシアのジャムを塗ったパンの耳、
毎日食べた。
が。
ぼんは、大失敗をした。
パンの耳をタダでくれるパン屋のことを、養成所のみんなにウッカリ話してしまったのだ。
その日から、
ジリ貧野郎どもがガンクビ揃えて、連日、パン屋に押し寄せた。
まるで、フランス革命直前のパリの下町のような光景。
パン屋のオヤジはどうしたか?
タダで進呈していたパンの耳を、
“一袋100円”の、「お商売」にしてしまった。
飢饉の時、必死に米を買い求める人々に、
米の値段をウンと吊り上げて売りつけた悪徳米問屋もどき。
なんて、ごうつくバリなんだ。
あぁ、いやだ、いやだ、人間って。
それでも、“袋イッパイで100円”は安く、ぼんはパンの耳を買い続けた。
「もう、“アノ人に会いたいコーナー”に、オジサンは呼ばないっ。」
と心に決めつつ。
 養成所の授業は、
午前10時から午後5時まで。
12時〜1時が“昼ごはん休憩”だった。
近所の「アットホーム」という名の定食屋が、
男子生徒らの‘行きつけ’だった。
ただし、F君を除いて・・・。
        (つづく)


11月12日(火よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その17

 ‘時代劇かぶれの大物俳優’○○さんの、
「“夜とぎ・お付き女中・参勤交代”制度」
「駐車違反で捕まって、例の“俺は○○(苗字)だ”で言い逃れようとしたら、
若い警官は○○を知らず、
“○○さんていうの?困るなぁ、いい年して、まったく。”とさんざん怒られ、
すっかりショゲちゃった事件」
などなど、
クマ五郎の話を聞いているうちに、夜は更け、
気がつくと、終電をのがしてしまっていた。
「鬼界クン、泊まっていきなさいよ」
とクマ五郎は勧めた。
タクシー代を持ってなかったぼんは、泊まるしかなかった。
クマ五郎を真ん中に、3人は川の字になって寝た。
疲れていたし、お酒も入っていたので、
ぼんは、横になるとスグに眠りに落ちた。
と、
ぼんは、ふと、人の声で目を覚ました。
「さすってくれ〜、さすってくれ〜」
ノドの奥からシボリ出すような声だ。
「なんだ、なんだ!?」
と起きて見ると、
隣のクマ五郎が、布団の上で四つん這いになってゼイゼイあえいでいる。
「げっ。真っ最中?
マズイ時に起きちゃった。見なかったことにしよう。」
タヌキ寝入りを決め込み、ぼんが再び横になると、
また「さすってくれ〜、さすってくれ〜」と、クマ五郎の苦しげな声。
T子が心配そうに、
「大丈夫?大丈夫?」とさすっている模様。
どうやら‘異常事態発生’の様子に、ぼんも慌てて体を起こした。
「この人、ゼンソク持ちなの。夜中によく発作を起こすの。」
そう説明するT子と一緒に、ぼんも、
クマ五郎の大きな背中を、おっかなびっくりさすった。
 ‘ゼンソクの発作’は、夜通し続いた。
発作と発作の間(発作がおさまっている時間)、
発作に慣れているクマ五郎とT子は、
“その短時間にチョット眠る”ことが出来るように訓練されているらしい。
だが、ぼんは、
“おさまっては、また始まる”発作で、朝まで一睡も出来なかった。
さすっては休み、さすっては休みで、まんじりともせず朝を迎えた。
「僕の1日・・・、なんだかツイてなかったな・・・。」
背中をさすりながら、ぼんは、そう思わざるを得なかった。
皆が「楽しかった〜♪」と言っていたK子の引っ越しと、
あまりに違う、今回のT子の引っ越し。
‘お手伝い’はぼん一人で、エラ大変だったし、
朝から何も食べないで備えた‘鍋パーティ’もなく、‘ほか弁’1個。
おまけに、
期待してた‘夜明けのコーヒー’どころか、
引っ越しが終わった頃、T子の彼氏がのこのこ来ちゃって。
終電に乗り遅れて泊まった揚げ句、
彼氏がゼンソクで。
一睡もせず、その彼氏の背中をさすってる・・・・・。 
僕は、ホント、ツイてない・・・。
手伝いなんてやらなきゃ良かった・・・。 
 朝5時半。
ようやく発作もおさまったようなので、 
ぼんは帰ることにした。
横になっているクマ五郎とT子に、
「もう電車も動いてるし、僕、帰りますね。お大事に。」
と、挨拶した。
「あっ、帰る?ちょっと待ってね。」
クマ五郎は起き出し、自分のカバンを開け、何やらモソモソやっていた。
そして、ぼんの方に向き直り、
「昨日の引っ越し、ご苦労様だったね。
夜も、迷惑かけちゃったね。
悪かったねぇ、本当に。
これで、なんかウマイものでも食ってくれ、な。」
クマ五郎がぼんに差し出したのは、お金だった。
2万円だった。
ぼんが玄関のドアを閉めるまで、
クマ五郎は「ありがとう、ありがとう」と、繰り返し言っていた。
駅までの道を歩きながら、
ぼんは、心の中でクマ五郎に詫びた。
「ちっとも面白くない。引っ越しの手伝いなんて、やらなきゃ良かった。」
と不満タラタラで彼の背中をさすったことを・・・。
            (つづく)


11月11日(月よう日) 日直・鬼界
(きのうの日誌に関連して)
僕の知り合いに、紺野美沙子にかなり似た顔なのに、
なぜか、紺野美沙子よりうんとHっぽい顔の女性がいる。
そのHな美沙子さんがあるとき
「また下着泥棒に盗まれたの。もうガマンできないから、警報機つき物干しを買うわ。」
と言った。

『下着泥棒に盗まれた』だって?
ってことは、Hな美沙子さんは下着を外に干してんの?
やっぱ、あの‘いかにも’って感じで、タオルをグルっと外側に干して目隠しにする方式?
あれは絶対よくない!
「ここに下着が干してありますよー」と宣伝するみたいなもんだ。
『警報機つきの物干し』がどんなものかわからないが、買ったほうがいい。
そもそも、・・・・ん?・・ちょ、ちょっと待って!!
『また盗まれたの』って言わなかったっけ?
『また』ってことは、過去にも盗まれてんだ!
懲りないで、下着を外に干し続けてるってこと?
つ、つまり、今も?
Hな美沙子さんのマンションに行けば、ベランダにHな美沙子さんの下着があるの?
Hな美沙子さんは、いったいどんな・・・?
うっへー、どっひゃー、パンパカパーン!!

僕の脳は妄想でグルグルしました。

そして、数年後、Hな美沙子さんに会ったとき、
「何年か前に言ってた、警報機つき物干しはどういうものなの?」
と尋ねると
彼女はわけがわからずキョトンとしています。
事情を説明すると、
「下着を外に干したことなんて、いっぺんもないし、下着を盗まれたこともないよ。
鬼界くん、人違いよ。誰と私を間違って・ん・の?」
と笑うじゃありませんか!!!

確かに誰かから、『警報機つき物干し』の話は聞いたんです。
それは間違いありません。
ただ、Hな美沙子さんが話してくれたんじゃなかったんです・・。
多分、その『物干し』の話を誰かから聞いた前後に
Hな美沙子さんに会ったんでしょう。
すると、僕の脳は

“下着が盗まれた+どうせだったらHな美沙子さんの下着を盗む方がいいな”
             ↓
“Hな美沙子さんの下着が盗まれた!”

と、願望と事実をゴッチャにして記憶してしまったんです。
では、誰の下着が盗まれたのか?
まったく思い出せません。

ホント、人間の脳なんて、都合のいいようにしか働かないもんです。
てゆーか、僕の脳だけ?


11月10日(日よう日) 日直・鬼界
昨日の『ぼんの青春』について、こんなメールをいただきました。

『ぼんの青春日記』楽しみにしてまふ♪
アノ腕立て伏せの話、以前の日記では‘T倉Kさん’だと書いてありましたが
今回は、‘※※※※さん’なのかしらん?

日誌をさかのぼってみると、
確かに、2001年4月25日(クリックしてみてね)に腕立てのエピソードがありました。
十数年前にクマ五郎さんから聞いた風呂場の話と
去年、高木さんから聞いた風呂場の話がすっかりゴッチャになってるぅ!!
大物俳優が風呂場でナニをブランブランさせながら自己鍛錬に励んでいるイメージが
あまりにも強烈だったため、
僕の脳は両方の話を混ぜて記憶しちゃってたんです・・・。

高木さんの話によると、
T倉Kさんはパツンパツンの半ズボンをはいて風呂場で腕立てをしていた。
つまり、ナニはブラブラしません。
ってことは、ナニをブランブランさせていたのは、
○○塾主宰の大物俳優さんのほうだったんだ。
風呂場で何してたんだっけ?
腹筋?発声?
いや、これじゃ、ブランブランしないもんな・・・。
うさぎ跳び?
殺陣?
ジャズダンス?
リンボーダンス?
どうしても思い出せません。
大物俳優さんがいかにしてブランブランさせてたか、ご存知の方、
ご一報くださると幸いです。

ちなみにメールをくださった方は
大物俳優の名前を的確に当てていらっしゃいました。
結構わかるもの?


11月9日(土よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その16

(クマ五郎の話は続く。)
まっ、いわゆる“夜とぎ”だな。
うちの先生、時代劇にかぶれちゃってるから。」
ぼんは思わず聞いた。
「“夜とぎ”!?えっ?!やっちゃうの?!」
「もちろん、もちろん。
メチャクチャやっちゃうの。
女の子は10人くらい居るんだけど、とりあえず一巡するんだ。
いや、2,3人は声をかけられないかな。」
「なんで?!」
「よく見ると顔が先生の‘好み’じゃないんだな、きっと。
で、一巡して、決めるんだ。」
「何を?!」
「本当の“お相手”を一人。」
「お相手?」
「そう。先生の“お付き女中”。奥さん公認の。」
「その子には、やはり‘見返り’が?
テレビに売り込んであげるとか、舞台の大役に抜擢するとか?」
「ない。
劇団内でかわいがるだけ。
殿様みたいでしょ、うちの先生。
かぶれちゃってるから、時代劇に。
‘旅公演’に行った時の話なんだけどね、
旅館の夕食に天ぷらが出たのよ、冷め冷めの。
先生、天ぷらを一口食うなりペッと吐き出し、
“こんな冷めた天ぷらが食えるかっ!”
お膳をガチャーンとひっくり返し、
“俺を誰だと思ってるんだっ?!俺は○○(先生の苗字)だ!揚げなおしてこい!!”」
「揚げなおしたんですか?」
「もちろん、もちろん。うちの先生、大物俳優だから。
同じ‘旅公演’中の、お風呂での話。
うちの先生、毎日お風呂で‘腕立て伏せ’するのが習慣で、
やっぱ、やったのよ、大浴場でも、‘腕立て’を。
一緒に大浴場に居た若い衆は、
“大物俳優が腕立てしてるのに、自分ら‘したっぱ’がやらないわけにはいかない”
ってんで、全員、‘腕立て’。」
「スッポンポンで?」
「もちろん、もちろん。
お風呂場だから。」
ぼんは感心した。
「どのエピソードも、なんだか‘浮世離れ’してますねぇ。」
「もちろん、もちろん。
先生、かぶれちゃってるから。」
偉い人は、‘何でも有り’なのだ。
ぼんは、大物俳優○○の演技はキライだったが、憧れちゃった。
             (つづく)

大物俳優の実名を出せないのが残念。
撮影&旅公演における彼の‘殿様ぶり’は、業界では有名。
特に「俺は○○(苗字)だ!」のセリフは有名で、
密かに、‘モノマネ’する人は多い。
ただし、
“夜とぎ”制度を知る人は、おそらく皆無。
塾生であるクマ五郎ならではの極秘‘リアル・エピソード’といえるだろう。     


11月8日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その15

 養成所の仲間K子ちゃんの引っ越しを、
皆で手伝うことになった。
K子ちゃんは明るくてカワイイ子なので、我も我もと6人もの男衆が名乗りをあげた。
もちろんぼんも行きたいのはやまやまだったが、
用事があってどうしてもダメだった。
引っ越しの翌日、
「皆でワイワイ、作業も楽しかったし、
そのあとの‘鍋パーティ’も盛り上がったね〜!」
という報告を聞くにつけ、
ぼんは「行きたかったな、行きたかったな」と羨ましく思うのであった。
 その数日後、
今度はT子ちゃんが引っ越しを。
当然ぼんは、“お手伝い”に立候補。
T子ちゃんも、カワイイ。
実を言うと、かなり、ぼんの‘好み’だ。
「‘T子ちゃんを囲む鍋パーティ’・・・うふ、楽しみだなぁ」
ひとりニヤケるぼんにT子ちゃんは言った。
「みんな用事で来れなくなっちゃって・・・
鬼界クンひとりなんだけど、いーい?」
「げっ。
僕、重いもの持つの苦手・・・。
腰も弱いし、首も弱い。ホコリも苦手だし足も遅い。
おまけに頭がデカくてスゴイ邪魔。」
ぼんは目の前が真っ暗になった。
(だったら、立候補すんなよ。
行って、なに手伝う気だったんだよ。
すっこんでろよ、この役立たず。
と、私は言いたい。)
「待てよ。」
とぼんは考えた。
「T子ちゃんと、2人で?!
サシでナベ?!
キャイーーーーン!」
 当日。
ぼんはヘトヘトになった。
こんなに働いたのは生まれて初めてだった。
俺は奴隷か?
でも、ぼんは耐えた。
‘T子ちゃんとの鍋パーティ’のために。
‘「鬼界クン・・・。よかったら、一緒に夜明けのコーヒーを・・・」’のために。
死に物狂いで働いた。
養成所の授業終了後の午後6時頃から開始した引っ越しは、
午後9時過ぎに、ようやく片がついた。
「お腹すいちゃった」
「僕も」
いよいよ‘鍋’の準備か?!
‘鍋パーティ’に備えて、ぼんは朝から何も食べていない。
「あぁ、とうとう‘2人の楽しい夜’の幕開けだ・・・」  
と、そこへピンポーンと、誰ぞが来た。
「いやぁ、遅くなっちゃって。
すっかり片付いたじゃない!ご苦労様。」
30歳くらいのヒゲをはやしたクマみたいな男だった。
このオッサン、だーれ?
T子の彼氏だった・・・。
 30分後、
T子が買いに走った‘ほか弁’を食べながら、ぼんは泣いていた、心の中で。
「僕、もう‘用なし’・・・。帰ろう・・・。」
そんなぼんの前に、
クマ五郎は「飲もう!」と、持参の焼酎を差し出した。
断る理由も見つからないぼんは、
T子ちゃんと彼氏と、3人で車座になって飲むこととなった。
 クマ五郎も演劇人だった。
某大物俳優主宰『○○塾』に入っていた。
ぼんやぼんと同い年のT子ちゃんより、8つ年上のクマ五郎は、
年の功で、
演劇関係のお話を、酒のツマミにいろいろ2人に語り聞かせてくれた。
「うちの先生(主宰者である大物俳優)は、
稽古場の隣に‘仮眠所’を設けているんだ。
先生はじめ皆は、その仮眠所のことを‘部屋’と呼んでいる。
稽古が終わると、
時々先生は、一人の女子塾生(塾の生徒)に、
“今日はとても疲れた。キミ、部屋に来てマッサージしてくれ。”
とか、
“キミの演技について話がある。あとで部屋に来てくれ。”
と声をかける。
声をかける順番は、‘顔がカワイイ’順だ。
春、○○塾に入塾してきて、
1番カワイイ子は、1番に声をかけられ、
2番目にカワイイ子は、その次の機会に声をかけられる・・・というわけだ。
声をかけられた女の子は、その日1晩、先生と‘部屋’に泊まることになる。
           (つづく)


11月7日(木よう日) 
久し振りに、リンちゃんに会った。

と言っても誰もご存じないだろうから、説明すると
昔、演劇をやってた仲間で、今はプログラマーに転職し、
本当の名前は‘倫子(ともこ)’というのだが、みんなから‘リンちゃん’と呼ばれている。

「この前、巨人の優勝パレードを見に行ったの。超感動よ!!」

「あれ?リンちゃんって、巨人ファンだっけ?」

「当然よ!“松井、がんばれー”なんていう声援を聞くと涙が流れたわ!!」

「へええ、松井が好きなんだ」

「あったりまえじゃないっ!!だから、BSの契約して来年からは大リーグ見るんだ!!」

「なんで松井がそんなにいいの?」

「だって、私の名前は松井だもん!!」

そうです、リンちゃんは松井だったんです。すっかり忘れてました。
それよりなにより、
僕は頭をガツンと殴られた気がしました。

自分と同じ苗字のスポーツ選手を応援する
なんてことは、考えたこともない。発想すらしない。夢にも出てこない。
完全に盲点でした。
そっか・・・世の中の人にとっては当たり前なんだ・・・
ちょっと異邦人の気分。

電話で名前を名乗ると、100%「はあ?」と聞き返される経験をみんなはしないんだ・・・
何度ていねいに言い直しても、「北井さんですね」とか「伊貝さんですか」と言われたりしないんだ・・・

鬼界って名前の選手がいたら、どんな競技でも応援すんだけどな・・。
ゲートボールでもソロバン大会でもオナラ王選手権でも。


11月6日(水よう日) 日直・鬼界
「大変や!大変や!ちょっと聞いてぇ!!」
母から電話がかかってきた。

近所のスーパーのオープン記念の、
“先着15名様!2畳用ホットカーペットカバー 980円!!”
を狙って、開店の9時前に並ぼうとしたのだそうだ。
が、
家を出ようとしたとき、
「スーパーの陰謀としか思えへんタイミング」(母談)で電話がかかってきてしまい、
スーパー到着が9時20分になってしまった。
「エスカレーターを5段飛ばしして超特急で5階へ行った」(母談)
そうだ。(5段飛ばしなんてウソだ・・・僕感想)
そこにいた「ジェーんさんみたいな若い店員」(母談)に
売り場を尋ねたら、親切に案内してくれた。

※「ジェーんさんて誰?」と聞くと、
「ホンマにモノ知らんなあ。ベティさんの友達に決まってるやろ!」と怒られた。
・・で、ベティさんというのは誰?
ベティ・ブープのことかなあ・・・?

でも、そこは通常のカーペット売り場で
どれが特売品かわからない。
「広告にのってた980円のホットカーペットカバーはどれ?」と聞くと
「ここにあるのがそうです」とジェーンさんは答えたのだそうだ。
値札を見ると、“3800円”
どう見ても、特売品じゃない!ど、どういうこと?
と、さすがの母もとまどっていたら、
売り場の主任さんが走ってきた。

「近藤さんっ!(ジェーんさんの本名は近藤さんだったのだ)
キュッパーのホッカペカバーは、もうあらへんでっ!
開店した瞬間にに売り切れたんや!!」
「えっ!ほんまですかあ?
開店してからずっと、ここにあるカーペットを980円で売ってました・・・」

その会話を聞くやいなや、母は「光速で」(母談)(またウソだ・・僕感想)
目の前にあったカーペットを胸に抱えた。
そうすれば、「お客様、申し訳ございません。特売品は売り切れなんでございます」と
言われても、
「えーっ!さっきまで売ってたんでしょ?だったら、これも売ってー。
気に入ってしもて、手放せへんねん。なっ、なっ、かまへんやんかー!!」
と、ごねられるのだそうだ。(!・・僕感想)

こうして、3800円の品を980円で母はまんまと手に入れた。

が、話はこれで終わらない。

帰って、よく見ると、
それはホットカーペットカバーとしては使えない、正真正銘のじゅうたんだった・・・。
慌てないで、表示をちゃんと見て買えばよかった・・・
いくら得しようと、使い道がないんじゃ、どうしようもない。
交換してもらうしかないか・・・
差額を出すことになるんだろうなあ
母はガックリして、スーパーに行った。

「あの・・これ、ホットカーペットカバーにも使えるやつと交換してほしいんだけど・・」
と母が言うと
「あっ!朝イチのお客さんですね。」と
ジェーン近藤は母のことを覚えていて、またまた親切に案内してくれた。

「ホットカーペットカバーとしても使えるのは、こちらになります」
値札を見ると、“5980円”!
差額5000円も払うのっ?
せこく得しようとしたバチが当たったんだ・・・・
と母があきらめ、
「この青いのにする・・・」とつぶやくと
ジェーン近藤は
「わっかりましたぁ。こちらのお品ですねっ」と
母が持ってきた大きな袋から、じゅうたんを取り出し、
代わりに青いホットカーペットカバーをその袋に入れ
「ありがとうございましたぁ」と
レジへ戻って行った!

母は神に感謝したそうだ。
結局、980円で5980円の品を手に入れたのだから。

「あのジェーンさんは、常識を知らんよっぽどのアホか、天使やと思うわ」
母は報告を終え、嬉しそうに電話を切った。


11月5日(火よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その14

 「いつになったら、ミホちゃんは登場すんだよ・・・」
と、ぼんが溜息をついた、その時、
とうとう、ミホちゃんが登場。
ドえらいメイクで。
(黒柳徹子さんの、もっとスゴイやつ。)
白い、布キレのような衣裳まとって。
「い、今のは、なーに?」 
潜在意識が「考える時間をちょっとだけチョーダイ」と欲したかのように、
一瞬、ぼんは目をそらした。
そして、再び異様な物体に視線を戻すと、
それは、やっぱりミホちゃんだった。
「なにこれ?バケモノ役?」
ぼんの心の中の質問に、まるで答えたかのようなミホちゃんの第一声。
「私はこの部屋に住む妖精‘ティシガメ’」
ミホ演ずる‘妖精ティシガメ’は、
主人公の青年の日常生活の手助け(ご飯を作る・布団を敷くなど)をしたり、
話し相手になったりするうちに、
次第に、青年の心の拠り所となっていく。
そして、
だんだん青年に取りつき、
最後には、青年の首を絞めて殺してしまう。
(「結構オモシロそーじゃん?」
などと思ってはいけません。
‘あらすじ’にするとマトモっぽいけど(そうか?)、
実際は、目も当てられない幼稚なセリフ回し。by鬼界さん)
いよいよ(やっと)、
お話はクライマックス、「青年を殺す」場面へと。
死に際、青年は妖精に問う。
「なぜ、キミはこんなことをするんだ?!」
妖精ティシガメは答える。
「これがアナタの宿命。
ふふふ。私の本当の名は・・・“メガシティ”」
「メガシティ・・・“都会”か・・・・・?!!」
ガクッ。(‘青年が死んだ’描写です、念のため。)
出た、これぞ‘小劇場芝居’。
時間、空間、宇宙、都会。
小劇場基本パターンシリーズ。
だからって「ティシガメ」が「メガシティ」って、あなた。
ぼん含め頭数13の観客、思わず失笑。
ぼんは、
お芝居の毒にアタッちゃったのか、気分が悪くなった為、とっとと帰った。
ヘタにミホに会ったりなんぞして
「どうだった〜?」
と聞かれて
「面白かった〜!」
と答えたら、口が腐りそう。
ぼんは、逃げるように劇場をあとにした。
 翌日。
バイト先で会ったミホは、開口一番、
「どうだった〜?」
ぼんは、昨夜考えておいた‘感想’を言った。
「2人芝居をやるには実力派じゃないとダメだから、
たいしたもんだ。」
ミホ「頑張ったの、私。
   最初、不安だったけど、
   演出家が、オマエにしか出来ない!って。」
ぼん「確かに、キミにしか出来ない。」
ミホ「最後のドンデン返し、どうだった?」
ぼん「ドンデン返しとは?」
ミホ「やっぱり〜!
   わからなかったかぁ。かなり、ひねってあるからねぇ。」
ぼん「・・・。」
ミホ「私が演じたフェアリー‘ティシガメ’は、
   すなわち、現代社会を意味する‘メガシティ’だったのよ。
   ふ〜ん、やっぱり、わからなかったかぁ。」
ぼん「・・・・・。」
ミホ「あのねぇ、
   “メガシティ”とは、日本語で“大都会”って意味の英語なのよ。」
ぼん「・・・・・・・・。」
ミホ「聞いたことなーい?」
ぼん「・・・そんな英語は、ない。」
ミホ「え〜〜〜っ?鬼界クン、知らないのぉ〜?!メガシティ」
ぼん「日本人が作った和製英語だ。」
ミホ「うっそ〜〜?!なによ〜?和製英語って〜」
ぼんは、とうとうブチキレた。
「この中卒野郎!クソ芝居見せやがって!
金返せ!ばーか」
「ひっど〜い」
「ひっど〜いじゃねーよ、ばーか!」
ぼんは、その日でイタリアンレストランを辞めた。
          (つづく)

「クソ芝居見せやがって!金返せ!」
言っちゃった鬼界さん、「♪若さゆえ〜(ここしか知らない。)」ですねぇ、ホント。


11月4日(月よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その13

 ミホは、ぼんに言った。
「私の劇団の公演を観に来てくれなーい?
2人芝居なんだけど、私も出演するの。」
ぼんは、スグに答えた。
「行く、行く!」
観に行ってあげれば、
当然、「感想を聞かせてぇ〜」ということになる。
ジックリ話すチャンス到来だ。
ミホとの距離がグッと近づく。
チャンス、チャンス。
実は、ぼんは、焦っていた。
既に、もう大学3年だ。
友人の中には、彼女をとっかえひっかえしてヤリまくっているヤツもいる。
大学生といえば、1番、彼女を作り易い時だ。
男子と同様、
まわりの女子も100%‘彼氏が欲しくてウズウズしている’人たちなのだ。
こんな状況、人生において、他にあるだろうか?
今、彼女を作らずして、いつ作る?
大学生という、あらゆる意味で恵まれた時期に彼女を作れないようなヤツは、
よっぽどモテないヤツだ。
(私の知り合いは、
大学時代から付き合ってた人と結婚した人が多い。
それって、
「社会人になったら、新しい彼女を作ろう」と思ってたのに、
予想を裏切ってまったくモテず、
念のため‘保険’で付き合いを続けていた‘大学時代からの彼女’と、結局はゴールイン・・・
ってことなんだろうか?
と、今、ふと思った私。
いえ、Mさんは例外です。)
とにかく、マズイ。
このへんで一発やっとか・・・いや、彼女を作っておかないと。
 「どんなお芝居をやるの?」
ぼんは、‘会話の糸口’としてだけではなく、
実際、興味があって、そう聞いてみた。
「う〜ん、一言で言うと、
“現代社会を、文明のフィルターを通して描き出すお芝居”かな。」
「へぇ〜、スゴイなぁ。
そんで、2人芝居なんでしょ?スゴイなぁ。」
‘大げさ’にホメたには違いないが、
ぼんが「スゴイ」と思ったのはウソではない。
なんせ「2人芝居」だ。
「ミホちゃんって、お芝居が上手いんだなぁ。スゴイなぁ。」
真実、そう思った。
その日、
早速ミホに2500円払ってチケットを1枚買い、
公演を心待ちにした。
 公演日。
ぼんの目の前で繰り広げられたお芝居は、
‘ミホが説明したとおり’のものだった。
舞台上にテレビが置いてあって、
主役の青年がヒザを抱えて、そのテレビを見ている。
そのテレビが映し出しているものは、ホームビデオで撮影したイメージ映像。
何のイメージ映像かというと「新宿の街」。
観客は、
主人公の青年と一緒に、その映像を見る・・・っつーお芝居。
ミホの説明・・・「現代社会を、文明のフィルターを通して描き出すお芝居」。
「現代社会」→新宿の街
「文明のフィルター」→テレビ画面
なるほど。
・・・・・。
まんまじゃねーかよ!
そこに気付かなかったぼんは、自分が腹立たしかった。
しかし、
ぼんが本当に腹を立てる時は、お芝居のクライマックスに待っていた。
           (つづく)


11月3日(日よう日) 日直・鬼界
100円ショップを出ようとしたら、
妊娠してらっしゃる女性が入ってこられた。
ご存知のように100円ショップの通路はすごく狭い。
妊娠してらっしゃる方とすれ違うのは不可能だ。
3メートルくらいの通路を僕は2メートルほど進んだ地点にいたのだが、
わざわざ引き返して、妊娠してらっしゃる女性を通してあげた。
なんて紳士なんだ!
と自己満足に浸りつつ、
やさしい眼差しで妊娠してらっしゃる女性を見守っていた

ら、
僕のことを全然無視してドスドスとデカい態度で通り過ぎて行きやがった!

ムカつくぅー!
「妊娠してらっしゃる女性」などといたわりの気持ちを持ったのが腹立たしい。
あんなビッチは、クソ妊婦で充分だ!
何様?
腹ボテは殿様で、オレは「へへえっ」と土下座する百姓なのかよ!

そりゃあ僕は女体の神秘を知らないから、
クソ妊婦が現在、何週目で、どんな不安定な精神状態にあるのかはわかりません。
けどね、
見知らぬ人から親切にしてもらったら、
「ありがとう」とか「どうも」くらいは言うんじゃねえか、ふつーはよぉ。

ロクな赤ん坊が生まれてこないぜ、きっと。
たとえロクな赤ん坊が生まれても、
キサマのせいでロクな子供には育たねえよ!オイラが保証してやる!!


11月2日(土よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その12

 その日の‘まかない’も、おかずは‘お魚’だった。
オーナーの家のお手伝いのオバちゃんが1人で、
イタリアレストラン・雀荘・パチンコ屋、
その3つの店の全従業員のまかないを作っている。
ご飯と味噌汁とおかず。
たまに野菜炒め・豚肉しょうが焼き・鳥のから揚げなどの肉料理も出たが、
ダントツ多いのは、
焼き魚・煮魚であった。
その日、
‘1番手のまかない’として、
ぼんが夕食をとるべく、オーナーの家のダイニングに到着すると、
雀荘とパチンコ屋の店員は、まだ、どちらも来ていなかった。
ぼんは、ホッとした。
ひとんちの4人掛けのテーブルで、
チンピラ2人と一緒にご飯を食べるのは、やってみたらわかると思うが、結構気詰まりなものだ。
ぼんがいつも一緒になるパチンコ屋の米田さんは、
ご飯を食べる時、やたら水を飲む。
コップの水をイッキ飲み。
飲んでは注ぎ、飲んでは注ぎ、軽く5,6杯は飲む。
1杯の水をイッキしたあと、
必ず、「グエーーッ」とゲップをする。
それが、可笑しくて可笑しくて、ぼんは笑いそうになるのだが、
必死でこらえる。
その笑いをこらえるのが、ホント、大変なのだ。 
その米田さん、今日は一緒ではないようだ。
「わ〜い!のんびり食べられるぞ♪」
と、ぼんはウキウキと、
テーブル上の‘おかずの大皿’から、
‘サバの味噌煮’を一切れチョイスして自分の皿によそった。
1番大きくて美味しそうなのを、さんざん選んで。
サバ味噌は、ぼんの大好物だ。
「いただきまぁ〜す。」
ぼんが、まず、味噌汁を一口すすっている時、
米田さんが入ってきた。
色メガネ・パンチパーマ・ヒゲの、絵に描いたようなチンピラ‘米田さん’は、
大皿にまだ大量に残っているサバと、
ぼんのお皿に乗っている一切れのサバを、しばらく見比べ、
そして、おもむろに口を開いた。
「俺ァ、サバ、好きなんだよな。特に・・・みそ味が。」
米田さんがサバを見比べている間、いっさいサバに手をつけず、
味噌汁をすすったり、白飯を食ったりして、
成り行きを見守っていたぼんは、
「こ、交換しましょうか・・・?ぼ、僕、みそ味、嫌いだから。」
と、すぐさま自分のサバを差し出した。
米田さんは、ゆっくりとその皿を受け取り、
「わりィな、催促したみたいでよ。」
1番大きくて1番美味しそうなサバを米田さんによそっておいてあげた形となったぼんは、
再度、今度は1番ちっちゃくて身の少なそうな一切れを選んで、
新たな皿によそった。
その日以来、
焼き魚・煮魚の場合、必ず米田さんの圧力がかかった。
「そうだ!まかないのローテーションを替えてもらおう!
そうすれば、米田さんと一緒じゃなくなる!」
と順番を替えてもらったのに、
ダイニングに行くと、やっぱり、米田さんも来るのであった・・・。 
「なぜ、なぜ、なぜ〜?!(涙)」 
 なぜ、こんなバイト先を、ぼんは辞めなかったのか?
ぼんには狙いがあったからだ。
「同じレストランのアルバイトである‘ウェイトレスの女の子’と仲良くなりたい」
という狙い。
女の子は“ミホちゃん”。
ぼんと同い年の21才だ。
顔も身体も、オモチのような子だった。
格別カワイクはないが、
のぶこのあとなので、うんとカワイク見えた。
(不動産屋が、
客に物件紹介するときの鉄則が、こんなところでも適用されているのね・・・。
「ブス→ブス→並の順で、部屋を見せろ。
最初にダメな部屋を見せておけば、そこそこ並の部屋でも良く見える。」)
‘ミホが小さな劇団に所属している’というのも、
ぼんの興味を引いた。
高校を中退してしばらくして、演劇を始めたらしい。
劇団名は“都市彦(としひこ)”。
なかなかミホとゆっくり話すチャンスが持てず、
焦り始めていたぼんに、
ある日の終業時、ミホが声をかけてきた。
            (つづく)


11月1日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その11

レストランは、ドひまだった。
お客は、1日平均1組。
「客は1日1組限定の隠れ家レストラン」ではないのに。
常に従業員の数の方が、明らかに多い・・・というような悲惨な状態。
キッチンは、シェフ1人とコック1人。
フロアは、ぼんの他にウェイター2人とウェイトレス1人。
そして‘マネージャー’。
このマネージャーは、店のオーナーではない。
オーナーが、他店から引き抜いて、この店のマネージャーにした。
ここに来る前は、
小料理屋の板前だった。
なので「魚をおろせる」のが自慢だ。
(しかし、キッチンにはシェフが居るので、出る幕無し。)
板前はイタリアンのことを知らないらしく、
ぼん達アルバイトに、な〜んにも指導してくれなかった。
ある日、
クラシックコンサート帰りのオバさま2人組が来店。
ぼんは、ワインを注ぎに。
ワインがビンの口からタレるのを防ぐ、
例の‘注ぎ終わりにボトルをクルッと回す’のをやってみた。
マネージャーは、そんなことを教えてはくれない。
ぼんがどっかの店で見たのを、ウロ覚えに実行してみたのだ。
オバさま達は感心した。
「やっぱり、プロのかたは、注ぎ方が本格的ね〜。」
ぼんは嬉しくなった。
ワインボトル開栓の際、
お客に嗅がせるはずのコルクを、
記憶ちがいで、自分で匂いを嗅いじゃったぼん。
その瞬間、オバさま達とぼんは、
「ん?なんか、ちがう?」というモヤモヤ〜とした心持ちだったので、
この‘液ダレ防止の為のボトル回し’は、
「やっぱり、この人プロなのよ。
だから、さっきのコルクを嗅いだのもあってたのよ。
プロが間違えるはずないものね〜。」
と、オバさま達の不安を払拭する意味でも、見事に役立ったのだ。
 客が居ない長〜い時間における、
ぼんのおもな仕事は、
「便器に氷を満たす係」だった。
男便所の‘あさがお(オシッコ便器)’に、常に氷を適量入れておく仕事。
「溶けたら、補充」を繰り返す。
しかしながら。
客が来ない。
従って、お便所が使われない。
従って、オシッコで溶けるはずの氷が、なかなか溶けない。
だけど、ヒマでヒマで他にやることがない。
なので、
ぼんは、不自然でない程度の頻度でお便所に通い、
自分でオシッコしたり、
あと、‘お流し用のボタン’を押しちゃぁ水を出して、溶かし、補充し、
なんとか時間をつぶした。
 こうなると、
休憩時間だけが楽しみだ。
‘まかない(夕食)’付き。
このレストランのビルには、他に雀荘(マージャン屋)とパチンコ屋が入っていた。
レストランのオーナーの一括経営。
そのせいで、
雀荘の店員・パチンコ屋の店員と、まかないをご一緒する“決まり”だ。
しかも、
オーナーの自宅のダイニング(食堂)という、
えらく家庭的で、閉ざされた、狭い場所で。
雀荘とパチンコ屋の店員さんらは、
見るからに恐そうな方達だった。
今は、女の子のバイトも居たりして、明るくて健全(?)な雰囲気だが、
その当時のパチンコ屋や雀荘の店員なんてものは、
チンピラばかりだ。
パンチパーマかオールバック。
なぜかまかないの時間がぼんといつも一緒になる、
パチンコ屋店員“米田さん”も、
パンチパーマであった。
「僕も、大学入学式の日はパンチパーマだったなぁ。
やっぱ、ヘンだ、このヘアスタイル。クスッ。」
初対面の時は、心の中で笑う余裕さえあったぼんも、
この米田さんと、
4回目にまかないが一緒になった日は、そうはいかなかった。
            (つづく)


10月31日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その10

 バイトをしないわけにはいかないので、
早速、次のバイトを。
高給ではあるが、のぶこでチョット懲りた‘家庭教師’は、
しばらくお休みすることに。
初心に戻って(?)、ふつーのバイトを探した。
例の、先輩アルバイターに半殺しの目に遭わされた「松屋」を教訓に、
“アルバイトの人は皆、同等同列”である「オープニングスタッフ募集」を狙った。
まず、
オープンしたての吉祥寺の居酒屋。
時給850円。
2週間の研修期間を経て、
“お運びさん”として、ぼんは居酒屋のバイトをスタートさせた。
ぼんは、
この居酒屋のバイトで、「ヤマです」を知った。
「ヤマ」→「売り切れ」「無い」
すなわち、
「レモンがヤマでぇす。」は「レモンが、もう無いでぇす。」という意味。
なんで、最初から「レモンが、もう無い。」と言わないのか?
(これは、演劇用語においても、しばしば思う。
「そのイス、わらって。」とは、「そのイスを、舞台からどけちゃって。」という意味だ。
なんだ、そりゃ。わかるわけねーよ。
「イスをわらって」と言われて、まったく見当もつかなかった私は、
試しに、イスを思いっきり揺らしてみた。
「ちがうな、こりゃ。」と思いつつ。
しかし、
“イスを見て笑った”よりは、まだ、読みが深いと見た。)
全国区で通用する「ヤマです」の他に、
その店だけで通じる“隠語”を使うのも、
ぼんにとっては珍しかった。
「ハエ」は「みどり」
「ゴキブリ」は「五郎ちゃん」
「トイレ」は「8番」
などなど。
(私がケーキ屋さんでバイトした時、
「トイレ」は「10番」だった。
行きつけの歯医者では、看護婦がやたら「9番行ってきま〜す」と言っている。
あきらかに「トイレに行くんだな、コイツ。」とバレバレだ。
じゃ、“隠語”になってねーじゃんか。
なぜに「トイレ」は“番号”がポピュラーなのか?
「水たまり」とかじゃ、ダメなのか?)
この居酒屋は、2ヶ月で辞めた。
あまりにも忙しくて。
「僕、疲れちゃった・・・。」
そりゃそうだ。
「新規オープン!」に加えて、
年末年始の時期だ。当然だ。「この根性無し!」だ。
 すぐさま次のバイトに有りついた。
中野のイタリア料理レストラン。
ここもオープンしたての新しい店だ。
‘高級’な感じではなく、
‘お手頃プライスの、ちょっと洒落たカジュアルレストラン’。
時給750円。
営業時間(6:00pm〜11:00pm)をオールタイムで、
週5日(月〜金)勤務することにした。
時給は安いが、制服がカッチョイイ。
白のYシャツに蝶ネクタイ、黒のスラックスに黒のロングサロン(前かけ)。
「僕にピッタシお似合い♪」
(なぜか、鬼界さんは、「蝶ネクタイが似合う」と思っているらしい・・・。
舞台でも、何度か衣裳に選んでいる。
蝶ネクタイが似合って嬉しいか?
この場合、「ウェイターのカッコが似合って嬉しいか?」。)
このレストランで、
ぼんは、養成所以外で初めて、
“演劇に打ち込む女の子”と出会うことになるのであった。
              (つづく)


10月30日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その9

 教えに行くはずの当日になって
「急用が出来ちゃって」だの
「風邪引いちゃって」だの、
なんやかやと理由をつけちゃ、のぶこの家庭教師を休むことが増えてきたぼん。
そんな、明らかに‘やる気のない’のらくら大学生なんて、
「辞めていただきますっ。」
と、普通、あっちから引導を渡されてしかるべきだ。
なのに、
秘蔵の北欧ブルーフィルムをエサにしてまで、
なぜ、ぼんを家庭教師としてのぶこにあてがい続けたのか?
「はて?」
ぼんはあらゆる“理由”を想定し、
その中から、消去法で、1つの“理由”を見出し、
そして、その“理由”に確信をもった。
“僕は、のぶこのお気に入り”
「これに違いない」と。
(「ウソだぁ〜」「信じらんな〜い」「つくってる〜」by取材を聞いていた周囲の声
「証拠がある」by鬼界さん
以下、鬼界さんの言う‘証拠’。)
いつか、
お母さんが‘毎度コロッケの夕ご飯’の給仕をしながら、
ぼんに聞いたことがあった。
「流行ってるんだかなんだか、うちの娘は、こんな‘丸文字’書いて・・・。
先生だって、お嫌いでしょ?」
ぼんは、
「同じ‘揚げもの’なら、‘たまにはトンカツにしましょ’とかの知恵はねーのかよ。」
という思いでコロッケをほおばりつつ、
「僕、好きですよ、丸文字。かわいいですもんね、女の子っぽくて。
男はみんな好きですよ、そーゆーの。」
と、まるで口から出まかせを言った。
どうやら、ぼんの、
この‘丸文字賛辞’が、のぶこの心をとらえたらしいのだ。
お勉強中、
「キミねぇ、人の質問に‘ヒヒン’とかって馬の鳴きマネで答えてると、
入試の時、面接で落とされるよ。」
などと、口ではイジワルを言うくせに、
「心の中では、私をカワイイと思ってるんだわ」
とでも思ったのか、
のぶこは、ぼんがどんなに厳しくしても、コタえた様子を見せなかった。
それどころか、
ある日のお勉強のあと、
のぶこは、ぼんに手紙を渡してきた。
「高校に入ったら、部活をやったほうが良いですか?」
というような内容だった。
思いっきり丸文字で。
ぼんは、その場で手紙を読み、その場で答えた。
「入りたい部があれば、入った方がいいんじゃない?友達も増えるし。」
のぶこは嬉しそうにうなづいた。
 12月半ば。
のぶこの高校入試まで、あと2ヶ月。
最後の追い込みという時。
ぼんは、のぶこの家庭教師を辞めた。
それは、
最後である3本目の北欧製ブルーフィルム「‘レディー・フィヨルド愛の遍歴’篇」を、
お父さんに返し終えた日のことであった・・・。
(「なんちゅう、ひとでなし!」by再度、周囲の声)                  
                    (つづく)


10月29日(火よう日) 日直・鬼界
友達がマンションを買った。
なんでこんなもん?というくらい古いのだが、
なんでこんなに?というくらい安かったのだそうだ。

今ではお目にかかれない、鉄の外階段がついているので、登ってみた。
錆び付いて、ところどころに穴があいている。
手すりの高さは70センチくらいしかない。
つまづいたら即、落下だ。
建築基準法に違反してんじゃないの?
そして、最上階の8階に達し、下を見た。
キャアァァァァーー
こわい、コワイ、こわい、
足がすくんだ。

ここで疑問です。
‘足がすくむ’って、意味あんの?
足がすくんだことのない人はいないでしょう。
「つちふまず」からその横っちょにかけて、ムズムズっとするアレです。
恐怖のために足がこわばって動かなくなるのなら、
なんとなく理解できます。
でも、すくんで、どうなるの?
“高いぞ!=危険だ!”というのは、すくんでもらわなくても、見りゃわかります。
しかも、あの‘すくみ’は、高いところに登ったときしか起こらないんです。
そんな場合のためだけに、神様は人間にすくむ能力をお与えになったの?
どういうこと?

さらに不思議なのは、‘鳥肌’だ。
寒いと、なにが隆起して、あんなツブツブの肌になるの?
恐いときにも、なぜ鳥肌がたつの?
寒さと恐さは同じってこと?
わからん・・・・。


10月28日(月よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その8

 北欧製ブルーフィルム「‘素っ裸でサッカー’篇」は、
ぼん達、‘一橋大学の落ちこぼれ’4人組を魅了した。
ブロンド美女のあえぎ声も歓喜の絶叫も聞こえなかったが(なんせサイレントだから)、
さすが北欧製。
「行く所に行けば、道行く人は皆、裸。
フリーセックス万歳!」
の北欧だから作れるポルノフィルムであった。
その“グロテスクなまでの生々しさ”に、
オイルサーディンとビーフジャーキーの食い合わせの悪さも手伝ってか、
何度か吐きそうになりながら、
‘ポルノ大好き小僧’達は、
「上映時間6分20秒。完全無修正」の、そのフイルムを、
朝まで何度も何度も繰り返し見た。
「バイトが終わり次第、行く」
と言っていた、もう1人の友人・田辺クンも、
築地市場での魚の荷降ろしのバイトを終えたその足で駆けつけ、合流。
「もう1回、もう1回」
とおねだりする田辺クンに付き合って、
それから、更に6回フィルムを回し、キリが無いのでお開きにした。
 どうやら、このブルーフィルムのことは、お母さんや娘ののぶこには内緒らしいので、
フィルムを貸してくれたお父さんには、
直接返さなくてはならない。
しかし、
ぼんが、のぶこ宅にお邪魔している時間に、お父さんが帰宅していることは、滅多にない。
「このフィルムを返したら、のぶこの家庭教師を辞めよう。」
と思っていたぼんだが、
お父さんと顔を合わすチャンスがやって来ず、
したがって、ナカナカ辞められなかった。
1ヶ月程して、とうとうお父さんに遭遇。
夕ご飯をご馳走になったあと、
お父さんの部屋に行き、
「これ、ありがとうございました。
イイもの見せて頂きました。」
「ね?イイ出来でしょ?」
賛同を得て、お父さん、上機嫌。
ぼんは、
「実は、僕、忙しくなっちゃって、のぶこさんの家庭教師を続けられなくなっちゃったんです。」
と切り出すには、今が‘頃合い’だと見た。
のぶこを教えることに、既に苦痛すら感じ始めていたぼん。
お父さんにフィルムを返した今、
‘辞める’ことに、なんら支障はない。
「実は、」
と口に出かかったその時、
お父さんが言った。
「実はねぇ、
あと2本あるのよ、北欧で買ったヤツ。
見る?」
「見ます。」
ぼん、即答。
間髪入れず。
「じゃ、とりあえず1本。
また僕が居る時、返してくれればいいから。」
 「サッカー篇」に続き、
2本目の「‘ヌーディスト村の運動会’篇」、
3本目の「‘レディー・フィヨルド愛の遍歴’篇」
と、計3本のブルーフィルムをエサにされ、
ぼんは、ズルズルとのぶこの家庭教師を続け、結局4ヶ月めに突入した。
しかし、
明らかにヤル気のない僕なのに、
お父さんとお母さんは僕を気に入ってる・・・?なぜ?
ぼんには不思議だった。
             (つづく)


10月27日(日よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その7

 「俺は、夜中にバイトがある。終わり次第、行く。」
と言っていた1人を除いて、
他の友人3人は、
約束の夜10時キッカリに、ぼんの下宿に集まった。
初『ブルー・フィルム』鑑賞を存分に盛り上げようと、
皆が、お酒とつまみ持ち寄りで。
酒は、
●サントリーのカクテルボトル“ブルーハワイ”。
ワインのフルボトルサイズと同じ750ml入り。
今は廃盤だが、
その頃、ぼん達の仲間内で大流行していた。
甘甘(あまあま)で、トイレの芳香剤のような匂いがした。
●サントリーウィスキー“ホワイト”を2本。
コンビニで買ったロックアイスと、ヤカンに入れた水道水で‘水割り’に。
●ビール“2りったる”。
注ぐ時、ピヨピヨと鳴った。
つまみは、
●横田クン持参のオイルサーディンの缶詰。
「映画『ビッグスリープ』のフィリップ・マーロウの影響。」
と、ワケのわからん理由で。
●佐々木クン持参のビーフジャーキー。
三重の実家から頻繁に送られて来るらしい。
「でも、松坂牛のじゃない」らしい。
●梶本クン持参のチーズかまぼこ。
「ポルノは、いつもこれを食いながら見る」。
●ぼんが用意したカルビー緑黄色ポテト。
野菜を練りこんだスナック菓子。
「健康にイイから。」
飲み食いしながら、小1時間のポルノ談議。
ほどよく酔ってきたところで、
いよいよ上映することに。
白い壁に映し出される‘スクリーン’は、
畳半分ほどの大きさだ。
サイレント(音声なし)だが、カラー。
さすが40万円の映写機だけあって、画像はキレイ。
上映開始。
(以下、フィルムの内容につきましては、鬼界さんに原稿を書いてもらいましたので、
そのまま記載いたします。)
ブロンド美女がサッカーのドリブルをしているシーンで始まった。
汗をかいている設定なのか、
Tシャツが不自然にビショ濡れで、ノーブラの巨乳がクッキリハッキリ。
ブロンド美女は、3人のヒゲづら男達をかわし、見事にシュートを決める。
抱き合って喜ぶブロンド美女3人。
3対3のサッカーのミニゲームをやっているのだ。
ヒゲ男達が、ニヤリと目配せするカットがはさまり、試合再開。
と、思いきや、
いきなりブロンド美女を羽交い絞めにし、Tシャツを引き裂く男達。
美女の○○○を毛むくじゃらの○○が○○すると、
美女は必死に抵抗するが、
別のヒゲ男に足を抑えられ、短パンを脱がされてしまう。
美女のはいている○○○なパンティーは、
○な○○のためブロンドの○○がモロ見え。
男がパンティーの上から、

いくら「○○が○○して○○」と書いていても、
過激ですねー、エッチですねー。
このあと、どんどんエスカレートしてます。
鬼界さん、こういうことに関しては、スゴイ記憶力ですねー。
「日直・橋本」で、このフィルム内容の描写を続けるのは、
ちょっと、ナンじゃない?
女の子だもんね、一応、私。
「ぼんが、お父さんから貸してもらった“北欧製ブルーフィルム”は、
マジ、イイ出来だった。」
っつーことで終わって、イイ?
「人がせっかく一生懸命思い出して書いたのに!」
と、鬼界さんは怒るだろうか・・・?
「日直・鬼界」で、独自に書いてもらう?
            (つづく)


10月26日(土よう日) 日直・鬼界
バッティングセンターに行った。
“松坂大輔に挑戦!!”という、150キロのマシーンがあったので、
早速、やってみた。

念のために説明しておくと、
150キログラムのマシーンをバットで殴るのではなく、
時速150キロメートルでピッチングマシーンから発射されるボールを打つのです。
1回、20球で300円。

打てるもんじゃありません。
すっげえ速いんです、150キロって。
マシーンからボールが出たと思った瞬間、すでに目の前を通り過ぎている。
ていうか、マシーンからボールが出る前に、目の前を通り過ぎているって感じ。
とにかく速い。
2球あわせると、新幹線と同じ速さだもん。打てるわけがない。
プロ野球選手はエライなあ。

悔しいので、最も遅いマシーンに行った。時速70キロ、さっきの半分だ。
よぉーし、ぜんぶホームランにしてやるっ!
が、
ぜーんぜん当たんないの、ボールがバットに。
これが僕の実力?
結局、20球のうち、12球空振り、6球ファールチップ、2球キャッチャーゴロでした。
これじゃ、少年野球のチームにもいれてもらえません・・・。


10月25日(金よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その6

 ぼんには、予想外の展開だった。
「鬼界先生、これ、チョット面白いですよ。」
お父さんは、リビングのお母さんを意識してか、声をひそめて言った。
ぼんは、渡されたフィルムとお父さんを見比べながら、
「これは?」   
と尋ねた。
お父さんは、ますます声をひそめ、
「ビーですよ、ビー。」
やけに嬉しそうだ。
「ビー?」
キョトンとするぼんの耳元に唇を寄せ、お父さんは囁いた。
「ブ・ルー・フィ・ル・ム」
「ブルーフィルム!?」
「しーっ!」
(なんか、チープなドラマのワンシーンみたいだ。)
「ポ、ポルノ?!」
「‘北欧もの’です。先生にお貸ししますよ。」
 ぼんは、
宝物をもらったような気持ちで、のぶこ宅を後にした。
「僕、忙しくなっちゃって家庭教師を続けられなくなったんです。」
と、この日言おうと思っていた・・・
なんてこたぁ、きれいさっぱり忘れていた。
あぁ、伝説の‘ブルーフィルム’。
しかも、幻の北欧製。
ブルーフィルムは、
日本でも製作されてはいたが、
「北欧製のクオリティの高さは、それとは比較にならない」
と聞いている。
お父さんは、
「仕事で北欧に行った時、買った」と得意げに言っていた。
「早速、映写機借りなくちゃ!」
ぼんは、逸る気持ちを抑えつつ、眠りについた。
 翌日。
大学に行き、久し振りに映画研究サークル“ボニクラ”の部室に顔を出した。
8ミリの映写機を借りるためだ。
とっくに‘幽霊部員’になっているぼんの顔見知りの部員は居なく、
「貸してよ」
「いいっすよ」  
と軽口で借りるわけにはいかない。
だからといって、貸してもらえないわけでもない。
いくら‘幽霊’とはいえ、ぼんは一応‘部員’だ。
しかも3年生だ。
先輩だ。
エライんだ。
“正当な”理由ならば、後輩達も貸さないわけにはいかないのだ。
ぼんは部長クンに言った。
「エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』の、
映画史上におけるモンタージュ理論を確立した有名な階段シーンを、
批評家時代のトリュフォーが解説しているという、
貴重なフランスシネマテークの8ミリを入手したんだ、僕。
映写機貸してくれる?」
“ボニクラ”が所有する映写機2台のうちの、
上等な方をまんまと借りた。
最新式のだ。
画像が明るく、かなりクリアに映し出す。
どんな“こまい部分”もバッチリだ。
ぼんは、友人4人に声を掛け、
その日の夜、
『北欧ブルーフィルム上映会』を下宿で催すことにした。
          (つづく)


10月24日(木よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その5

 ぼんが何を聞いても、
のぶこの返答は、曖昧で要領を得ない。
ぼんの言ったことが“解かったのか解かっていないのか”、
それがぼんには判らない。
「フフン」「フフン」と答えるばかり。
この「フフン」は、
鼻で笑う「フフン」ではない。
のぶこにとっては、「うん」と言ってるのかもしれないし、
場合によっては「ううん」という否定の意味なのかもしれない。
だが、
ぼんには「フフン」の意味がまったく読めない。
どころか、
のぶこの顔が馬に似ているだけに「ヒヒン」と聞こえる。
ぼんには、
のぶこが、馬の鳴きマネをしているとしか思えなくなってきた。
 ぼん「ここのthatは関係代名詞で、
    “あの”の意味のthatじゃないんだ。」
 のぶこ「ヒヒン」
 ぼん「だから、ここにくるわけはないんだよ。」
 のぶこ「ヒヒン」
 ぼん「わかったな?」
 のぶこ「ヒヒン」
 ぼん「もう一回、訳してみな。」
 のぶこ「ブルルル・・・」
 ぼん「わかってないのか?!」
 のぶこ「ヒヒン」
 ぼん「きさま、馬鹿にしてんのかっ?!」
 のぶこ「ヒヒーン!」
こんな調子。
 ぼんは、「1ヶ月で辞めよう」と思った。
こんな馬相手に英語なんか教えられるかよ。
男子生徒だったら殴るところだが、
さすがに女子を殴るわけにもいかないので、つまらないし。
安いバイト料のうえに、
勉強のあと出してくれる夕ご飯も、コロッケばかりだし。
辞めた、辞めた!
そう決心し、いざ、「実は、忙しくなっちゃって・・・」と切り出そうとした、
例によってコロッケの夕ご飯のあとのこと。
珍しく早く帰宅していたお父さんが、
「鬼界先生、ちょっと。」
と、ぼんを自室に招き入れた。
「実は、娘が鬼界先生のことを‘気持ち悪〜い’と言ってましてね」
とでも言われるのかしらん・・・。
と思っていたぼんに、
「先生は、映画がお好きなんですって?
これ、お貸ししますよ。」
そう言って、お父さんは、1本の8ミリフィルムを手渡したのだった。
         (つづく)


10月23日(水よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その4

 「バレリーナみたいなヒラヒラワンピースに、
ゆるやかなウェーブのかかった腰までの長い髪。
白魚のような指で鉛筆を握る、フランス人形みたいな白鳥麗子チャン。
テキストの問題を読む時、
そっと伏し目がちにすると、
陶磁器のような美しく白い肌に長いまつ毛の影もウルワシイ、
博多人形みたいな有栖川桜子チャン。
あぁ、僕を待っていてくれるのはどっちなの?麗子チャン?桜子チャン?
あぁ、キミに早く会いたい。」
ぼんは、
気も狂わんばかりに、家庭教師“初日”を待った。
想像の中の「中3女子」に、名前まで付けて。
「あぁ、禁断の恋。
先生・・・好き・・・。
僕に恋しちゃイケナイ・・・やけどをするよ。
イヤイヤ・・・麗子は先生が好き・・・。」
ウォーーーーッ!!
このシーンを夢想するたび、
ぼんは頭を机にガンガン打ちつけ、喜びを噛みしめた。
 やってきた初日。
約束は夕方5時。
ぼんは、
その2時間前から、麗子チャンの家の前をウロつき、
なんとか30分前まで持ちこたえ、
とうとう、麗子チャンに会うべく、ドアチャイムを鳴らしたのだった。
案内されたリビング。
そこには、
夢の中で何度も何度もぼんに‘恋を打ち明けてきた’、
カワイイ麗子チャンとステキな桜子チャンは居なかった・・・。
ていうか、名前がちがう・・・。
のぶこ。(「苗字?そんなもの忘れた。」:ぼん談)
いや、
のぶこだって、カワイけりゃいいのよ、僕は。名前なんて。
いや、
カワイクなくてもイイよ。
“ふつう”だったら。
もう、全然OKよ、僕。
「中3女子」ってだけで、もう、「カワイイ」んだから。
麗子チャンと桜子チャンは、あくまで、“理想”だからね。
それなのに。あぁ、それなのに、それなのに・・・。
 のぶこは、 
勉強の時、
いつも、2本線のダサ青色のジャージ上下を着ていた。
肩の上までくらいの長さの髪を真っ二つに結わき、
眉毛がエラク太黒く、
顔も色黒い。
馬に似ている。
鼻の下にはうっすらヒゲのようなウブ毛が。
カリカリカリカリ鉛筆を走らせているのぶこの顔を、
まじまじと見つめるたび、
ぼんは、自分の“運のなさ”に溜息をつくのであった。
ムカつくので、
「おい。
オマエは、なんで、いつもジャージなんだよ!」
と聞いてみた。
のぶこは、
問題集から顔を上げ「ヒヒン」と答えた。
         (つづく)


10月22日(火よう日) 日直・鬼界
こんなメールをいただきました。

『我が家は産経新聞です。
しかも3ヶ月とって4ヶ月目は無料にしてもらってます。
朝日新聞の勧誘が「産経さんと同じ値段にします」というので、
「4ヶ月目は無料なんだけど」と言ったら
「えっ!・・・そうなんですか・・・わかりました、同じ条件にします」
と言ってましたよ。チョロいもんです。
鬼界さんもビール券なんかに騙されちゃだめですよ。』

すごいっ!!これは“魔性の女”テクだっ!!
ばれないように二股かけるのではなく、
堂々と二股をかけ互いに競わせる、究極の男性操縦術を
新聞勧誘に応用するなんて!
あなたは生まれながらの、“魔性の女”なんですね。

つまり、朝日と産経は相手に負けまいと競い合ってるわけでしょ。
だったら、朝日新聞の勧誘に「産経は3ヶ月目は無料なんだけど」と思わせぶりに言ったら、
朝日は、2ヶ月とって3ヶ月目は無料にしてくれるに違いない。
そしたら次に、産経の勧誘に「朝日は2ヶ月目は無料なんだけど」と暗に要求すると
産経は、1ヶ月とって2ヶ月目は無料になるはず。
こうして新聞は1ヶ月おきにタダになります。

となると、「1ヶ月とったら、2ヶ月は無料」にもしてくれるだろうし、
そうすると、「1ヶ月とったら、11ヶ月は無料」になるのは目に見えている。
だったら、思い切って「契約さえしたら、12ヶ月無料」になっても問題ないだろう。
さらにすすむと、「11ヶ月無料だけど、1ヶ月分は新聞代を差し上げます」ってことになるのは明白で、
やがて、「ポストに新聞を入れさせてもらえれば、毎月、新聞代を差し上げます」
という日が来るのは間違いない。

いいなあ、“魔性の女”・・・。


10月21日(月よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その3

 ぼんは、“家庭教師”のバイトをすることになった。
最初の生徒「喜多岡俊雄クン」以来、久し振りである。
てめぇの名前もロクロク書けない脳足りんの俊雄クンを、
殴る蹴るして勉強させ、
見事そこそこの私立校に合格させた・・・
までは良かったが、
喜多岡一族に招待された合格祝賀会で、
母親を犯すわ息子を半殺しにするわの(ウソ)、
乱痴気騒ぎを演じた酒乱のぼんは、
それ以後、
いっさい“家庭教師の口”の紹介は無く、
やむを得ず、
人体実験のバイトでお小遣いを稼いでいたのだ。
自称“優勝請け負い人 江夏”のぼん。
   注:江夏 豊(えなつ ゆたか)・・・・・阪神を追い出され、
                         日ハム、広島と渡り歩き、
                         その弱小2球団を、見事、優勝に導いた、
                         日本プロ野球史上最強のリリーフエース
  
「俺にやらせりゃ、
どんなバカでも、合格まちがいなしさ!」
大学のクラスメート山本さんが、
「あたし、カケモチし過ぎてるから、これ以上ムリ。
鬼界クンに、ひとり、回そうか?」
と声を掛けてくれた時、
ぼんは、そう言って‘大喜びで’引き受けた。
バイト料は、2時間で3千円。
相場以下ではないが、
前回の俊雄クンの時の「2時間5千円」に比べると大幅に安い。
それなのに、
なぜに、ぼんは‘大喜びで’引き受けたのか?
皆さん、おそらく「ご名答。」ですね?
そう。
「生徒は、女の子」。
「中学3年生の女子」を教える喜びを思えば、
バイト料の安さなど屁でもない。
あぁ、夢に見た「中3女子」。
女兄弟も無く、
中学・高校と男子校だったぼんにとって「中3女子」は、
“憧れ”などという言葉ではとてもとても足りない、“夢のような”存在だ。
“夢”そのものだ。
ピアノ・バレエを習ってる、
ヒラヒラのドレスを着たフランス人形のような巻き毛の少女が、
潤みがちの目で「鬼界先生、ここが解からないんですぅ」なんて僕に寄っついてきたら、
まず、僕、ウンコちびるね。
お茶・お花を習ってる女の子もイイぞ。
その場合、やっぱり、家ではいつもお着物かしら?
となると。
僕も和服を着たら、雰囲気バツグンだぜ?
ぼんの夢は果てしなく膨らんでゆくのであった。
           (つづく)


10月20日(日よう日) 日直・橋本
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その2

 「徳永ハイツ」には、
ぼんの他、3世帯が入居していたが、
比較的まともな住人で、ぼんは安心した。
「紅梅荘」の時は、
右隣が“夜な夜な部屋でサッカーの練習をする気チガイ”、
左隣が“1年中、ゴマ油で炒め物をしている中国人”だったので、
今回、
隣人が“学生風の、やけに静かな男”というのは、
ぼんにとって何より快適だった。
が、
ぼんの部屋の下の住人が、どうも気になった。
「徳永ハイツ」は、4世帯とも全部同じ間取り。
6畳の台所・6畳の和室・トイレ。
この間取りで、
ぼんの下の部屋、すなわち101号室には、
家族6人が住んでいた。
両親と、
中学生の長女と次女、小学生の長男と三女。
「徳永ハイツ」が新築の頃、夫婦で入居し、
あれよあれよと子供が増えていったらしい。
「一体、どうやって住んでるんだろう、この部屋に6人・・・。」
ぼんは、アパートの自分の部屋にいる時は、
そのことばかりが気になった。
 その時期、
盛りのついたノラ猫が、夜な夜な、
その101号室の窓の下のあたりで、○○していた。
真夜中、猫の鳴き声で眠れず、
ぼんは、猫が○○し始めると、窓から下の猫たちに水を掛けた。
汲んじゃぁ掛け、汲んじゃぁ掛けして、
どんぶりで30杯。
毎晩。
1週間ほど経ったある日の真夜中、
ぼんが、窓から水をまいていると、
101号室の窓がガラッと開いた。
オッサンが首を出し、上のぼんに向かって叫んだ。
「勘弁してくださいよぉ、
オタクが水まくんで眠れないんですよぉ、ここんとこ」
ぼんは答えた。
「ボクも、猫の鳴き声で眠れないんですよぉ、ここんとこ」
ぼんは相変わらず、水をまき続けた。
 それから2ヶ月ほどして、
101号室の6人家族は、どこかへ引っ越していった。
15年間、何があっても引っ越さなかった101号室。
そんな家族を引っ越させたのは、
果たして、ぼんだったのか・・・?
今となっては判らない。
       (つづく)


10月19日(土よう日) 日直・橋本
(10月15日のつづき)
『ぼんの青春 〜成田東篇〜』 その1

 大学3年の秋。
ぼんは、三鷹のアパート「紅梅荘」から、
いよいよ、東京23区の1つである杉並区へと引越した。
杉並区成田東。
アパート名は「徳永ハイツ」。
最寄駅から徒歩5分。
エラ便利。
駅から徒歩30分もかかる「紅梅荘」では、
毎日、養成所に通うのが大変・・・という理由で、
ぼんは「徳永ハイツ」への引越しを決めたのだ。
「紅梅荘」の方が、
一橋大学には近いが、
テストの時以外は、ほとんど大学には行ってないぼんにとっては、
「映画を観に行くのに便利」「養成所に近い」
この2つを満たしてくれる「徳永ハイツ」は、好都合だった。
築15年、木造2階建て。
4世帯だけの小さいアパート。
間取りは、
6畳の台所と、6畳の和室。風呂なし、トイレ付き。
日当たりも風通しもイイ。
ただ、1つヘンな所があった。
“タタキ(玄関の、靴を脱ぐところ)”と、
それに続く“台所の床”が、フラットなのだ。
今で言う「バリアフリー」。
段差が1ミリもない。
タタキのコンクリートが、何の前ぶれもなく、突如フローリングになっている。
チョット気をぬくと、
靴のまま台所を通り抜け、6畳の和室にたどり着いてから、
「あっ、しまった!」ということになる。
‘段差が無い’のと
‘つい忘れて土足で上がってしまう’のとで、
台所は常に砂でジャリジャリしてて、まるで“お外”と変わりなかった。
遊びに来た友人達も、
まさか、そこが‘既に室内’だとは思わず、
「すげぇ。鬼界んちって、アメリカ式じゃん。」
と、靴を脱ぐものは誰も居なかった。
いつのまにか、ぼん自身も、
「靴を脱ぐのは6畳の和室だけ。台所とトイレは外用の運動靴で歩く」ことにしてしまった。
                       (つづく)


10月18日(金よう日) 日直・鬼界
備長炭のマイナスイオン効果が早くも出た。
朝、起きると、いつもの頭痛がきれいさっぱり消えていた。
正直言って、驚いた。
こんなに頭がスッキリするなんて。

スッキリした頭で気がついた。
これまで、朝起きて頭痛がしたことなんてないや。
頭痛がしなくて当たり前だ・・・。

そうなんです、備長炭の効果はよくわからんのです。
そもそも、マイナスイオンて何?
冷たーいイオンなの?プラスイオンは害悪なの?
マイナスイオンが体にいいとか言うけど、医学的には全く立証されてないんでしょ。
目に見えないし、匂いもしないし、触るとビビッとしびれるわけでもない。
ホントに備長炭からマイナスイオンは放出されてんの?
疑いだすとキリがない。

(マイナスイオンを発生させるパソコンが発売されたけど、
ウソなんじゃないの?
ただ送風してるだけじゃないの?確かめようもないしね。)

結局、‘気’のもんですね。
効く!と思えば効くし、効く?と思うと効かない。

げっ!じゃあ、僕は一生、効かないってこと・・・?


10月17日(木よう日) 日直・鬼界
備長炭はスゴイのだそうだ。
お風呂に入れると温泉になり、冷蔵庫やげた箱の消臭をし、
ご飯がふっくら炊け、除湿・防カビ効果があり、
花瓶に入れると枯れた花が再び咲くのだそうだ。
魔法みたーい!!

早速、購入した。
風呂用とか炊飯用とか、目的別に売ってるのは割高なので、
アウトドアグッズコーナーで燃料用の大箱を買った。

このままじゃ、バーベキューをするしかないので、
ちょっと準備が必要らしい。(by説明書)
よく水洗いして、鍋で煮沸して、乾燥させなければならない。
やりましたよ。もー大変。
お風呂場は真っ黒になるし、手も真っ黒になるし、ヤカンも真っ黒になっちゃった・・・。
オレは炭焼き職人か?

そして、寝室のすみに置きました。
マイナスイオン効果により、空気が爽やか、気分もスッキリするそうだ。
楽しみにして眠りについた。
が、
深夜、庭の枝が折れる音で目が覚めた。
ほんの小さな音だったが、聞き逃さなかった。
マイナスイオンのおかげで耳も鋭くなっているのかもしれない。
ポキッ・・・
まただ。誰かが枯れ枝を踏んでいるのだ。
ポキッ・・・パキッ・・・ポキッ・・
だんだん近づいてくる。・・・・・誰・・?
足音が止まった。目を上げると、窓に人影が映っている。
息もできないくらい恐ろしく、身動きできない。
人影はゆっくりと窓を開け始めた。

ここで目が覚めた。
ポキッ、ピキッと鳴っていたのは、備長炭だった。

説明書に書いといてくれよ!!煮沸した炭はしばらくポキポキ鳴りますって。
夢みちゃったじゃねえかよ!
あー、こわかった。


10月16日(水よう日) 日直・鬼界
(きのうの日誌を読んで)
取材拒否なんかしませんよー。
ベラベラしゃべりますぜ。

ただね、問題あるんだよね、実名だすと。
‘それは私のパンツよっ!’事件にしても、
‘放射能を浴びて行方不明’事件にしても、
‘旅公演で地縛霊’事件にしても、
あの人たちの名前出しちゃうと怒られるもんね。

‘岡田’なら‘田岡’、‘井筒’なら‘筒井’って逆さに書けばバレない?
あ、ダメだ。
‘鈴木’は‘木鈴’、‘武者小路’は‘路小者武’になっちまう。
そんな名前はいねえや・・・。なんて読むかわかんないし・・。

ま、いいか。てきとーな仮名で。
てなわけで、近々、連載開始!されるそうです。


10月15日(火よう日) 日直・橋本
 「鬼橋日誌を最初から読み返してしまいましたぁ!
『ぼんの青春』、
本当に、あと40年くらいしないと連載は再開されないんですか?
続きが読みたいです!是非、お願いします!」
このようなメールを頂きました。
M子さん、あなたって人は。
まさか、読み返す方がいらっしゃるとは。
よほど、おヒマだったんですね?
いえ、いえ、嬉しい限りです。

そもそも、
「鬼界さんは‘おぼっちゃま’なの?!」
を検証すべく、
『‘鬼界さんって・・・おぼっちゃまだったのですね’についての一考察』と題して連載がスタート。
都会のショップの兄ちゃんにだまされ、
“パンチパーマをかけた、ちんちくりんなトラッド野郎”スタイルで出席した
大学入学式。
「トラッドの面汚し」と、皆に石を投げられ“引きこもり”をした、
おぼっちゃま18歳の春。
「そんな‘純’なおぼっちゃまが、なぜ、今のようなイジワル君に?!」
次には、それを解明すべく、
連載は『ぼんの青春〜恋ヶ窪篇〜』へと続く。
掃き溜めのようなアパートでの、初めての1人暮らし。
ウンコのあとの「お便所⇔自室 決死の往復うさぎ跳び」で知った、
世間の非情さ。
京都を出る時に母が言った言葉を、改めて、心に刻む。
「東京ではな、ええとこの学校の子は、悪い女が寄ってくるから、
気ィつけなあかんで。」
(この母にして、この子あり。
ちなみに、
「母は、僕が大学卒業してからもしばらく、こう言ってたが、
今は言わなくなっちゃった・・・。」(鬼界さん談)
「どんな女でも、寄ってきてくれたんなら、ありがたいと思わな。」
って感じ?)
小巻ちゃんへの、初めての恋。
その恋に破れた揚げ句の酒乱への道。
そして、
いよいよ、演劇を始めた理由が明かされる『ぼんの青春〜三鷹篇〜』
「勉学と映画を観る」ために東京に出てきたはずなのに、
某俳優養成所に入所。
毎夜繰り広げられる酒宴の為の、
‘バイトに接ぐバイト’の生活。
あぁ、一体、ぼんは、どうなってしまうのか・・・。

鬼界さんに取材しなきゃなんないから、
結構、面倒なんですよ〜。
近日、定例ミーティングの予定なので、
ウマクすれば聞けるかも・・・です。
どうかなぁ、聞けるかなぁ。
でも、
ここまでお膳立てしたら、鬼界さんも取材拒否できないよね!


10月14日(月よう日) 日直・橋本
 私には、
電車やバスに1人で乗った時、
ざっと乗客を見廻して、
「今、もし、車両ジャックされたとしたら、
私は、一体、何番目くらいに、いたぶられ殺されるだろうか?」
と考えるクセがある。
恐らく、ず〜っと前に読んだ
「バスジャックした犯人達に、いたぶられ、
順番に1人づつ殺されていく人質達の恐怖」を描いた、
こわ〜い本の影響だ、この習慣は。
‘影響’っつーか、‘まんま’だけど。
(そんなん読まなきゃイイんだよ、私も。
単純なんだからさー。)
今まで静かに読書してたオジサンが、いきなり豹変し、
ピストル片手に、
「とりあえず、見せしめに、ひとり死んでもらうぜ。」
と言った時、
「よ〜し、まずはオマエだ。なんの悩みもなさそうでムカツクからな。」
と指名されたら、
どうする?
ヤだ。
大股開いて2人分の座席を占領し、アホ顔でメールを打ち続けているバカ男、
コイツを1番目にして欲しい。
とか考えたりしてしまう。
 こんなヒマ人は、てっきり私だけかと思ってたら、
そうではないらしい。
偉い人も“そういうことを考える”ということを、最近、知った。
作家・林芙美子は、
「電車に乗ると、必ず、あたりを見廻す。
今、この瞬間に電車がブツかったら、
この中の誰と手をつないで逃げようか」
と、考える習慣があったらしいし、
映画監督・大森一樹は、
「自分が入れ替わるんだったら、
この中の誰にしようか」
と、物色するらしい。
「容姿端麗の、この人と入れ替わったら、実は、大病であと3ヶ月の命・・・とか?」
「この、羽振り良さそうに見える人も、実は、借金地獄でお先真っ暗・・・とか。」
などなど、
さんざん心の中で入れ替わった挙句、
「やっぱり、‘自分’でいいかな・・・。」
となるそうなのだが。
電車の中・・・みんな、いろいろ考えてるんだなぁ。


10月13日(日よう日) 日直・鬼界
昨日の夕方、インターホンが鳴った。
やけに明るい声で「鬼界さ〜ん、お届けものですー」と言うので、
ドアを開けると、
歯が1本しかないオッサンがニコニコ立っている。
「これを持ってきたんですよ」と差し出したのは、
ジャイアンツ優勝記念のジャビット君バスタオルだ。

はは〜ん、9月いっぱいで読売新聞をやめたので、勧誘に来たんだな。
自慢じゃないが、僕は新聞の勧誘員に負けたことがない。

「読売をとってないのに、悪いっすねえ。頂戴します。それじゃ。」とドアを閉めようとした。
「あっ、ちょっと待って」と慌てるかと思いきや、
1本歯のオッサンは悠然と落ち着き払い「まだあるのに・・・」と
胸ポケットからビール券の束を取り出した。5cmくらいの厚みがある。
ドアを閉める僕の手が止まった。

ラッキー!!もしかして、あれももらえんの?
いや待て、がっついたら相手のペースに巻き込まれてしまうぞ。
よし、とにかく、もらえるものだけもらっちゃって追い返そう。

「巨人が優勝したから配ってんですよ」とニコニコしながらビール券2枚を僕に渡した。
ん?勧誘しないの?と不思議に思ってたら、
さらに、ビール券を2枚差し出す。
反射的に僕が手を出した瞬間、
「また、とってもらえないかな、読売」と切り込んできた。

いかん!不意打ちを食らった!!
ビール券の両端を2人でつかみ合ったままだ。
なんて中途半端な体勢・・・。

すると、「6ヶ月でいいからさ」と言いながら、1本歯が手を離した。

いかん!いかん!すっかり1本歯ペースだ!!

「新聞とっても、読まないから、たまるばっか・・」
と僕が言いかけると、
「じゃ、3ヶ月。ねっ、ねっ。」と言いながら、
さらに2枚のビール券を強引に僕の手に押し付ける。

び、ビール券6枚ももらっちゃった・・・3ヶ月だけ取る?・・・
いや、ダメだダメだ!弱気になってどうする!頑張れ、鬼界浩巳!!

「ホント言うと、読売は新聞代が高いから、産経新聞にしたんですよ。」
すると、1本歯は即座に「ウソでしょ」と言い放ち、
なんと、千円札の束を取り出したのだ!
「わかったよ、お兄さん。産経との3か月分の差額をオレが出すよ。はい、3000円。
これでなんの問題もないわけだ。
それじゃ、この契約書に名前書いてくれるかな。
明日の朝刊からいれるから。心配しなくていいよ、今月分はサービスだよ。
ほんじゃ、ありがとね。」
オッサンは笑いながら去っていった。1本歯が丸見えだった。

最後の追い込みは、あっという間の出来事で、気がつくと、契約させられていました。
1本歯さんは、3000円払っても儲けがあるのでしょう・・・。
プロの技です。敬服。


10月12日(土よう日) 日直・鬼界
〜今週のニュースから〜

僕が毎日通る道に「神尾電気」という電気屋がある。
看板には、カタカナで「カミオデンキ」と書かれている。
だから、「カミオカンデ」の記事を見たとき、
「え?カミオデンキ?」と驚いてしまった。

カミオデンキ
カミオカンデ

ね?似てるでしょ?

人間の悲しさは、ここからです。
次の日も、その次の日も、「え?カミオデンキ?」と思ってしまうんです。
もちろんすぐに「カミオカンデだった」と気付きますが、
その文字を目にした瞬間、脳は「カミオデンキ」と読んじゃうんです・・・。
習慣は恐ろしいです・・・。

でも、ちょっと言い訳させてもらうなら、
神尾電気でいつも店番してるのが、
「こいつはいつか犯罪して新聞に載るに違いない」と思わせる、
モシャモシャ頭で、目つきの悪い、下唇の飛び出した、感じのわるーいオッサンなんです。
ね?僕の脳だけが悪いわけじゃないでしょ?


10月11日(金よう日) 日直・鬼界
僕が不快感を抱くメールは、
嵐のように舞い込む、H系のメールだ。

はっきり言って、不快で不快で仕方がない。
開けたいのに、開けられないんだもん!
だって、怖いじゃん。
ほんのちょっと開けただけなのに21万円も請求されたら、どうする・・・?
スケベ男をターゲットにした凶悪ウィルスメールだったらどうする・・・?
これが他人のパソコンなら、正々堂々と全部開けてやるのに・・・・くそっ。
だから、件名だけを眺めてガマンしている。

「無修正○○○!!」
「●●レースクィーンの・・・●●」
「●●人気アイドル・W.S.の・・・●●」
このへんは、オーソドックスな件名だ。

呼びかけ系の件名もある。
「里香と会ってみない?」
「ホカホカの下着、ほしい人っー?」
「ケータイの番号、教えます」
「制服あげまーす」

「ホントに会えんのかよ!」「ホントにくれんのかよ!」「ホントに教えてくれんのかよ!」
いちいち言いたくなります。

次から次に、魅惑的な件名を考えなければならないから、
業者の人も大変です。

僕が今までで一番気に入った件名は、
「緊縛は綿より麻。」
この事務的とも言える、断固たる言い切り!
マニアの強い信念がひしひしと感じられる。
が、ぜんぜんヤラしい感じがしない上に、
なんのことかよくわからないので、効果は薄かったと思う。


10月10日(木よう日) 日直・橋本
 私が昨日メールを送った知人(女)から、
今日、早速、返信メールが来た。
打てば響くようにメールしてくれたことは、
スゴク嬉しいのだが、
その返信メール、なんともいえない不快感が・・・。
それ、こんなやつ。
  (注:私が送った文の内容は、ホンモノとは全く変えてありますが、
     知人のほうのは、ソノママです。)

 > 風邪気味で、医者に行ったんだけど、私を診た女医はヒドかった!
 >人の話、聞かないもんね。
 > だからって、その女医が、いろいろ説明してくれるでもなし。
 >「患者一人一人に、そんなに時間はかけられない」っていうレベルじゃないね、
 > あそこまでゾンザイな態度になると。

 へぇ〜!

 >医師個人の人間性の問題だね。
 
 そうだね〜!

 > 前に、私が「産婦人科に行くんだったら、絶対に女医じゃなきゃヤダなぁ」
 >って言ったら、
 
 ほぉ?
 
 > その場に居た友達全員が、
 >「ダメダメ!かえって男の先生の方が丁寧だってば。
 >女医は乱暴だよ。男の方が優しくやってくれるんだってば!」って言ってたけど、

 へぇ〜!

 > 「う〜ん、有り得るなぁ。」とチョット思ったね、あの内科の女医を見て。
 
 なるほど〜。

って、こんなんなの、その返信メール。
まだまだ続くの、この調子で。
最後の最後まで、相づち打ってるだけ。
オマエは“相づちマン”か?
私が送ったメール全文に「へぇ!」とか「はぁ?」とか「ほぉ!」とか、
相づちだけ打って返信して、
それ読んだ私が喜ぶとでも思ってんのかなぁ、この人。
自分の文章を読み返してみろ!ってこと?
キサマは“添削マン”か!?
それでなくても、私は、
「>」をズラズラ並べて元の文を引用する返信の仕方が、
するのも、されるのもキライなのに。
「これから、このことについて、私の考えを述べますよ〜。」
という意味で、引用されるんだった別だけどね、
書いた自分も思い出せるし、
相手の手間も省けるし。
でも、
“相づちを打つ”だけって、ひどくない?
私、メールのやり取りをあまりしないので、わからないんだけど、
こういう人って、結構いるの?


10月9日(水よう日) 日直・鬼界
皮をむいてしまった、おさかなソーセージを冷蔵庫にしまおうと、
サランラップを切った。

細長い長方形に切ろうとするのだが、
ぜーんぜんうまく切れないっ!
切り始めは、刃に沿ってまっすぐ切れるけど、
残り3分の1くらいのところで、切り口がフニャラと曲がってしまう。
何回やっても、一反木綿(ゲゲゲの鬼太郎の友達)みたいだ。
一反木綿が10匹(10体、10反、10パイ、なんて数えるのだろう?)に
なったところで、あったまにきて、
思い切って、大きく切ってみた。
(思い切って、と言っても、正方形になるくらいです。けっこう小心者だったりして・・)

今度は、スパっとまっすぐ切れた。
が、角っこが折りかえってしまって、くっついちゃった。
引き剥がそうとすると、別の角がくっつく。そこを剥がそうとすると、別の角が・・・。
何回やっても、ラップが四角く切れない。
クシャクシャになった五角形、六角形、七角形ばかりだ。
もったいないので、おさかなソーセージを、五角形のラップで包み、
それをまた、六角形のラップで包み、
それをまた、七角形のラップで包み、
それをまた、五角形と七角形の合わせラップで包み、冷蔵庫にしまった。
何が包んであるのか、他人には絶対わからない。

サランラップはどうすれば、上手に切れるのですか?


10月8日(火よう日) 日直・鬼界
僕の経験から言わせてもらえば、
日本全国のほとんどの区役所・市役所・県庁は、
トイレットペーパーが粗悪だ。

とにかく紙が薄い。向こうが透けて見えるくらい薄い。
だから、お尻を拭いてるときに、指が紙を突き破って、直接タッチしてしまうことがある。
充分に注意を払い、ペーパーを何重にも折りたたんでも、
ちょっとした力の入れ具合で簡単に突き破るので、ご注意を。

最大の問題は、ペーパーのどちらの面で拭くかだ。
こういうペーパーは、表の面(巻いてある外側の面)が
異常にツルツルにコーティングされてるのだ。ビニールみたいなんですよ、マジで。
だから、この面で拭いても、
アレをアソコになすりつけてるようで、拭き取り感がなく、きれいになった気がしない。
裏の面(巻きの内側ですね)は、
表の面の反動なのか、悲しいくらいにザラザラしてる。月面って感じ。
どんなにソフトに拭こうとも、痛くて痛くて痛くて、
ヘタすると出血してしまう。
どちらで拭いても、ちょっとした地獄なのだ。

さあ、試しにあなたの地元の役所のトイレに行ってみましょう!
スリリングな体験ができます。


10月7日(月よう日) 日直・橋本
 昨日、図書館に寄った。
日曜日とあって、さすがに混んでいる。
貸し出しカウンター、長蛇の列。
(なんか‘茶色っぽ〜い’感じなの、その列。
よくよく見ると、
「なんだ?今日はジジイの日か?」
っちゅうくらい、
見事にオジイサンばっかが、その列に並んでいたからだ。)
「ちぇっ。しょうがねーなー。」
列の最後尾に並び、ふと横を見ると、
隣の‘貸し出し受付け’には、2人しか並んでいない。
「なんだ、こっちはガラガラじゃん。」
すいてるほうに並びなおした。
2つある‘貸し出し受付け’、
「なんで片っぽだけ混んでるの?」
ガラガラゆえに、とっとと借りる手続きが済んだ私は、
そのワケが知りたくて、
カウンターの横で様子をうかがった。
結果。
そのワケは、‘貸し出し受付け係’にあった。
オジイサン達が列をなしているほうの係の人は、
妙に色っぽいオバサンだ。
‘派手な茶色’に染めた髪をアップにして、化粧もバッチリしている。
「次のかた、どうぞ〜ん」
「お待たせしちゃってごめんなさいね〜ん」
と愛想を振りまく声が、青江三奈みたいに、やたらハスキーだ。
図書館に来るたび、いつも、
パートのオバちゃんが入れ替わり立ち替わり何人かづつ居るが、
この‘三奈さん’は、初めてお目にかかった。
新人か?
自分でやってたスナックがつぶれたかして、図書館でパートを始めたのだろうか。
三奈さん、大人気。
ジイサンのアイドル。
どんどん並んで、列が一向に縮まらない。
私が手続きをしてもらったほうの係の人は、
病気持ちの下條アトムみたいな人で、
こっちは相変わらずガランチョ。
やっだね〜。
男って、いくつになってもスケベなんだね〜。
昨日の「からくりTV ご長寿クイズ」でも、
「ことわざの問題です。
意外なところから意外なものが現れることを例えて、
“ひょうたんから・・・”さて、なんでしょう?」
という問題に、
勇んでボタンを押した挙句、
「もっこり」
と叫ぶように答えたあのオジイサンは、
アホですか?


10月6日(日よう日) 日直・鬼界
先日、父のことを日誌に書いたから
というわけじゃないけど、
グッドタイミングに、父から速達が送られてきた。

開けてみると、歯間ブラシだった。
歯間ブラシを速達で・・・?
タバコくらいの大きさの箱(ただし、厚さは半分くらい)に‘試供品・4本入り’と書かれている。
が、中には2本しか入ってない。
使いかけをわざわざ送ってきたの・・・?
手紙が同封されている。
「使ってみなさい。」この一言だけ・・・。

ちょっと謎めいているが、
父とは長い付き合いなので、だいたい状況が想像できる。

薬屋で歯ブラシを買ったか、歯医者に行ったかして、
父は歯間ブラシの試供品をもらったのでしょう。
「なんじゃこりゃ?小人の煙突掃除か?大の男がこんなチマチマしたもんを使えるか!」
などと、さんざん文句を言いながら、
でも、使ってみたんです。
そしたら、すこぶる快適!気分爽快!
そうだ!浩巳に送ってやろう!
あっ、でも、全部送ると予備がなくなる・・・う〜む、困った・・・。
そうだ!浩巳とワシとで2本づつ分けたと思えばいいのだ!
だから、もう1本もらってもバチは当たるまい。
でも、少々後ろめたいな・・・
同封する手紙も簡単なものでいいか・・・。
そうだ!その代わりに速達で送ってやろう!それがいい、それがいい。

こうして、僕の手元に、速達で、ハンパな歯間ブラシが届いたというわけです。

「わざわざ送らなくてもマツキヨに行けばすぐ買えるのでは・・?切手代のムダなのでは・・?」
と言ってしまえば、それまでですが、
うるわしい親子愛です。
僕の父は、こういう人だ。


10月5日(土よう日) 日直・橋本
 東急ハンズで見つけた。
29日の日誌で鬼界さんが書いてた「鼻を高くする器械」。
(決して、私はこれを買いに行ったわけではなく、
ハロウィーングッズをのぞきに行った際、
ばったり遭遇。)
見本が、プラスチックの顔型に装着されていた。
正確に言えば、
誰かが試着したあととみえて、
顔型の鼻の穴にピタッとハマッテおらず、ちょっとズレて。
「なんだよ、ちゃんと戻しておけよ。」
正規の位置に戻しておいてあげようと手に取った瞬間、
案の定、誘惑が。
「ちょっと、つけてみよっかな」
「いかん、いかん。
こんなプラスチックの顔型につけてたって笑っちゃうんだから、
ホンモノの人間がつけたら、もっと笑っちゃうよ。」
「でも自分だけが見るぶんには、いいんでない?」
周囲に誰も居ないのを確かめ、
素早く装着。
確かに、なんか“軟骨”が持ち上がる感じ。
「しかし、こんなふうに軟骨持ち上げてて、
‘鼻の穴丸見え’の鼻になっちゃわない?
そういう鼻の人居るよね。
ああいう人、鼻毛ほっとけないから大変なんだろうなぁ。」
と、装着感をしみじみ味わいつつ、
おのれの顔を鏡に映そうと・・・。
ないじゃんかよ、鏡が!
鏡、置いとけよ!
せっかく装着した今、見ないで取り外すわけにはいかない。
鏡がありそうな場所の見当をつけ、
鼻を両手で覆い、サササーッと移動。
鏡に映った自分の顔を一瞥し、
「なるほどね。」と納得し、
再度サササーッと戻り、
器具を元に。
慌てて元に戻している作業中、誰か、お客さんの視線が。
試着しようとしてるなどと思われたら大変だ。
「へぇ〜、こんな物、売れんのかね。」
というような手つきで、おっぽりだし、さり気なく売り場を去った。
遠巻きに様子をうかがうと、
そのお客(若いサラリーマン風)が、
「なんだよ、ちゃんと戻しておけよ。」
という感じで手に取った器具を、ジッと見つめている。
きっと、例の誘惑と闘っているに違いない。
「ちょっとつけてみよっかな」と・・・。

これが何回となく繰り返されようが、
‘買う人’って、やっぱ居ないと思うんだよねぇ。


10月4日(金よう日) 日直・鬼界
父のことをまた書こうと思ってたら、それどころじゃありません。
朝、起きてみると、
町内の電柱という電柱すべてに張り紙がしてあるじゃありませんか!

トリ探してます!!
オウム(名前:ハッピー)
ラグビーボールくらいの大きさ。羽根の先が赤い。
英語で話します。
見かけた方はお電話ください。必ず謝礼します。

愛するペットを探す必死の思いはヒシヒシと伝わりますが、
トリでしょ?どんな電話すればいいの?
「東の空へ飛んで行くのを見ました」
こんな情報が役に立つ?

「今、うちの塀に止まってます。すぐ来てください。早く早く!」
急いで行ってみると、
「ああ、なんてことだぁ!!3秒前まで、ここにいたのに・・・。東の空へ飛んで行きましたよ。」
こんな風にイタズラされるかもしれないし・・・。

それなのに必ず謝礼くれるの?
なんだか、10月1日の日誌の西友と似てる・・・。

ハッピー君が1日も早く見つかることを祈ってます。


10月3日(木よう日) 日直・鬼界
深夜、父から電話がかかってきた。

「浩巳っ!重大な願いがあるんや!爪切りを大至急、買ってくれ。
貝印の‘じぇえてぃあー’っちゅうシリーズの、スチール製の水色のヤツや。
ほな、頼んだで」

と、電話を切りそうになったので、慌てて言った。
「ちょ、ちょっと待ってえな。なに言うてんの?」

父はいつもそうだ。
自分の言いたいことを言い終えると、電話を切ろうとする。
相手の反応なんて関係ない。

話を聞いてみると、
先月、街へ出て、ふと立ち寄った店で爪切りを買ったのだそうだ。
使ってみると、ものすごく使い心地がいい。
昨日、街へ出たついでに、その店に行ってみると、なんと
その店は跡形も無くなっていたのだそうだ。
何軒もデパートをはしごして、その爪切りを探したが、見つからない。
そこで、僕に爪切り探索命令が下ったというわけだ。

「新しい爪切りを買って、どうすんの?誰かにあげるの?」
と、尋ねると、
「アホっ!こんな気持ちのええ爪切りを他人になんかやれるか!」
と怒っている。なんて利己主義。
「今使ってる爪切りが壊れそうなんか?」
「アホっ!そんなヤワな爪切りをワシが使うわけないやろ!」
「ほんなら、なんで新しいの買うの?」
「アホやなあ。欲しいからや。」

僕の父はちょっと変わっている。
僕には時々、理解できない。

人生において爪切りを何度も買う人は、あまりいないと思う。
それも壊れたから買い換えるのではなく、ただ欲しいから買うなんて。
壊れた場合の予備ではない。
欲しいから買うのだ。
買ってどうする?床の間に飾って、毎日眺める?
そんなことするとも思えない。
なのに、深夜にわざわざ電話をかけるほど、その爪切りが欲しいのだ。
わからん・・・。

僕の父は、こういう人だ。


10月2日(水よう日) 日直・橋本
(一昨日のつづき)

『めざせ!金井チャンの鼻』は、まったく失敗に終わった。
残念無念。
持って生まれた自分の体の形を、
お手軽な方法で‘変える’なんてことは、
そうそう出来るもんじゃないのです。
その点、金井チャンはラッキーでした。
しかーし。
実は、
私にも、1箇所あるんです。
“持って生まれたヤツを、執念で変化させた”箇所が1つだけ。
さて、どこでしょう?
答え。
手のひらの『生命線』です。
 中学・高校を通して、
クラスメート達との「生命線の長さくらべっこ」において、
私は「無敵の‘若死に’」でした。
常に「だいたい20代後半で死ぬね、これ」
という見解でした。
(ついでに「ありゃ?結婚線、無いよ?」も。)
「人生は、‘太く短く’がいいもんね。30年生きれば充分だ。」
などと豪語し、ぜ〜んぜん気にしませんでした。
ところが。
大学3年の時、
『手相研究会』のキャプテン(って言うのか?)に、
「ハッキリ言っていい?キミ、残念だけど早死にするよ。」
と言われた時は、大ショック。
なんせ‘キャプテン’だからね、手相研究会の。
日々、手相ばっか研究してる会の一番エライ人だからね。
その人にマジに「死ぬよ。」って言われたんだからね。
まいっちゃうよね。
中坊の時は、
「まだまだ先じゃん。」だったけど、
大学3年の時は、
「げーっ!あと10年のうちに死ぬんじゃん!」だったからね。
慌てました。
 その日から、
ヒマさえあれば、
“シャーペンの先(芯は出さない)”でスジをつけました、生命線を延長するべく。
私の手相、
生命線の“途切れ”から1cmくらい先で、また、“線”が始まっている。
なんの線かは不明だが、手首近くまで伸びている。
生命線を延長して、この‘なんかの線’にウマクつなげられれば、
人並みの長さの生命線になれる。
そう踏んで、来る日も来る日も、
シャーペンの先で『1cmのスジ』をつけ続けた結果、
とうとう、
“もともとの生命線”と“なんかの線”はつながりました。

私が作った1cmの線。
ちょっと薄いけどね。


10月1日(火よう日) 日直・鬼界
概要を説明しておくと、

西友で、カナダ産の豚肉を国産と偽って販売していたことが発覚しました。
こんな時期にマズイっ!「西友、お前もか・・・」って言われちゃう。
そこで西友は、謝罪として、豚肉を買ったお客さんに代金を返金することにしました。
レシートを持ってなくても、返金いたします。
私達がわるうございました。ほんとにすみませんでした。

この記事を読んだとき、僕は
「よっしゃ!豚肉は買ってないけど、返金してもらいに行こっと!!」
と、思いました。(この場合、誰でもそう思うでしょ?)
が、
記事をよく読むと、‘札幌の西友’じゃありませんか!!
「ちっ!飛行機代で損すんじゃねえか!
茨城あたりだったら、行ってこましてやったのに・・・」
と、あきらめました。

なのに、なんと、40万円返金してもらったヤツがいるんです!
これには参りました。常識破りです。尊敬しちゃいます。
こういうのを、‘人間が大きい’というのでしょう。僕なんかまだまだ小者です・・・。

豚ロースですよ。せいぜい、100グラム198円です。
40万円ってことは、202.02キログラム買ったってことですよ。
豚ロース200キロぉ〜?KONISIKIよりも重いぞー!
いくらなんでも、バレバレじゃん。
「本当にそんなにお買いになったのですか?」と聞かれたら、なんて答えるの?

「‘ちびっこホーム’という孤児院をやってまして、孤児たちは豚肉がだーい好きなんです」
それとも
「オレは豚肉しか食えねえ病気なんだっ!だから、豚肉をいっぱい買うんだよ!!」
と開き直る?

なんにせよ、その人は40万円もらったのです。
くっそー、40万かあ、そこまで思いつかなかったぜ・・・。


9月30日(月よう日) 日直・橋本
 昨日の鬼界さんの日誌の「鼻を高くする器械」、
私が思うに『効果は、期待できる』です。
ただし。
『小さい頃にやれば』です。
‘歯の矯正’だって、小さい頃にやればラクラクだし、
‘クラシックバレエ’だって、小さい頃に無理矢理、エックス脚にするもんね?
「小さい頃なら、
まだ骨がヤワヤワだから、チョットくらい好みの形に整形できる」
っていうことなのかしらね?
(ホントかよ。)
 高校1年の時のクラスメートの金井チャン。
初対面で「この子、なんかカワイイなぁ。」という印象を持った。
なんとなく、‘普通のカワイイ顔’とは違ってる。
「なにがカワイイんだろう?」
とよくよく見ると、
“鼻がカワイイ”。
ん〜、なんて言ったらいいのかな、
お鼻の先ッチョが、ツンと上がってる感じ。
イングリッド・バーグマンの鼻の形にそっくり。
仲良くなってから金井チャンに聞いてみた。
「鼻、外人みたいでカワイイよねぇ。なんで?」
金井チャンいわく、
「‘外人の鼻’にしたくて、小さい頃から、ヒマさえあれば鼻をつまんでた。
家に居る時は、ず〜っと、クリップを改良したやつで鼻をはさんでた。
理想の鼻になったから、今は、やってないけど。」
言われてみると、
金井チャンは、無意識に鼻をつまむ仕草をよくすることに気がついた。
クセになってしまったのだろう。
その日から、
私は‘金井チャンの鼻’になりたくて、ヒマさえあれば鼻をつまんだ。
授業中、
つまみ過ぎて鼻が真っ赤になり、
「どーしたー、橋本ー。なーにを泣いているんだー。(こういう喋り方をする)」
と、先生に咎められたこともあった。
結果。
まったく変化なし。
骨が固まってない子供のうちに手を入れなきゃダメなのだ。
遅かりし。
なので、
昨日の日誌の写真、
「大人のモデルさんが装着している」のは、チョットどうかなぁ。
あやしいなぁ。
誰か試してみて下さい。


9月29日(日よう日) 日直・鬼界
こんな広告がありました。


気軽に変身して、もっと魅力的に!
鼻に装着して軟骨を持ち上げることで、鼻の高さを矯正します。
(6,800円)

どう思います?このいかがわしさ!

モデルさんは涼しげな顔で装着してますが、
こんなもん、いつ装着するのでしょう?
通勤電車の中や、会社や、フィットネスクラブや、合コンでは装着できません。
ってことは、家にいるときです。
ってことは、主に寝てる時に装着するのでしょう。
寝返りうったら、どうなるの?
鼻がひん曲がるのでは?曲がったまま高くなるの?盆栽の松みたいになっちゃうの?

東急ハンズで絶賛発売中です。
誰か試してみてください。
結果報告、待ってます。


9月28日(土よう日) 日直・橋本
 15日の日誌に書いた
“ちょっとした知り合いのオジサン”が、
今日、また、
「一緒に飲もう」と連絡してきた。
なんで?
2週間前に飲んだばっかりじゃん?
なんで、アナタとそんなに頻繁に飲まなきゃいけないの?
私には、
「一度は一緒に飲んでみたいと思っているのに、いまだ実現せず」
の人も居るんじゃい。
アナタと2度飲むヒマがあったら、その人と飲みたいわい。
15日の飲み会が、
私の懸念した“気まずい沈黙”もなく、
妥当な時間を、妥当な雰囲気で過ごせたのは、
私のスッゴイ努力のタマモノだ。
マジで。
なにかで読んだ。
「こちらが楽しく過ごせた時は、きっと相手も楽しく過ごせたと思っているはず。
逆に、
こちらが退屈に思ったならば、きっと相手も退屈に思ったはず。」
って。
これ、当たってないじゃん。
この言葉が本当なら、
今日、また、「一緒に飲もう」などという連絡はなかったはずだ。
それに、
「せめて‘年に一度’というように時間をあけて再会する」良さだってあると思うけどなぁ。
私達は、‘その程度の知り合い’のはずだし、
そういう‘時間をあけた会いかた’ならば、
もしかしたら私にも、その都度‘再会を楽しむ’ことが出来るかもしれないのに。
なぜ、そうは思わないんだろう。
なんか・・・、
がっかりしちゃう。


9月27日(金よう日) 日直・鬼界
住宅街を歩いていて、シャワーの音が聞こえると、即座に
「あっ!菊川怜みたいなイイ女がシャワー浴びてるっ!」
と、つい思ってしまう。

「また、スケベ妄想が始まったよ・・・」と、あきれちゃいけません。

シャワーの音が聞こえたって、
この高齢化社会では、オヤジ、オバハン、ジイサン、バアサンが
シャワー浴びてる確率の方が高いわけで、
たとえ若い女性がシャワー浴びてたとしても、
菊川怜みたいな女がそこらじゅうにゴロゴロいるわけはない。

そんなこたあ、わかってます。
でも、「菊川怜だっ!」って、思っちゃうんですよね。

これには科学的な裏づけがあります。
テレビ、映画、ある種のビデオのシャワーシーンに登場するのは
必ず、若い女性です。しかも、必ず、イイ女。
生まれてから今に至るまで、
男性はそんなシャワーシーンを繰り返し見せられてるため、
“シャワーの音=イイ女の裸”の方程式が脳の奥深くにインプットされてるのです。
だから、シャワーの音を聞いただけで、「菊川怜だっ!」と思うのです。
‘パブロフの犬’です。
スケベなわけじゃないんです。男はみんな、パブ犬なんです。

ですから、あなたのカレシやダンナや兄や従兄弟が、シャワーの音を聞いた時、
頭の中に何があるかは、もうおわかりですね。
「えっ?バ、バカだな、オレはそんなこと考えてないよ!」
と言う男がいれば、それは嘘つきです。


9月26日(木よう日) 日直・鬼界
おととい、野球を見た。
知ってる人は知ってるが、知らない人は知らないので念のために書いとくと、
巨人が優勝して胴上げをする大事な試合だ。

球場に行ったわけではなく、
テレビのチャンネルを変えてたら、たまたま野球をやってただけなのだが、
いきなりデッドボールのシーンだった。
7回表、伊達投手(阪神タイガース)の球が、巨人・高橋由伸の背中を直撃。

高橋の背中にボールがぶつかった途端、
巨人のベンチから怒った選手がグランドに飛び出して来た。
それを迎え撃つように、阪神の選手も駆け出してきた。
ホームベース周辺に両軍選手数十名が入り乱れ、
乱闘が始まろうとする騒然とした雰囲気だ。

その時、アナウンサーが絶叫した。
「あっ!清原も出てきました!!番長・清原が姿を現しました!!」

「ケンカといえば清原」だから、
待ってましたとばかりに、カメラが清原の姿をとらえた。

そこに映ったのは、
ズボンのチャックを上げ、ベルトを締めながらノソノソ歩く姿だった。

清原さん、ズボンを脱いでベンチで何をしてたのですか?
それとも、あまりに太っていて腹が出てるので、
ズボンをはいたままだと、座れないのですか?

すっごく疑問です。


9月25日(水よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)

 「なぜ、ひとりで倉敷へ行ったのですか?なぜ?なぜ?なぜ?」
本当の理由は、
『‘1度ひとり旅をしてみよう’と思ったから』です。
そうなんです。
純粋な‘観光目的’の一人旅を、今まで、したことがなかったんです、私。
仕事だったり、
友人の結婚式に出席する為だったり、
泊りがけで、ひとり、遠方に出かけたこともなくはないが、
なんの目的もなく、
(って言うとチガウか。‘観光が目的’って言うのが正解か。)
“ひとりで”ふらりと旅に出たことは、なかった。
『ぶらり一人旅』(こんな題名のテレビ番組あるよね?)、やってみたかったんだよねぇ。
「“旅は、断然、気の合う友達と一緒の方が楽しい”
という私の考えは、
一人旅をした後でも、きっと変わるまいが、
1度やってみたいなぁ、『ぶらり一人旅』。」
って、思っちゃったんです。
思っちゃうと、実行しないではいられない私、
早速、一人旅してみた。
というわけです。
 ド近眼・超方向音痴ゆえの、毎度「電車・バスの乗りまちがえ」や、
「‘ひとり外食’嫌い」、
「夜、オバケが怖い」など、
不安材料もいくつかあるけど、なんとかなるもん。
‘いきなり外国へ一人旅’って人だって居るんだもん、世の中には。
それに比べたら、岡山なんて、
近所の八百屋に買い物に行くようなもんですよ。
と自分に言い聞かせ、
行ってきましたよ〜、一人旅。
いろいろありましたよ〜、一人旅。
こんなこともありました。
夜中に、ホテルの部屋の電話がコールされた。
「げっ、もう朝かよ!」
てっきりモーニングコールだと思い、飛び起きて受話器を取った。
無言。
うしろで、‘なんとなくフロントっぽい雰囲気’の雑音がする。
時計を見ると、午前2時。
「ありゃ?モーニングコールじゃないよ?」
不審に思いつつ、寝ぼけてる私もボ〜ッと無言。
1分くらいして電話は切れた・・・・・・。
こわい〜!こわい〜!
これって、なあに〜?!
こういう時、怖いわねぇ、一人旅。
あと、
夜、お酒の相手が居ないのチョット淋しいねぇ、一人旅・・・。

下の写真は、
通りがかった女の人にシャッターを押してもらったものです。
「記念に倉敷駅前で。」のはずが、
「どこが記念じゃい!
ここはどこじゃい!立川かい!」って感じだ。
そのうえ。
カメラが電池切れだったのでコンビニへ。
わかんないのでコンビニの兄ちゃんにやってもらったら、
どうやら、写真に“日付”が入るようにしちゃったみたい。
「’94 1 1」って、見える?
カメラを買った年なのかな?
ダサ。


9月24日(火よう日) 日直・橋本
(一昨日のつづき)

 「なぜ、ひとりで倉敷へ行ったのですか?なぜ?なぜ?なぜ?」
という、好奇心に満ち満ちたメールを頂いた。
お答えします。
“遠恋”です。
「そう、
私が最後に恋をしたのは、遠い昔のこと・・・。」
という意味ではありません。
“遠距離恋愛”を略して、こう言うらしい。
“えんこい”ではなく、“えんれん”と言うらしい。
(ホントかよ。
3日前に知ったので、早速、使ってみたんだけどね。)
 太郎(出たよ。ご存じない方は、昨年7月の日誌をお読みあれ。)が、
今年の春、転勤で東京を去ったのです。
行っちゃったのさ、大阪に。
で、
会いに行ったのさ、岡山に。
ん?
それはですね、
「どうせだったら、
私が足を踏み入れたことのない、
私が日本地図におけるソノ位置すらもハッキリとは把握していない、
そんな“西の未開地”で会うのは、どうだろう?」
ということで、
岡山県の倉敷で会うことになったのです。
やるときゃやるね、あたし。
これは、友人の感化もあるのかも。
Sチャンは、現在ボストン在住の元恋人(日本人)を追ってボストン行きを計画中だし、
Y美は、ドイツに帰った好きな人(ドイツ人)に会いに行った。
そして、
私は岡山県へ!
(だいぶ、スケールがちっこい。)
掘割り、柳並木、川面に映る白壁と貼り瓦・・・。
江戸時代の風情を残す町並みを、
夕暮れ時、手に手を取ってそぞろ歩く太郎と私・・・。
どうよ、どうよ!!
ハッハッハ。


そんなことになるわきゃない。
太郎が大阪のどこに居るのかも知りゃしない。
信じちゃった?
へへへ、ごめんね。


9月23日(月よう日) 日直・鬼界
すっかり秋だ。
寝る時にタオルケット1枚じゃ、とても寒い。

そうです、僕はまだタオルケット1枚しか掛けてないんです。
‘タオルケット1枚で、どこまで耐えられるか’
秋になると、こんな意味ない挑戦をする習慣なんです、僕は。

そもそもの始まりは、
東京に来た年の秋、冬用のフトンを干したまんま、出かけたら
雨が降りやがって、フトンがダメになったんです。
とても貧乏だったので、すぐにフトンが買えず、
しばらくタオルケット1枚でブルブル震えてました。

そして、次の年、ふと思い出しました。
「そういえば、去年の今ごろはタオルケット1枚だったなあ。」
懐かしがってるだけならよかったのですが、
「今年もちょっとやってみる?」
などと思いついたもんだから、モー大変。今に至る、というわけです。

馬鹿みたいな習慣なんで、人に言ったことなかったです。
けっこうあるんですよね、
人には言えない、自分だけの、密かな、でもぜーんぜん大したことない秘密の習慣。
僕はあと857くらいあります。

ちなみに、タオルケット1枚最長記録は、14年前に樹立した、
12月7日です。
ちょっとしたもんでしょ?けっこー自慢だったりして。


9月22日(日よう日) 日直・橋本
 木曜日、ひとり、岡山県の倉敷へ行った。
‘東京発午前8時3分’の新幹線で。
駅弁大好きの私、東京駅で、
「新幹線の中で食〜べよっと。」と、
幕の内弁当と缶ビールを買い、ホームへ。
びっくりしました!
普通の通勤バッグ持ったサラリーマンが、いっぱい。
在来線ホームの光景と、あんまり変わらないの。
平日の朝、新幹線に乗る人がこんなに居るとは思いも寄らなかった。
大阪とかに出張する人たちなの?
さすが東海道新幹線。
新幹線で唯一の黒字路線なんでしょ?
 ホームに人はいっぱい居るんだけど、
「今から旅行さ〜」のウカレた雰囲気は、これっぽっちも無いのね。
ちょけたカッコして、派手なリュックしょって、駅弁と缶ビール持って、
ニヤケて電車待ってる人なんて、
私の他には誰も居ないのね。
かえって、
近場の熱海とか伊豆とかへ向かう『特急 踊り子号』のホームなんかの方が、
旅行気分マンマンなのね。
電車待ってるうちから、おせんべいを‘回し食い’してるオバサングループなんて、
居ないのね、新幹線のホームには。
そういえば、
OLの友人が言ってたっけ。
「今月は毎週末‘名古屋出張’で疲れるわぁ」って。
こういうことだったのねぇ。
発車間際に駆け乗りで私の隣に座ったオジサンは、
早速、通勤バッグの中から文庫本を取り出して読み出した。
みんな、朝刊読んだり本読んだり。
あるいは寝るか。
満席のくせしてシ〜ンとしてんの、車内。
ひとりで、駅弁、食べづらかったわぁ。
‘場ちがい’って感じで。
平日朝の東海道新幹線って、
‘通勤電車’なのね。
ホント、びっくりしちゃった。


9月21日(土よう日) 日直・鬼界
連休だ。連休明けたら、もう月末だ。
月末といえば、
銀行のCDコーナーが混みまくりだ。

列に並んで実際に待つ時間としては、10分とか20分程度のものだが、
その10分が無性にイライラする。
10分なんて、テレビ見てたら、あっという間だし、
トイレにしゃがんでボォーっとしてて、気がつくと30分経ってた!
なんてことは、よくある。

なのに、銀行で待つ10分は違うのだ。
「何冊、通帳持って来てんだよ。とっかえひっかえしやがって」とか
「操作方法がわかんねえんだよ、このジジイ。案内係、早く来てやれよ。」とか
ディスペンサーを使ってる人の挙動を逐一、観察し、文句をつけてしまうから
10分間がとてつもなく長く、ストレスになる。

「こんなことじゃダメだ。よし、‘今日の晩御飯は何を食べよっかな?’に
意識を集中しよう。そうすれば、10分なんてスグさ。」
と決意しても、
「今日の晩御飯は、チキン母さん煮テイショ」ぐらいで、
「なにやってんだよ!向こうのディスペンサーが空いたじゃんかよぉ!」と
イライラしてしまう。
‘チキン母さん煮定食’の‘ク’までたどりつかないのだ。

僕が短気すぎるのでしょうか・・・?


9月20日(金よう日) 日直・鬼界
天気予報チャンネルを見た。
天気予報チャンネルというのは、
天気図と明日の天気と週間予報だけを延々と繰り返す、
文字通り天気予報を伝えるだけのチャンネルだ。

僕が見たのは午前2時。
BGMにチャイコフスキーの「白鳥の湖」がかかり、
真夜中らしい、しっとり落ち着いた雰囲気だ。
が、その時、
画面の向こうから何か聞こえてきた。
よくわからない。
ボリュームを上げた。
まだ、わからない。
そうだ。ヘッドフォンの方がクリアに聞こえるのだ。
僕はヘッドフォンを差し込み、音量を上げた。

ただの騒音と化してしまった「白鳥の湖」のかなたからかすかに聞こえるのは
・・・・・・悲しそうな女の声だった。
何を言ってるのか、聞き取れない。ボリュームを上げた。

・・くいち・・・じゅう・・きぃつ・・ち・・・・す・・
な、何・・?
あ・・・ぜん・・てん・・・す・・
とても悲しそうだ・・。
ぜん・・・しゅう・・・・・す・・
なぜ、最後は必ず「・・す・・」なのだ?もしかして、・・・の、呪いの言葉?

何を言ってるのか突き止めないことには怖くて眠れない。
ボリュームを上げた。
「白鳥の湖」がこれでもかとガンガン鳴り響き、耳が壊れそうだ。
そして、わかった。

「19日午前10時の気圧配置予想です」
「明日の全国の天気です」
「全国の週間予報です」

はっきりしゃべれよ、はっきり!
なんで遠くで囁いてるようにナレーションすんだよ!
一人でオシッコ行けないかと思ったじゃねえかよ!
ったく、もう!!
そんで、なんであんな悲しそうなんだよ?


9月19日(木よう日) 日直・橋本
 家で食べるにしろ外食にしろ、夕食時には、
1年を通して必ず私はビールを飲む。
ビールのあとに、
ビール以外のお酒を飲むのも、1年を通して必ずだけど。
2番手を冷酒にするか熱燗にするか、あるいはワインにしようかなどは、
季節・場所・メニューによって変わってくるが、
「まずは、ビールを一杯」は、
365日、暑い日も寒い日も変わらず。
ただし、
暑い日と寒い日では、この「ビールを1杯」の「1杯」の量が違う。
特に、家で夕食を食べる場合、ハッキリしている。
冬場は「350mlの缶ビール1本」、
夏場は「500mlの缶ビール1本」と決めているから。
「決めている」といっても、「ガマンして、それだけしか飲まない」というのではなく、
「それが、ちょうどいい量」だから。
去年までは、まだ、この「季節の適量」が判明していず、
オールシーズン「350ml缶」一辺倒だった。
冬はいいのだが、夏の盛りだと、350だと物足りない。
で、もう1本開ける。
それだと、ちょっと多くて持て余してしまう。
お腹ドブドブになって、
ご飯も、ビールのあとの2番手のお酒も、美味しくなくなる。
今年の、ある暑い日、
「そうだ!500ml缶を導入すればいいんだ!」ということに気がついた。
以来、
この夏は、「500ml缶を1本」方式で夕食時を快適に過ごした。
が、
ここ最近、悩んでいる。
暑くもなく寒くもない日が増えてきて、
いざ冷蔵庫を開けてみて、350か500か、どっちを飲もうか迷ってしまうのだ。
なまじ「夏用」の500ml缶が残ってるからいけない。
350mlしかないんだったら、350mlでガマンする自信はあるのだ。
でも、500mlがあるんだったら、そっちでもイケそうな・・・。
いや、でも、けっこう涼しいから残しそうだし・・・。

作家・向田邦子さんの苦悩が初めて実感できた。
向田さんはエッセーで、
「冷蔵庫の中に、大ビン・中ビン・小ビンと、ビール3種取り揃え。
1日これといった仕事もせずダラダラ過ごした日は、‘小’の資格しかないから‘小’。
逆に、よく働いた日、‘中’にしたら物足りなく、‘大’にすればよかったと後悔。
寝る前にも冷蔵庫を開ける。
寝る前は‘小’と決めているが、夜の部が‘中’で物足りなかった。
よく働いたことだし、もう1本‘中’を開けてもバチは当たらない・・・とは思うけど、
万一残しでもしたら・・・。
結局‘小’にしたが、やっぱり物足りない。‘中’にすればよかったと後悔。
宇宙の未来について思いわずらう方もおいでになるというのに、
たかだかビールの大中小について悩むとは・・・。」
というようなことを書いていた。
あぁ、仰るとおりでございます。
そのエッセーの題名は、『小者の証明』。
あぁ、仰るとおりでございます。
しかし、向田さん、
あなたがコモノなら、私は、一体何になるのか。


9月18日(水よう日) 日直・橋本
 鬼界さんが、毎日毎日、洗濯機の自慢をしている。
『洗濯機購入』で、5日分も日誌をモタセた。
えっ?!私だって『除湿機』買った!
鬼界さんちの洗濯機は、
‘お姫様’とかって、あがめられて誉められて、ずいぶん幸せそうだ。
うちの除湿機が、このことを知ったら、
ヘソを曲げるかもしれない。
あそこまで、あがめ奉らないまでも、
「今日、除湿機を買いました。とても快適です。」
くらいのこと書いてもバチ当たらないんじゃない?
と思っているに違いない。
よし、除湿機くん、キミのことを書こう。

ここのところ、毎日毎日ダラダラダラダラ雨が降って湿気が多い。
大事な大事なお洋服がカビたら大変だ。
「ウォークインクローゼット兼寝室」
(注:「ウォークインクローゼット付き寝室」ではありません。
要は、洋服がイッパイ吊るさがってる部屋で寝ている・・・っちゅうことです。)
に置く為に、
除湿機を買った。
「みずとりクン」と命名。
(なんで、「みずとりチャン」ではないのだろう?
そういえば、掃除機は「ひこクン」だ。
電気毛布は「でんもクン」だし。
悲しいかな、「なんとかクン」達に囲まれていたい気持ちが、痛いほど伝わってくる命名だ。
待てよ。
鬼界さんも、洗濯機を‘お姫様’に仕立てている。・・・キサマもか。)
みずとりクンが居れば安心だ。
・・・・・・・・・・・・・。
ホラ、もう、終わっちゃったよ。
だから、書かなかったのに。
鬼界さんちの洗濯姫の場合と違って、
みずとりクン、キミの場合は、
私の家に来るまでのプロセスで、な〜んの紆余曲折もないんだから。
「買いました。しっかり水取ってくれる。」
だからどうした。
ね〜、
言わんこっちゃない。
「よし、今日の日誌は、これを書こう」
と勢い込んで書き始めても、後が続かない話って多いのよ。
みずとりクン、
わかった?

ちなみに、今日は、みずとりクンの出番なし。


9月17日(火よう日) 日直・鬼界
注文してから、わずか3日で洗濯機が配達された。
(またまた洗濯機なのでございます。書かざるをえないのでございます。もう少しの辛抱です。)

午前中に、「午後イチで伺います」との電話があり、
キッチリ1時過ぎに2人組でやって来た。
古い洗濯機が、まさに洗濯の途中でぶっ壊れて動かなくなったので、
中には洗濯水が入ったままだ。
それを見ても、配達の方はイヤな顔もせず、
「ちょっとしたコツがあるんですよ」と
僕がどうやっても排水させられなかった洗濯水を
魔法のように排水させた。
そして、新しい洗濯機を設置し、点検運転までして、
古い洗濯機をトラックに積み込んで、あっという間に次の配達先へ去っていった。

僕は重い物を持つことも、コードやホースの接続に悩むことも一切なし。
なんて便利なシステムなんだ。
ちょっと感動した。

もし僕が離島に住んでたら、どうなるんだろう?
島に電気屋があれば、
電気屋のオジサンがすべての手配をしてくれるだろう。
が、電気屋がなかったら?

まず、誰が運んでくれるのだろう?
離島へ1個の洗濯機を運ぶために
ヨドバシカメラ配送センターの人がわざわざ連絡船に乗り込んではくれまい。
宅急便?
フェリーが通う島ならいいが、小さな定期船しかない島なら?
宅急便のお兄さんがカートに洗濯機を載せて、定期船に乗り込んでくれるのだろうか?
洗濯機1個を配達するために?
1人じゃ運べないから、2人も?
人件費と運賃で、ものすごい配達費がかかることになる。

当然、設置もしてくれなければ、古い洗濯機を回収もしてくれないだろう。
設置は自分でなんとかするとして、古い洗濯機はどうする?
裏山にこっそり捨てる?
でも、狭い島のことだ。どこで誰が見てるかわからない。
連絡すれば、本土の市役所の粗大ゴミ回収の人が島まで取りに来てくれるのか?
洗濯機1個じゃ、来ないだろうから、
島の粗大ゴミが溜まるまで待たされるだろう。
一体、いつのことやら・・・。

とてつもない時間と労力がかかる気がする。
都会に住むって、素晴らしいことだ。


9月16日(月よう日) 日直・鬼界
そして、洗濯機がウチにやって来た!!
(洗濯機ネタばっかりだあー)

新しいモノって、きっもちイイよねえ。
ピカピカしてんの。
大事なお姫様を扱うように、すっごく丁寧に扱います。
そっと愛撫するようにボタンをふんわり押したりして。
でも、こういうのって続かないんだよね。
そのうち気をつかわなくなって、乱暴に扱っちゃいます。
目潰しするみたいに思いっきり「ガシッ」と平気で押すようになるんだよな・・・。
なんでだろ?
まっ、いいか。そのときまではお姫様待遇なんだし。

そのお姫様洗濯機は、ものすごく静かなのだ。
今までのヤツは、騒音というほどじゃないんだけど、
ゴーロゴーロゴーロゴーロと、耳のどこかで静かに地鳴りがしてるような音を発してました。
んが、お姫様はシーンとしてんの。
「あれ?洗濯してないの?」っちゅうくらい、おとなしいの。ステキ!

そして、ビックリなのは、脱水しても洗濯物がからまないのだ!
って、世間では当たり前なんでしょ?
でもね、僕の使ってたヤツは、脱水が終わり、パンツを取り出そうとすると
パンツにTシャツがからみつき、そのTシャツには靴下がいくつもまとわりついた上に、
パジャマもズボンもタオルもあらゆるものが一体化していたのだ。
パンツを取り出す、すなわち、
巨大アメーバのような洗濯物の塊を満身の力を込めて引きずり出す、
ってことを意味していました。
その点、お姫様は、パンツはパンツ、TシャツはTシャツと
1枚づつ別々になるように脱水してくださり、
脱水力も超強力で、ほとんど乾いてると言っても過言ではない!(ような気がする) ステキ!

当たり前のことをしてるだけなのに、
世の中でこれほど誉めてもらってる洗濯機があるだろうか?
お姫様も「鬼界さんちに来てよかった」と思ってるに違いない。


9月15日(日よう日) 日直・橋本
 “ちょっとした知り合い”のオジサンと、サシで飲むことになった。
「飲む」のは大好きだが、
こう見えて、スッゴイ人見知りな私は、
気心の知れた人以外と飲む時は、内心、かなりドキドキする。
私の場合、
人見知りしてればしてるときほど、
口数が減るのではなく、口数が増える。
「しゃべらなきゃ、しゃべらなきゃ」となるようだ。
あっ、でも、これは、あくまでも「少人数」の時の場合。
私を含め6人以上くらいの人数になると、
安心して人見知りできるせいか
「最初はおとなしい」という、通常の人見知りのパターンになる。
あっ、でも、これも、あくまでも「社交的な人達」が多い場合。
なんだかやたらおとなしい人達ばかりの場合は、
「人見知りしてる場合じゃないな、こりゃ・・・。」
で、
やっぱり「しゃべらなきゃ、しゃべらなきゃ」のパターンになる。
気心の知れた者同士での沈黙は気にならないが、
「単に会話が続かないで生じる、気まずい、居たたまれない沈黙」が、
自分で思ってる以上にキライみたいだ、私。
おとなしい人と飲むのはキライ。
よく喋る人と飲む方がスキ。
あっ、これ、あくまでも「飲む時は」だけど。

 だから、
「まったく気心が知れていない」「年齢が一回り以上も上」の
“ちょっとした知り合い”のオジサンと、
「サシで飲む」ハメになって、朝から気が重い。
どうせだったら、ベラベラベラベラうるさいくらいに喋るオジサンだったら、いいけど。
OLでない私が、
‘普通の会社で働いている、
ウンと年上のオジサンの「いろんな話」を、酒を飲みながらジックリ聞く機会’
なんて、そう持てるものではない。
「いろいろ聞かせて下さい」とお願いしたいぐらいだ。
私が全く解からない「政治・経済」の話でもいいし、
どんなジャンルの話題でもいい。
喋り倒してほしい。
豊富な知識で、
「へぇ〜!」とか「はぁ〜!」とか「ほぉ〜!」とか感心させてもらえるんだったら、
本当に、心から、「一緒に飲んで下さり、光栄です」だ。
友達連中と飲む時とは全く別物の楽しさを、味わえるにちがいない。
って、
そんなウマクいくのかなぁ・・・?
でも。
そこまで「理想的な会合」にはならないまでも、
「年の功」を発揮してはくれるよね。
一回りも年下の人に気を遣わせるようなことはないよね、まさか。
甘い?
・・・待てよ。
ひょっとして、向こうも、私と同じ考えだったら?
「ボクの知らないことを喋り倒して欲しい」って・・・?
げっーーー!


9月14日(土よう日) 日直・鬼界
(きのうのつづきでっせ)
洗濯機を買いに来てる人がとても多いので驚いた。
昨日の日誌に登場したオッサンと僕を含め、
フロアには9人の客がいた。

「なあんだ、たった9人じゃないの」と
ガッカリしてはいけません。
カメラやパソコンのフロアのように、ブラブラ見てるだけの人はいないんです。
このフロアに足を踏み入れる人は
全員、「今日、洗濯機を買って帰らねば!」という殺気に満ちてるんです。
みんな、洗濯機が突然、ぶっ壊れちゃったから。

全員がてきぱきと買う品を決めていくもんだから、
配送センターへの確認やら、店側の手続きが追いつかず、
レジの前に並べられたベンチで待たされるんです。
ななんと、ベンチが置いてあるんですよー!
病院で薬を待つようなもんです。
「整理番号23番でお待ちの鬼界様、カウンターへどうぞ」と呼ばれます。
まるで病院です。

洗濯してたら、突然、洗濯機がぶっ壊れ、慌てて買いに来た。
そんな目に合った人が、新宿の1軒の電気屋に9人もいるんです。
池袋の電気屋にも、秋葉原の電気屋にも、きっとそんな人が来てるはずです。
当然、大阪の電気屋でも那覇の電気屋でも同じことが起こっています。
しかも平日の午前中です。土日だったらもっとスゴイはず。
ってことは、
平均すると、3.5秒に1台の割合とかで日本のどこかで洗濯機がぶっ壊れてるわけ?

あなたが今日、幸せにランチを食べていた間に
どこかで何組もの夫婦が離婚し、何台もの洗濯機がぶっ壊れていたんです。

そう考えると、なんだか「人生って、はかない・・・」としみじみしません?

しないか・・・・


9月13日(金よう日) 日直・鬼界
洗濯機を買いに行った。

あれこれ見て回り、機種を決めたので、
店員を呼ぼうとしたら、
隣に立ってたオッサンが「すんませーん」と店員を呼んだ。
続けて僕も店員を呼んだ。

オッサンが店員に言っている。
「この三菱の洗濯機はいつ配達してくれるかな?
ウチの洗濯機が急に壊れちまったんで早けりゃ早いほどいいんだけど。
平日でもいいからよ」

僕が呼んだ店員がやって来た。
「お決まりですか」
「ええ。この三菱の洗濯機が欲しいんですが、いつ配達できます?
ウチの洗濯機が壊れたんでなるべく早い方がいいんです。」
「土日がよろしいですか?」
「平日でもいいです」

言ってて恥ずかしくなった。
なんかバカみたいじゃない?
なんで見ず知らずのオッサンの言葉をリピートしなきゃいけないんだよ。

で、僕が言い終わったら、そのオッサン、なんだかニヤニヤ笑ってやがんの。
どういう意味だよ、その笑いは?
言っとくけどな、おまえを真似したんじゃないからな。
たまたまだよ、たまたま。

その後、エレベーターもそのオッサンと一緒、
新宿へ向かう道もオッサンと一緒だった・・・。

なんだか気分の悪い買い物になっちまったぜ。


9月12日(木よう日) 日直・鬼界
「ピピピピピー」と洗濯機の警報音が鳴り響いてるので見に行くと、
洗濯機が止まっている。
‘洗い’の途中で異常事態が発生し、緊急停止したようだ。

リセットし、もう1度スタートボタンを押すと、
何事もなかったように動き出した。
が、
10分後、再び、「ピピピピピピーー」の警報音。
また、‘洗い’の途中で止まってしまっている。
‘洗い’を解除し、‘すすぎ’のボタンを押したが、反応なし。
‘脱水’のボタンを押したが、反応なし。
‘すすぎ→脱水’ボタンを押したが、反応なし。
‘洗い→すすぎ’ボタンを押すと、ガラガラ動き出した。
が、10分後、「ピピピピー」と鳴って、洗濯機は停止。

僕の洗濯機は、洗う機械になってしまった!

と書くと、当たり前のことみたい・・・。日本語って不思議だ。

なんて感心してる場合じゃない。

洗濯機がぶっ壊れてしまったのだ!

トータルで3回、‘洗い’をやったので、汚れは充分に落ちてるはずだ。
とにかく、すすがねば。

洗濯物を風呂に運んだ。
水道をジャブジャブ出して、1枚1枚すすぎ始めた。
『桃太郎』のおばあさんになった気分だ。なんかおもしろい。

「♪おばあさんはー、川へ〜洗濯に〜行く〜♪
     それならぁー、上流に住まなきゃ〜損だねえー♪」

歌なぞ唄いながら楽しく労働しました。

そんなことを言ってられたのは、最初だけだった。
腕が痛くなる、腰が痛くなる。
洗濯ってのは、かなりの重労働だ。
最近、雨が多かったから、不幸なことに、洗濯物は山のようにある。
すすいでもすすいでも、まだまだある。

もういやだ!
最後の2,3枚はちょこっと水をかけただけで、やめてしまった。
着たら痒くなるのかな・・・。まっ、いいや。

洗濯機の偉大さをつくづく実感した。
それより、昔のおかあさんは全部、手洗いしてたんでしょ?
なんて偉いんだ!
昔のおかあさん、ありがとう。


9月11日(水よう日) 日直・鬼界
「泣ける映画を教えてください」というリクエストに
「フランス映画『ポケットの愛』で大泣きしましたっ!!」と答えたのは
この僕です。

その後、『ポケットの愛』についてな〜んにも触れなかったのは、
見直してみたら、涙が出ないどころか、
涙が目の奥に引っ込んで目がカラカラに乾くような映画だったので
バックレようと思ったのです。
そしたら、なんと、橋本が見てるじゃありませんか!(by掲示板)
言い出しっぺの僕としては、なんか書かなきゃなりません。ちぇっ。

内気な高校生がふとしたことで年上の美人と知り合い、
いつしか2人は愛し合う。
少年の一途な愛。年上美人の包み込むような愛。
2人は幸せのはずだった。
彼女の職業が高級コールガールでさえなければ・・・
やがて、2人は郊外の別荘に出かける。
何も知らない少年と幸せに満ちた時間を過ごしたあと、
彼女は少年の寝顔に向かって
「あなたを愛しているから・・・。さようなら」とささやき、姿を消すのであった・・・。

なんか、いい話って感じでしょ?
でも、ぜーんぜんダメなの・・・。

2人が出合うときに、実は、少年の友達がいるんです。
女にもてるとうぬぼれてる、イヤーな感じのキツネみたいな同級生です。
そいつが「おっ!いい女発見!オレが落とすぜ」とか威張っちゃって
年上美人に声かけるんです。
「キミ美人だね。僕が楽しませてあげようか?一緒に行こうよ」
そんなナンパある?
高校生が年上美人に声かけんだから、もうちょっとマシなこと言うだろ。
年上美人が無視してると、ずっーと付きまとって、
同じことを100回くらい言うんです。「一緒に行こうよ」「一緒に行こうよ」「一緒に・・・・・
この脚本はどうだろう?
それとも、フランスのナンパって、こういうものなの?
技巧はゼロで、押しまくるだけ?恋愛大国じゃないの、仏って?
すると年上美人がそのキツネ君を誘うような目をして歩き出すんです。
「ほーらみろ。やっぱオレはもてるんだぜ。ホテル行く金ないから、お前の部屋を貸せ」
と、3人は少年の部屋に行きます。
ドアの前で年上美人が「あっ!あれ!」と突然、廊下を指差して、
キツネ君が驚いてそっちを見てる間に
年上美人は少年だけを部屋に押し込んで、キツネ君を置きざりにしちゃいます。
なんじゃそりゃ?
何がしたかったの?キツネ君をだましたかっただけ?それでここまで来たの?
ドアの外で怒りまくってるキツネ君のことを笑いながら、
年上美人が何すると思います?
いきなり服を脱ぎだすんですよ!!!
あっという間にスッポンポンになってベッドにもぐりこんで、
ニコッと笑って、少年を手招きするんです。
で、2人は出来ちゃうわけです。
こんな女がどこにいるんだああ!!しかも美人だぞぉぉ!!
そう叫びたくなる、信じらんない展開なんです。
この長いシーンの間、肝心の少年は
「やめろよ」とか「まずいよ」とか「あぁ」とか「あっ」とか「ええ」とか「うぅ」とか
そんなことしか言わないんです。
そんなヤツがこんな幸運にめぐり合う?
現実ばなれしすぎ。

全編この調子なんです、この映画。
「こんな美人とこんなことしたいなあ」だけで貫かれてます。
「こんな女はいねえよ」とか「いくらなんでも、こんなことはしてくれねえよ」という
当たり前の疑問は一切無視。
だから、少年の立場にたてば、夢のような映画なわけで、
完全に主人公と一体化して見ていた、16歳の僕は感激し大泣きしたのです。
今見ても、絶対泣けません。保証します。

よく言えば、純粋だったんですね。はっきり言えば、バカだったんですが。
16歳の僕がいとおしい・・・。


9月10日(火よう日) 日直・橋本
 一昨日の日誌に書いた「英会話教材パンフレット請求」。
新聞の折り込み広告商品のパンフレットなんぞ、
めったなことでは請求しない私が、
なぜ、その英会話教材パンフレットは請求したのか?
「今、パンフレット請求の方には“視聴用CD”進呈中!」
って広告に書いてあったからさ。
「先日、新宿駅で電車を降りる時、
無意識に“エクスキューズ・ミー”と英語が口をついて出た自分にビックリ!」
とか
「今では、私の友人は外人ばかりです!」
とかの‘利用者の喜びの声’や、
商品の説明などがズラズラズラズラ書いてある“紙”ばかりが送られてくるんじゃ、
つまんないけど、
“試聴用CD”という“物”が送られてくるとなると、ちょっと楽しみになる。
昔から『オマケ』好き。
 で、今日も見つけた。
「このハガキをご投函ください。早速、無料サンプルをお送りします。」
と、サンプル請求用ハガキが添付された「高級シャンプー」の折り込み広告。
「髪に良い30種類以上の天然成分で作られた幻のシャンプー」らしい。
「インディアンが800年使い続けた‘ホホバ油’」も、ブレンドされてるそうだ。
「インディアンの髪は黒く、長く、豊かで艶やか。
皆さんもインディアンの白髪は見たことあるけど、ハゲ頭は見たことないでしょ?」
と、社長の自慢が載っている。
っていうか、私は、インディアン自体を見たことないが。
「映画の中で」ということなのか?
なんか、説得力があるような、ないような。
でも、スゴそうだ。
タダだから、貰うだけ貰ってみるね。


9月9日(月よう日) 日直・鬼界
マウンテンバイクのハンドルに
ポンジュース(1リットルボトル)6本をひっかけて走っていた。

バランスが全然とれず、クネクネフラフラ走ってると、
突然、横の路地から自転車が飛び出してきた。
慌ててハンドルを切り衝突を避けたが、
止めてあった自転車の列に突っ込んでしまった。
その瞬間だ、

「アイヤー!」

飛び出してきた自転車の女の人が叫んだのだ。
見ると、スッピンの高島礼子に似た、なかなかの美人だ。
倒れながらも
「ちっ、中国人かよ。」と思ってたら
「すみません。大丈夫ですか」とまともな日本語で駆け寄ってきた。

「えっ?日本人なの?じゃあ、さっきの『アイヤー』はなに?」
僕がそう思ったら、
スッピン礼子さんは、
「なんで『アイヤー』なんて言っちゃたんだろ。
生まれてから1回も言ったことないのに・・・
げっ!この人の疑いの目!
私のこと、いつも『アイヤー』って叫んでる変人と思ってんだ」と思ったらしく、
すごく恥ずかしそうだ。
僕は「僕がこの人を変人だと思ってると、この人は思ってる」と思った。

この間、わずかに0.7秒くらい。

人間のアイコンタクトって、すごいなあ。

僕が「大丈夫です」と笑顔で立ち上がったら、
礼子さんはちょっと赤面してモゴモゴと何か言い、
自転車に乗って逃げるように走り去った。
かっわいいなあ。
また、『アイヤー』って言ってほしいなあ。


9月8日(日よう日) 日直・橋本
 『どなたでも、驚くほど早く英語が話せるようになります』
がキャッチフレーズの英会話教材のパンフレットを、
ひやかしで請求したところ、
早速、試聴CD他、なんやかやと送られてきた。
「ネイティブイングリッシュを可能にする8大特長」
をコマゴマつづった小冊子に
『Q&A方式で次々と進める会話のドッジボール』
というフレーズがあった。
会話のドッジボール・・・?
「会話のキャッチボール」というのは、よく耳にするが。
(演劇界でも、
「ダメだ、ダメだ!
それじゃキャッチボールになってないぞ。
相手の言葉をちゃんと受け止め、そして、自分の言葉をちゃんと相手に投げ返す。
会話は言葉のキャッチボールなんだ!」
ってなことを、言うとか言わないとか・・・。)
「ドッジボール式の会話」って、どんな会話なんだろう?
「言葉をぶつけ合う」ってこと?
ドッジボールの「オレの投げるボールを取れるもんなら取ってみろ!」式に、
「オレの言ったことに答えられるもんなら答えてみろ!」
みたいな会話?
『Q&A方式で次々と進める会話のドッジボール』。
確かに、
試聴用のCDを聴いてみると、
アメリカ人が英語で、こちらに次々といろいろな質問をしてくる。
CDから聞こえてくる英語の質問に、こちらも声を出して英語で答えていく方式。
「こっちの質問に答えられるもんなら答えてみろ!どうだ、どうだ!」
それで『会話のドッジボール』なの?
なんか、ずいぶんスパルタチックな命名だ・・・。
『会話のサッカーボール』となると、
どんな会話かな?
「相手の言葉をお互いに一蹴し合う会話」とか?
やだなぁ、それ。


9月7日(土よう日) 日直・橋本
 水曜日に、寝ちがえて首を痛くした。
4日経った今日、痛みは、よけいヒドクなった。
 普通、“寝ちがえ”は、
ちがえちゃった当日の朝、
すみやかにシップを貼り、安静にしていれば、
徐々にではあるが、日を追うごとに快方に向かうものだ。
そう、
初日の“シップと絶対安静”、これが“寝ちがえ”を早く治す決め手なのだ。
「昨夜、ちょっと寝ちがえちゃったみたい。でも、たいしてヒドクなさそう。」
なんて甘くみて、
“初日の安静”を怠ったばかりに、
長引くこと1ヶ月も、首の痛さが取れなかったこともあるのだ、私は。
その時、医者に言われた。
「寝ちがえは最初が肝心。絶対、安静にしないと。」
(なので、
掲示板の、えがさん。「寝ちがえて、動くたびに首に電撃が走るの。」
などとウカレていてはダメよ、ダメよ、ダメなのよ。)
 そんな“寝ちがえ博士”の私が、
なぜ、痛みをヒドクするようなハメになったのか。
事件は、今日の午前中に起こった。
雨が上がっているスキに、チャリンコで買い物に出かけた私。
今朝になって、
首の痛みは、かなりマシになり、上を向いたり下を向いたりは出来る様になった。
ただ、左右の横を向こうとすると、相変わらず首に電撃が。
「歩いていった方が無難かな」
とも思ったが、
車の運転はボロクソだが、チャリンコ乗りにはバツグンの自信がある私は、
「近所だし、行っちゃえ。」と、
シップ隠しに首に巻いたバンダナをなびかせ、颯爽とチャリチャリをこぎ出したのだった。
家の門から100メートルほどの地点で、
ビュ〜ンと通り過ぎる刹那、さっきまでの雨で濡れている舗道の上に、
キラッと光るものが落ちているのを見た。
「あっ!500円玉だ!!」
そう気がつくと同時に、思わず振り返ってしまったのだ。
ほとんど180度。真うしろ。
人間、健康な時だって、なかなか180度も、首、回んないよ。
横向くのもナンギなのに、よくぞ回ったよねぇ、私の首・・・。
すごいね、お金の力は。
って、感心してる場合じゃない。
ちょっとでも横を向こうとするだけでも‘痛みの電撃’が走る首を、
180度回したら、どんなことになって?
‘首に落雷’かと思いました。
たった500円のために、取り返しのつかないことをしてしまった。
“初日の安静”を台無しにしたのだ。
今、首は、寝ちがえた当日より痛い。
しかも。
それは500円玉ではなかった。
グギッた首の痛みをこらえながら、チャリンコを降り、
キラっと光る500円玉が落ちている地点に戻って、ソレを拾ったところ(スゴイ根性だ)、
韓国のニセ500円玉だった。
スッゴイ安いんでしょ?
あぁ、コレはなにかのバチなのか・・・?


9月6日(金よう日) 日直・鬼界
地球のために!!
当店では九月一日よりレジ袋代金として
袋の大きさに関わらず、1枚1円をいただきます。
ゴミを減らして、きれいな地球を!


近所の個人営業コンビニに
(大手チェーンに属してない店って、ちょこちょこあるでしょ。あれです。)
こんな張り紙がしてあった。

環境問題に真剣に取り組んでんだ、エライなあ!!
が、ちょっと待って。
なんかおかしくない?

「レジ袋代を取れば、お買い物袋を持参する人が増えるのでゴミを減らすことになる」
こういう理屈なのだろうが、
徴収した1円はどこへ行くの?

1枚5円のレジ袋代を取ってる生協は、
そのお金を全額、ユネスコ(ユニセフだったかな?)に寄付してる。
これならわかる、地球のためだ。
(レジ袋代を取らないセブンイレブンさえ毎年マレーシアで植林してる)
でも、この店は「集めた1円は寄付します」なんて一言も書いてない。
「集めた1円でマングローブの森を東京湾に作ってみます」とも書いてない。
ってことは、レジ袋購入代金に当ててんだ。
本当なら徴収しないはずのお金を
「地球のために!」という名目で集めて、
ちゃっかり自分のために使ってる。

なんかおかしくない?


9月5日(木よう日) 日直・鬼界
今年の6月、演劇の小道具として‘雪印コーヒー牛乳’を使用した際、
雪印製品を手に入れるのは、かなり困難だった。
コンビニ、スーパー、個人商店、どこを探しても
‘雪印コーヒー牛乳’は販売されておらず、
雪印本社に入手方法を問い合わせたものだった。

7月に入ると、どこのスーパーでも
肩身が狭そうに、少しだけ並べられた‘雪印コーヒー牛乳’を
見かけるようになり、
やがて、‘雪印牛乳’も以前と同じ販売スペースを確保するようになった。
8月には、封印されていた‘雪印ナチュレ’もデザインが一新され、各スーパー店頭に並ぶ。

雪印に永久に制裁を加える必要はないが、
雪印製品の復活のタイミングが日ハム製品撤去の時期と重なるのは
どういうことだろう。

製品撤去は華々しく報道されるが、
製品復活は完全に無視される現在のマスコミのあり方において、
雪印営業チームの戦略があらためて浮き彫り


ああああああああああ、もうやめたたたtったt!

最近、「すけすけセーラー服〜♪」とか「手放しオシッコしたい」とか
本能が求める話題ばかりだったので、
理知的な日誌を目指したのですが、
続きません!!書く気がぜーんぜんしないっす。
やっぱ、無理は体によくないっす。


9月4日(水よう日) 日直・鬼界
今日は女性の方、立ち入り禁止の日誌です。
女性の皆さんは、これ以上読んではいけません。トップページへお戻りを。


男だけになったとこで、ちょっと聞きたいんだけどさぁ、
オシッコするときに、
両手をフリーにしてるヤツがいるじゃん?
あれって、どうやんの?

昔から、男らしいなぁって、憧れてんだよね。
でも、何度やっても失敗すんだよ。

まず便器の前に立つでしょ。そんでもって、
ナニを手で引っ張り出すよね。
その後、両手をナニから離し、
バンザイしながら放尿するんだけど、うまくいかない。
必ずズボンを濡らしちまうんだよ。
うんと腰を前に突き出してもダメ。
ガバッと足を思いっきり広げてもダメ。
ナニに手を添えてないと、絶対ダメなんだ。
ふと横を見ると、
しけたオッサンが両手で頭をかきながら悠然とオシッコしてたりすんだよ。
どうやったらできるんですか?
聞きたくなるよ。

自転車を手放しで乗れるようになるみたいなものかな?
ちょっとしたコツをつかめば、
すぐできんのかな?
手放しオシッコのできる方、コツをお教えください。


9月3日(火よう日) 日直・鬼界
恵比寿からバスに乗った。
運転手さんの真後ろの席に座った。

丁寧な運転手さんで、
「右に曲がります」とか「次は第七小学校前です」とか
ちょっと甘い声でちょっと語尾を伸ばしながらいちいちアナウンスしてくれる。
とても好感が持て、車内も心なしか和やかな雰囲気だ。

やがて、乗客が一人降り、二人降り、
僕だけになってしまった。

それでも運転手さんは、甘い声で丁寧に
「左に曲がります、お気を付けください」とアナウンスしている。
もしかして、僕だけのために言ってくれてんの?
ちょっと嬉しく思ってたら、
「停止信号のため、止まります」とアナウンスした運転手さんが
ミラー越しに僕を見てるのだ。
げっ!もしや、僕の返事を待ってんの?

「あなたのために優しくアナウンスしてあげてんだよ
『はい』とか言ってくれてもいいんじゃなくって?」
そんな風に僕に期待してるの?
そういえば、どことなくカマっぽいし・・・。声は甘いし・・・。

いやいや、気のせいだ。
ミラー越しに後方を確認してた運転手さんとたまたま目が合っただけさ。
が、
その後もアナウンスのたびに僕のほうをチラッと見ている。
気のせいなんかじゃない。僕になにかを求めているのだ。

僕は次のバス停でバスを降りた。
降りたいところは、3つ先だったのだが・・・・。

あの後、無人の車内でも運転手さんはアナウンスを続けたのだろうか?
甘い声で?


9月2日(月よう日) 日直・鬼界
二学期最初の朝、とある高校の登校時間とぶつかってしまった。
当然、男には目もくれないが、
女の子を見て、驚いた。

ごくノーマルなセーラー服(紺スカーフ)が制服らしいのだが、
それを着ているのは3分の1くらいしかいない。
スカーフなしもいれば、赤スカーフや緑スカーフがいる。
また、形の違うセーラー服もいる。
胸元のVゾーンが、露骨なまでにVになってるセーラーもあれば、
Vがほとんど隠されてるセーラーもあるし、
Vの先にバカでかいリボンのついたセーラーもある。

さらには、丸い襟のブラウス制服もいるし、
開襟タイプもいる。
襟に回したリボンも濃紺・スカイブルー・ピンク・深紅と色とりどりだし、
長さも好き勝手な長さにしている。
ただのボタンダウンを着てるヤツまでいる。

「ちょっとアタマおかしいのでは?」と思ったのは、
異常に薄い生地のブラウスがちらほらいるのだ。
渋谷とかで見かける薄いブラウスよりも、薄いんです。
ブラのレース模様の糸一本まで見えるし、タグに書いてあるサイズもはっきり読める。
ホクロまでわかるんです。
こんなのどこで買ったんだよ?大人グッズのお店?
誰をそそるためにこんな服を学校に着て来てんだ?

スカートはもちろん、みんなミニだが、
紺のプリーツからタータンチェック、空色、グリーンと紺のチェックと各種取り揃え。

こんなのありなんですか?
そのへんのキャバクラより楽しいじゃないですかぁ!!

教師は地獄だろうな・・・
見せるだけ見せられて、手を出せないんだもんな・・・
これじゃ、テレクラにも行くわな。


9月1日(日よう日) 日直・鬼界
なんだか季節はずれな背景色です・・・

さて、こんな御メールをいただかせていただきました。

『ホームページの映画のページ
楽しみにしてるんで更新してくださいね!!』

ヤッホー!すっごい嬉しいの!!
オイラも人の子、泣きそうになっちまったです。

もちろん、映画のページに反響を期待してたわけではありませんし、
もちろん、『鬼界さんオススメの映画見ましたぁ』なんてメールを
待ってたわけでもないし、
もちろん、『今度の金曜の夜、一緒にビデオを見ませんか。
お泊りになってもよろしくてよ、ウフ。ちなみに私はウィノナ・ライダーにマジ似です』
なんてメールが来るとは思ってませんでした。
が、
もしかしてどなたも読んでないのでは・・・
一抹の不安はあったんです。
そこへこのメール!嬉しゅうございます。

てなわけで、ビデオについての一言。

ビデオのパッケージには、解説やスタッフ・キャストがごちゃごちゃ書いてあるのに、
なんでビデオテープには、たいてい、なにも書いてないの?
時間は絶対書くべきだ。

「お出かけまでに、2時間あるな。よし、ビデオを見ようっと」
と見始めたら、
2時間で終わらないどころか、
ちょうどクライマックスのいいところでやめるにやめられない・・。
ついつい最後まで見てしまって、
待ち合わせに遅れ、すごく怒られた。

こんな経験が何度もあります。ありません?

そもそも、心構えができません。
90分の映画のつもりで150分の映画を見たら、かなりツライです。

「ちょっとジョギングでもしない?」と誘われ
「いいよ」と軽い気持ちで付き合ったら、
42.195km走らされた。

そんな感じです。

なんだかとりとめのない日誌になっちゃいましたが、
映画のページは近々、更新します。