鬼橋日誌(おにはしにっし)
鬼界事務所の構成員、鬼界と橋本が書く日誌です。
・2000.5.12〜12.31の日誌は、こちら
・2001.1.4〜5.31の日誌は、こちら
・2001.6.1〜10.21の日誌は、こちら
・2001.10.22〜2002.3.30の日誌は、こちら
・2002.3.31〜8.31の日誌は、こちら
・2002.9.1〜12.31の日誌は、こちら
5月5日(月よう日) 日直・橋本
体調不良で伏せっている間、
1回しか書かないうちに、
『裏稽古場日誌』期間が終わってしまった・・・。
書きたいことが、いくつかあったのになぁ・・・。
金田さんの「ヤク中事件」、
薫ちゃんの「ホザくな、ワメくな、こっちくんな事件」、
皆木クンの「‘お泊り場所には困らない’」
鬼界さんの「火遊びに夢中!」
そして、
橋本の「劇場ミステリー 私は見た!恐怖の‘○○○’」。
残念です・・・。
これら「とっておきのエピソード」を書くにあたっては、
いつか、機会を見計らって、
万全な体調で臨む所存であります。
それにしても。
せめて、このエピソードだけは、書きたかったなぁ。
「トーマスに首ったけ!
‘こんな格好で出逢いたくはなかった・・・’」
トーマスは、フランス人の母と日本人の父を持つハーフ。
23歳。
職業モデル。
こんな人が、なんで、
鬼界事務所の公演最終日の‘バラシ(セットを壊し、劇場を元通りの状態にすること)’を
手伝ったのか?
一瞬で私の頬を赤らめさせた、本場フランス仕込みの超麗しの微笑・・・。
あんな23歳は見たことないぞ。
残念です・・・。
万全な体調で、
いつか、トーマスのことも書きたいです。
5月4日(日よう日) 日直・鬼界
北京が大変だ。
ニュースを見るたびに、感染者と死亡者が増えている。
たまりませんぜ。
みんな家に閉じこもって、北京市街はゴーストタウンのようになっている。
でも、東京で同じことがおこったら、ちょっと違う気がする。
‘上野でSARS発見!10名死亡!!’
というニュースが流れても、渋谷の若者は減らない気がするし、
渋谷で肺炎感染者が出ても、
六本木ヒルズが無人状態にはならないと思う。
などと、人ごとみたいに書いてるけど、
もし、自分の住んでるマンションに感染者が出たら、どうする?どうする?
ものすごく濃いイソジンで100万回うがいする。
マスクを5重かさねにして、息を吸わない。吐くだけにする。
窓もドアも閉め切って、外部との交流を完全に絶つ。
白装束教団に入信し、聖ミカエルさまに守ってもらう。
う〜む、決定力に欠けるなぁ・・。
てゆうか、その前に特別病棟に隔離されてしまうか・・・。
5月3日(土よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
公演が終わって、早2週間、
世の中はGW真っ只中、
いつまでも‘裏稽古場日誌’を書いてる場合じゃないので、
今日で最終回にします。
演劇とは不思議なものです。
稽古初日から打ち上げ終了までの4,5週間、
毎日毎日、イヤというほど、みんなと顔をあわせていました。
恋人よりも家族よりも一緒にいる時間が多かったのです。
なのに、終わってしまうと、パッタリ会わなくなります。
劇団ならば、次の公演の稽古で全員が顔を揃えるのですが、
僕たちみたいなやり方だと、
そうもいきません。
本当にお祭りのようなものです。
だから、楽しいんだと思います。
リオのカーニバルを生きがいにするブラジル人の気持ちがわかります。
そんなお祭りは、お客さまあってのお祭りです。
多くの方にご来場いただきまして、本当にありがとうございました。
僕たちはあなたを愛してます。
なんか、キレイに最後をまとめたって感じじゃない?
いいねえ。
5月2日(金よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
『四月馬鹿の恋』では、本編終了後のご挨拶や出演者紹介をやりませんでした。
実は、最終リハーサルまではやっていたのです。
しんみりとした感じでお芝居が終わるので、
ガラッと雰囲気を変えようと思い、
鬼界浩巳自らが選曲した、
完全な一発屋の‘ABC’というグループの『ルック・オブ・ラブ』という名曲を
(これがわかる人は、歳がバレちゃいますね。ウフ)
ガーンとかけ、
いつもどおり僕はベラベラしゃべっていたのです。
音響さんと演出家に意見を聞くと
「舞台挨拶っぽくって、いいんじゃない」と賛成していました。
そして、最終リハーサルで『ルック・オブ・ラブ』を流してみると、
な〜んか違うんじゃない?と感じました。
でも、音響も演出も納得した選曲をどたん場で変更することは問題があります。
僕は悩みました。
けれど、音響、演出とケンカになろうとも、良い舞台を作らねばならない!
そう考えた僕は思い切って言いました。
「『ルック・オブ・ラブ』をやめ、今回は舞台挨拶なしにしようと思う」
「・・・・・」音響、演出は無言です。
「本番ギリギリになって、大きな変更することは申し訳ないと思う。
しかし、良い舞台のためには仕方ないと思うんだ」
すると、音響、演出は
「いやぁ、よかったぁ!絶対やめた方がイイと思ってたんだけど、
鬼界がやけに『ルック・オブ・ラブ』を気に入ってるんで、
やめようって言えなかったんだよねぇ。
よかった、よかった。今回はベラベラしゃべんないほうがいいに決まってるもんな。」
「・・・・・・」
こうして本編終了後のご挨拶はなくなったのです。
5月1日(木よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
4月15日(火)のつづき
最終リハーサルで大きなトラブルがあった。
女帝エカテリーナをめぐる劇中劇のあと、暗転になって、
みんなが小説を読んでいる、元の現実世界に戻るのだが、
早めに照明がついてしまったのだ。
俳優がまだ、定位置についていないのに明るくなってしまったのだ。
が、金田さんも薫ちゃんも、
慌てず騒がず、何食わぬ顔で平然と、小説を読んでいる演技をとっさに始めたのはエラかった。
さすがだ!
とはいうものの、
薫ちゃんは、ソファを探して、中腰で尻をぐっと突き出し、腕を前に伸ばし、
闇の中で手探りしてるときに照明がついたのだ。
そんな、立ちながらウンコしてるみたいな姿勢でいきなり平然と小説を読まれても・・・
そんなカッコで小説を読む人がこの世に存在する?
金田さんは、吹き出る汗をふいているときに明るくなってしまった。
しかも、‘E.YAZAWA’のタオルだ。
右手には首からかけた‘E.YAZAWA’の赤いタオルを持ち、左手で持った小説を読む演技をとっさに始めた。
これもどうだろう?
時代遅れのロッカーのレコーディング風景みたいだ。
冷静ではあったが、あまりにも奇妙な二人だった。
一番慌てていたのは橋本だった。
ソファに座って小説を読む演技をしていたのに、「あっ!」と叫び声を上げていた。
ん?チョット待ってくださいよ。
橋本は、すでにソファに座って、すでに小説を読む演技を始めてたんでしょ?
だったら、すでに所定の位置について、照明がつくのを待ってたってことだ。
スタンバイを完了してた人が、なんで「あっ!」って叫び声をあげるわけ?
フツーは逆じゃないだろうか・・・?
ホントにおかしな人たちです。
4月30日(水よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
4月15日(火)
本番前日。
舞台装置を組み、照明・音響が入り、衣裳をつけ、
劇場で最終的なリハーサルを行なう。
稽古場とは雰囲気も緊張感も違うので、
俳優の演技がガラッと変ったりする。
今回、最も大きく変化したのは、薫ちゃんだった。
実を言うと、稽古段階では、
薫ちゃんの演じた奥さんの役は、もっと動きの激しい人だったのだ。
ドスドス歩くし、バタバタ走るし、
ソファからもガバッと大股開きで立ち上がったりして、
それがキュートな魅力だった。
最終リハーサルのあと、演出の古郡さんが注意した。
「薫ちゃんがソファに座ってるとき、数えてたんだけど、
パンツが丸見えになったのが3回、パンチラが5回あったよ。」
パンツの見える回数を数えてる演出家もどうかと思うが、
薫ちゃんに衝撃が走った。
思いのほかソファが低いのと、客席が舞台よりも高いことを考慮してなかったのだ!
「えぇぇぇっっー!!恥ずかしすぎるぅぅ!!
パンツ見えちゃうんですかぁ!!!
2回までならガマンできるけど、3回も丸見えになるのは恥ずかしすぎるっっ!!!」
は?
そーゆー問題なのですか?2回と3回の違いは何?なんで2回は見せてもいいの?
他人にはまるで理解できないが、
薫ちゃんにとっては天と地ほどの差があるらしい。
こうして薫ちゃんの演じる奥さんは、ガバッと大股開きでソファから立ち上がらなくなってしまった。
それにあわせて、ドスドス歩きもバタバタ走りもしなくなってしまい、
動きのおとなしい人に変ってしまったのだ。
ま、結果的にはプリティーな魅力が生まれたのでよかったんですけどね。
4月29日(火よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
金田さんは、自宅で、完璧にセリフを覚えてくる。
まるで精密なコンピューターのようだ。
なかなかできることじゃない。スゴイ。
台本に書いてあるセリフは1文字1文字正確に覚えるのだ。
だから、「あっ!しまった!!」というセリフが
誤植で「あつ!しまった!!」と書かれているところは
「あつ!しまった!!」と何の疑いもなく大声で叫んでいた。
「あつ!」が「あっ!」の誤植だと気が付いたのは、本番1週間前だそうだ。
(他の全員は、台本を見た瞬間に気づいていたのだが・・・)
が、金田さんのスゴイところは
「あっ!」じゃなくて「あつ!」でもいいかと思わせてしまうところだ。
「あつ!」という言葉は意味不明だが、
気持ちは充分に伝わるのだ。
金田コンピューターは、なかなか強力だ。
自宅でセリフを覚えるということは、同時に
セリフを言う時の動きも、自宅でインプットされる。
「エカテリーナ様にお仕えするため、私は愛人クレオパトラを捨ててまいりました」
というセリフを
エカテリーナを右に見て時計回りに動こうと金田さんは考えた。
これまでの稽古で、エカテリーナは自分の右側にいたから、
エカテリーナの周りをグルっと回るような動きで、うまくいくはずだ。
そして、やってみた。
セリフと動きは見事に一致し、素晴らしい効果だ。
さすが、金田コンピューター!
が、次の日、エカテリーナ役の気まぐれな橋本が、全然違う場所にいた。
けれど、金田コンピューターのインプットは強力だ。
エカテリーナが自分の左側にいるのに時計回りで動き出した。
「エカテリーナ様に、おつかえ、おつ、おつ、あれっ?」
あれっ?じゃねえよ!
しゃべりながら、どんどんエカテリーナから離れていってんじゃねえかよ!
金田コンピューターは精密ではあるが、
かなり旧式なので、いったんインプットされると、変更するのにすっごい時間がかかるのだ。
俳優がセリフを覚えるのは、いろいろ苦労するのです。
4月28日(月よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜
俳優がセリフを覚えるのには、2パターンある。
稽古場での稽古の繰り返しで覚える人と、
家で台本を読みながら覚える人がいるのだ。
薫ちゃんは、稽古場で覚えるパターンの人だ。
このパターンの人は、セリフの意味で覚えるので、
完璧に覚えるまでには、いろいろ回り道がある。
マリー・アントワネットのセリフで
「民衆が城門に押し寄せてきたわ」というのを、
まだウロ覚えの頃、薫ちゃんは
「ここらへんに住む人々が、あそこの、お城の、えーと、お城の玄関にやって来たわっっ!!」
と言っていた。
「ここらへんに住む人々」って、なに?ホームレスのこと?
「お城の玄関」ってなに?
ガラガラって開けるすりガラスの戸がお城についてんの?すっげえ、ちゃっちい城じゃない?
意味としてはなんとなく合っちゃあいるが、日本語としてヘンだ。
もう少し覚えた頃には、
「住民が城門にやって来たわ」と言っていた。
「住民」てことはないんじゃない?
フランス革命が、なんか、いきなり、市民の苦情になりさがった感じ。
ゴミの収集を週5日にしろっ!とか言いそう。
薫ちゃんがセリフを覚えるまでには、いろいろ回り道があるのです。
それに対して、家で台本を覚えるパターンの人が金田さんだ。
が、これまた、大変なのだ・・・・ (つづく)
4月27日(日よう日) 日直・橋本
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜 その3のつづき
昨日の日誌を書いていて、
鬼界さんは、きっと、すごく幸せだっただろう。
もしかしたら、
嬉しくて、泣きながら書いていたかもしれないな。
『金田さんの頭がバカデカすぎて、ヘルメットが合わないのだ。
ものすごくブザマだ・・・・。
デカ頭にチョコンとヘルメットがのってるだけ・・・・
なんて大きな頭なんだ・・・。』
鬼界さんが、人様の頭のデカさをコケにしたのは、生まれて初めてのことに違いない。
なぜなら、
頭のデカさをコケにされるのは、いつも自分だから。
学生時代のアルバイト先「松屋」では、
制服の紙製の帽子が頭のサイズに合わず、次々に破ってしまい、
「貴様ぁ!いやがらせかっ!?」
と店長に怒鳴られ、泣いたこともあった鬼界さん。
ギリシャ土産のTシャツを、
そのTシャツをくれた友人の前で着てみたところ、
入るのはナントカ入ったが、
いざ脱ぐ時に首まわりが抜けなくなり、
やむを得ず、Tシャツを切って脱いだ鬼界さん。
(以前、お芝居の稽古中に。稽古場は大騒ぎになった。)
「脳みそがイッパイ詰まってるわけでもないのに、
頭ばっかり、無駄にデカくなりやがって」
「このドスイカ頭!」
「お前の頭が邪魔なんだ。切っちゃえよ!」
などなど、
デカ頭をなじられ、そしられたことは、
私が知っているだけでも、数限りない。
そんな鬼界さんにとって、
この“金田さん〜ヘルメット事件〜”が、どんなに嬉しい出来事だったか、
推して知るべしだ。
しかし、
鬼界さんが、あえて書かなかった事実も、私は書こう。
『次々とヘルメットをかぶってみた。
ぜーんぶ、かぶれない。』
のは、金田さんだけではなかった。
かぶってみたい欲求を抑えられず、
ウキウキとかぶってみたのは、鬼界さんも金田さん同様だ。
そして、
“ヘルメットが頭に入らない”度合いは、
金田さんよりも鬼界さんのほうが、明らかに大きかった。
金田さんは『大人が幼児用の帽子をかぶったみたい』。
帽子に見えるから、まだイイ、金田さんは。
鬼界さんに至っては、
帽子に見えない。
なんか得体の知れない、なんかを乗せた奇妙な生き物みたいだ。
恐ろしいのは、
本番でかぶった金田さんの‘手作りシーザー・ヘルメット’すら、
鬼界さんの頭は受け入れなかったのだ。
ちなみに、
鬼界さんが本番でかぶった‘聖徳太子の烏帽子’は、
「カツラの上にかぶる用」に特大なので、
鬼界さんの頭にもギリギリなんとか入った。
メッシュ素材のあの烏帽子は、
普通の人がかぶると、養蜂家がハチ除けにかぶるアミアミのように、
顔全体を覆うようなデカさだ。
恐るべし・・・鬼界さんのデカ頭。
切っちゃえよ。
4月26日(土よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜 その3
3月26日(水)
小道具屋さんから、シーザーで金田さんがかぶるヘルメットが届いた。
王様がかぶる装飾だらけのヘルメットや
将軍がかぶるカッコいいヘルメットや、
下っ端の兵隊がかぶるシンプルなヘルメットなど、5種類ある。
金田さんは大喜びだ。
「すっげえなぁ。よくできてるなぁ。かぶりものって、オレ大好きなんだぁ。
どれがいいかなあ?迷っちゃうなあ。どれも捨てがたいしなぁ。
でも、シーザーだから、やっぱ、将軍用ヘルメットにしよっと。」
大声で独り言を言いながら、迷いに迷って、
ウキウキと将軍用ヘルメットをかぶった。
ん?なんかヘン?
大人が幼児用の帽子をかぶったみたい・・・
てゆうか、かぶってない・・・頭にヘルメットがのっかってるだけだ。
そう!金田さんの頭がバカデカすぎて、ヘルメットが合わないのだ。
ものすごくブザマだ・・・・。
稽古場に気まずい空気が流れた。
演出家の古郡さんが慌てて叫んだ。
「イ、イメージに合わないな!そ、そのヘルメットはイマイチだっ!
王様ヘルメットをかぶってみてください、金田さん」
金田さんが王様用ヘルメットをかぶった。
結果は同じ。頭が大きすぎて、かぶれない。ヘルメットは頭にのっかってるだけだ。
次々とヘルメットをかぶってみた。
ぜーんぶ、かぶれない。デカ頭にチョコンとヘルメットがのってるだけ・・・・
なんて大きな頭なんだ・・・。
その日、ヘルメット事件のあと、金田さんはセリフ以外の言葉は一言も発さなかった。
そして、悲しそうな目をして帰っていった。
結局、シーザーのヘルメットは
工事現場用のヘルメット(XLサイズ)に、流し台のすき間を埋めるアルミテープをペタペタと貼った、
手作りヘルメットになった。
4月25日(金よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜 その2
3月22日(土)
薫ちゃんがマリー・アントワネットで金髪をかぶりだしてから1週間が過ぎ、
やっと慣れた。
本番をご覧になるお客様は、わからないでしょうが、
あの金髪をかぶった薫ちゃんがなにげに日常の行動をしてると、
笑っちゃいます。
あの金髪をかぶったまま、まろ茶をコクコク飲むし、
あの金髪をかぶったまま、フランスパンを食うし、
あの金髪をかぶったまま、トイレに行く(!)んですよ。
なぜか、あの金髪が気に入ってしまったんですね、薫ちゃんは。
そんな薫ちゃんにようやく慣れ、笑わずに薫ちゃんを見られるようになった。
稽古が終わり、薫ちゃんが金髪をはずすと、
おでこがなんかヘンだ。
おでこを横断して、赤い線が走っている。
マジックでおでこに落書きしたみたい。
よく見ると、金髪をかぶっていたライン上に、ちっちゃな赤いデキモノがズラッと並んでいるのだ。
しかも金髪をかぶっているとき、前髪を金髪の中に押し込んでいたから、
前髪がオールバック状態になっていて、
おでこが通常の倍くらいに広くなっている。
その真ん中をつんざくように、赤い線が脈々と走っているのだ。
「どうしたの?」と聞くと、
「金髪にかぶれちゃったんですぅ」と、その赤い線をボリボリかきだした。
ええぇぇぇ!!ズラ負け?
金髪のかぶりすぎで、そんな恥ずかしい赤い線ができちゃったの?
皆さまにお見せしたかったなぁ。
金髪をかぶってるよりも、はずした時の方が笑える薫ちゃんを。
4月24日(木よう日) 日直・鬼界
〜今、明かされる!裏稽古場日誌〜 その1
高熱が下がらないまま、こんな企画に突入です。
3月17日(月)
みんなでお茶を飲むシーン(最初のほうで、エイプリルフールのウソ話をするところですね)
を稽古していた。
演出の古郡さんが「飲む動作を合わせたい」と言うので、
中央に座っている橋本の動きに他の3人が合わせることにした。
おもむろに茶碗を手にとり、少しお茶の香りを楽しみ、
ゆっくり飲み干し、静かに茶碗を下におろす。
みんなで橋本の動きを観察し、タイミングを合わせる。
5,6回、段取りの練習をし、完璧に合うようになったので、
実際にお茶を入れてやってみた。
が、悲しいくらいに、ぜーんぜんバラバラ。
まず、橋本。
おもむろに茶碗を手にとり、少しお茶の香りを楽しむ。
ここまでは段取りどおりだ。
が、お茶を口に含むやいなや、イッキ飲み。グイッ、プハ〜。
なんじゃそりゃ?練習と全然ちがうじゃねえかよ!
アル中のオッサンがワンカップをイッキ飲みするみたいだ。
「だって、この茶碗、ちょっと大きめのオチョコって感じでしょ?
なーんか、お酒飲んでる気になるんだよねぇ」
みんなの基準となる橋本がこれじゃあ、合うわけがない。
金田さんは、橋本に追いつくために、口に含んだお茶を猛烈な勢いで飲み下した。
ゴクッっ!!
ものすごい音が稽古場中に響き渡った。
声が大きい人は、液体を飲む音も大きいのか?
とても人間の発する音とは思えない。
カバかクジラかゴジラの発する音だ。
その音を聞いた薫ちゃんがお茶を吹きだした。
全く予期せぬ音に笑ってしまったのだ。
ソファもテーブルも薫ちゃんの口から噴出したお茶でビチャビチャ。
稽古は中断となった・・・。
お茶を飲むだけで、こんな苦労があるのです。
4月23日(水よう日) 日直・鬼界
本番中に風邪を引くなんて、タルんでる証拠だっ!!
演劇に命をかけろっ!命をっっ!!
と、本番中に僕は橋本を怒鳴りつけました。
が、実を言うと、男性楽屋は全員、風邪をひいていたのです。
金田さんがどっかから風邪をいただいてきて、
それが僕にうつり、さらに皆木クンにもうつっていたのです。
しかし、みんなで風邪を引いていることがあからさまになると、
どうしてもテンションが下がってしまいます。
だから、女性陣には秘密にしておこう!ってことになってたのです。
本番中はなんとか乗り切ったものの、
僕は今、39.8度の熱があります。
もし、この日誌が手書きなら、糸ミミズがのたくったような字になってるはずです。
セキも止まんないし、
もしかしたら、SARSかも・・・・。
経過報告は日誌上でお知らせします。
鬼界はナゾの肺炎に勝てるのか!?
てゆうか、そんなヒマがあったら寝た方がいいな、きっと。
4月22日(火よう日) 日直・橋本
実は、
本番中、風邪を引きました。
ノドが痛く、鼻水が止まりませんでした。
これには、ホント、困りました。
私の演じた役には、「泣く」シーンがあります。
皆さんもご存知のように、
「泣く」と、鼻水が出ます。
風邪を引いてない時でも、
「泣く」と、鼻水が出ます。
では、
風邪で鼻が止まらない時、泣くとどうなるでしょう。
答えは、「‘あおっぱな’が出る」です。
いくら私でも、この歳になって、ひとに青っぱなを見られたくはありません。
小学3年の時、
風邪で学校を休んだ吉田くんのお見舞いに行った時、
吉田くんが、笑った瞬間、青っぱなをドバッと鼻から出したのを見て、
それまでチョット好きだった吉田くんに、すっかりサめた私です。
透明な鼻水ならまだしも、
青っぱなは絶対に見られたくありません。
青っぱなが垂れる直前に、
「庭の桜を見るために、後ろを向く」ことにしました。
演出家に「前を向いてろ。‘目の前の桜を見ている’という設定にしろ。」
と指示されましたが、
そんなこたぁ、どーでもいいです。
自分が大事です。
私が、みなさまに、吉田くんのように嫌われても、
演出家のあなたは、なんら、いっさい責任を取ってくれるでもなし。
そのあと暗転になるので、
その暗転中に、セットのソファの裏に仕込んでおいたタオルで鼻水をぬぐい取るんですが、
土曜日の夜の回だったっけかな?
風邪の悪化に伴い、出る青っぱなも増量。
慌てて力任せにそれを拭ったら、お鼻の下がヒリヒリ。
明かりがついて、普通にセリフを言いつつも、お鼻の下は、益々ヒリヒリ。
嫌な予感。
終演後、急いで楽屋で鏡を見たら、お鼻の下は真っ赤っか。
アンケートに「鼻血かと思いました」と。
青っぱな出しながらお芝居するのもイヤだけど、
鼻血出しながらお芝居してると思われるのもイヤだわ〜。
風邪は大敵です。
気を付けなければいけません。
その後、風邪は、ますます悪化。
現在、気管支炎に進行し、伏せっております。
スゴイ青っぱなの量です。
4月20日・21日(日よう日、月よう日) 日直・鬼界
千秋楽、打ち上げ、そして今・・
なんだか昨日からの出来事が夢の中のようです。
日曜のお昼過ぎに劇場入りして、ウォーミングアップをして、
千秋楽の本番を迎え、
薫ちゃんのトチリに笑いながらも、
(「ドロボーのふりをして」と言うところを、「ロドボーのふりをして」と言ったんですぜ。
なんだよ、ロドボーって?
そんな日本語聞いたことねえよ!)
無事、幕をおろし、
休む間もなく、舞台装置の解体など撤収作業に入り、
午後8時から打ち上げに突入。
午前6時まで飲みっぱなし。
(もちろん僕は、最初、ファジーネーブルを4杯飲んだだけでベロベロになったので、
その後は、100%の果汁ジュースを各種飲んでました。
おかげで、おなかガボガボ。)
帰りに立ち食いうどんをいただき、帰宅後、爆睡。
目が覚めると、夜でした・・・。
いつも思うのですが、
公演中は夢のような毎日です。
ご来場くださった皆さま、本当にありがとうございました。
感謝感謝大感謝でございます。
4月19日(土よう日) 日直・鬼界
4日目!
今日はハラハラドキドキした。
午後2時から下北沢の駅前で大音量で選挙演説が始まった。
「下北沢にいらっしゃる若い方は知らないでしょうが、
1950年の朝鮮戦争以来、北朝鮮と韓国は停戦状態なのです。
つまり、戦闘をいったんやめているが戦争中なのです。知っていましたか?」
知らねえよ!
下北を歩いてるバカ若者がそんなこと知るわけないじゃん!
うっせえだけだよ!!
と、みんなで憤慨していたら、
「今、民主党代表の管直人氏が応援にやって来られましたっ!」
とアナウンスが入り、
管の演説が始まった。
なにをトチ狂ったのか、さらに大音量だ。
楽屋にいても、客席にいても、ワンワン響き渡っている。
たまらんっ!と思っていたら、
ファーストキッチンの方角から、チンドン屋がやってきた。
「アクビ娘のテーマ」をクラリネットで軽快に吹きまくっている。
これまた楽屋、客席、ロビーに響き渡る。
げっ!もうすぐ開場じゃないか!と思っていたら、
松屋の方向から、インドの宗教団体がインド楽器を演奏しながらやって来た。
管の声と「アクビ娘のテーマ」とインド楽器がミックスされ、
駅前劇場内は一種の音地獄となってしまった。
お芝居が始まってからも、この状態だったら、どうする?
セリフなんか聞こえやしない。
それどころか、異常な音地獄に耐えかね、お客さんは帰ってしまうに違いない!
どうする?どうする?
管を刺しに行こうかと相談していたら、
開場直前の2時25分、ピタッとすべての騒音が止まった。
よかったぁー。
なぜか、管もチンドン屋もインド人も演劇に理解があるようだ。
昼の公演の直前、僕たちはこんな風にハラハラドキドキしていたのです。
4月18日(金よう日) 日直・鬼界
3日目!
今を去ること3日前、仕込みの日に劇場にやって来るなり、
薫ちゃんの発した第一声は
「スタバ・・スタバができたんですねっ!!」だった。
駅前劇場のビルの横っちょにスターバックスができたのだ。
「薫ちゃん、スタバが好きなの?」と尋ねると、
「え?いや、その・・・・」とはっきりしない答えだった。
そして、今日、薫ちゃんが妙に赤い顔をしてやって来た。
「見てくださいっ!スタバですっ!」
興奮に震える手にはスターバックスのコーヒーが握られていた。
なんと、薫ちゃんは生まれて初めてスターバックスのコーヒーを買ったのだそうだ。
「だって、コーヒー1杯が250円もするんですよっ!
金田さんが衣裳に下に来ているTシャツは1枚160円なんですよっ!!
Tシャツの1.5倍もするコーヒーなんて敷居が高くて買えないじゃないですかっ!!」
わけのわからん比較をしている。
橋本の‘わけのわからんことを言う病’がうつったようだ。
「貯金箱の口みたいな穴から、スタバのコーヒーを飲むのが夢だったんです」
そう言いながら、おいしそうにコーヒーを飲んでいる。
そして、カバンからスタバの紙ナプキンを取り出した。
「もらってきましたぁ!!」
その紙ナプキンの束の厚さは約15センチ。100枚以上はあるに違いない。
早速、薫ちゃんは楽屋の鏡の前に
スタバの紙ナプキンを敷き詰め、大喜びだ。
「うわぁ、カッコいいっ!夢みたぁーい。
余った紙ナプキンは家に持って帰って、大事に使おっと!!」
あんたは田舎モンか!
とにかく、こうして念願をかなえ、ウキウキの薫ちゃんは、今日、とてもいい芝居をした。
よかったね、薫ちゃん。
4月17日(木よう日) 日直・鬼界
2日目!
手直しがあったので、17時から稽古の予定だった。
16時30分には、出演者・スタッフ全員が顔をそろえた、金田さんを除いて。
17時になっても金田さんは現れない。
「金田さんはゆうべ、飲みすぎたんだぜ、ハハハ」とみんなで笑っていた。
17時10分、17時20分になっても、金田さんは来ない。
だんだん不安になってきた。
ケータイに電話しても、自宅に電話しても留守電だ。
そして、18時になった。開演1時間30分前だ。
金田さんがなんの連絡もなく遅刻するなんて・・・。
もしや、事故に巻き込まれて、今頃、病院にいるのでは?
不安はつのるばかりだ。
そして、最大の不安は、もしも、このまま金田さんが来なかったら・・・・・。
全員がソワソワしている。
ふと見ると、演出家の古郡さんが隅っこでブツブツ言っている。
金田さんのセリフを練習しているのだ!
自分が代役をやるつもりなのだ!
それを聞きつけた橋本が
「古郡さん、ズルいっ!!私も他の役がやりたいっ!!
ねえ、薫ちゃん。金田さんが来なかったら、役を取り替えっこしない?」
わけのわかんないことを言い出した。
「な、なにをバカなことをっ!!」と僕の怒りが爆発しようとしたとき、
フラッと金田さんが現れた。
「いやぁ〜、すいまっせん。
あんまりいい天気なもんで、昼寝してたら、こんな時間になっちゃいましたぁ。
あれっ?どうしたんですか?稽古しないんですかぁ?」
そのノーテンキぶりに全員がハラホレヒレハラとずっこけた。
4月16日(水よう日) 日直・鬼界
初日!
トラブルもなく、お芝居は進行し、
橋本がラストのセリフを言い、照明が暗くなり、無事、終わるかと思われたときだ。
暗闇の中、舞台前方で
ドスッ とヘンな音がし、
最前列のお客さんが小さく キャッ と叫び声をあげた。
最後の最後になって、トラブル発生か!? と思いながら、
照明が明るくなってみると、
なんの異常もない。
いったい、なんだったの? と不思議に思いながら、
舞台挨拶を終え、楽屋へ戻った。
「最後でなんかヘンな音がしたんだけど、なんだったんだろう?」とみんなに聞くと、
橋本が
「実は、私、舞台から落ちたんです・・・」と告白した。
暗闇の中、舞台挨拶する定位置へ移動するのだが、
どんどん前へ行き過ぎてしまい、
ドスッと舞台から落ちてしまった。
そして、その勢いで最前列のお客さんのヒザに手を付いてしまい
お客さんがキャッと叫び声を上げたのだそうだ。
最前列のお客さま、びっくりさせてしまって申し訳ありませんでした。
それにしても、う〜む、やはり恐るべし、橋本きよみ!
4月15日(火よう日) 日直・鬼界
おとといのことだ。
稽古が終わって、ヘトヘトに疲れているところへ、橋本がやって来た。
「明日の稽古場日誌、書いてもいいかな?」
鬼界浩巳事務所史上、稽古場日誌を橋本が書いたことは
かつて一度もない。(たぶん・・・)
僕は驚いた。
「い、いいけど・・・」と答えると、橋本は
「よかったあっっ!!ぜっーたい、読者の皆さまに知らせなきゃならないことがあるからっ!!」
と、キラリと目を光らせたのだった。
それがあれかよ!
携帯でメールを打ったことが、皆さまに知らせなきゃならないこと?
どっちかって言うと、恥ずかしいことじゃないの?
携帯を持ってるのにメールやってない人って、日本に5人ぐらいしかいないのでは?
それを大々的に公表したかったのか・・・?
恐るべし、橋本きよみ・・・・!!
などと、書いておりますが、今日15日は仕込み日です。
明日の初日に向け、準備に大忙し。
そうです!明日からです!
是非、見に来てくださいませっ!!
まだまだよいお席がございます。正直言うと、かなりあります、いっぱいあります・・。ぜひ、ぜひ!
って、これが皆さまに知らせなきゃならないことだろ、フツーは。
4月14日(月よう日) 日直・橋本
薫ちゃんが、
楽しげに携帯でメールを打っているのを見ていたら、
チョットやってみたくなったので、
教えてもらった。
前回の公演で小道具として購入した私の携帯電話。
まったく使っていない。
ビックリすんだよねー、電話って。
突然、かかってくるから。
いつかかってくるかドキドキして、体に悪そうなので、
携帯は使わない。
そんな、
携帯のスグレた機能をまるで知らない私に、
薫ちゃんは、
「きよみさんの携帯に、私のアドレスを登録しましたから、
ここをこうして、こうすれば、ほーら、簡単に私にメールが送れますよ〜」
と、優しく教えてくれた。
昨夜、
帰宅後、早速、薫ちゃんにメールを送ってみた。
稽古場で教えてもらいながらやった時は簡単に思えたメールの送信は、
独力だと意外に難しかった。
1時間かかった。
『いちじかん、かかって、やっと、これさ。
はたして、とどくのか?やまごえくーん。いいゆめみようね、おやすみ!きよみ』
記念すべき「初メール」。
(ちなみに、
「やまごえくん」というのは、薫ちゃんの知り合いの、カッチョイイ大学生の男の子のことです。)
薫ちゃんから、スーグ返信が来た。
で、
また私も送った。
今度は、20分ほどで送れた。
そしたら、また薫ちゃんから来た。
で、また私も送った。
そしたら、また薫ちゃんから。
で、また私。
この繰り返しで、寝たのは午前3時。
いやぁ〜、やると結構楽しいわ、携帯のメール。
かわいそうなのが、薫ちゃんだ。
いい迷惑だ。
私の携帯の唯一の登録者。
私は、あなたにしかメールを送れません。
よろしくね!
今日も送ろっと!
4月13日(日よう日) 日直・鬼界
タバコを吸いながら、金田さんと話していた。
「金田さんは、1日何本くらいタバコを吸う?」
「最低2箱。」
「うっへー!月々のタバコ代だけでかなりの出費だぁ!」
「飲みに行ったりすると、3箱4箱はかるく吸うから、月々のタバコ代はすごいさ。」
「4箱も吸うと、朝起きたとき、口の中がニチャニチャじゃない?」
「人間の口じゃないみたいになってるさ。ニチョニチョのコテコテのゲロゲロ。
最高に気持ち悪いよ。この前、お芝居を見に行ったら、
出演者が男4人だけだったんだ。最初、こたつに4人が寝てて、
順番にアクビしながら起きていくんだけど、それが延々とダラダラしてて30分もかかるんだ。
起きるだけで30分だよ。どうよ、これ?」
この会話、ヘンじゃありません?
下線部が、その前と全然つながっていない。
タバコの話をしてたのに、なんでいきなりお芝居の話になるの?
「どうよ、これ?」と言われても、僕は全くついていけず、
ポカンと口をあけたままだった。
すると、金田さんが
「あっ、また?
よく言われるんだ、オレの話にはついていけないって。
‘タバコを吸いすぎて起きると気持ち悪い’って話をしてるときに、
‘そういえば、気持ち悪い起きかたで始まるお芝居を見た’と思い出したんだ。
で、それがそのまま言葉になったわけ。
オレの中では、‘気持ち悪い’をキーワードに話はつながってんだけど、
わかんない?」
「わかんない?」って、言われても・・・・
ぜーんぜん、わかりませんっ!!
4月12日(土よう日) 日直・鬼界
皆木クンが衣裳を持ってきた。
鮮やかなレモンイエローの春っぽいシャツだ。
「いいねぇ。いい色だよ。オレのイメージどおりだよ。」
と、演出の古郡さんもとても気にいり、
さっそく、皆木クンは着てみることになった。
が、
いざ着てみると、なんかヘンだ。
なんかオカマみたいだ。
「ボタンをとめてみて」と古郡さんが言い、
皆木クンがボタンをとめた。
うへっ!よけいオカマみたいだ。オカマのファッションデザイナーだ。
ウエストがびみょーに絞られてるし・・・。
古郡さんが聞いた。
「このシャツ、もしかして、女モノ?」
「ば、ばれました?」
皆木クンはレモンイエローのシャツを求めて、
新宿・渋谷・原宿・上野・浅草をさんざん歩き回ったのだそうだ。
けれども、演出家が指定した‘鮮やかなレモンイエロー’のシャツは見つからない。
どうしよう・・・と困り果てたとき、ふと目に入ったのが、このシャツなのだ。
そして、皆木クンの心の中で天使と悪魔の争いが始まった。
天使「いい色だけど、女モノだから、あきらめるしかないな」
悪魔「女モノってバレなきゃいいんじゃないのかい?イヒヒ」
天使「なに言ってんだよ!バレるに決まってるよ!!」
悪魔「男モノに見えるぜ、このシャツ。だいじょーぶ、誰もわからないさ。」
天使「で、でも、そんなこと・・・」
悪魔「すっごく歩き回って、クタクタじゃないか。これ以上、探しまわるのはイヤだろ?」
天使「それはそうだけど・・・」
悪魔「だったら、このシャツを買っちゃえよ。これでいいじゃん。イヒヒ」
こうして、悪魔に負けた皆木クンはシャツを買ってきたというわけだ。
けれども、結局、ボツになってしまった・・・
“悪魔の誘惑に負けては、いけない”ということの、いい見本です。
4月11日(金よう日) 日直・鬼界
最後の1週間の稽古は、
ある劇団の稽古場を借りている。
本番で使う装置、道具を持ち込めるし、クツや衣裳も置きっぱなしにできるので
大変、便利だ。
が、ひとつ問題がある。
稽古場につながって、その劇団の事務所があり、
一応、壁とドアはあるものの、
世界で一番薄い壁とドアなのだ。
小さな話し声はぜーんぶカンペキに聞こえるし、
事務所の机の上に小銭をそっと置いてるのに、何円玉を置いたのか聞き分けられる。
それくらい、すべてが丸聞こえなのだ。
稽古中はなるべく静かにしていてくれるのだが、
昨日、通し稽古の最中に事務所にコピー機のメンテナンスが来てしまった。
「こんにちはー。シャープです。
コピーのメンテナンスにうかがいましたー。」
声がやけに大きいメンテナンスマンだ。
すぐに事務所の人がささやき声で注意してくれた。
「今、となりで稽古中なので、お静かに。」
「あっ、すいません。では、静かに作業します。」
しばらくガチャガチャとコピー機をいじくる音がしていた。すると、
「あっ!やっぱ、トナーがダメになってんだ!!」
仕事熱心なメンテナンスマンはトラブルの原因を見つけるなり、大声になってしまった。
「しっー!!お静かに」
すぐさま、事務所の人の注意が入る。
「すいません。」
「トナーがダメなんですか?」
「そうです。ほら、これですよ。このコピー機はひとつ古い型なんですよ」
「なるほど」
「今のシャープのコピーなら、こういうトラブルはないですよ。
なんといっても、小型化されましたしね。
この3分の2くらいの大きさですよ。その上、早いし静かだし」
シャープ製品のことを熱く語りだしたメンテナンスマンはどんどん声が大きくなる。
「お静かに。声が大きいです。」
「あっ、すいません。ホント申し訳ないです。あ、じゃあ、カタログを置いてきますよっ!
新型機のリースをぜひご検討ください。」
メンテナンスマンの大声が響き渡った。
営業熱心というか、周囲が見えないというか、バカというか、
こういう人って、いるんですね・・・。
4月10日(木よう日) 日直・鬼界
まただ・・・
夕食を食べて、稽古場に戻ってくると、
稽古場中にチキンの匂いが充満している。
橋本さんだ。
橋本さんがまたケンタッキーのチキンを食べているのだ。
私の記憶に間違いなければ、
彼女は3月末から毎日毎日チキンを食っている。
チキン4ピース+コールスロー、もしくは、チキンフィレサンド+コールスロー
のメニューを1日たりとも欠かしたことはない。
夕食を食べ満腹状態で稽古場に戻ってきて
チキンの匂いに包まれるほど、ツライことはない。
特に、ケンタのチキンの匂いはすげえ油っぽい。
匂いだけで胸焼けする。
匂いだけでゲップが出る。ゲフッ。
しかも、ケンタのチキンの匂いは強烈でなかなか消えない。
そこに、コールスローのちょっとスッパイ匂いが加わるのだ。
ケンタッキーの厨房で稽古してるような気になります。
橋本さん、なんとかなりませんか・・・・?
4月9日(水よう日) 日直・鬼界
稽古場に行くと、見慣れない少女が座っていた。
後姿だが、どう見ても美少女だ。
「あの、どなたですか・・・?」と声をかけると、美少女は振り返った。
なんと、薫ちゃんだ!!
髪の毛を切ったのだ!
すっごくカワイくなっている。キュートだ。
いや、もちろん、今までがカワイくなかったという意味じゃなくて、
今までも、とてもカワイかったのが、
より一層、磨きをかけて、カワイくなったということです、念のため。
そして、次にやって来た金田さんは、稽古場に入るなり
「あっ・・・」
と絶句してしまった。
薫ちゃんの変身ぶりに驚いたのだ。
そして、機関銃のようにしゃべりだした。
「薫ちゃん、いいよぉー、その髪型。
すっげえカワイイ。超カワイイ。とにかくカワイイ。とてもカワイイ。(以下、延々つづく)」
誉めまくりだ。
次から次へと、稽古場にやってくる人が全員、
薫ちゃんの変身に驚き、ほめちぎる。
皆木クンなどは、照れて顔を赤らめ、薫ちゃんを見られないほどだ。
髪の毛を切った薫ちゃん、本当に本当にステキです。
薫さま、これで許していただけますでしょうか?
本当のことを言いますと、
薫さまが髪の毛をお切りになったことに、だ〜れも気づかなかったのです。
みんなから「かわいくなったね」と言ってもらえることを期待していた薫さまは
大変、ご立腹なさったのです。
日誌にこれだけ書かせていただきましたので、どーぞ、お許しください、薫さま。
4月8日(火よう日) 日直・鬼界
またまた、皆木クンの隠された過去が明らかになった。
フランスにいる頃、レイプされそうになったのだっ!!
皆木クンはパリのジムに通っていた。
その日も、エクササイズを終えた皆木クンは、シャワーを浴びていた。
10個ほどのシャワーが並び、シャワーカーテンで仕切られているだけのシンプルなつくりだ。
シャワーカーテンに人影が写ったので、
となりのシャワーに誰か入ったんだと皆木クンは思った。
が、ヘンだ!
いつまでたっても水の音がしないのだ。
皆木クンが振り返ると、
シャワーカーテンのすき間から黒人が覗いてるではないか!
「ボブ・サップよりもデカい黒人でした」(皆木クン談)
皆木クンと目が合った途端、
黒人はシャワーカーテンを開け放ち、皆木クンに襲いかかって来た。
もちろん、黒人は全裸だ。巨大な×××が×××している!
慌てすぎたのか、黒人は泡に滑って転んでしまった。
その隙に、皆木クンは逃げた。
シャワー室にいる人に助けを求めるのだ。
皆木クンは走った。
が、次から次にシャワーカーテンを開けても、
運の悪いことに、シャワーを浴びてる人がその時に限って誰もいない。
追いかけてくる黒人の唸り声が聞こえるだけだ。
ついに、皆木クンは全裸のまま、更衣室に駆け込んだ。
なんという不運!
更衣室には人っ子一人いなかった。
シャワーカーテンにからまりながらも黒人は、着実に皆木クンに迫ってきている。
皆木クンは全速力で更衣室を駆け抜け、
受付に飛び出した。
金髪のパリジェンヌの受付嬢の前にスッポンポンで!
「キャァァァーーーーーーーーーッ!」
受付嬢の叫びが響き渡った・・・。
こうして、皆木クンに襲い掛かった黒人は逮捕された。
有名なレイプ魔だったそうだ。
橋本が質問した。
「フランス人も、キャァァーって叫ぶの?」
これだけの話を聞いて、なんで、そんなとこに興味を持つのだろう・・・・?
4月7日(月よう日) 日直・鬼界
今日は稽古がお休みです。
衣裳を探しに行きます。
が、そうは簡単にはいかないのです。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、
僕は、他の人よりもほんの少し、汗を多めにかく傾向にあります。
たいしたことはありません。
他人が軽く汗ばむようなときに、僕は5リットルくらい汗をかいている。
その程度のものです。たいしたことはありません。
だから、衣裳の色が制限されます。
キレイな水色のシャツを着ていても、
あっという間に汗でグショ濡れになり、濃紺の作業着のようになります。
うすいグレーのTシャツなんか最悪。
下水の中を走り回った、ドブネズミ色に早変わりします。
さらに、首が太いのに腕が短く、
肩幅が広いのにウェストが細く、
上半身がガッシリしてるのに足が短いために、
形・サイズもかなり制限されます。。
ね?大変でしょ。
なんで、こんなからだに生まれたのだろう・・・・
4月6日(日よう日) 日直・鬼界
出演者全員が登場し、愛について語り合う静かなシーンを
稽古していた。
橋本がささやき声でセリフを言っている時だ。
突然、
ギュルルルルルー
と、セリフよりも大きな音でおなかがなった。
金田さんだ。
「金田さん、カンベンしてくださいよー。まだ3時ですよぉ。
それとも、金田さんはオヤツが欲しいのかなあ?」
ハハハハとみんなが笑い、稽古再開。
そして、金田さんが小さな声でセリフをつぶやいてる時だ。
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーー
突然、地響きのような音がした。
橋本のおなかがなったのだ。
が、
さすがにみんな熟練の俳優さんだ。
もう、そんなことで笑ったりしない。
何事もなかったような、マジメな顔でセリフをしゃべり続けている。
が、3秒後に、
キュルキュルキュルキュルキュル〜〜〜
と、僕のおなかが猛烈な消化音を発した時には、耐えられなかった。
全員が笑い崩れてしまった。
特別に、3時のオヤツ休憩をとることにした。
おなかがなるのって、伝染するのね・・・。
4月5日(土よう日) 日直・鬼界
橋本が言った。
「皆木クンって、あの、ほら、なんとかっていう俳優に似てるよね」
皆木クンが、誰ですかと尋ねると、
「ほらぁ、なんとかっていう有名な監督の、なんとかっていう映画で、
ちょっとカッコいいけど、けっこーカッコわるい役をやってた人よ。わかんない?」
わかんねえよ!
橋本がだれのことを言ってるのか、稽古場にいる全員が見当もつかなかった。
そして、自分が誰に似てるかの話になり、
金田さんが言った。
「最近発見したんだけど、オレは、ジム・キャリーの『マスク』に似てるよね。
マスクをつけたジム・キャリーに似てるんじゃなくて、
‘マスク’そのものに似てるんだけどね。」
僕は笑った。確かに似てるぅー!!
が、他の人はポカンとしていた。映画『マスク』を見ていなかったから。
稽古場中の爆笑を期待していた金田さんは、
ちょっと拍子抜けしてしまった。
「けっこう笑えるネタなのに・・・よし、それなら」と話をつづけた。
「『金田さんって、‘しゃもじ’に似てますねぇ』って、よく言われるんだよ。
ちょっとヒドくない?生物じゃないものに似てるって、どうよ?」
確かに似てる!稽古場中が笑った。
薫ちゃんなどは、大口をあけて、ガハハハと豪快に笑っている。
調子が出てきた金田さんは、さらに続けた。
「この前なんかさぁ、『金田さんは、‘ナン’に似てる』って言われたよ。
インド料理の‘ナン’だぜ」
稽古場の笑いがピタッと止まった。
ほ、ほんとだ・・金田さんは‘ナン’に似てる。そっくりだ。でも言われなきゃ絶対気づかない。
「金田=ナン」を発見した人は天才に違いない・・・・。
突拍子もない、そっくりさんに、全員、感心してしまった。
あなたの目でお確かめください。
金田さんはナンに似てます。
4月4日(金よう日) 日直・鬼界
薫ちゃんは、先月、バストアップにも取り組んでいたそうだ。
巨乳アイドルが
「わたしィ、十代の頃ォ、キャベツを1日1個ォ、食べてたんですゥ。
そしたらァ、オッパイがァ、どーんどん、おっきくなったんですゥ。」
とテレビで発言していたのを見て、薫ちゃんは決心した。
「わたしは、もう高校生じゃないけど、
こーゆーものは気持ちの問題よ。まだまだいけるはず。
よーし!明日からキャベツを1日1個、食べよっと!!」
そして、キャベツを食べ始めて2日目。
早くも変化が現れた。
バストはアップしないが、腸の働きが異常に活発になったのだ。
「毎日毎日、気が気じゃない量が出るんです。
このまま出し続けると、私がなくなってしまう!って思ったんです」
‘気が気じゃない量’って、どれくらいなんだろう?
‘私がなくなってしまう’って、スゴイぞ。
たとえば、
‘1日2キロの食事をしても、3キロ排出すれば、
体重40キロの人は40日で消えてなくなってしまう’ってことでしょ?
フツー、そんな発想するかぁ?
てゆうか、そんな発想をしてしまうくらいの量が、‘気が気じゃない量’ってことなんですね・・・。
とにかく、そんな発想をした薫ちゃんは、生命の危機を感じ、
キャベツ・バストアップ作戦を中止したそうだ。
頑張れ、薫ちゃん!
バスト&ヒップアップへの道は遠いぞ!!
4月3日(木よう日) 日直・鬼界
たいていの劇団の稽古は、
集合してから実際に稽古が始まるまで、
だいたい1時間くらい、ウォーミングアップの時間がある。
たいていの人は、
ストレッチをしたり、腹筋運動をしたり、タバコを吸ってダベってたりする。
が、
薫ちゃんは稽古初日から独自の運動をしている。
稽古場に来て着替えるやいなや、
四つんばいになり、
足を後ろへ振り上げる動作を黙々と1時間やりつづけているのだ。
1日も欠かさない。毎日毎日、四つんばい。
「なんで、あればっかりやってんの?」
と全員が気になっていたが、
薫ちゃんがあまりにも真剣に取り組んでいるので誰も聞けなかった。
そして、昨日、とうとうこらえきれなくなった橋本が質問した。
「ねえ、薫ちゃん。なんで毎日足上げやってんの?なんかの儀式?」
薫ちゃんは、足上げ動作をやめることなく、四つんばいのまま、答えてくれた。
忘れもしない今年の1月15日、
薫ちゃんは風呂上りに自分の体を鏡でマジマジと見たのだそうだ。
薫ちゃんちの脱衣所には大きな鏡があるのだ。
「あれ?私のお尻、ちょっとたるんできた?
ま、でも、まだまだ大丈夫。けっこーイケてるじゃん。」
と薫ちゃんは満足した。
そして、1月16日。再び脱衣所にて。
「あれ?昨日より、お尻がたるんでない?まさかね、ハハハ」
1月17日。脱衣所。
「え?マジ?昨日よりお尻がタレてる気がすんだけど、気のせい・・・?」
1月18日。
「・・・・・やっぱタレてる!!!!!」
明らかに1日1日と薫ちゃんのお尻はタレ下がってきていた。
薫ちゃんの尻肉が重力に負ける日がやってきたのだ。
このままでは大変なことになる!
その日から薫ちゃんはヒップアップのため、
毎日毎日、四つんばいの足上げを欠かしたことはないそうだ。
「でも、薫ちゃんのお尻は、服を着てれば、そんなにタレてるようには見えないよぉー!」
と、橋本が率直すぎる意見を述べると、
「そうなんですよぉ!私、服を脱ぐとスゴイんですよぉ!!」
と、薫ちゃんは自慢ともつかない答えをしている。
「で、お尻は持ち上がってきたの?」
と、金田さんが尋ねると
「とりあえず、タレ下がるのは止まりました。」
と、薫ちゃんは誇らしげだ。
頑張れ、薫ちゃん!
ヒップアップへの道は遠いぞ!!
4月2日(水よう日) 日直・鬼界
「ダディー!!」と叫びながら、外人の女の子が稽古場に駆け込んできた。
ウェーブのかかった金髪をなびかせる、
5才の女の子、レイチェルちゃんは金田さんの娘だ。
金田さんも、すっかり父親の顔になり、満面の笑みで
「ハーイ、レイチ!!(レイチェルの愛称はレイチというのだそうだ)
ホワッツ・ゴーイング・オン・トゥデー?」と流暢な英語で語りかけている。
レイチェルちゃんのあとから、奥さんが入ってきた。
「なんで、金田さんに?」、と言っちゃ失礼なのだが、
「なんで、日本人男性が、こんなブロンドの美人と結婚できるわけ?」
と、腹立たしくなるくらい、美人のアメリカ人、フィービーさんだ。職業、モデル。
(数年前にテレビの仕事で知り合い、二人は結ばれたのだそうだ。ちぇっ、いいな・・・)
「ハイ、ダーリン」と真っ白な歯で微笑むフィービーさんを
金田さんは
「フィーブ!(フィービーの愛称はフィーブというのだそうだ)」と抱きしめ
キスしている。
日本人同士がキスなんかしてると、刺したくなるものだが、
片方が外人だったら結構、サマになるのだ。ちぇっ、いいな・・・。
金田ファミリーは稽古を見学した。
笑いに対して厳しいのか、文化の違いなのか、
どんなギャグをかまそうと、クスリともしない。
が、金田さんが登場したとたん、大笑い。
金田さんがしゃべると大爆笑。ちょっと動いただけで、「ジーザス!」と受けまくり。
えこひいきしすぎだよ!
いくら金田さんを愛してるからって、それはないんじゃないの?
いくらなんでも、こんな人っている?
はい、いません。
ぜーんぶウソです。
1日遅れのエイプリルフールです。
全国1000万の金田ファンの皆さま、ご安心ください。
金田さんにブロンドの娘はいませんし、ブロンドの妻もいません。
4月1日(火よう日) 日直・鬼界
「鬼界さん、ちょっと話があるんですが」
金田さんが大マジな顔で言ってきた。
「夕食休憩のとき、稽古場の裏の空き地に来てください」
な、なんだろう?
「必ず一人で来てください」
体育館の裏に呼び出されるみたいだ。
え?ってことは、カツアゲされんの?
僕はドキドキしてしまい、午後の稽古に集中できなかった。
「オレに5ページの長ゼリをくれっ」と言われるのだろうか?
それとも
「あんたは、演劇っちゅうもんがわかってないぜっ」とお説教されるのだろうか?
そして、夕食休憩になった。
裏の空き地に行くと、金田さんがコワイ顔でタバコをふかしていた。
「は、はなしって、な、なに?」
と尋ねると、
「ぶっちゃけて言わしてもらいます。
なんで、ここ3日間、鬼橋日誌は薫ちゃんのことばっかなんですか?
公平に書いたほうがいいと思う。
オレのことを書いてくれって言ってんじゃないっすよ。
皆木クンのこととか、橋本さんのこと、鬼界さんのことも書かなきゃ。
誤解しないでくださいよ、オレのことを書いてほしいなんて、これっぽっちも思ってません。
かたよった内容じゃ、読者が喜ばないと思うんです。
オレのことは書かなくていいけど、
公平に書いたほうが、鬼界事務所のためだと思うんです。
オレは書いてもらわなくたって、なんとも思わないけど、
皆木クンとか、なんか、かわいそうだし。
そこんとこ、ちょっと考えてみてください。じゃあ、これで」
一気に言うと、金田さんは去っていった。
金田さん、率直な意見をありがとう。あなたの言いたいことはよーくわかりました。
明日は金田さんのことを書きます。
これでいいんですよね?
あなたの言いたいことは、こういうことですよね。
3月31日(月よう日) 日直・鬼界
稽古場で薫ちゃんがせっせと切手をはっている。
そうなのです!
小劇場の俳優にとって、知人に公演案内のお手紙を出す作業は
とても重要な仕事なのです。
数十通の封筒にペタペタ切手をはっている。
が、濡れスポンジなどは使用せず
一枚一枚、切手を舌でなめているではないか!
フツーの人には経験ないかもしれませんが、
切手というやつは、
10枚なめ続けると、ノリで舌がネチョネチョになり、
20枚を越えると、舌はコテコテになり、
30枚を過ぎると、たい積したノリのおかげで舌の感覚がなくなり、
50枚に達する頃には、ゲロを吐きそうになるのです。
なのに、薫ちゃんは・・・・
「その切手、全部、舌でなめるの?」
「そうですぅ。」
「舌がコテコテにならない?」
「べつにー。アメリカの切手って、甘い味がするんですよー。」
「え?アメリカの切手はってんの?」
「そんなわけないじゃないですか!!ここは日本ですよ。」
・・・言われなくたって、わかってるよ!ここは日本だよっ!!
あんたがアメリカの切手の話をしたんじゃねえかよっっ!!
と、怒りたいのをグッとこらえ、
「でも、あんまりなめると吐きそうにならない?」
「ぜんぜん」
「100枚なめても平気?」
「前にぃ、200枚くらいなめたことありますよぉ。」
薫ちゃんの舌は特殊な舌なんです、きっと。
さあ皆さん、想像してください。
特殊な舌です。だ液の流れが異常に活発なのです。
舌の上を、常に、だ液がダラダラ流れているのです。
かたときも休むことなく、ダラダラ、ダラダラ、ダラダラ・・・・
こわっ
3月30日(日よう日) 日直・鬼界
僕が薫ちゃんに愛を告白するシーンを稽古していた。
感動的ないいシーンだ。
ふと見ると、薫ちゃんはずーっと左手首をかいているではないか。ボリボリ。
一度、目に入っちゃうと、気になって気になって仕方ない。
「俺はお前のことが、俺はお前が!」
と瞳をみつめ、愛をぶつけてみても、
視界の下のほうでは、薫ちゃんは左手首をかいているのだ。ボリボリ。
ガマンできなくなって言った。
「薫ちゃん、手首をボリボリかくのは、ちょっと・・・」
すると、
「え?かいてましたっ?うわー、カンペキ無意識。マッズイなぁ・・・」
話を聞くと、
ヤケドの包帯(18日の日誌参照)を2,3日前に、はずしたのだが
かゆくてかゆくてどーしようもないのだそうだ。
最初は、なでるようにソフトにかいていたのだが、
それでは物足りなくなり、思いっきりツメでボリボリかくようになった。
すっごい気持ちいいーっ!のだそうだ。ボリボリ。
が、あまりにかきすぎて内出血してきたので、かくのをキッパリやめた。
つもりだったのだが、気がつくと無意識にかいているのだそうだ。ボリボリ。
薫ちゃんの動きを追ってみた。
かいてる、かいてる、もー大変!
稽古中はもちろん、演出家の指示をマジメな顔で聞いているときも、
サンドイッチを食べてるときも、食後にあんドーナツを食ってる時も
稽古が終わって、おかたづけしている時も、
いつでも、どこでも、ボリボリだ。
人間は快楽には勝てないんですねぇ・・・ボリボリ。
3月29日(土よう日) 日直・鬼界
薫ちゃんは、この世で一番、世界で一番、かえるが嫌いなのだそうだ。
小学校時代は、道にかえるがいるだけで足が動かなくなってしまい
上級生におんぶして連れ帰ってもらったし、
今でも、家のそばにかえるがいると、
家族に電話をかけ、かえるを追っ払ってもらわないと、家に帰れないほどだ。
そんな薫ちゃんが昨日、
かえるが車にひかれてペッチャンコになってるのを見てしまったのだ。
「たまたま、いつもと違う道で帰ったら、私の目の前にペッチャンコのかえるがいたんです。」
それって、かえるが薫ちゃんを呼んでるんじゃないの?
「やめてくださいよぉー」
薫ちゃんは真剣に怒っていた。
そして、今日、薫ちゃんが真っ青な顔をして稽古場に現れた。
「どうしたのっ?」と尋ねると
「かえるです・・・」とつぶやいた。
稽古場へ来る途中、角を曲がったら、
薫ちゃんの目の前にかえるがいたのだそうだ。
恐怖のあまり金縛り状態になっていると、なんと、そのかえるは
薫ちゃんのほうへ、ノソノソと動いてきた!
どんどん近づいてくる・・
死んだ方がマシだ。舌を噛み切って死のうと思ったそうだ、マジで。
すると、かえるは突然向きを変え、薫ちゃんの前から去って行った。
「ホントに、ホントに、死のうと思ったんですよぉ」
薫ちゃんは涙目になって、必死に訴えた。
薫ちゃん、あなたは特殊な人です。
東京23区内で2日連続、かえるに遭遇してるのは、絶対あなたしかいません。
てゆうか、フツーの人は、かえるなんて何年も見ません。
かえるにすっごく好かれてんだよね、きっと。
3月28日(金よう日) 日直・鬼界
「統一地方選挙が告示されたね」
橋本が突然、言い出した。
橋本さんが政治に興味があるとは思えない。
どーせニュースでも見たに違いない。
「今回の選挙は政党離れが際立ってるよね」
と受け売りのことを言うのかと思いきや、
「駅前とか街頭で演説してる人は、なんでマイクにハンカチかぶせてんの?
『私は上品です』って、主張してんのかな?」
と、またまた橋本さんらしい発言だ。
「あれはね、息がかからないようにしてるんですよ、橋本さん。
マイクテストのときに、息をフッフッてかけると、
スピーカーからボッボッって音がするでしょ。
ああいう風にならないように、ハンカチをかぶせてるんです。」
と金田さんがわかりやすく解説してくれた。
すると、橋本さんは
「へえぇー、そうなんだぁ。ぜーんぜん知らなかった。
さすが、声の仕事もたくさんやってる金田さん!物知りだぁ。」
と感心。
金田さんも「いやぁ、常識でしょ。フフ。」とちょっぴり得意げだ。
「じゃあさあ、金田さん、街頭で演説してる人は
なんでマイクを2本持ってるの?
テープでグルグル巻きにして必ず2本持ってるじゃない?
あれはなぜ?
マイクを2本使ったほうが、声が大きくなるの?」
「へ?・・・・あれは・・・なんでだろ?」
さすがの金田さんもわからない。
もちろん僕も薫ちゃんも皆木クンもわからない。
誰かわかります?
確かに、選挙カーに乗って街頭演説してる候補者はマイクを2本持っています。
あれはなぜ?
3月27日(木よう日) 日直・鬼界
朝6時、熟睡している金田さんに突然、電話がかかってきた。
寝起きのボンヤリした状態で受話器をとると、
お母様が叫んでおられた。
「ちょっと、あんたっ!死んだ死んだ死んだのよっ!!」
こうして金田さんは母親からの電話で古尾谷雅人の自殺を知ったそうだ。
不思議なお母様だ。
わざわざ電話すること?しかも朝イチで?
そして話題は、「自分は自殺するだろうか?」ということになった。
金田さんは、‘自殺する’派だそうだ。
「自分の生きざまに行き詰まったら、やっぱ、男として、自殺するでしょ」
カッコいい!
自殺の方法は?
「具体的には考えてないけど、飛び降りにしようかと。
近所にある、ストークス本町東っていうマンションが9階建てで、誰でも屋上へ行けるんだ」
具体的じゃん!
「まあね、フフ。
・・・深夜2時すぎ、星のきれいな晩に、
ストークス本町東のコンクリートの古い階段を僕は一歩一歩上って行く。
ほとんどの家はシーンと寝静まっている。
たまぁに、電気がついてる部屋があって、ちいさぁくテレビの音が聞こえるかもしれない。
それが僕には、この世の別れの歌に感じられることだろう。
そして、屋上へのドアを開ける。空は満天の星空だ。
ああ、短い人生だったけど、悔いはない。
僕は静かに、あくまでも静かに、屋上の端へと歩を進める。
心は、山の奥深くに眠る、湖のように静かだ。
錆びた鉄製のてすりを乗り越える。さようなら、みんな。
そして、ふと下を見ると、
・・・わわわわわわわ」
急にどうしたんですかっ?
「9階下の地面を想像したら、ホントに恐くなっちゃった・・」
さすが俳優さんだ。
でも、金田さん、あなたは死ぬ勇気がなくて絶対自殺できないタイプです。
3月26日(水よう日) 日直・鬼界
サスペンスフルなシーンを稽古しているとき、
演出の古郡さんが薫ちゃんに指示しました。
「そこは、思い切って、火サス(火曜サスペンス劇場のこと)みたいにやってみて」
“いかにもサスペンスっ!”って感じでやるんだなと
僕は理解しました。
金田さんも理解しました。
皆木クンも橋本も理解しました。
が、薫ちゃんは違いました。
「船越英一郎・片平なぎさコンビの王道路線ですか?それとも、
三田佳子さん、かたせ梨乃などのちょっと大物女優が主役パターンですか?
それとも、‘警視庁鑑識班’シリーズのような頭脳推理風ですか?」
なんで、そんなに詳しいの?
みんながあっけにとられていると、薫ちゃんは
「あっ、そっか!土ワイ(土曜ワイド劇場のこと)じゃなくて、火サスなんですねっ!」
とひとり納得されました。
「もしかして、薫ちゃんは2時間ドラマが好きなの?」とお尋ねしてみると
「好きってほどじゃないんですけどぉ、
月曜ミステリー、火曜サスペンス、水曜は12チャンの女と愛とミステリー、
金曜エンタテイメント、土曜ワイドは、だいたい見てます。お芝居やってないときですけど。」
と、おっしゃった。
すっげえ!
「ビデオに撮って、お見になるのですか?」
と、興奮した金田さんが間違った敬語で尋ねると、
「ビデオに撮っては見ないですぅ。」
えぇぇ!ってことは、
木曜と日曜以外は、午後9時から11時までテレビの前に座っておられるの?
今どきそんな人は珍しいのでは?
「そうかも・・・。でも、木曜は『渡る世間』で、日曜は『ウルルン』しか見てないんですよお!」
と力説された。
つまり、毎日夜はテレビの前に座ってらっしゃるってこと?
余計珍しいよ!究極のテレビっ子かよ!
と全員が心の中で驚いてると、薫サマは
「あっ!『渡る世間』は3月で終わるんだ。秋まで木曜は見るものないなぁ・・・」
とつぶやかれた。
人はみかけによらないもんだ。
3月25日(火よう日) 日直・鬼界
ついにやってしまった・・・
鬼橋日誌に穴を空けてしまったぁ!
3月23日の夕方、電話がかかってきました。
「おー、鬼界、久し振りやのぉ」
なんと、ロンドンで医者をやってる、“男前”でした。
(これがあだ名なんです。が、決して二枚目ではありません。それどころか・・・)
「日本に帰って来てンねん。今晩、会おけぇ」
することもなかった僕は、もちろんOKしました。
「“チンポ”と“びっこ”にも連絡済みや。ほな、あとで。」
(重ねがさねで恐縮ですが、これもあだ名です。
“チンポ”は、ナニが大きいからではなく、顔がナニに似ているから“チンポ”と呼ばれ、
“びっこ”は、左足が右足より長くてちょっと足を引きずるから“びっこ”と呼ばれています。
僕のまわりは、サイテーのあだ名の友人ばかりです・・・。
決して、テレビドラマ化できません。)
何年ぶりかで再会を喜び、
六本木の焼肉屋に行き
そのあと、職安通りのフィリピンパブに行き
それから、歌舞伎町の居酒屋に行きました。
(なんで六本木で焼肉なの?なぜにフィリピンパブ?で、最終的には居酒屋かいっ!
すべて、“びっこ”君の案内です、念のため。)
帰ってきたのは、3月24日の午前7時でした。
すぐにフトンに入りました。
起きたら、午後1時10分。稽古開始は午後1時。遅刻だあ!!
慌てて稽古場に向かい、稽古場に到着するやいなや、稽古開始。
(演出家ならびに共演者の皆さま、お待たせして申し訳ありませんでした・・・。)
そして、稽古が終わったとき
「ちょっと飲みに行こうか」ということになったのです。
ご承知のとおり、僕はお酒が飲めません。
が、飲み会は好きです。
(てゆうか、参加しないと不安なんです。
もし、僕が参加しなかった飲み会がすっげえ盛り上がったら、
すっげ悔しいじゃないですか。一生後悔します。あなたもそう思うでしょ?)
飲み屋から出て、時計を見ると、午前零時五分!
すでに、3月25日になっていたのです!!
こうして3月24日は僕の前から過ぎ去って行ったのです・・・
ああ、2003年3月24日を僕は一生、忘れないだろう。
3月24日(月よう日) 日直・いません・・・・
3月23日(日よう日) 日直・鬼界
今日は稽古が休みです。
春らしく、うららかで暖かい日となり、みんな休日を楽しんでいるでしょう。
金田さんは、映画に行くそうです。
「『ロード・オブ・ザ・リング』か『ハリー・ポッター』を見に行こうかな。
どっちも1作目は見てないけど。
稽古中って、なんか、そういうバカなことしたくなんだよね」
と言ってました。
富浜さんは、家族でお墓まいりに行くそうです。
皆木クンは、知り合いに頼まれたそうで、
観光客を東京案内に連れてくそうです。もちろん、フランス人観光客さ。
橋本さんは、富士急ハイランドに行くそうです。
「フジヤマとかいう、すっごいすっごいジェットコースターがあるんだって。
最低5回は乗るつもり」
と言ってました。
そして、僕は鬼橋日誌を書いてます。
あれ?なんか僕だけ淋しくない?
よしっ、ササッと書きあげて、どっか遊びに行こっと!
でも、どこへ?
・・・・・・・商店街でもウロウロするか、またヘンな人に遭遇できるかもしれないしな・・
やっぱ、僕だけ、なんか淋しい・・・・
3月22日(土よう日) 日直・鬼界
稽古場でも戦争の話でもちきりだ。
「フセインの演説のビデオは影武者だと思うな」
「でも、声紋がビミョウに同じなんで、本人かもしれないんでしょ?」
「そこだよ、イラクのスゴイところは。フセインのそっくりさんを見つけたら
声帯を手術して、声紋を似せちゃうんだって。そうすると、
本物か影武者か余計わかんなくなるじゃん」
「へぇぇー」
ウソかホントかわからない話だが、
とにかく戦争の話でもちきりだ、男子は。
男子の話を聞きながら、薫ちゃんが考え深げな顔をしている。
「薫ちゃんは、フセイン本人だと思うの?」と尋ねると
「へ?私はー、やっぱ、おはぎを作ればよかったかなと思うんですぅ」
とおっしゃった。
毎年、お彼岸にはおはぎ作りを手伝うのだが、
今年は稽古で忙しくて手伝えなかったことが心残りなのだそうだ・・・。
その横で橋本が大きくうなづいている。
「きよみさんは何?まさか、フセインのことで意見があるとか?」と金田さんが聞くと
「絶対、西友のレジが間違ってる」とおっしゃった。
今朝、朝イチで西友で買い物したところ、
合計金額が合わないのだそうだ。
よくよく調べてみると、昨日だけ特売のはずのバナナが、
今日も特売価格のまま販売されたとしか考えられない。
朝早かったから、レジの設定を変更してなかったらしい。
「私は得したからいいけど、こんなことやってっから西友はナントカ再生法を受けちゃうのよ」
新聞を見ると、確かに西友は産業再生法を申請していた。
なんでそんなことだけ詳しいんだよ。
さすが、女子!
世界の大問題、イラク戦争よりも、おはぎと西友が大事だ。
3月21日(金よう日) 日直・鬼界
昨日の稽古場は、隔離された‘離れ’のような建物だった。
「プライベートルームみたいでいい感じっ!」
と喜んだのもつかのま、
空調を入れると、
ガァァァァァァァァァァァァッァァァァァッァァァァァァァァァ
と、ものすごい音だ。
マグロ船に乗ってるみたい。
セリフなんか聞こえやしない。
走り去る僕を金田さんが、高倉健みたいに「ちょっと待て」と渋く止めるセリフが
チョット待ってぇ〜
と、ヒステリー女が泣いてすがるセリフみたいになっちゃった。
仕方ないんで、空調を止めた。
その途端、部屋がグゥーンと寒くなった。
なんじゃこの部屋?外にいるのと変わんないじゃんか!
壁が異常に薄くて、外気の冷たさをダイレクトに伝えるのだ。
しばらくすると、吐く息が白くなってきた。
歯がガチガチ鳴る。
さっきと同じシーンを稽古すると、
ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、待て、て、て、て、ガチガチ
これじゃドモリだ。
ぜーんぜん稽古にならないよー。
まだ早かったけど、稽古をやめ、
冷え切った体を温めるため、熱燗を飲みに行った。
3月20日(木よう日) 日直・鬼界
この鬼界浩巳事務所の社長、Kさんのバカが明らかになった。
Kさんのケータイを見て、金田さんが言った。
「あれ?ケータイの裏に何を貼ってんですか?」
「留守番電話のメッセージの聞き方と、着信履歴を見る方法と、リダイアルのしかた」
「ケータイを持ったばっかりのときって、忘れちゃったりするもんね。」
「そう、ケータイ持ってまだ半年だから」
「は、半年ぃ〜?ブハハハハ」
稽古場にいる全員に笑われた。
「半年もたってんのに、覚えられないのぉ?ヒャヒャヒャ」
「だって、あんま使わないから覚えられないんだもん・・・・」と心でつぶやいたKさんは
あまりに悔しいので、いいとこを見せようと自慢話をした。
「でも、オレのケータイって不思議なんだぜ。
電源切ってるときって、なぜか、ぜーんぜん電話かかってこないんだ」
「それって当たり前じゃないの?」
「だって、留守電になーんも残ってないんだぜ」
「だから、当たり前じゃないの?」
「え?なんで?」
「ケータイ本体がメッセージを録音する‘簡易留守電’だったら、
電源切ってたら、なーんも残らないもん」
「・・・・・・ってことは、電源切ってるときにも、バンバン電話かかってきてたかもしれないの・・?」
「そうだよ。ビジネスチャンスを逃してんだよ。ブハハハハ。」
Kさんは悲しくなった。
「Kさんは写メールとかやってないの?」
「やってない」
「じゃあ、フツーのメールは?」
「やってない」
「ケータイをぜーんぜん使いこなしてないんじゃん!ブハハハハ」
また笑われた。
そのとき、Kさんのケータイが鳴った。オリジナルの着信音だ。
「なにこの着メロ?ドレミの歌?」
「自分で入力したんだ」
「1音1音?」
「そう」
「主旋律と副旋律がハモってるけど」
「自分で入力したんだ」
「なんで、そんなとこだけ、コッてんだよぉ!ブハハハハ」
また笑われた。
稽古場にいる全員に笑われた・・・。
負けるな、Kさん。僕はあなたの味方です。
3月19日(水よう日) 日直・鬼界
喫煙所でタバコを吸ってたら、
僕らの隣りのスタジオから豆タンクみたいな女が出てきた。
髪の毛を、まっピンクにした、身長140センチの朝青龍を
想像してもらえれば実物どおりです。
ハイライトを取り出すと、やけに早いテンポで
「プーッ、プーッ」と音をさせて煙を吐き出す。
それを見て、僕達は「ククッ」と声に出して笑ってしまった。
すると、豆タンクのスタジオから4、5人、若い男が出てきた。
全員、髪の毛、まっキンキン。
パンチパーマもいれば、眉毛のないヤツもいるし、鼻と唇にピアスしてるヤツもいる。
そんなイカツいヤツらが、豆タンクに直立不動で
「お疲れさまっす!」とあいさつするじゃありませんか!
豆タンクが「演出家はどうしてる?」と聞くと
「はいっ、ジミーがやっぱセリフ、ダメなんで、ヤキ入れてます」
「ま、しょうがねえな、ジミーは気持ちでセリフを吐けないからな。」と豆タンク。
さらに、豆タンクが「こないだの集会んときのマッポはどうした?」と聞くと
「はいっ、第二京浜でザップしてやりました」
「あんま派手にすんなよ。またシメられっからよ」
ひぇぇぇぇ〜。
この方々は、演劇やってる暴走族?そんな人種に初めてお目にかかりました・・・
マッポは警察ってわかるけど、ザップってなんですかぁ?
第二京浜でなにしちゃったんですかぁ?
僕達はインネンをつけられないうちに、
そそくさと喫煙所を逃げ出した。
あー、恐かった。
3月18日(火よう日) 日直・鬼界
薫ちゃんが手首に包帯を巻いて稽古場に現れた。
「昨日、さんざん怒鳴ったので、もしや、自殺未遂・・・?」
演出家の古郡さんはマジで心配そうだ。
いるんですって、そうゆうことする人。
「ちょっと怒っただけで、失踪した俳優がいたんだ」と古郡さんが経験を語るので
「ちょっとって、どれくらい怒ったの?」と聞くと
「2時間くらい」
2時間も直立不動させられて怒鳴られまくれば、失踪もするよ・・・
古郡さんがおそるおそる尋ねた。
「か、薫ちゃん、その手首、どうしたの?」
「これですかぁ。実はぁ、昨日、お風呂の中で思いついたんで、コーヒーやったら、
ザバッとヤケドしたんですぅ」
へ?
状況がまったくつかめない。
「お風呂でヤケドしたの?」
「そうじゃないんですぅ」
「お風呂でコーヒー飲んだってこと?」
「違いますぅ」
こんなやりとりを数十分つづけ、やっと事故の全貌が明らかになった。
薫ちゃんはお風呂につかりながらセリフの練習をしていたのだそうだ。
が、あまりにも適温のお湯が気持ちよく、ウトウトしかけた瞬間、
すごい演技プランを思いついた。
あわててお風呂を飛び出し、頭をハッキリさせるためにコーヒーを飲もうと
お湯を沸かし始めた。沸騰するのを待つ間も、ガス台の横で台本を読んでいた。
左手で台本を押さえ、右手でめくっていた。
お湯がわいたので、コーヒー豆にお湯をそそぎ始めたとき、
また、ひらめいて、あわてて右手で台本をめくろうとした。
が、そのとき、右手に熱湯の入ったヤカンを持っていることを薫ちゃんは忘れていた。
傾いたヤカンから熱湯が薫ちゃんの左手に注がれた・・・・
こういうことらしい。
ヤケドは痛々しいが、ちょっとマヌケ?
メガネをかけているのに、「メガネはどこだ?」と探し回る波平さんに似てる。
3月17日(月よう日) 日直・鬼界
?皆木正純クンはこんな人 その3
ある朝、モンマルトルのカフェで新聞の求人広告をみていたら、
『出演者募集・日本人ピアニスト役』という記事があったのだそうだ。
俳優の経験もなく、しかも、ピアノも弾けないのに
「なんか面白そっ」と思った皆木クンは
オーディションを受けに行った。
どこまでも大胆だ・・・
ピアニスト役にはキャスティングされなかったが(ピアノが弾けないんだから当然だ)、
その公演のプロデューサーに
「なんか面白そっ」と思われた皆木クンは
別の役に抜擢された。
そして、その公演を足がかりに次々にフランスのお芝居に出演。
ストラスブール国立劇場にまで登場したのだ。
さらに、皆木クンは映画のオーディションにも合格。
あの名優、ジャン・ポール・ベルモンドと共演が決定し、
あのリュック・ベンソンの映画に出演が決定し、
ジャパニーズ・サクセス・ストーリーを実現する!
はずだったのだが、
世の中、そう甘くはないんですねぇ。
フランスでは映画に出演することになると、身元調査が行なわれるのだそうだ。
そのため、皆木クンのビザが、とうの昔に失効していたことがバレ、
フランス政府より国外退去命令が下され、
皆木クンは異議申し立てを行なったが認められず、
結局、国外退去処分になってしまった・・・・
「てことは、映画には出てないの?」
「はい、衣装合わせまでしたのですが、出られませんでした・・・・」
失意のうちに皆木クンは帰国したのだ。
「またフランスに行きたい?」と尋ねると
「ええ、行きたいです。
でも、国外退去者なので、フランスに入国したとたん、空港で捕まっちゃうんですよ。
だから、たぶん一生、行けないんです・・」
顔に似合わず、波乱に富んだ人生を送っている。
3月16日(日よう日) 日直・鬼界
?皆木正純クンはこんな人 その2
きゃしゃな二枚目がなぜ土方?
「手っ取り早いし、肉体労働の方々って、なんか面白そうじゃないですか」
相変わらず大胆な行動派だ。
3年ばかり都内を転々として土方で稼いだそうだ。
それから、どうしたの?
「フランスへ行ったんです」
フランス?いきなりフランスかよ!何しに?
「とりあえず、行ってみようと」
まただ!考えるより前に行動する皆木流!
だけど、今度の今度は、なんか目的あったんでしょうね?
「いえ、べつに」
じゃあ、なんで海外に行ったわけ?
「土方仕事に飽きたから」
くぅぅぅぅぅー!答えになってないぃぃ!どこまでも理解不能な男だぁ!!
なんでフランスなの?アメリカとかオーストラリアじゃなく。
「アメリカとかオーストラリアとかイギリスとかイタリアって、
国の形がだいたいわかるじゃないですか。
でも、フランスの形を描けって言われたら、描けないじゃないですか。」
・・・は?それでフランスに決めたの?
「そうです。わからない国って、なんか面白そうじゃないですか」
フランス語はしゃべれたの?
「ぜんぜん。ボンジュールとジュテームしか知りませんでした」
もしや、フランスも、宿も職も知り合いもなしで行ったの?
「そうやって行こうとしたら、観光ビザしかおりないんで、短期しかいられないんです。
だから、とりあえず3ヶ月の語学学校に入学して、その寮に入りました」
『とりあえず』ってことは、その後は?
「パリを転々と」
パ、パリを転々と、だとっ?カッコいい・・・・
何してたの?
「とにかく食べなきゃなんないんで。いろんなことしました。
地下鉄工事、ドブ川の清掃、ビルの内装、モデル、パン屋の配達、ネコの預かり屋・・・・」
チョット待ってよ。肉体労働もパリでやるとなんかカッコよくない?
「そんなことないですよ。セーヌの支流なんてものすごく汚れてるんですよ」
セーヌの支流・・・・サラっとそんなこと言ってみたい・・・
ネコの預かり屋って何?
「フランス人は旅行好きなんで、ペット預かり業はポピュラーなんです。」
へえぇぇぇ、勉強になるぅ。
「そんな生活をしばらくしてたら、フランスの演劇に出ることになったんです」
フ、フ、フ、フ、フランスの演劇ぃ〜ぃ? (つづく)
3月15日(土よう日) 日直・鬼界
?皆木正純クンはこんな人 その1
はっきり言って、笑顔のステキな好青年だ。
正直言って、すっげえ二枚目だ。
新潟生まれ。新潟第一高校入学。
ここまではハッキリしている。
が、その後の経歴がよくわからないのだ。
新潟第一高校というのは新潟でも屈指のエリート校らしい。
どんな高校生活だったのか聞くと
「大したことないです。学校行ってなかったから。」
もしかして、落ちこぼれ?あるいは、ワル?
「落ちこぼれでもワルでもないですよ。ハハハ。成績はいつもトップ10くらいだったから。」
えぇぇぇぇ?どういうこと?自宅でガリ勉くん?
「家にもあんま帰んなかったんです」
えぇぇぇぇ?どこで何してたの?
「まあ、ちょっと・・・」
なんじゃそりゃ?さっぱりわからん。
そして、皆木クンは東京に上京する。
何か目的があったの?
「いえ、べつに」
でも、なんかあったでしょ?都会に憧れてたとか、ミュージシャンになりたかったとか。
「・・・・・・・・(考える間)。やっぱ、なにもなかったなぁ。気がついたら、新幹線に乗ってました」
住むところは決まってたの?
「いえ、べつに」
仕事のあてはあったの?
「いえ、べつに」
知り合いが東京にいたの?
「いえ、べつに」
えぇぇぇぇぇ?大胆すぎぃー!東京に行った日の夜はどこで寝たの?
「最初の夜かぁ・・・・・どうしたんだっけ?覚えてないです。」
フツー覚えてるぞ。下宿が決まってた僕だって東京最初の夜はよく覚えてるぞ。
なーんのあてもなくやって来た大都会の最初の夜を覚えてない?
ホントは覚えてんじゃないのぉ?
「いえ、本当に覚えてないんです。どうしたんだっけなぁ・・・・」
そして、皆木クンは土方を始めた。
ど、どかた・・・・? (つづく)
3月14日(金よう日) 日直・鬼界
☆富浜薫ちゃんはこんな人 その2
理由はまったく思い当たらない。
だって、だって、あんなに一生懸命やったのに。
部室の掃除だって、後輩と一緒にやった。
テスト前には勉強だって見てあげた。
お誕生日には必ずパーティーだってやってあげたのに。
朝日のさす屋上で薫ちゃんは涙が止まらなかった。
それどころか、1時間目から6時間目まで泣きっぱなし。
授業が始まるたびに先生に声をかけられた。
1時間目・国語「おい、富浜、どうしたんだ?」
2時間目・英語「富浜さん、泣いてるの?」
3時間目・日本史「富浜、なにかあったのか?」
4時間目・体育「富浜ぁ、まっすぐ走れぇ」(涙で前がよく見えなかった)
うざったいので5時間目には右目に眼帯をし、左目を手で隠していた。
そしたら、
「おい、富浜、どうかしたのか?医務室に行くか?」と余計に声をかけられた。
6時間目には、目がパンパンに腫れてたので、
さすがに先生も声をかけなかった。
結局、3日間、説得した結果、2年生は復帰し、無事公演を終えたそうだ。
「なにが理由で2年生は『やめる』って言い出したの?」と尋ねると
薫ちゃん本人にもいまだによくわからないらしい。
「ただ、今思うと、私、1年生とのほうが仲良かったんですよね。
なんか、そーゆーことが、関係してたのかなって気がします」
そっかぁ、女子高でありそうだもんね、そーゆーの。
3月13日(木よう日) 日直・鬼界
☆富浜薫ちゃんはこんな人 その1
薫ちゃんは、高校演劇経験者、しかも、女子高の演劇部なのだ!
一般の人にはわからないかもしれないが、
女子高の演劇部は、
学校内で後輩からモテまくり、ブロマイドが闇で売買されたりするのだ。
「いいなぁ、薫ちゃんはいい思いをしたんだぁ」と言うと
「それが違うんですよ・・・」と語りだした。
薫ちゃんには、
宝塚の男役みたいにカッコよくて、人気があって、リーダーシップ抜群の同級生がいた。
当然、その宝塚が部長になると全員が思っていたのに、
先輩部長は、なんと薫ちゃんを部長に指名したのだ。
「えぇぇぇ?なぜなんですか?」と先輩部長に聞くと、
「これはね、富浜の人生にとって必要な経験なのよ」と言われたそうだ。
そして、演劇部の年間最大行事、文化祭での公演まであと5日となった朝、
薫ちゃんは2年生に屋上に呼び出され、
突然、言われた。
「私達、今度の文化祭の公演には出ませんから」
目の前が真っ暗になった・・・。 (つづく)
3月12日(水よう日) 日直・鬼界
♪金田遊希さんはこんな人 その2
部活で鍛えた勤勉さで、勉強、勉強また勉強。
成績はグングン上昇しました。
模擬試験では
「東京大学への合格確率 70%」という判定が出ました。
‘たぶん受かるだろうけど、もしかしたらダメかも・・・’って意味です。
と、とーだいにたぶんうかるだろう?す、すっげえ・・。
やがて、受験。そして、発表。
東大の掲示板に張り出された合格者の中に
金田さんの名前はありませんでした・・・・
金田さんはスッパリ、教師になる夢をあきらめました。
「えぇぇぇぇ!なんでぇぇぇぇ?
あんなに受験勉強したんだから、次の年も受けてみればいいじゃんっ!」
と言うと
「コートの中に叩き込んだスパイクも
審判がラインアウトの判定をすると、得点にはならないんだ。
勝負とは・・・実力プラス運命なんだ。バレーボールが教えてくれた人生哲学さ。」
と金田さんはつぶやきました。
くぅぅぅ、カッコいいっっっ!!これぞ、勝負師!!
「で、金田さんはどうしたの?」と聞くと、
1校だけ別の大学を受けてたんだそうです。
ある日、受験情報誌をパラパラ見ていると
「受験科目は、国語と英語だけ!あなたも受けてみませんか?」
という広告があったのだそうだ。
「なんじゃこりゃぁ?人をバカにしてんのかぁ?」
と笑っちゃったけど、
「よぉーし、そっちがその気なら、こっちもシャレで受けてやろうじゃねえか!」
と、勝負師・金田の血が騒ぎ、バカ大学を受験。
見事、合格。
てゆうか、東大を狙ってたんだから、当たり前に合格。
そして、結局、その大学に進学することになりました。
その大学こそ、
日本大学芸術学部演劇学科、通称‘日芸の演劇’だったのです。
「えぇぇぇぇ!日本一の先生を目指してたのに、いきなり、日芸ぇぇぇぇ!!!
でも、ちょっと待って。
なんで、演劇学科を選んだの?」と尋ねると
「演劇というものを見たことなかったから、シャレで演劇にしたんだ」
「・・・・・・」
こうして金田さんは演劇の道を歩み始めたのです。
人生の分岐点なんて、そんなものかもしれません。
3月11日(火よう日) 日直・鬼界
そろそろ稽古場日誌を始めようと思います。
その前に、
今回の『四月馬鹿の恋』の出演者のご紹介です。
♪金田遊希さんはこんな人 その1
一昨年の『オーシャンと5人の仲間たち』にも出てもらった金田さんです。
念のために書いておくと
「かねだ」ではなく「かなだ」です。「かなた」でも「かねでん」でも「きんた」でもありません。
(詳しくは2001.4.10の日誌参照)
かれこれ10年近い付き合いになるのですが、
昨日はじめて、彼がなぜ演劇を始めたのか?を知ったのです。
きっかけは
金田さんの「バレーを見てると血が騒ぐんだよね」の一言でした。
金田さんは生まれながらのバレーボーラーだそうです。
2、3歳の頃の写真を見ると、必ずバレーボールと一緒に写っています。
家の前でもバレーボールと一緒、遊園地でもバレーボールと一緒、
寝ている時もご飯を食べている時もバレーボールと一緒に写っています。
中学に進学したとき、迷わずバレー部に入部しようとしました。
が、その中学にはバレー部がなかったのです!
仕方なく金田さんはテニス部に入部したそうです。
「なんでテニス部なの?」と尋ねると「だって、おんなじ球技じゃん」と
わかるようなわからない答えでした。
とはいうものの、
「あと一歩というところで県大会に出場できなかった」そうです。
「え?それってスゴくない?市の大会の決勝までいったってこと?」と尋ねると
「あと2つ勝てばベスト16になれたんだ」
「・・・・・」
そして、バレー部があることを確認してから、高校入学。
バレーざんまい、部活、部活の3年間!
「一生、部活していたいっ!」と思うくらい楽しかったそうです。
そして、ヒラメきました。
「そうだ!部活の顧問になれば一生、部活できるじゃん♪先生になろうっ!」
せっかく教師になるなら、一流の教師にならなきゃ。
金田さんは東大を受験します。 (つづく)
なんでそんな人が演劇しちゃうわけ? 次回をお楽しみに。
3月10日(月よう日) 日直・鬼界
今日は、ものすごく風が強い。
横断歩道を渡っていたら、突風が吹き、
僕の前を歩いていた女子高生のスカートがまくれ上がった。
「よっしゃぁ!!ラッキーッッ!!」
と思ったのもつかの間、突風に運ばれた砂粒が僕の目に入り
反射的に目をつぶってしまった。
目をあけたときには、女の子はしっかりスカートをおさえていた。
僕は、スカートが舞い上がりかける瞬間を見ただけだ・・・
ものすごく後悔した。
本能とはいえ、あんな場面で目をつぶるなんて!オレとしたことが!!
あぁ、時間が巻き戻せるものなら・・・
と、後悔に後悔に後悔してると
若奥様風の女性が、フレアスカートで歩いていた。
「おでかけなのでオシャレしました、ウフ」って感じはわかるけど、
こんな風の日に、あんなスカートはくなんてバカじゃねえの
と思った瞬間、
また突風が吹いて、そのフレアスカートがまくれ上がったのだ!
が、またしても、僕は砂粒に負けて眼を閉じてしまったのだ!!!!
だって、2回も神風が吹くなんて思わないじゃないですかぁ!!
しかも、連続ですよぉ!
心の準備ができてるわけないでしょっ!!!
吹くなら吹くって、教えてくれればいいのにっ!!!!
と、言い訳してみても、後の祭りだ・・・
その後、どんなゴミが目に入ろうと僕は眼をつぶらなかったが、
タイミングよくスカートをまくれ上がらせる神風は
2度と吹かなかった。
3月9日(日よう日) 日直・鬼界
この時期、問い合わせがあったりするので、
事務所には誰かいるようにしている。
といっても、電話番のおねえさんを雇っているわけではないので、
事務所が無人になることもある。
午前11時から12時までとか、夕方6時以降とか、
日によってまちまちだが、
無人状態はなるべく短時間にしている。
つまり、全体的にみると、事務所に誰かいることのほうが圧倒的に多いのだ。
そんな鬼界浩巳事務所の留守電に
4日連続、メッセージが残されていた。
1日目
無言。後ろで駅のアナウンスが聞こえる。
「山手線外回りぃ〜、新宿・いけぶ ガチャッ」
アナウンスをぶち切るように電話は切られていた。
2日目
一言だけ。「・・・えっと・・・・・・ガチャッ」
3日目
「あのぉ、チケットを予約したいんですけど・・・・・いつ電話すれば・・・・また電話します」
4日目
「・・・・この電話はつながらないんですか・・どうすればいいんですか・・・また電話します」
明らかにご立腹だ。
そして、5日目、ついに電話がつながり、この方はチケットを予約されました。
お手数をかけて申し訳ありませんでした。
でもね、考えようによっては、あなた様はものすごくツイてる方です。
連日時間帯が違ううえ、日によっては30分くらいしかなかった無人状態に
ものの見事に電話してるのですから。
今こそ、競馬・競輪・ルーレットをやるべきです。億万長者になれるでしょう。
ただ、本当は、先行予約日以外は事務所でチケットは売ってないんです・・・
3月8日(土よう日) 日直・橋本
2月13日の日誌に登場した、
“受験生ポン太くん”。
去年の大学入試直前に
『【僕は大学受験に合格した。
バンザーイ!】
という夢を見た。これはイイ夢?』
と尋ねるポン太くんに、
『最悪の夢。
絶対、不合格。
でも万が一、合格したら報告してちょ。』
と答えた私。
な〜んの報告もなく、
それから1年過ぎた今年の2月。
またまた大学入試目前のこの時期に、
ポン太くんからのメール。
『今年、志望校に再挑戦です。
まりりんさんが「こんな夢を見なさい」と教えてくれた、
【不合格になって、悲しくて泣いた夢】を見ました!
バンザーイ!』
って。
な〜んだ、「夢を見た」ってゆー報告か・・・。
で、3月になって、
とうとう来ました!ポン太くんからの報告メール!
『合格しました!
やはり、あの夢を見たおかげ?!
やった、やった、バンザーイ!
僕も、晴れて大学生です。遊ぶぞ!
また、何かありましたら投稿します。お元気で!』
「お元気で!」って・・・・。
そんな突き放したようなお言葉・・・。
あのぉ、ポン太くん?
「4月公演、観に行きますので!」
とかは?
ないのかなー?
ないの・・・。
そうですか・・・。
ポン太くんは、
鬼界事務所が劇団で、まりりん橋本はお芝居やってる人だっつーことに、
まったく気がついてないのかなー?
トップページに、アホみたいに大きく「チケット予約はこちらから」ってあるのになー。
大きすぎて、かえって目に付きにくいのかなー?
あ、見てない・・・?
がっくり・・・。
だからって、
『まりりんの夢占い』へのご投稿者に、
公演のお知らせは、チョットしにくいんだよねー。
(八百屋で魚をすすめるようなものだ。
・・・・・ちょっとチガウか?)
『夢占い』にしか関心ないご投稿者、案外、多いし。
そういう方は、日誌も公演案内も見ないんです・・・。
あぁ、ポン太くん。
心は、早、楽しいキャンパスライフに!・・・なのね。
イヤ〜ン!
遊ぶヒマがあるんだったら、観に来て。
一所懸命に夢を占った私の真意を汲んでちょーだい。
3月7日(金よう日) 日直・鬼界
お芝居をいつも見に来てくれる知り合いに
「なんで、いつもいつも、見に行く日を決めにくい時に公演するの?」
と言われた。
「今回は年度末があるから4月の予定なんか決まらないし、
前回はワールドカップにぶつけてきたし、その前は平日だけだったじゃない?」
ガーン!
そう言われてみると、そうかもしれない・・・
全然気づかなかった。
では、公演するのはいつが一番いいのだろう?
まず、1月。これはダメだ。お正月気分で浮かれてしまい、お芝居なんか見やしない。
2月は寒くて家から出たくない。雪が降ろうもんなら最悪。
3月は年度末。4月は花粉症とお花見。
5月になると、ゴールデンウィークでバカンスだし、6月は梅雨だ。
7月は暑くて家から出たくない。8月はお盆休みでバカンス。
9月は残暑でグッタリしてるし、10月は運動会で大忙し。
11月になると七五三。グラジオラスの球根の植付けもお忘れなく。
12月は言わずと知れた、忘年会&クリスマス。
つまり、公演に最適なのは・・・・ないじゃん!
などと、納得してたら大変なことになってしまうので、
『四月馬鹿の恋』へのご来場お待ちしておりまーす。
3月6日(木よう日) 日直・橋本
午前11時頃、
地下鉄に乗っていた私。
車内は、すいていた。
1車両に、15,6人くらい。
私も、座って本を読んでいた。
ゴォーと電車の走る音に混じって、
な〜んか人声が耳に入ってくる。
「あ〜〜、あ〜〜」
弱気な発声練習というか、大きな溜息というか。
キチガイに敏感な私は、
急いで、かつ、なにげに、
目だけを動かして辺りを見回した。
居た。
私の斜め向かい。
7人がけ座席の端っこに座ってる男が、
「あ〜」とか「はぁ〜」とか「ふぅ〜」とか、
溜息をわざと声に出して、
あきらかに意図的に周囲をビビらせている。
本物のキチガイではなく‘うそキチガイ’だということは、
なんとなく判るもんだ。
‘うそキチガイ’は、
独り言の文句が思い浮かばないのか、
あるいは、
そこまでやる度胸がないのか、
たいてい「はぁ〜」とか「ふぅ〜」とかしか言わない。
コイツも。
男性の乗客が3,4人居るうちは、
ダマしダマし「はぁ〜」「ふぅ〜」言ってたが、
男性客が降りて、乗客が全員女性になった途端、
大声で言い出した。
「死にた〜い、死にた〜い」
ビクーーッ!
‘うそキチガイ野郎’の周辺の、私を含めた女性ばかり5人に、
一瞬、緊張が走った。
その気配に気分を良くしたのか、ソイツの行動はエスカレート。
座ったまま窓ガラスを叩き始めた。
叩きながら「死にた〜い、死にた〜い」
「死ねよ。
死んでみろよ。やってみろよ、クソ野郎!」
と胸ぐらのひとつもつかんで言えたら、あぁ、どんなに幸せでしょう。
韓国の地下鉄火災事故に便乗して、ふざけたマネしやがるこんなバカに、
「なんなら手伝うぜ」
とか言える、シュワちゃんみたいな男に生まれ変わりたい、こんなとき。
乗客の女性は1人、2人と逃げるように降りて行き、
とうとう、
私と‘うそキチガイ野郎’の2人だけになってしまった。
「よーし、あと1人だ」
とばかりに、声色まで使って「死にたいよ〜、死にたいよ〜」を続けている。
くそっ、負けるもんか。
怖がったら、コイツの思うつぼだ。
一心に本を読むフリをした。
ヤツは、立ち上がり、
地団駄を踏みながら「死にたい、死にたい」言い出した。
ひぇ〜!
怖いよー!
でも、絶対、見ないもんね。
見たら負けだもんね。
電車は私の降りる駅に着いた。
私はあくまでも本から顔をあげず、読みながら降車した。
電車は走り去った。
怖かった・・・。
悔しかった。
こーゆー時、「腕力が欲しい」と切実に思う。
3月5日(水よう日) 日直・橋本
おとといの日誌で、鬼界さんは、
「橋本は飲み会が行なわれる居酒屋‘和民’で何を注文するかを検討していました。
そんなもんは、ふつー、店に行ってメニューを見てから、決めない?」
と、
まるで私を‘食い意地がはったヤツ’扱いしてます。
今日は、
これについての弁明です。
公演に向けての稽古期間中、
稽古を終えて、
「ちょっと飲んで帰りましょうか」
となる日は、何度となくある。
そうと決まった時の私の行動は、素早い。
皆に、飲み屋の候補を2,3件、言い置き、
稽古場をイチ早くあとにして、
飲み屋に走る。
「8人ですが、席あいてます?」
第1候補の飲み屋があいてれば、席を作って皆を待つ。
あいてなければ、第2候補、第3候補の店へと走る。
おっつけ来た鬼界さんやら、演出家やら、客演の皆さんやら、スタッフやらをご案内。
「とりあえず!」と頼んだビールは、
すぐ来る。
ビールが来たら、「お疲れさま〜」と乾杯し、
あとは、なしくずしに歓談タイムに突入。
だーれもメニューを見ようともしない。
大人だなぁ。
男だなぁ。
でも、料理を頼まないわけにはいかない。
「あのぉ、皆さん、
料理は何がいいでしょう?なにかお好みのものがあれば」
と、毎回、一応聞いてみる。
「きよみちゃん、適当に選んでよ。何でもいいよ。」
と、毎回、決まって言われる。
さっさと選んで、さっさと注文しなければ、
私はいつまでたっても話の輪に入れないので、アセる。
飲んべぇの好みそうな、
かつ、そこそこ空腹を満たす、
かつ、皆でつまみやすい、
かつ、バラエティに富んだ、
そんな料理を、何皿づつ頼むか、検討に検討を重ねる。
料理を注文し終えるまでは、
酒も飲めねぇ、話もできねぇ。
なので、
いつ頃からか、
「今日は、稽古のあと飲んで帰ろう」という日は、
稽古しながら「今日のつまみはどんな感じにしようか」考えちゃうようになっちゃった・・・。
先行予約真っ最中に、‘今夜のおつまみを検討’したのは、
いうなれば『クセ』です。
責任感のなせるワザ。
わっかるかな〜。
3月4日(火よう日) 日直・橋本
「僕は6時間以上も電話の前に座っていたというのに、
橋本は1時間チョットしか働いてない。」
と、鬼界さんは私を非難している。
なーにを言ってやがる。
そもそも、
旗揚げ公演の時から、
先行予約における電話番を独り占めし、
自分以外の誰にも電話に出させなかったのは、
誰あろう、鬼界さんなのに!
以前、
私が日誌に書いたこと、覚えていらっしゃいますか?
『「いつもありがとうございます!はーい、がんばりまーす!!」と、
ご予約電話をして下さったお客様と仲良くお話ししている鬼界さん。
どんなにうらやましかったことでしょう。
少し離れたところで私は、
チラシ折り・座席チェック・宛名書きに始まる、チケットを予約して下さったお客様への
発送準備をこまごまやっていたのです。
切手をペロペロして封筒に貼り続け、
ご予約時間終了間際には舌がコテコテになりました。
鬼界さんは、雑用がイヤなのか電話が好きなのか、
電話から絶対離れようとしません。
途中、思い切って「私も電話に出たいです!」と申し出ても、
「いや、これはルールなので。」とか言って、絶対に替わってくれません。
お客様がかけて下さるねぎらいと励ましのお言葉・・・。
あぁ、考えるだけで、よだれが垂れそうです。』
こんなイジワルなことしてたんですよ、鬼界さんは。
いや、今回だって、そうです。
「見よ!このスムーズな電話応対を!キミにできるかな?」
と言わんばかりの皮肉な視線を私に送りつつ、
自信満々で電話の前のイスにふんぞり返ってました。
その皮肉な視線に耐え切れず、
私は、
ファミレスで時間をつぶしたり、
別室で‘おつまみメニュー’を検討したりしてたんです。
5時過ぎに、
「最後、またチョットだけでも、電話に出たいです。」
と思い切って申し出た私に、
鬼界さんは、
「しょうがねーなー」
と、シブシブ承知したようなザマなんです。
マジメな話、
「橋本さんですね?!公演楽しみにしてます!」
と、じかに声をかけてもらうのは、
この時期、何よりも励みになる。
鬼界さんも、きっと、そうなのだろう。
電話番を独り占めしたくなる気持ちが、今回、スゴクよくわかった。
3月3日(月よう日) 日直・鬼界
昨日の先行予約の電話で
あるお客様は「橋本さんに‘お疲れ様’ってお伝えください」とおっしゃるし、
あるお客様は「まりりんさんはいないんですかぁ?」とお尋ねになった。
しつこく言うのは、イヤなのですが、
橋本の実働時間は
午前中の30分と、夕方5時過ぎの41分、計71分だけです。
(しつこくなるのはイヤなのですが、
橋本が昨日4:03に事務所に戻ってきて、電話の前に座ったのは5時過ぎでした。
その間、橋本は飲み会が行なわれる居酒屋‘和民’で何を注文するかを検討していました。
そんなもんは、ふつー、店に行ってメニューを見てから、決めない?)
また、「電話に橋本さんが出たので、緊張しました。もっとお話したかった・・・」
というメールもいただきました。
しつこいのは大キライなのですが、
橋本は8時間の受付時間のうち、1時間ちょっとしか働いてないんですよ。
さらには、掲示板でも橋本のことがとりあげられています。
しつこく言うつもりはないのですが、
『春のドラえもんスペシャル』の半分の時間しか、橋本は働いてないのです。
なのに、なのに、みなさまから誉められたりして・・・・
しつこくは言いませんが、橋本が電話の前にいなかった6時間49分は
“K”という人が電話受付をしていたのです。
僕はKさんを誉めたい。
3月2日(日よう日) 日直・橋本
ただ今、先行予約の真っ最中。
10時の開始から30分間、
私、電話受付係をやりました!
昨夜寝る前に作った‘電話応対マニュアル’を、
何度も確認しつつ、
「どうか‘流れるような、スムーズな電話応対’が出来ますように」
と祈りながら、
10時の開始時間を待ちました。
鬼界さんが「10時半頃まで外出します」ということなので、
「私がやるっきゃない!おまかせあれ!」
と、9時半には事務所に到着。
エライな〜。
自分じゃないみたいだ。
10時にお電話くださったU子さま、
あなた様のおかげで、
少し、緊張が解けました。
ありがとうございました!
しどろもどろで申し訳ありませんでしたが、
あなた様のお導きによって、応対のコツをつかむことが出来ました。
「たまきさま?どのような字を?
‘たま’は、普通の、‘金玉’の‘玉’で?」
と言いそうになり、
「やっぱり私はキチガイだ。」
と一瞬思い、
「いかん、いかん、なにか他の例えを・・・
‘パチンコ玉’、
‘悪玉コレステロール’、
‘玉川カルテット’・・・
ダメだ、ダメだ、どれもこれも!」
とアセりまくっていた時、
「王様の王に点を打つ‘玉’です。それに‘木’です。」
と静かに教えて下さったT様。
助かりました。
「一仕事終えた充実感」と「緊張から解き放たれた開放感」。
さぁ、あとは鬼界さんに任せて、
制作お手伝いのK子ちゃん・A子ちゃんと休憩タイムに入りまーす。
(12時19分)
鬼界です。
みなさん、ちょっと聞いてください。
橋本が今もどってきました。
4時3分です。16時03分!英語で書くと、4:03!
3時間44分!これが、“休憩タイム”でしょうか?
「いったい、今までどこ行ってたんだっ?」と怒鳴りつけると、
「ファミレスに行ってました」と答えるじゃありませんか。
「ファミレスで何してたんだっ?」
「日曜はランチセットがないので、トマトとベーコンのサンドイッチを食べました」
「そんなことを聞いてるんじゃないっ!なぜ、こんなに遅いのかを聞いてるんだっ!」
「大事な話があって・・・」
「なんの話だっ?」
「それは・・・ここではちょっと・・・男の人には、ちょっと・・・つまり・・・」
言い訳にもなってません!!
先行予約は大事な大事な行事なのです!!すべてを犠牲にして臨むのです!!
とは言うものの、
なんのおはなし???と、すっげえ気になってガマンできないので、
K子ちゃんをこっそり別室に呼び出して聞いてみた。
「え?きよみさんですかぁ?
『‘カワマタです’って名乗られたら、
‘股間のコと書くマタですか?’って聞くのと
それとも‘股ぐらのマタですか?’って聞くのと、
どっちが知的?』とかって、
ずっーとそんな話をしてましたぁ」
なんと橋本はどこまでも仕事熱心だったのだ・・・・
が、一言いわせてもらうなら
そんなに気になるんだったら、最悪、名前をカタカナで書かせてもらってもいいのでは?
3月1日(土よう日) 日直・鬼界
医者に診てもらったあと、
「ありがとうございました」と患者が言うのはヘンじゃないだろうか?
医者が言うべきなのでは?
「だって、お医者さんにしかできない‘診察’という行為をしてもらうし、
時には命を救ってもらうこともあるから」
と思われがちだが、
もしも、本屋が1軒しかない町に住んでたら、
本を買うたびに「ありがとうございました」と客が本屋に言うだろうか?
命を救ってくれた消防士さんには、心から「ありがとうございました」と言うが
消防士さんにはお金を払わない。
お金!
それだよ、オイラの言いたかったのは!
医者なんて、ガッポリもうけてんだよ。
どーせ、悪いことしてんじゃないの?アッタマくるー!!
なんで、こんなムカついてるかというと、
実は、昨日、眼医者に行ったんです。
こじんまりして、明るい感じで、
看板にウサギのイラストが書かれ、親しみやすそーなお医者さんと思ったのですが、
つながっている自宅を見ると
豪華でゼイタクで真新しく、しかも、ガレージにはカヌーが置いてある3階建ての家だったんです。
一般人は、あんな家、建てられないぞ。
カヌーが置いてあるガレージなんて初めて見たぞ。
すっげえもうけてるんだ。
患者ひとりひとりに
「おかげで大きな家を建てられました。毎度ありがとうございます」
と言うべきだっ!
もしも、あなたの近所にも豪華な自宅つきの医院があったら、
その自宅をジックリ見てから診察を受けましょう。
「ありがとうございました」と言うのがバカらしくなります。
2月28日(金よう日) 日直・橋本
某所でバッタリ会った知人に、
たまたま持っていた4月公演のチラシを渡した。
知人と一緒に居た女性が、
チラシを見て、
「かわいいチラシですね〜。
学校モノなんですかぁ?」
と感想を言ってくれた。
「いえいえ、全然関係ないです。
タイトルから発想したイメージで〜す。」
と私は答えた。
私は、帰りの電車の中で、ふと考えた。
「このチラシを見て、さっきの女性のように、
‘高校が舞台なの?’とお思いになるかた、結構、多かったりして?」
と・・・。
「あれ?それって、このHPの“公演案内”コーナーで鬼界さんが書いてるじゃん。」
と、今、皆さんは思ったことでしょう。
そうです、
確かに、鬼界さんは書いてます。
「おや?今回は高校が舞台なの?と思われたあなた、
鋭すぎます!もちろん、衣裳はセーラー服!!
鬼界が着ます、セーラー服!鬼界が魅せます、セーラー服!!
という提案をしたのですが、
反対が多く、却下されました。チェッ・・・」
と。
でも、この文章から判断できることは、
「鬼界さんは、セーラー服を着ない。」
ということだけなのでは?
「じゃ、橋本さんが着るんだ!
橋本さんが女子高生役だ!」
と、多くの方がお思いになったかもしれないのだ。
え?思わなかった?
・・・・・わかりました。
百歩譲って、
「鬼界事務所のお芝居を、いつも観て下さっている方々は、
そんなことは、夢にも思わない」
として、
じゃ、
もし、こんな方が、いらっしゃったら?
彼は、鬼界事務所の存在を知らなかった。
従って、このホームページを見ることもなかった。
そんな彼が、4月公演のチラシを、何処かで偶然、手に入れた。
「鬼界事務所?知らないなぁ。
でも、かわいい女子高生役の子が主役なんだな。・・・観てみよっかな。」
これって、マズい展開にならない?
彼は、ウキウキと劇場へ。
今か今かとセーラー服姿の美少女の登場を待つ彼。
が、いつまでたっても登場の気配なし。
イライラし、まったくお芝居に集中できず。
だまされた思いで、出演者(特に女性陣)への憎悪が募る。
怒りのピークに達した彼は、
お芝居の終幕を待たず、とっとと退席。
な〜んてことに・・・さ・・・。
最近、ちょっと気がかりなんです・・・。
2月27日(木よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
今日は、昨日の続きで、
「最近、気がかりなこと」を書くつもりでしたが、
昨日の「妙な名前」についてメールを頂きましたので、
そっちの続きを書くことにします。
まずは、頂いたU田さんのメールです。
『僕の行きつけの近所のスーパーでは、
レジのオバちゃん達は名札を付けている。
そのうちの一人は、
“村主”という苗字の上に“むらぬし”とフリガナがふってある。
村主さん以外の人の名札には、
フリガナはない。
これはきっと、
皆が、村主さんのことを、
ポピュラーに“すぐりさん”と読んでしまうからだと思います。』
“村主”と書いて“むらぬし”?!
“すぐり”じゃないの、その人?!
困っちゃうなー、そーゆー人。
生まれて初めて、
「‘村主’と書いて‘すぐり’と読む」
ということを知った時、
「なんでそんな、わけわかんない読み方するかなー。
知ってないと絶対に読めないね、この苗字は。」
と思ったもんだ。
で、覚えたさ、ちゃんと。
なのに、
村主さんは、今度は、
「‘すぐり’じゃないよーだ、‘むらぬし’だよーだ。」
と言うのか?!
人のウラをかくにもほどがある。
統一すべきだ!
“東海林”という苗字の人に、
「しょうじさん。」
と呼びかけたら、
「あ、“とうかいりん”です。」
と訂正されたことがあった・・・という話も、知人から聞いたことがある。
ふざけろよ!
なんだよ、“とうかいりん”って!
「‘とうかいりん’って書いて‘しょうじ’って読む」のは、決まりじゃねーの?!
なんかなぁ・・・。
困るなぁ・・・。
例えば、街中で、‘とうかいりん’さんを、
「とうかいりんさ〜ん」と呼んだら、
周囲の人に、
「あの人、‘とうかいりん’と書いて‘しょうじ’と読むことを知らないのね、無知!文盲!」
って思われちゃうよ?
だったら、とうかいりんさんは、
責任をとる意味で、あだ名を‘しょうじさん’にするべきだ。
“九十九”さんは“つくも”さん、
“十”さんは“つなし”さん、
知らなきゃ読めない苗字は、結構ある。
一つ・二つ・三つ・四つ・・・・・十には‘つ’が付かないから、“つなし”。
なんだよ、とんち問答かよ!
そんな、
深読みしなきゃ読めないような苗字、つけなくてもいいと思うんだけど。
“春日”さんは“かすが”さん。
“秋日”さんは“つるべおとし”さん・・・とか?
謎かけじゃないんだから。
2月26日(水よう日) 日直・橋本
最近、気がかりなことが出来た。
察しの良いお方なら、
「きっと、先行予約日が近づいているからだわ。」
とお判りになるに違いない。
先行予約日直前に決まって見る、
私の‘追いつめられ型’悪夢のエピソードは、
過去、その都度、日誌でお知らせしてきたもんね。
その通りです。
電話が苦手な私には、
「流れるような、スムーズな電話応対」
は憧れだ。
「お客様のお名前・ご住所が、難しい漢字の場合でも、なんのその。
‘はいはい、なるほどなるほど、斑目さま。
斑目さまの斑は、斑鳩寺の斑という字でいいですね?’
と、素早く了解」
を目指し、チャレンジし続ける私にとって、
先行予約日は、勝負の日だ。
「聞き返すのは、失礼だ、一発で漢字を当てなければ!」
そう心に決めている私にとって、
先行予約日は、ヒアリングと漢字の試験日みたいに緊張する。
緊張のあまり、
「さかたさま?
‘アホの坂田’の‘さかた’と同じ字でよろしいでしょうか?」
と、聞いてしまったことがある。(マジで)
でも、ほら、
酒田、阪田、坂多、佐家田・・・いろんな‘さかたさん’が居るから。
世の中には、
夢にも思わない漢字使う名前、有るからねー。
なんでそんな、ヒッカケ問題みたいな苗字にするんでしょ?
‘さかた’さんは、‘坂田’さんにしましょうよ、全員。
昨日、デパートで、
贈り物に“のし”を付けてもらう際、
「‘橋本’と苗字を入れて」
と言ったら、
「日本橋の橋に、本屋さんの本でよろしいですか?」
と聞かれた。
「あたりきじゃん。
他になんかあんのかよ。」
と私は思った。
夜、ニュースに‘端元’という字の‘はしもとさん’が出てた。
居るんだねー、
私にしてみれば、邪道というか亜流の‘はしもとさん’。
とにかく、電話は緊張します。
皆様、どうかよろしくお願いします。
しかし、
最初に書いた「気がかりなこと」は、
実は、それだけではないんです。
(つづく)
2月25日(火よう日) 日直・鬼界
そして、昨日の雨の中、確定申告を提出に行った。
税務署の玄関の前に案内のオジサンが立っている。
「ご苦労さまでございます。本日はご相談ですか?それとも提出ですか?」
バカ丁寧に出迎えてくれる。
提出だと言うと、
「では、特設提出コーナーで受け付けております。こちらでございます。
雨で滑りやすくなっておりますので、お気をつけてください」
バカ丁寧に案内してくれた。
申告の時期の税務署は卑屈ななまでにサービスしてくれる。
税務署員がまともに働いてるのは、1年のうちでこの数週間だけだから、仕方ないんだけど、
他の時期はやる気もなくダラダラしててヒドいんですよ。
特設提出コーナーのプレハブに近づくと、
中にいる係員がサッとドアを開けてくれ、
「雨の中、ご苦労さまです。こちらへどうぞ。」と受付窓口へ案内してくれる。
どこまでもバカ丁寧だ。
てゆうか、目の前にある窓口に案内する必要はないから、本当のバカだ。
提出を終え、
出口のそばで書類を入れようとカバンを開けた瞬間だ。
出口にいた案内係(なんで出口に案内係がいるの?)がササッとすり寄って来て
「お持ちしましょう。」
と僕の傘を持ってくれ、
書類を入れるとき僕がタバコを落としてしまったら
タバコを拾ってくれたのはもちろん、
「こちらをどうぞ」と
‘納税がつくる あなたの街’と書かれたライターをくれた。
そのうえ、出口から出るときには、
「ご苦労さまでした」と
傘を開いて渡してくれた。
そこまでするか?
これじゃあ、ソープランドの待合室にいる案内のおにいちゃんと同じだよ!!
あ、いや、も、もちろん、僕はソープなんか行ったことないっすよ。
友達から聞いたんです。ホントにホントです。
2月24日(月よう日) 日直・鬼界
今日は朝からシトシト雨が降っている。
こんな日でも、洗濯物が外に干してあるのをチョクチョク見かける。
・朝っぱらから洗濯して干したはいいものの、出かけた後に雨が降り出した
→勤勉ではあるが天気予報を見なかったバチさ。
・ゆうべ帰らなかったので、昨日から干しっぱなし
→お泊りして楽しんだんだから自業自得さ。
こんなことだろうと思ってませんか?
確かにほとんどの場合はそうでしょう。が、世の中はそれほど甘くないのです。
雨が降るなか洗濯物を外に干している現場を僕は何度か目撃しました。
ボロアパートの1階にてフリーターらしき青年、
建売の1戸建ての2階のベランダにて若奥さん、
外に堂々と洗濯物が干せるマンション(ちょっと古いってことです)の5階にて中年のオバサン
などなど
(雨が降ってんのに、よっぽどキョロキョロしてんのね、僕ったら・・・)
上の階のベランダやひさしがあるので、雨粒が直接かかることはないものの、
ちょっと風が吹いたりすれば、濡れちゃうじゃん?
なぜ、わざわざ外に干すのか?
自分では絶対やらない行為、てゆうか、そんなことする度胸も勇気もないので、
聞けるものなら、その勇敢な方々にじっくりお話を伺いたいです。
雨が降ってる屋外よりも、家の中のほうがジメジメしてるのかしら?
と僕は密かに考えているのですが・・・。
2月23日(日よう日) 日直・橋本
気が向いたので、雛人形を飾ることにした。
何年ぶりだろう?
いそいそと飾り、
「しまうのが遅れると、結婚が遅れるっていうもんねー♪」
と、節句が過ぎるやいなや、早々に私の人形をしまっていた母が、
「きよみちゃんの雛人形?
いーんじゃなーい、飾らなくったって。」
と、捨てバチになってから、ずいぶん経つなぁ。
あぁ、可哀相な私の雛人形。
役立たず扱いされちゃって・・・。
申し訳ないねぇ・・・。
でも、
飾らなくなったのには、雛人形側にも責任の一端はある。
私の雛人形は、
「内裏雛や大臣達は、御所(皇居)の中に居る」設定の段飾り。
この‘御所’なるお家を組み立てるのが、
エラク時間がかかって面倒なのだ。
設計図を見い見い、何時間もかかる。
また解体して、桐箱にキッチリしまっていくのにも時間がかかる。
「飾らなくて、いっか?今年は。」
を毎年繰り返してたら、
「お雛様を飾らなくなって、ずいぶん経つわねぇ。」
という結果になってしまったのだ。
大げさな雛人形買うのも考えもんだ。
久し振りに、お人形たちに再会。
前回飾った時よりも、一層、お疲れのご様子。
幼少の頃から私には、「大切にするあまり、いじくりまわして、壊す」
という習性がある。
「特別、
私に大切にされていたおひな様は、
悪代官に手ゴメにされた大店の一人娘のような風情だ。
三人官女も連続レイプされたて。
お内裏様は1番大切にされていたとみえ、
もう、一人では座ってられない状態。
卸問屋の番頭が女将さんとデキちゃって、
姦通罪で火あぶりにされる前の百叩き直後のようだ。」
と、前回見た時の人形の様子を思い出し、日誌に書いたことがあった。
今回、状況はさらに悪い。
五人囃子の笛や太鼓が見当たらない。
なくしちゃったみたい。
楽器も持たずにポーズをつけている、ほつれ毛の彼らは、
雨乞いをしている百姓のようだ。
トホホ、私の雛人形・・・。
見てると悲しくなるよ・・・。
次回は、どんなんなってるんだろうね・・・。
皆さんのお雛様は、美しいままですか?
2月22日(土よう日) 日直・鬼界
掃除機を買った。
買ってビックリさ、文明は進歩してんだなぁ。
まず、軽い!
チワワを散歩させてるみたいだ。
それに引き換え、僕の掃除機はインド象を引きずりまわしている感じ。
しかも、直進しかできず、すぐにひっくり返ったから、足の不自由なインド象だ。
そして、静か!
エアコンの室外機が遠くで聞こえるくらいの音しかしない。
それに引き換え、僕の掃除機はジェット機の離陸音みたいだった。
しかも、排気がものすごかったから、本物のジェット機に似てた。
さらに、強力!
どんなゴミでもサッと吸い込む。
それに引き換え、僕の掃除機は髪の毛より重いものは吸えなかった。
だから、ほとんどのゴミは手で拾っていた。
意味ないじゃん!
今どき、そんなものを使ってるヤツはいねえよ。
いつの掃除機だよ?明治時代の掃除機か?
そうなんです、思い出せないくらい昔に買ったものなんです。
だから、クソミソに書きながらも愛着あるんですよね。
捨てるのがかわいそう・・・・。
2月21日(金よう日) 日直・橋本
(18日のつづき)
電話に出た加原容子さんは、
警戒心まるだしの応対だった。
そりゃそうかも。
友人さえ、
「ドモリのいたずら電話かと思ったよー。怖かったよー。」
とビビらす、電話での私の第一声め。
なんかアセっちゃって、ドモっちゃうんだよねぇ。
そんな私が、
こんな特異なシチュエーションにおいて、マトモな第一声を発せると思って?
いわんや・・・をや、だ。
「も、もちもち!わたくち、は、はちもとでしゅ!」
加原さんは無言だった。
マズイ。
ドモリの5歳児と思われたかもしれない。
「緊張すると、
タ行とサ行がウマク発音できなくなるんだな」
と、私はこの時、発見した。
「加原さんからのお手紙を拝見し、
なにやら大きな誤解をしてらっしゃるのでは・・・?と思い、
お電話差し上げた」旨を、
好感度100の口調で、ていねいに述べた。
ていうか、
ペコペコし過ぎて、あきんどかと思いました、自分を。
が、
それが功を奏したのか、
加原さんの態度が急にほぐれ、
自分の不躾な手紙を詫び、
自己紹介などし始めた。
よーし。
いよいよ、妻子持ちの佐久間さんと、加原さんとの関係が明らかになるぞ〜。
ウキウキ、ワクワク。
加原さんが言うには、
「浩ちゃんとは、翌年の春に結婚するんです♪」と。
え?結婚?
ややっ!待てよ、待てよぉ〜っと。
佐久間さんには妻子があるのだ。
これはどーゆーことなのか?
まだまだ続く加原さんの自己紹介にフンフン相づちを打ちながら、
私は、頭の中で整理を試みた。
佐久間浩太と加原容子の関係は、果たして、どのパターンなのか?
1.容子は、カンペキ、浩太にだまされている。
浩太が結婚して子供までいるなんて、容子は夢にも思っていない。
‘結婚’という言葉で女を釣るなんて、
なんつーフテェ野郎だ。
2.念願の、浩太の離婚が成立。
子供は奥さんが引き取って、
浩太は、ようやく容子のモノに。
3.容子は、浩太の不倫相手。
容子は結婚を望みつつも、今は出来ないと解かっている。
私への、ハッタリ・おどかし・見栄などが、そう言わせただけ。
「う〜む。
一体、どれか?」
まさか聞けないしなぁ。
もし、「1」だったら、ヤバイもんね。
「あれ?佐久間さんの奥さんはどーなったの?」
「へ?‘奥さん’って?」
「あらー?佐久間さん、結婚して2人の子供いるっすよ!」
「ゲロゲローーーッ!」
修羅場だ、修羅場。
ワクワク、ドキドキ。
「チクリたい。」
が、ウラまれても損だ。
残念だが、
向こうが言わない限り、佐久間さんの過去については触れないことにした。
加原さんとの電話でのやり取りの中で、
私は何度も
「佐久間さんに対しての感情は、友情以外の何物でもありません。
愛情?あは、ちゃんちゃらおかしいわ。
(そんな言い方はしないか。)」
と繰り返し、
彼女も納得して、最後には、
「また公演案内、送ってくださ〜い!
2人で観に行きま〜す。浩ちゃんが行かないって言っても、私1人でも行きますから!」
などと、おそろしいほど上機嫌だった。
疲れた・・・。
その後、
佐久間さんからは、なんの音沙汰もない。
毎年もらっていた年賀状さえ来なくなった。
私も出さなかったし、
もう、こちらからの連絡は一切しないつもりだ。
変わらぬ声援を私に送り続けてくれた人とのつながりは、
切れた。
人と人とのつながりとは、
こんなにもあっけないものなのか。
2月20日(木よう日) 日直・鬼界
韓国の地下鉄で大惨事が起こった。
百数十人の尊い命が犠牲になった・・・
もし、自分が地下鉄に乗ってるときにキチガイが放火したら・・・
悲痛な気持ちで恐怖におびえながらニュースを見ていた・・
で、思うんだけど、
韓国の人の泣き方ってオーバーすぎない?
大切な人をなくし、悲しいのはわかります。が、
「ウォー、ウォー」と大声あげて、演歌の振り付けみたいに手を突き出して身をよじって、
これでもか!っちゅうほど号泣するじゃない?
泣く時だけ、オーバーな感じがすんだけど・・・
アメリカ人みたいに喜んでる時や笑ってる時や怒ってる時も
オーバーアクションなら
「そういう民族なのね」とわかるんだけど、
韓国の人って、泣き以外はけっこうフツーじゃん。
どういうことなんだろう?
号泣してる韓国の人をニュースで見た、韓国の人はどう感じるんだろう?
共感して、もらい泣きで号泣するの?(ってことは、国中が号泣?)
それとも、「ちょっと泣きすぎ」と、ひくの?
わからないっす・・・
文化の違いって、デカいんだよね。
理解できないもん。だけど、折り合いつけなきゃ鎖国のままだし。
だから、中田はエラいと思う。
2月19日(水よう日) 日直・鬼界
まず、その時の僕の服装を説明しておこう。
穴のあいたジャージに、ヨレヨレのフリースを着て
その上にボロボロのジャンバーを引っ掛け、マスクに軍手をしていた。
そんなカッコで商店街を歩いていると、
ティッシュ配りのおねえちゃんから
「よろしくお願いします」とチラシつきのティッシュを渡された。
建築中のマンションのチラシで
‘モデルルーム近日オープン!’と書いてある。
「こんなカッコしててマンションなんか買うわけないじゃん。バカじゃねえの?」
と思ったが
「いやいや、あのおねえちゃんはただのバイトだ。
ノルマ分のティッシュをまくのが仕事さ。人を選んでる場合じゃないのだ」
と納得して歩いていると
「ちょっとよろしいですか?」
とスーツ姿のおにいちゃんに声をかけられた。
「目の前に建っておりますマンションは今月完成したばかりの最新物件です。
今なら、まだまだ、よいお部屋をご案内できます。
少しご覧になりませんか?」
見上げると、華麗なマンションがそびえたっていた。
「バカじゃねえの?」を通り越して
憐れになった。
八百屋じゃないんだから、道行く人に「マンション買いませんか?」って声かけるのはどうだろう?
「すっごく売れ残っちゃって、必死なんでーす」と言ってるようなもんだ。
しかも、あのカッコの僕にまで声かけるってことは、
よっぽどヒドいんだ、きっと・・・・。
もしかして、1戸も売れてない?
完成前なのに自殺者が相次ぎ、‘呪いのマンション’と呼ばれてるとか?
そんなマンション買いたくないよぉ。
‘堂々完成!先着順入居可!!’の垂れ幕がむなしくはためいていた。
ちなみに、友達の引っ越しを手伝ってたんです。
いつもそんなカッコで歩いてるわけじゃありません。
2月18日(火よう日) 日直・橋本
(おとといのつづき)
加原容子さんの手紙の文字は、
子供っぽい丸文字だ。
それに「浩太さん」と書かず、「浩ちゃん」と書いている。
「私の浩ちゃん」というアピールでもあるのだろうが、
ちょっと子供っぽい。
「かなり若い子?これ。
やっぱ、不倫?これ。
佐久間さん、マズイよ。
まだ、子供ちっちゃいんじゃなかったっけ?」
と私は、手紙を手に独り言を言いつつ、
ドロ沼状態の佐久間家を想像した。
かなりヤキモチ焼きの不倫相手と、
かわいい盛りの子供の居る家庭との板ばさみか・・・。
なにやってんだろうね、佐久間さんたら・・・。
突然の、
夢にも思わないような内容の加原さんの手紙に、
ビックリし、
不躾な質問に腹も立ったが、
だんだん、
「とりあえず加原さんに電話しないでは居られない」気持ちになってきた。
不倫相手であろうが、
離婚後に出来た新しい彼女であろうが、
そんなことはどっちでもイイのだが、
佐久間さんと、その彼女の恋愛シーンにおいて、
“身に覚えのない形で、私が登場している”ことが、
不愉快というか・・・。
なんで、
私とまったく関わりのない“他人の恋愛”に、
巻き込まれねばならぬのか?!
勘弁してくれぇ。
そして。
「2人に悪いことしちゃったな・・・」
とも思い始めた。
単なる公演案内だが、
彼女にとっては、こんな手紙を書かせるほど、不快なものに感じたのだろう。
しかも、
彼氏はといえば「その公演を、欠かさず観に行く」ときている。
彼女は、
「なんで水戸くんだりから、休日返上で毎回わざわざ行くのさ!」
と頭にきたのかもしれない。
彼女が怒って、佐久間さんも弱っただろうな・・・。
悪かったな・・・。
だからといって、
佐久間さんに電話でワビを入れる・・・というのは、
この場合、やめたほうがいい気がした。
よけい、話がこじれそーな予感。
第一、
「離婚したんですかぁ?」
から始めなければならないので、気が進まない。
とにかく、
「彼女のお怒りを静めなければイケナイ」気持ちにかられた私は、
なにはともあれ、加原さんという女性に電話することにした。
(つづく)
2月17日(月よう日) 日直・鬼界
常磐線の特急に乗った。
通路の突き当たりに電光掲示板があって、ニュースや広告が流れるのだが、
その中にこんなのがあった。
台所にて。
ジュージュー(魚の焼ける音)
子「お魚は熱くないの?」
母「きもちいいって言ってるわ」
子「お魚は食べられちゃうの?」
母「そうねえ」
子「あ、お魚がみてる お魚がみてる」
母「そんなわけないでしょ」
子「お魚がみてる お魚がみてる お魚がみてる・・・・」
いばらぎ水族館アクアミュージアムへ行こう!
春の特別展開催中。
なにこれ?どこがオチ?
これを見て、いばらぎ県民は大爆笑するのだろうか?
「こんどのぉ、すいどくかんのぉ、とくべってん、おンもしろそうだっぺ」と
田んぼや畑の話題独占なのだろうか?
それとも、魚を食うなというメッセージなのか?
わからん・・・・
そして、土浦市内を車で走っていると、
ビデオ屋のネオンがこうこうと輝いている。
ビデオは自分で見られません
これはなに?どういう意味?
店内に入ったら目隠しされるのだろうか?
毎日、ビデオの配置を入れ替えるので、どこにどんなジャンルの作品があるか、わからない。
店員に「さあ、今日はどうなさいますか?」と尋ねられ、
「5番目の棚の上から3段目で、右から13本目の作品!」などと、てきとーに指定すると
バニー姿のアシスタントにそこへ連れて行かれ
「どんな作品に当たるのだろう?」とドキドキしてると、
「本日、お客様のお借りになる作品は『淫乱スチュワーデス 機内でグッチョリ』でーす。」
と大声で発表される・・
そういうスリルを味わうビデオ屋なのだろうか?
わからん・・・・
僕には、‘いばらぎセンス’がわからない。
2月16日(日よう日) 日直・橋本
公演のお知らせの手紙は、
橋本の個人的な知り合いへも、お送りしている。
たいした数ではないが、
1通1通、その人その人へ向けて、ある程度の長さの文を手書きするので、
結構、骨が折れる。
が、
知り合いの中には、
私がお芝居を始めた頃から、ずっと観続けてくれている人も居て、
普段会わない分、近況報告も兼ね、ていねいに心を込めて手紙を書いている。
会うことも、電話で話すこともない、
ただ、「公演を知らせる」「その公演を観に行く」というだけの関係。
だからこそ、
「いつも、ありがとう」という感謝の気持ちを込めて手紙を書く。
前回の公演後、
突然、こんな手紙が届いた。
『いきなりこんな手紙を書いて失礼だとは思ったのですがすみません。
水戸の佐久間浩太ご存知ですよね。
付き合ってる彼女の加原容子と申します。
橋本さんの事は少しだけ聞いた事があってお芝居をなさってるそーで。
6月29日の一緒に行き観させていただきました。
途中私は具合が悪くなって抜け出してしまったのですけど。
あなたからの公演案内の手紙を浩ちゃんが見せてくれるんですけど、
私の思い違いで気にさわったらごめんなさい。浩ちゃんに気持ちあるんですか?
浩ちゃんが橋本さんに「芝居やってる限り、観に行くぜ」と言った言葉が嬉しいそーですけど
それはかまいませんがそーんな事浩ちゃんに伝えないで下さい。
それと何処かへ行ったからといってポストカードとか送らないで下さい。
浩ちゃん人が良いから言えないでいたみたいなんだけどそーゆーのは迷惑なんだそーです。
もーそーゆーのやめて下さい。
本当はTelしようとしたんですが
今まで使ってた浩ちゃんの携帯落としてデーターが全部消えてしまって
橋本さんのもわからないとゆーことで住所を聞いて手紙を書きました。
お話したいし何か直接怒りなどがあったら、
私の携帯なのでかけてきて下さい。(番号)
私も1度橋本さんとお話したいと思ってましたのでお願いします。
とにかく浩ちゃんに手紙とかそーいったことは今後やめて下さい。』
水戸(仮)の佐久間浩太(仮名)さんは、
私がお芝居を始めた頃、バイト先で知り合った人だ。
確か、同い年くらい。
3回ほど公演に来てくれ、
その後、仕事で水戸に行ってしまった後も、かかさず観に来てくれていた。
数年前から年賀状が連名になり、お子さんの名も入り、
「結婚して、赤ちゃん生まれたんだぁ」
と思ってたのだが・・・。
もちろん、その後も変わらず観に来てくれていた。
一体、これは、どうしたことか?
加原容子(仮名)さんは、不倫相手なのか?
不倫相手に私は怒られているのか?
(つづく)
2月15日(土よう日) 日直・鬼界
たしか、書かなきゃいけないことがなんかあったはずなんだけど・・・
と、ずっと心に引っかかっていたのですが、
やっと思い出しました。
2/8の日誌に書いた
「男子トイレでは手を洗わないのが当たり前」を説明しようと思ってたんだ!
用を足したあと、きちんと手を洗う男子ももちろん大勢います。
が、手を洗わない人も大勢いるのです。
洗面台の前で立ち止まるタイプと、立ち止まらないタイプに分かれます。
まず、立ち止まらないタイプ。
これは男らしいです。
他の人が手を洗っている横を堂々と通り過ぎて行かれます。
「手も洗わねえのかよ、キッタねえ」という非難の視線を浴びようと
「オレのオシッコは無菌で清潔なのだ」という顔をして堂々としていらっしゃいます。
高倉健さんなどはきっとこのタイプなのでしょう。
そして、男の中の男は、
手を洗わないどころか、洗面台の横を通り過ぎながらも、まだ
ズボンのチャックを上げている方です。
ヘタしたら、股間をゴソゴソやってるのが通行人から丸見えだったりするのですが
完璧に堂々としていらっしゃいます。
あんな男性になりたいものです。
そして、立ち止まるタイプ。
手を洗いもしないのに、鏡に向かってネクタイを整えたり髪の毛を直したりして
‘洗面台の前にいる’という事実を他人に印象づけるのです。
「あの人は手を洗ったあとに、身だしなみをチェックしてるのね」
と思わせて、ゴマかそうとしているのです。
なんて卑怯でセコくて女々しいんでしょう。
洗わないのなら、「汚ねえっ」という世間の非難を浴びる覚悟をしなきゃ。
人生の裏街道を行く者は、それ相当の代償を払わなければならないのです。
おめえさんがたは、まだまだ素人だね。
2月14日(金よう日) 日直・鬼界
(おとといのつづき)
「あのチラシじゃ、賃貸か分譲かわからない」と日誌に書いたら、
キャッキャさんがまたまたメールをくれました!
賃貸だよぉ!
「友が遊びにきても安心」の一言で
きっと分かる人は分かりますよ あのチラシだって。
うひょひょ
えっええぇぇぇっ!!そ、そ、そうなんですかぁぁぁっ!
「友が遊びにきても安心」というのは、‘賃貸’って意味の、業界の暗号なんですかぁ?
すごい長ったらしい暗号だ・・・
それとも、「友」が暗号なの?
あるいは、「遊び」が‘賃貸’を意味するの?
もしくは、「にきても」がキーワードだったりして・・・?
そして、メールの最後の「うひょひょ」がいいっすねぇ。
業界人のあふれる自信を感じます。
あぁ、どんな業界も奥が深いのですね。あなどりがたし、不動産屋さん!
年に一度のバレンタインだというのに、全然関係ない話でした・・・
2月13日(木よう日) 日直・橋本
ここんところ「こんなメールを頂きました」パターンが続いてますが、
今日も、ひとつ。
いや〜、嬉しいもんなんですよ、メールって。
「こんなん頂きましたの♪」
と、つい報告したくなるんです。
しかも、
そのメールが面白かったりした日にゃぁ、
もう、感動もんです。
「日誌のネタになるぞ!」と。
飛びつきますね。
ポン太くん、
キミのメールに飛びついちゃったけど、
面白さの点でいえば、イマイチです。
が、しかーし!
わざわざ報告してくれた、キミのソノ気持ちが、私はウレシイ。
そもそも、
ポン太くんは、ちょうど去年の今頃、
『まりりんの夢占い』に、夢を送ってくれたかたです。
【僕は大学受験に合格した。
バンザーイ!】
という夢でした。
18歳のポン太くんは、大学受験を目前にし、
‘合格する夢’が正夢になるのか、気になったんですね。
私は、占いの結果を、こう書きました。
【最悪の夢です。
“合格する夢”を見た場合、
現実では“反対の結果”になります。
「やべぇ。俺ぁダメだ、ダメだ、ダメなんだ。」という
自分の能力への不安の表れです。
逆に、
“不合格になる夢”は、現実で“好結果を生む”場合が多い。
しかも、あなたったら、
さらにマズイことに「バンザーイ!」って。
夢の中で喜ぶのは“絶望”です。
「合格」と「バンザーイ」で、“絶望”の二乗です。
“絶望×絶望”です。
受験生向けベスト・ドリームは、
「あぁ、不合格。悲しくてワンワン泣いた。」
これです。
ポン太くん、
今晩、無理矢理にでも見たら、どうよ。
『夢占い』に投稿とかしてる場合じゃないわよ。
勉強して!
頑張ってぇぇーーー!
万が一、合格したら、報告してね!
待ってる。】
この時、ポン太くんからの報告は、な〜んもありませんでした。
「やはり・・・。落ちたな。」
と私は思いました。
それから1年を経ての、今回のポン太くんからの報告メール。
【僕は、去年、志望校に受からず、浪人しました。
今年、再挑戦です。
で、まりりんさんにご報告します。
吉報です。
昨日、「不合格になって、悲しくて泣いた」夢を、とうとう見ました!
バンザーイ!】
・・・吉報っちゃぁ吉報だけど。
あたしゃ、てっきり、合格の報告かと・・・。
本人、喜んでることだし、
吉夢であることには違いないが・・・。
ポン太くん、ひとこと言っておくね。
「今年ダメだったら、
もう、夢とかなんとか言ってる場合じゃないよ。
死ぬ気で勉強した方がいいよ。」
2月12日(水よう日) 日直・鬼界
(きのうのつづき)
うちの近所に
「犬の糞を始末する人、いい人。
クソをさせっぱなしのオマエ、バカだ!!!」
と書かれた立て看板があります。
よっぽどアタマに来てるんでしょう。
怒りの爆発がヒシヒシと伝わってきます。
それと似てるんですよ、きのうの不動産のチラシ。
不動産広告のチラシで、なんの怒りを爆発させてんの?
とその意図がまったく不明なのですが、なーんか怒ってるとしか思えないんですよ。
精神のどこかに潜むなにかをぶちまけてんでしょうね。
「書き殴る」
まさしく、この言葉がピッタリなのです。
とにかく、書き殴りまくり。
細いペンで横書きに書き殴る。
内部は改装してきれいにします 「きれいにします」って宣言する前に、きれいにしろよ。
その字を囲む「< >」もやっぱり書き殴るから、カッコなんだか汚れなんだかわからない。
太目のペンは縦書きに書きなぐる。
ワンルームの予算で倍
書きなぐりすぎて、書ききれなくなり、縦書きのはずがL型に途中から横書きに書きなぐっている。
の広さ 読みにくいよ・・
もちろん、地図も手書きで殴り書きだし、
建物の外観も手書きで殴り書きだ。写真なんか使わない。イラストなんてもってのほかだ。
これだけでも紙面いっぱいに殴り書きが並んでいるのに、
すき間すき間に極細のペンで殴り書きがしてある。
各室の電灯付
コンロ→サービスです
友が遊びにきても安心⇒予備の駐車場使用可
2DK
他にももっとサービスあり マル秘
僕の言いたいことは、もうおわかりですね?
「電灯って言葉はどうだか?」「各室の電灯付って、日本語ヘンだ」「マル秘って、なんだよ」などなど
よくわからないのは、
結局、この物件は賃貸なのか、分譲なのか、です。
電灯やコンロをサービスするってとこは賃貸っぽいけど、
予備の駐車場なんて賃貸にないじゃん。分譲のものでしょ。
チラシのどこにも、値段も物件名も書いてないからさっぱりわかりません。
唯一の手がかりは、殴り書きされた建物の外観図なのですが、
築50年のアパートのようにも見え、新築マンションのようにも見えます。
誰をターゲットにしたチラシなのでしょう?
まったく意味ないのでは・・・?
ま、怒りをぶちまけるために作ったんだから、これはこれでいいのか・・・・。
2月11日(火よう日) 日直・鬼界
キャッキャさんからメールをいただきましたぁ!
不動産広告のチラシでーす。
不動産?募集の趣旨とちょっと違うけど・・・ま、いいか。
××市北区の不動産会社のチラシで
いまどき全て手書きのチラシを作成する会社があります。
まず上段に その会社の社長が
写真とプロフィール付で載っています
『某有名高校を経て、某公立大学に進学。
卒業後、某不動産会社に就職。2年の勤務の後、現在の会社を設立。』
なんで『某』ばっかりやねん。
顔写真公開するなら、学校名も公表しろっちゅうねん。
2年働いただけでは、まともな会社は作れんやろ。
ちゅうか、2年でクビになったんちゃうの?
もうほんまにナゾだらけのプロフィールです
そして、その下には太さをいろいろ取り揃えたペンで
B5版の紙に所狭しと書きなぐってあります。
(添付のチラシ参照)
ね、ね、スゴイでしょ。
こんなん見たことないでしょ。
た、たしかにスゴイ・・・
が、メールはまだ続くのです。
あ、チラシを添付しましたが絶対に公開しないでね
××市北区では有名なんですぐにバレちゃうから。字で分かっちゃうから。
くぅー、つらいなあ、てなわけでお見せできないんですぅ!!
ナタリー・ポートマンが目の前で全裸になったのに指一本触れられないようなもんですぅ!
よしっ、では、言葉で描写してみましょう・・・ (つづく)
2月10日(月よう日) 日直・鬼界
最近、いろんなデパートのラストバーゲン広告が新聞に入ってくるが、
最高に買う気をなくさせるのが、三越だ。
中国人の老婆が着そうなコートや、
フェイクレザーなんだかナイロンジャンパーなんだかわからないラビットファー付きコートは、
どう見たって、ダサい。他店では探せないくらいダサい。
ふつーの女性は絶対買わない。
もし買うとすれば、年輩の方だけだ。
なのに、モデルは若い外人を使っている。
『奥様は魔女』のサマンサのすっげえ若いときに似た外人だ。
真正面を向いて、片手の親指だけをポケットに引っ掛けて、謎の笑みを浮かべている。
今どき、こんなポーズする?
ズボンのポケットじゃないっすよ。コートのポケットっすよ。
ヒジが浮いちゃって、カッコつかないっす。ただのマヌケっす。
年輩の消費者は、「あら、ステキ」と思うのだろうか?
そして、別のページでは、
サマンサがやはり謎の笑みを浮かべ、ミンクコートを着ている。480,000円なりぃ!
でもね、ヘドロの緑とウンコの茶色と枯葉の黄色を混ぜた色です。
僕がもし、捨てるほど金を持ってても、このミンクだけは死んでも買うまいと決意させる品です。
【1点限り】の注をつけて、レアもの感をあおっています。
が、その48万円のミンクのとなりに
「砂ぬきあさり 100円(100g)」「そら豆 480円(1袋)」が並んでる!
これはどういうこと?
ミンクとあさりは一緒くた?
ミンクを買う人はあさりも買うだろうという深い読み?
考えてみると、もう何十年も三越に足を踏み入れてない・・・
この広告じゃね・・・
こんな張り紙あるかい?←まだまだ募集してんですけどね・・・。ないかなぁ・・・。
2月9日(日よう日) 日直・橋本
どこぞのトイレで、
こんな張り紙を見ました。
「この棚、危険。この棚に物を乗せないでください。落ちます。」
じゃ取っとけよ、棚を。
有ると乗せたくなるんだよ。
近所に‘老人の為の集会所’がある。
このたび、
表玄関の階段の一部を、車イス用のスロープにすべく、工事。
コンクリートけずって、石けずって。
微砕粉、騒音等の公害をまき散らしながら、1週間。
完成後、
集会所の前を通った。
玄関に張り紙が。
「このスロープは危険なため、
車イスのかたは、裏玄関にお回りください。」
じゃ作るなよ、スロープを。
いやがらせかよ。
“「わっかんねーよなぁ。なんかの実験?」と思った張り紙・・・の巻”でした、チャンチャン。
2月8日(土よう日) 日直・鬼界
(きのうのつづき)
The メール from 悦子さん! <後編>
それにしても、「盗撮」怖いですねぇ。
ネット検索してると、出て来ますもんね。
知らない内に撮られちゃって、ネットで流されてたりするんですかね。
私の友達は「顔が見えなきゃいい」と言っていますが、どんなもんでしょう?
私は何年か前の夏、二日連続で、別の場所(渋谷と下北沢)で、
違う人に、胸だけの写真を撮られたことがあります。
さっと現れて、胸しか写ってないくらいの近さで、写真を撮って逃げて行かれたのです。
怖いなぁ、何に使われてるんだろう・・・。
職場で、足だけってのもあります。
こんなに太い足のどこがいいんだろう・・・。
それ以前に、顔はいらないのか!ってことが腹立たしいです。
イソップ童話『アリとキリギリス』的マニアですね、きっと。
美しい胸を見ないと死ぬんですよ、そのマニアは。
だから、夏場、女性の衣服が薄いときに都内各地を歩き回り
血眼になって、美乳を求めているのです。
もちろん、肉眼でも鑑賞するのですが、
冬場、女性が厚着になって、胸のふくらみが衣服に埋もれてしまう時期に備え
せっせと美乳の写真を撮りためているのでしょう。
だから、そのマニア君は冬場は部屋にこもりきって
「あぁ、この美しい胸は、渋谷の街で撮影したなぁ。
あの美しい量感!あのたわわな張り具合!神の創り給うた芸術だ!!」
などと、ひとりつぶやいているのでしょう。
悦子さん、あなたの胸はプロが認める美乳なのです。
疑問なんですが、
職場の同僚が「悦子クン、僕は足フェチなんだけど、キミの足を撮らしてくれない?」
って頼んでくるのですか?
もしそうなら、かなりフランクな職場といえそうです。
ある意味、ちょっとアメリカンでステキ!別の意味では、辞めたくなるけど・・・。
よろしければ、まだ募集してます。こちらから→こんな張り紙あるかい?
「張り紙」じゃなくても、いいです。
男子の知らない女子だけの習慣とかね。
男子の例でいうと、
「男子トイレでは手を洗わないのが当たり前」なんだけど、女子は知ってる?
こんなんありませんか?
2月7日(金よう日) 日直・鬼界
『こんな張り紙あるかい?』に、
またまたメールが来ましたあ!!
くぅ〜!嬉しいなあ・・・。悦子さん、ありがとう!!
ボリュームあるメールなので、2日に分けて掲載させていただきます。
The メール from 悦子さん! (って、別に英語にすることないんだけど・・・) <前編>
「すみません・・・
ちょっと書いてみちゃいます。
(謝ることはないか。)
あんまり面白くないかもしれませんが。
すみません。
女子トイレというわけではなく、男女兼用のトイレだった気がしますが、
銀座のハーゲンダッツのトイレの話です。
お店の中ではなく、お店を出たところの、ハーゲンダッツが入っているビルの中の
トイレだったと思うのですが、
「このトレイには変質者が出ますので、鍵は必ず二つ掛けましょう!」
と言った内容の張り紙がありました。
ドアには普通のドアノブの鍵の他に、その上にもう一つ鍵があったと思います。
記憶が定かではなくて、すみません。
でも、ドアノブを凝視して、用を足したのを覚えています。
あ、ここに行ったの、鬼界浩巳事務所の芝居を見に行った帰りかも・・・。
そうだ、きっとそうだ。
銀座小劇場の。
私が遅れていったときかなぁ。
これもなんかの縁ですねぇ。
ちなみに、このハーゲンダッツ、今はもうありません。
変質者が多発したので、潰れちゃったのでしょうか・・・? (つづく)」
ふぅむ、ここで問題なのは、
鍵を二つ掛けさえすれば、変質者の魔の手を逃れられるのか?ってことだ。
どういう変質者なのかしら?
ドアノブの鍵ひとつだけなら叩き壊せるが、鍵が二つになると力足らずになってしまうのか?
それとも、ピッキング対策と同じってこと?
2つの鍵を開けるには時間がかかるから、変質者は他所を狙う。だから、2ロックは安心。
でも、それってさぁ、変質者が中国人窃盗団なみのピッキング技術を持ってることを大前提にしてない?
そんな変質者いるぅ?
だって、トイレの中で、ピッキングしてたら、あまりに不審じゃないかなぁ・・・
外に見張りも立てなきゃなんないし・・
結局、しっかりしたドアノブに交換すればいいのじゃないだろうか?
その知恵が回らなかったばっかりに、ハーゲンダッツは潰れたのでしょう。
悦子さん、あなたの読みは当たってると思います。
2月6日(木よう日) 日直・鬼界
ナッチーさんからメールが来ましたあ!!
女子トイレでこんな張り紙を見たことがあります。。
「盗撮は犯罪です」
はじめてのメールだけど、あんまりおもしろくないけど、いいですか?
まさしく男子トイレじゃ見られない張り紙です。
好奇心をそそる張り紙です。
「盗撮をしてはいけません」のつもりで書いたんだろうけど、マズイんじゃないのかな?
「盗撮は犯罪です」
↓
「以前、このトイレで盗撮がありました」ってことだよね。
で、
あきらかに単独犯の犯行で、その犯人が捕まったのなら、
張り紙の必要はないわけでしょ?
でも、張り紙してるってことは、
「以前、このトイレで盗撮がありました。犯人は一応、逮捕しました。
でも、もしかしたら、まだ盗撮してる人がいるかもしれません」
↓
「このトイレでオシッコをすると、きっと盗撮されるはずです」
↓
「それでもよかったら、ぜひお使いください」ってことでしょ。
誰も使わねえよ、そんなトイレ。
マズイんじゃないのかなあ・・・・この張り紙。
ナッチーさん、初メールありがとうございました。
おもしろいじゃないっすかぁ。
男子のとこにはないんじゃないかなあ?と思うものがあったら
どんなささいなこと、つまらないことでもお知らせください。
待ってまーす。
またボタン作っとこっと。こちらから→こんな張り紙あるかい?
2月5日(水よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
〜シリーズ「糞尿譚」トイレばなしで盛り上がろう!〜 その3
人見知りをカバーしようとした結果、
不自然なほどの‘バカ明るい女(あるいは‘明るいバカ女’か)に徹した、その飲み会も、
いよいよ「そろそろ、お開きにしましょうか」ということになった。
「ほんじゃ、最後、おトイレに行ってくるね。」
と私は立ち上がった。
ついでにお会計も済まそうと、サイフをジャケットのポケットにそっと忍ばせて。
このトイレに最初に入った時は、
タンクに水が溜まるのに時間はかかるわ、水量は少ないわで、
少しばかり手を焼いたが、
今度は大丈び。
不用意に体を動かしてセンサーに感知される・・・なんてことがないよう、
細心の注意を払ってオシッコするぞ。
ちり紙も最小限の量で済まそう。
最後の最後に、1回こっきり流して、キレイにカタをつけるのだ。
ザマーミロ。
それは、
オシッコし終わって、
パンツをあげようと立ち上がった瞬間だった。
ボチャン!
「今のは、なーに?」
便器を見た。
私のサイフが落ちていた。
「げーっ!」
ジャケットの、浅いポケットにサイフを入れたのが失敗だった。
しゃがんだ時ポケットから飛び出していたのに気が付かないで、立ち上がってしまったのだ。
滝壷のように水が溜まっている、あの穴に、
私の赤い革のサイフは、はまりこむように落ちていた。
そして、
滝壷に溜まっているのは、この場合、水ではなかった。
最後の最後にしか流せないということで、
便器の中には、もろもろ、まんま、有ったのだ。
私は、反射的にサイフを拾い上げた。
トイレットぺ−パーで、あらかたの水分を拭い、中身を確認する。
ダメだ、
どこもかしこも、どれもこれもビチョビチョだ、オシッコで。
免許証も、厄除けのお守りも、小銭も、紙幣も・・・・
「し、紙幣ーーー!?」
マズイ!
今日は、私がおごるつもりでいたのだ!
どーするのよー!
いや、例えワリカンだったとしても!
「ちょっとビチョビチョしてるけど、これ私の分。」って?
晴れてて雨も降っていないのに?
やだよー、できないよー!
マズイ、マズイ、マズイ、マズイ。
ピチャーと張り付き合った紙幣を手に、私はボーゼンと立ち尽くした。
こうしている間に、
「またウンコか?」と思われてもマズイ。
仕方ない。
「お酒をこぼしちゃって。」
とレジのオッサンに言おう・・・。
トボトボとレジへ・・・。
と、
そこには、後輩のT子チャンと、その彼氏のK君が。
K君は、
「きよみさん、行きましょうか。支払い済んでますんで。」
えっ?
「オレ、男ですから、今日はオレに払わせて下さい。アハハ。」
K君は、さわやかに笑った。
・・・・・。(感動)
ありがとう、K君・・・。
なんだよ、なんだよ、イイ彼氏じゃんかよ・・・。
助かりました、本当に。
センサー式トイレなんて、「バカ野郎。」だ・・・。
ちなみに。
紙幣は乾かして、後日、使いました。
2月4日(火よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
〜シリーズ「糞尿譚」トイレばなしで盛り上がろう!〜 その2
今年のお正月。
後輩の女の子と、その彼氏、そして私・・・の3人で飲むはめになった時のこと。
「ちぇ。なんの前触れもなく彼氏とか連れてくんなよ。
あたしは、人見知りすんだよ。
話したい事も話せなくなるじゃん。」
相談があるんです・・・と言う後輩の女の子と、てっきり2人で飲むのかと思ってた私は、
‘いきなり初対面’の彼氏に多少うろたえつつ、
かつ、
後輩にはおごるつもりだったので
「3人分か。お金、足りるかな?」
などと頭の中で算段しつつ、
おトイレへ。
そのお店のトイレ、個室がやけに狭い。
掲示板でえつこさんもお書きくださったように、
‘妙に狭いトイレ’ってあるんです。
なのに、(・・・‘なのに’ってこともないか?)
いっちょまえに、洗浄操作はセンサー式でやんの。
「手をかざすと水が流れ、便器を洗浄いたします」タイプ。
「センサーいらないから、トイレ広くしろよ。」
と思いつつ、
トイレットペーパーを取ろうとホルダーに手を伸ばした。
(オシッコしつつペーパーを取るのは、時間節約のため&手はヒマだから。)
すると、
突然、便器洗浄水がジャー。
センサーに手をかざしてないのに。
ペーパーを取ろうと伸ばした、その腕を、センサーが感知してしまったようだ。
なんせ狭いから、そのトイレ。
「まだだよ、ばーか。」
この時点では、まだ余裕の私。
で、
「さ、流してちょ。」と、いざセンサーに手をかざした。
ウンともスンともいわない。
手のひらをベタッっとセンサーに押し付けてみる。
水は1滴も出ない。
「押し付けすぎかしら?」
手のひらを付けたり離したり、ヒラヒラさせたり、
「さっきは腕を感知したっけ!」と腕をこすり付けたりするも、
まるで反応無し。
「マズイ。遅いと、後輩と彼氏に、ウンコしたと思われるぞ。
‘なによ、オレたち、店に入るなりウンコしたヤツと飲むの?
入るなりウンコするかよ、ふつー。’
と思われるぞ、きっと。」
後輩だって、そんなウンコ野郎に、恋の相談とかするのヤだろうし。
っていうか、
ウンコしてないのに、ウンコしたと思われるのヤだわ、私。
(注:このように、いろんな思案している最中も、手のひらはセンサーに押し付けられています。)
「よし。バックレよう。」
と決めた矢先、トイレに人が入って来た気配。
個室には先客(私)がいるので、そこで待つ気配。
もうバックレられまい。
オシッコとちり紙を残したままトイレを出るなんて、4歳のガキ以下だ。
「しかし・・・。無音だと不自然に思われないか?」
無意味にペーパーをカラカラと取り、クシャクシャッと丸め、便器に捨ててみた。
便器の中で、ちり紙が山積っている。
「なんか・・・よけいマズくない?」
と、
来た!やっと来た!
ジャ〜。
・・・エラク少ない水流。
ちり紙山はビクともしない。堤防のようだ。
それでも、
どうにかこうにか、オシッコと、ちり紙山の半分は流れたが、
半分は残ってしまった・・・。
再び、居たたまれない‘待ち時間’が。
「おケツにしぶきがかかるほどの勢いで洗浄するトイレが恋しい・・・。」
ふと見ると、
『水が溜まるまで時間かかります』の張り紙。
直せよ、タンクを!
このトイレの諸悪の根源は、一体、何だったのか?
狭いこと?
狭いくせにセンサー式だったこと?
センサー式のくせに溜まるのが遅いこと?
溜まるのが遅い上に、水流不足だったこと?
そして、
そのトイレでのトラブルは、帰り際に、もう1度起こった。
(つづく)
2月3日(月よう日) 日直・橋本
〜シリーズ「糞尿譚」トイレばなしで盛り上がろう!〜 その1
(シリーズにもならないし、盛り上がりもしないよね・・・とは思いつつ。)
“「男子トイレにこんな張り紙はあるかい?」というのがありましたら
ぜひお知らせください。”
という鬼界さんのご要望にお答えして、
‘張り紙’ではないけれど、私も、1つ。
「男子トイレに“音姫”って、あるかい?」
TOTOの“音姫”。
トイレ用擬音装置。
「人に聞かれたくない音を消します。
25秒間流水音が流れます。
音姫は何回でも流してね。
でも、水を流すのは1回だけね。」
ってヤツ。
私は、音姫を利用したことは1度もない。
なぜか。
まだ世の中に音姫が登場して間もない頃、
新宿駅のどこかのトイレに入った時、
初めて音姫の音を聞いた。
トイレは混んでいて、
あくのを待つ6,7人の列に私も並んでいた時に、それを聞いた。
個室に入っている誰かが音姫を利用した音だが、
それを聞いて以来、
「かえって、音姫を使うと目立つのでは?」
という懸念がぬぐえないのだ。
その人は、
よっぽどオシッコが溜まっていたのか、
あるいは、溜まりすぎて最初オシッコが出ないで、スタートが遅れたのか、
なにしろ、
音姫が鳴り終っても、一向にオシッコの勢いが衰える様子がない。
「マズイ!」とあわてたのか、
その人は、再度、音姫利用。
が、
まさに勢いのピークを迎えていたナマ音は、
あきらかに、チンケな擬音の音量をはるかに上回っていた。
バレバレ。
まるわかり。
「人に聞かれたくない音を消します。」どころか、
「私のオシッコ、すげぇ音。機械にも勝つ。」と、
宣伝しているようなものだ。
しかも。
2度目の音姫が鳴リ終わっても、まーだ出切らないオシッコは、
それでも加速度的に勢いを失い、
そして、いよいよラストの‘1番聞かれたくない音’とも言える、
ジョロジョロ・・ピチョンピチョン・・・という音をシメに、ようやく止まった。
音姫が鳴り止んだ後の、より一層、静寂が際立った瞬間のピチョンピチョンだった。
こんなのを聞いて以来、
なんとなく、音姫を使おうって気にならないんですわ・・・。
その音姫、
以前は、ボタンを押すと流水音が流れる音姫が主流だったが、
最近は、ノータッチセンサーのが多い。
手をかざすとセンサーが感知して、流水音が流れる。
音姫だけでなく、‘本当の洗浄’の水を流すのも、最近はセンサー式が多いようだ。
この‘センサー式’でエライ目にあった。
(つづく)
2月2日(日よう日) 日直・鬼界
(おとといの日誌や、きのうの掲示板のつづき)
そっかぁ、「一歩前へ」は女子トイレでもポピュラーなのか・・・・
男性だけの特権だと思っていたことが
女子でも当たり前だなんて、
なんか悔しいてゆうか、悲しいてゆうか、虚脱てゆうか、
大事な秘密の花園を土足で踏みにじられた感じだ・・・・
よしっ!じゃあこれはどうだっ!!
女子のみんな、女子トイレにこんな張り紙はあるかい?
「洗髪禁止」
シャンプーするオッサンがいるんでしょうね。
懐かしの朝シャン風なんだろうな・・でも、冬は寒そう・・・
「便器にガムや異物を捨てないでください」
女子トイレにも「汚物入れに入れるべきものを便器に捨てないで」というような張り紙は
あるかもしれないが、
なんてったって、「ガムや異物」ですよ。
僕は以前、縦長タイプの小便器のちょうど真ん中あたりに
ガムが貼り付けられてるのを見たことがあります。
誰かがガムをペッと吐き捨てたら、たまたま、そこに張り付いたのではありません。
平たくなって圧着していましたから、
誰かが指で、故意に、わざと、そして一生懸命、押し付けたんです。
あんなところへ誰がいったいなんのために?永遠の謎です。
そして、「異物」!
異物って、なあに?なんだろう?なぜ具体名を書けないの?気になるぅー
「畑山よし子さんへの卑猥な落書きを禁止します」
これはちょっと特例です。
数年前、池袋の公衆トイレで発見しました。
当時、区議会議員選挙が行なわれていて、畑山よし子さんは立候補者でした。
政治的な嫌がらせです。が、
ちょっとやそっとじゃ、こんな張り紙は出ません。よっぽど書いたんです。
毎日毎日、朝昼晩、執拗に、コツコツと書き続けたに違いありません。
嫌がらせというより、その人の生きる証であり、噴出する自己表現の場だったのでしょう。
僕がそのトイレを訪れたときには、白ペンキですべて消されていました。残念・・・。
そして、女子のみんな、
「男子トイレにこんな張り紙はあるかい?」というのがありましたら
ぜひお知らせください。↓にボタンを設置します。(なんか久し振りだあ)
「男子トイレ」じゃなくてもいいです。(例:更衣室、女性専用ホテルなど男子が入れないところ)
こんな張り紙あるかい? ←こちらからメールを。
2月1日(土よう日) 日直・鬼界
商店街にスーパーの大丸ピーコックがあります。
そこから20メートルくらい離れたところに八百屋があります。
はっきり言って、すべてのものがピーコックより安いです。
大根も人参も牛乳もはんぺんも「こくまろカレー」も「SB本わさび」も3分の2のお値段です。
なのに、ピーコックで買い物をしているオバサンがいます。
ピーコックにしか売ってない高級品を買うのではなく、
大根や人参や「本わさび」を買っています。
しかも、牛乳やはんぺんは賞味期限ギリギリで50円引きの見切り品を買っているのです。
きっと、八百屋の存在を知らないのだ、バカだなあ、と思っていました。
先月、商店街に安売りスーパーの「ヤスー」がオープンしました。
八百屋よりも安い品がたくさんあります。
八百屋と反対側に、ピーコックから20メートルほど離れています。
「ヤスー」と八百屋の間に路地はありません。
ピーコックへ行くには、必ずどちらかの前を通らなければなりません。
そして、どちらの店も店頭に特売品をいっぱい並べています。
めくらでもない限り、絶対に気づくはずです。
いや、「特売っ、特売っ」とどちらの店も店員が大声を張り上げているので
めくらでも気づきます。
なのに、やっぱり、ピーコックで買い物をしてるオバサンがいます。
やっぱり、見切り品を買ってます。
どういうつもりなんでしょう?僕にはわかりません。
1月31日(金よう日) 日直・鬼界
公園でタバコを吸ってたら、犬を連れたジイサンがやって来た。
そんな高齢でもないのに、かなり動きがノロい。
ヨッチヨッチ歩いてる感じだ。
犬をベンチにくくりつけると、「ちょっと行ってくるから」と犬に声をかけ
トイレへ向かった。
ご存知のように、公園の男子小用は丸見えなので
ジイサンの動きがすべてわかる。
ジイサンは男子小用から1メートルくらい離れた地点で
ズボンのチャックを下ろし始めた。
なんじゃそりゃあー?ジイサンのは1メートルもあるってことぉー?
すいません、最低の下ネタです・・・・
とにかく、ジイサンは男子小用便器から離れすぎている。
これじゃ、『一歩前へ』どころじゃないぞ。
女性の方は、あまりご存知ないかもしれませんが、
『一歩前へ』は男子トイレでよく見る張り紙なのです。
どういう意味?
めんどくさいんで説明略。お近くの男性にお聞きください。
そして、ジイサンは放尿を始めた。
が、ジイサンの体の向きは正面から30度くらいズレている。
便器の横の壁に目がけて放出しているのだ。
が、便器から離れすぎてるので壁にも届かず、
床にぶちまけてる状態だ。
どういうこと?わざと?社会に対するささやかな反抗?
用を終えたジイサンは、ビチョビチョの床をヨッチヨッチ踏みしめて外へ出た。
どうやら、自分はちゃんとオシッコしたと思っているらしい。
「行くか」と犬に声をかけ去って行った。
わかってないっていうのは、本人としては何の問題もないから、幸せかもしれない。
周りの人が迷惑なだけで。
1月30日(木よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
怖いんですわ、その方たちが見た夢っつーのが、また。
「これ・・・、ちょっと・・・。
鑑定するもなにも、あなた、もう、“まんま”じゃなーい?」
って感じ。
詳しくは書けませんが、
ニュアンス的には、例えばこんな感じです。
『父が病気なんです。
母はいません。
なので、私が仕事を辞めて看病してます。
昨日見た私の夢です。
父が死に、僧侶に来てもらって、お経をあげてもらっている。
これは、何か悪いことの前兆ですか?』
ね、“まんま”でしょ?
「待てよ。
結構、逆に、良いことの前兆だったりして?」
という淡い期待を持つスキさえないくらい、まんま。
でも、
「ありゃりゃりゃ。ボウさんが来たということは〜、
死ぬかもで〜す!」
なんて書けませんし、さすがに。
どうする、どうする?
ご依頼メールからは、
冗談でもなんでもない、マジメで真摯で真剣な、
「なにとぞ鑑定して下さい」という気持ちがうかがえる。
・・・なんで、まりりんなんかに依頼してくるかなぁ。
マジ大変な状況なんだから、プロに依頼したほうがいいと思うよ・・・。
3人の方には、
「『まりりんの夢占い』は、
‘本格的な夢占い’とは、ほど遠いものであります。
ホームページを見て下さっている方達へのお礼も兼ねて、
その方達との“ちょっとしたコミュニケーション”というスタイルでやっております。
それでよろしければ、お手数ですが、再度メールを頂きたく存じます。」
と、メールを送った。
おひとりから、お返事が来た。
「わかりました。
お手数かけて申し訳ありませんでした。」
とあった。
おとといの日誌に書いた、
「‘占い’みたいな得体の知れない物に頼ってでも救われたい
と願う‘悩み深き人’って、結構、居るのねぇ・・・
と、偶然にも、ここんところ思っていた」理由は、
そーゆーことだったのです。
それにしても。
よりによって同じような‘夢占いの依頼’が、立て続けに3件も有るなんて・・・。
1月29日(水よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
その3件の“夢占いご依頼メール”は、
同じような‘出だし’だった。
「どうしても夢を鑑定して頂きたく、いろいろ探しておりましたら、
こちらに辿り着きました。
無料で鑑定して頂けるとお見受けしました。
是非とも宜しくお願い致します。」
こんな感じ。
(1件は「有料ならば結構です。」と書き添えてあった。)
ここで、第1の疑問。
「『まりりんの夢占い』の存在を、どこで知ったの?
どこかに載ってんのかしら?」
コソコソやってても、
‘夢占い’っちゅう言葉を敏感に察知されていて、
検索すると「夢占いコーナー」に、
『まりりんの夢占い』で載ってるとか?
うそ?!
マジ?!
パソコンで‘検索’という操作をしたことがないので、
検索界のことはまったく解からないのですが、
私なんかがやってる「モグリの夢占い」まで暴き出すの?
内緒には出来ないものなの?
恐るべし、検索。
(でも、怖くて検索できない。誰かしてみて。)
第2の疑問。
「“いろいろ探した”中で、何が良くて『まりりんの夢占い』を選んだのか?」
なんででしょう?
どう考えたって怪しいぜ?‘まりりん’だぜ?
誰なんだよ、‘まりりん’って。
‘マリー・オリギン’と間違ってんのかしら?
しかも、
小劇場の劇団がやってるホームページの単なるワンコーナーだよ?
それに、
『まりりんの夢占い』を読んだら、
私に依頼するのやめると思うんだよね、この3件の方たちは。
上記の‘メールの出だし’から受ける印象としては、
この方たちは、真剣に、マジメに鑑定を依頼なさっている。
いえ、
「今までの方たちが、おふざけてる」と言ってるのでは決してなく、
なんていうの?「この人、マジだ。」って感じ・・・っていうの?
ふざけたこと言ったら怒られそうな感じ・・・。
「パンパカパーン♪
あなたの夢は、悪夢でごんす。残念でした〜。」
とか、
「読めば読むほどあわれな夢だ。まったく救いようがありまっせ〜ん。」
とか、
そんな語り口の私に‘夢の鑑定’を依頼するような方たちとは、
どうしても思えないんだよね。
なんたって、
“いろいろ探し回る”ほど、“本格的に、ちゃんと、夢を鑑定して欲しい”と願ってる人達なんだから。
(『まりりんの夢占い』を、ちゃんと読んでないのかも?)
そして、
私が「これは、ちょっと、マズイぜ」と思った、さらなるワケは、
(つづく)
1月28日(火よう日) 日直・橋本
昨日の鬼界さんの日誌を読んで、
「応募しようかどうか」マジで1時間ほど悩んだ。
鬼界さんは、
「‘今までに、友だちを10人くらい占ってあげましたぁ。すっごく当たってるって、言われましたぁ。’
って、ウソつけばいいんでしょ?」
と書いているが、
私は、ウソつかなくてもイケルぞ。
『まりりんの夢占い』で、
もう、延べ40件も占ってるもんね、私。
「ピッタリ当たっててビックリ仰天。」
という感想だって何件か頂いたしさ♪
「‘電話で60分お話するだけで2700円’はオイシイぞ・・・
『まりりんの夢占い』は1件につき2時間は要するのに、1円にもならないぞ・・・
さぁ、どっちが得・・・?」
と、1時間、マジで悩んだ・・・というワケだ。
しかし、
1時間後、
私は、自分の大きな弱点にハタと気づき、あきらめた。
私の弱点。
そう、“電話で話すのが異常に苦手”という弱点。
なぜか、思うように言葉が出てこない。
友達らにも、
「あんたからの電話って、最初、なに言ってるか解からないんだよねー。
“やだ!誰?!テンションの高いドモリ?!”
って、ビックリすんだよねー。
怖いからやめてくれるー?」
と言われている。
ダメだ、こりゃ。お話になんないね・・・。
やたら前置きが長くなってしまいました。
今日、日誌に書きたかったのは、
「そんなインチキくさい占い師にも、
案外と電話はかかってくるかもしれないよ。」
ということでした。
「‘占い’みたいな得体の知れない物に頼ってでも救われたい
と願う‘悩み深き人’って、結構、居るのねぇ・・・。」
と、偶然にも、ここんところ思っていました。
実は、
『まりりんの夢占い』に、
ここ1ヶ月の間、3件続けて同じような、
「これは、ちょっと、マズイぜ」っつーよーな夢が送られてきたのであります・・・。
(つづく)
1月27日(月よう日) 日直・鬼界
こんな求人広告があった。
占い師募集
当社より依頼されたお客様を
あなたのご自宅で電話にて占い鑑定してあげる簡単なお仕事です。
・未経験の方でも、3人以上の占い経験が有ればOK!!
・但し、親身になって相談者になれる方に限る
☆資格・・・タロット又は霊感・霊視を使って占える方
☆18〜70歳位迄
☆報酬45円/1分
Aさんの場合:60分の鑑定を1日3回20日して、162,000円/月
☆ノルマ、物品の販売・勧誘一切なし
これは何?どーゆーこと?
僕でも占い師として働けるわけ?
「今までに、友だちを10人くらい占ってあげましたぁ。すっごく当たってるって、言われましたぁ。」
って、ウソつけばいいんでしょ?
ほんで、占いは電話でやんでしょ?相手の顔も見ないんしょ?生年月日とか名前だけで占うんしょ?
で、こっちがどんな占いしてるか、お客様にはわかんないんしょ?
って、ことはさぁ、
「占いをお願いします。名前は鈴木愛、生年月日は昭和61年1月27日です」
「わかりました。では、タロットであなたの、ややっ・・なんと・・・・・うーん、これは・・・」
「えっ!どうしたんですか?何が出たんですか?」
「いや、これはちょっと・・・しかし・・・今これが・・・いかんいかん・・・」
「な、なんですか?教えて下さい、お願いします」
「そうですね・・・いや、ダメだ・・・でも、仕方がない・・・・申し上げますので落ち着いてお聞きください」
「はい」
「今、あなたはとても悩んでいらっしゃいますね?」
「その通りです!なぜわかったんですか?」
とゆーよーなことでいいわけでしょ?
占いに電話してくんだから、悩んでるに決まってる。
そこを利用すればいいんでしょ?
これで、月162、000円?鑑定を1日9回にすれば、486,000円?
ボロ儲け?
しかも、18歳のガキから、70歳の高齢者まで採用してんですよ。
ねえ、みんなで応募しません?
問題は、占ってもらうためにこんなところへ電話してくるバカが実際いるのかどうかだ。
1月26日(日よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
翌日、
‘骨折した右腕を首から布で吊るす’のをしないで学校に行った。
なんか大げさで、恥ずかしかったから。
たとえ首から吊るしてなくても、
石こうのギブスの上に、包帯をグルグル巻きにした右手首は、
どう見ても軽傷とは思われないだろうが、
あの‘首から布で吊るす’のは、
いかにも“重傷を負った”という感じで、
恥ずかしくてイヤだった。
先生は、
私の手首の包帯を見て言った。
「なんだ、どうした、そのケガはっ?!
昨日、橋本は風邪で欠席したんじゃなかったのか?!」
「お医者さんから帰る道で転んで、ちょっとケガしました。」
骨折したとは恥ずかしくて言えなかった。
学校から帰って、接骨院へ。
私が首から布で吊るしてないのを見た医師は、
「なんで吊るしとかないんだ?!
治るのが遅れるぞ!それでもいいのか?!」
と激怒。
次の日、吊るして学校へ。
それを見た先生は、
「なんだ、なんだ、どうして吊るしてるんだ!
昨日よりヒドイぞ!
なに?今度は骨折しただ?
毎日、家で何をしているんだ、橋本は!」
と怒られた。
重傷を軽傷に見せかけようとしたばっかりに、
不必要に怒られちゃった可愛そうな小5の私。
子供心って不可解だ。
今だったら、“重病人風(ふう)”大好き。
足の親指を深ヅメしたくらいでも、松葉杖をつけと言われれば喜んでつくよ、私。
なんだったら車椅子でもイイ。
「不幸が不幸を呼ぶ」「不幸の連鎖」について、
Sさんからメールを頂きました。
『僕の「不幸の連鎖」例。
突然、彼女から別れを告げられた日、サイフを落とした。』
やはり・・・。
あるんですねー、「踏んだり蹴ったり」って。
トイレの紙がなくて往生してる時に大地震・・・
っていうのも、ヤだよねー。
1月25日(土よう日) 日直・橋本
「友人が骨折しました」
「私、風邪を引きました」
という掲示板の‘不幸なカキコ’を拝見し、
「骨折&風邪といえば、」と、私も‘ド不幸なカキコ’をしようと思いましたが、
長くなるので、日誌に書くことにします。
‘骨折&風邪’といえば、
あれは私が小学校5年生の冬のこと。
風邪を引いて、その日学校を休んだ私は、
母に連れられて、かかりつけの病院へ行った。
車を出すほどのこともないくらい近所なので、自転車で。
「お兄ちゃんのサイクリング自転車に、1度乗ってみたい」
と日頃から思っていた私にとって、
その日は、絶好のチャンスでもあったし。
中1のお兄ちゃんは、学校に行っているから、居ないのだ。
私に向かって
「危なくない?危なくない?」
を連発しながらママチャリでゆっくり走る母を尻目に、
私はサイクリング車で颯爽と・・・
は、いかなかった。
サイクリング車は、難物だった。
サドルが高くて、足がまったく地面につかない。
漕ぎ出す時は、
自転車を大きく傾けて、やっと片足を地面につけている状態から、
はずみをつけてサドルに飛び乗る。
停まる時は、その逆で、
自転車を大きく傾けたと同時に、サドルからケツを離し、片足を地面につく。
この‘自転車を傾ける’タイミングが遅れると、
サイクリング車の‘サドルの前のマッスグな棒’で股ぐらを強打する羽目になる。
走り出しちゃえば平気だし、
運動神経が良かった私は、
それでも、結構、快適に病院までの道のりを乗りこなした。
しかし、
帰り道。
うしろから来た軽トラックをやり過ごす為、道端に自転車を停めようとした私。
自転車を大きく傾けたと同時に、サドルからケツを離し、片足を地面につこうと・・・
地面が無かった。
ドブだった。
草で隠れて見えなかったのだ。
自転車ごと倒れ、とっさについた右手首に激痛が。
見ると、とんでもないふうに手首がねじれていた。
その足で、接骨院へ。
「骨折です。全治1ヶ月。」
家を出る時は、
ただの‘風邪引きさん’だったのに、
帰宅した時は、
首から布で腕を吊るした‘骨折してる風邪引きさん’に進化(悪化)していた。
弱り目にたたり目。
泣きっ面にハチ。
(・・・あれ?
この言葉、以前にも書いたような気が・・・。
まっ、いいか。)
「不幸が不幸を呼ぶ」というか、
「不幸の連鎖」ってあるんだよねー。
って言いたかったのさっ。
1月24日(金よう日) 日直・鬼界
「鬼界君のうなじの髪の毛は一風、変わってるね。言うならば・・・キモいね。」
と、年輩の知り合いに言われた。
「なにが‘キモい’だよ。いい歳して無理すんなよ。しかも、タメて言うなよ。」
と思ったのだが、
それより、いったい何がキモいのだろう。
その知り合いによると、
僕のうなじの髪の毛は、ある一線で揃っているのだそうだ。
遠くから見ると、おかっぱに切りそろえたように見えるのだが、
近くでよく見ると、
髪の毛自身が「これ以上、下には伸びませんっ」という意志を持つかのように、
ある一線で、突然、カールしているのだそうだ。
そこまではストレートなのに毛先だけがクリンと巻き毛になってて、3ヵ月たったパーマみたい。
前髪や横は、ノーマルなのに、
あくまでも、うなじだけ、それも、きっちり首の幅だけ巻き毛ってるらしい。
「家に帰ったら、じっくり見てみますよ」と言うと
「ダメだろうね。鏡を使ったり、ビデオに撮ったんでは、わからないよ、このキモいのは。
実物を肉眼で見ないと。なんてったって、チョ〜キモいのだからね。ハハハ。」
なんだこのオヤジ。
ヤングの言葉を使いこなせたと思って、いい気になってるぜ。恥を知れ!
そんなことより、すっごく気になります。
僕のうなじって、そんなにキモいの?
あぁ、見てみたいっ!幽体離脱したいっ!
1月23日(木よう日) 日直・鬼界
貴乃花は、朝起きたら何を思うのだろう。
物心ついてからずっと、相撲だけをやってきた人だ。
朝起きたらすぐに早朝稽古をして、朝メシにチャンコを食う。
そして、朝稽古をしてから少し朝寝をして、昼メシにチャンコを食う。
それから、たっぷり昼寝をして、午後稽古ののち、オヤツにチャンコを食い、
夕方のうたた寝をし、晩メシにチャンコを食う。
食後、腹ごなし稽古をして、風呂に入り、
風呂上りのビールを飲みながらチャンコを食って、寝る。
そんな生活を20年以上やり続けてきた人が
ある日、突然、稽古をする必要がなくなるのだ。
朝、起きて、無意識のうちにシルクのパジャマから、まわしに着替えてしまうかもしれない。
「あ、そっか。オレはもう相撲取りじゃないんだ・・・」
そう気づいたとき、貴乃花はどんな気持ちだろう。
第二の人生が約束され、これからも忙しく暮らすのだろうが、
今までの自分はどこかへ消えてしまったような気がしないだろうか。
そして、夕方になったら相撲中継が始まる。
相撲史上に残る、平成の大横綱などと言われ華々しく引退しても、
昨日まで自分と取り組みをしてた力士が何事もなかったように相撲を取っている。
「オレがいなくなっても、何も変わらないんだ・・・」
そんな風には思わないだろうか。
そして、最大の悲劇は、体を動かさないから、以前ほど
チャンコがおいしく食べられないことだ。食べる量も激減だ。
これは相当ショックだろう。
貴乃花が自殺しても、僕は不思議じゃない。
1月22日(水よう日) 日直・橋本
昨日の朝。
電車の中は、
ギューギュー詰めというほどではないが、
となりに立つジイサンの手が私の太ももにあてがわれたとしても、
誰も気づかないほどには混んでいた。
私もチビッコだが、
さらにチビッコイそのジイサンの手の位置は、
丁度いい具合に私の太もものあたりにくるらしい。
日頃から、
異常に痴漢を怖れる私は、
満員電車に乗る時は、‘大風邪を引いた重病人’を装うことにしている。
善人なら、
「この女、ひどい風邪っぴきだ。
かわいそうだから見逃してやるか。」
と思ってくれるだろうし、
悪人でも、
「熱で感度が鈍った女なんてダメだ。張り合いがねーよ。」
と相手にしないだろう・・・
という私独自の論理的発案で。
‘重病人を装う’といっても、
別に面倒なことをするわけではない。
マスクをするだけ。
ただ、
折々に、咳をしたり、
ヒタイに手を当てて「熱っぽいわ、私・・・」をアピールすることが必要ではあるが。
昨日の朝も、私は完璧に
‘治りかけのインフルエンザ患者’風であったはずだ。
なのに、
となりに立つジイサンは、そんなことはお構い無しに、
生温かい手の甲を私の太ももに当ててきた。
「げっ!
クソジジイには、私のこのマスクが目に入らねーのかしら?!」
ビビリまくった私は、
慌ててゴホッ、ゴホッと咳をしてみた。
が、ジイサンの手の位置は変わらない。
私はアセり、
ゲホッ、ゲホッとひどく咳き込んでみせた。
するとジイサンも、手を私の太ももにあてがったまま、
ゲホッ、ゲホッと苦しそうに咳をしたではないか。
よくよく見ると、ジジイもマスクをしている。
そうか!
これは、ジジイの作戦だ!
‘大風邪を引いた重病人’を装って、まんまと痴漢する為の作戦に違いない!
優しい女の人なら、
「このジイサン、ヒドイ風邪っぴきだわ。
可愛そうだから、少しくらいならさわらせてもいいかな・・・」
と同情してくれるかもしれないし、
潔癖な女性でも、
「こんな弱った人が、痴漢なんてするはずがないわ。
混んでるから、たまたま手が当たっちゃってるのね、きっと。」
と思ってくれるだろう・・・
という作戦だ。
ちくしょー。
そうはいくか!
グエッホ、グエッホと、私は、さらに咳き込んだ。
ジジイも負けずに、グエェ〜ッホ、グエェ〜ッホ。
くそ〜。
これでもか!
グゴボッ、グゲッ、ゲボッ!
私は、血を吐いたかと思われるような咳をかましてやった。
そのあとにハァ、ハァ、ハァという荒い息も忘れず付けたのは、
我ながら上出来だ。
さすがのジジイも、とうとう、私の太ももから手を引いた。
勝った!
私は勝った!
次の停車駅で、
周囲の人が、こぞって降りた。
私とジイサンを残して。
どうやら車両を替えるためらしい。
「風邪をうつされたら、たまらん。」と思ったようだ。
私とジイサンの周りだけ、妙に、すいた。
‘重病人を装う’作戦は、
「痴漢撃退」よりも
「満員電車をすかせる」のに効果バツグン・・・だった。
1月21日(火よう日) 日直・鬼界
近所の家が犬を飼いだした。
バカ犬だ。
道路から小道がのびていて、その突き当たりに門があるのだが、
小道に足を一歩踏み入れた途端、
バカ犬は門までダッシュで走ってきて、
ものすごく吠えまくる。
気が狂ったみたいに吠え、侵入者を威嚇する。さすが番犬!
と思いきや、シッポをブンブン振っている。
犬がシッポを振る時って、嬉しくて興奮してるのでは?
不思議になって、小道をさらに進むと、
バカ犬は気が狂ってしまい(としか思えない)、白目をむいて、
門に体当たりジャンプを食らわしながら、大声で吠え続ける。
とにかく吠えっぱなし。息を吸う暇がなく窒息死しそうだ。
シッポもちぎれるくらいに振りまくり。
脅かしているのか、喜んでいるのか、さっぱりわからない。
が、僕が門まで2メートルくらいに近づくと、
突然、吠えるのをやめ、ダッシュで犬小屋の中に隠れた。
そして、犬小屋の奥深くで吠えている。
なんだこいつ?すっげえ怖がり?
僕が門を離れると、門までダッシュしてきて吠えている。
なんだこいつ?ズルい怖がり?
僕が再び門に近づくと、犬小屋に逃げ帰る。
何度やってもこの繰り返し。離れるとやって来て、近づくと逃げていく。
なんだこいつ?几帳面なズルい怖がり?
そうやってバカ犬をからかっていたら、玄関を開ける音がしたので、僕は慌てて立ち去った。
けっこう楽しいぞ。
これからは、ムシャクシャしたら、バカ犬をからかいに行こう。
1月20日(月よう日) 日直・鬼界
自販機でタバコを買おうとして、500円玉を落としてしまった。
500円はコロコロと転がり、道を横断し、
下水溝のすき間にストンと落ちてしまった。
郵便受けの口みたいなサイズの、よくあるすき間じゃありません。
幅5ミリ、長さ4センチくらいのすき間です。
シングルCDは入らないすき間です。
慶長小判でさえ入らないすき間です。
(ナニに備え、なにげに歴史の勉強してる僕って、けなげですぅ。)
そんなところにストン。
僕は呆然とした、なんてついてない誕生日だろう・・・。
が、そのすき間を見つめるうちに、嬉しくなってきた。
こんなすき間に入れようと思っても入るもんじゃないし、
きっと、今日、こんなすき間に500円玉を落とした人は世界で僕だけだろう。
念のため、自販機のそばから500円玉を転がしてみた。
5回やったが、全然入らない。かすりもしない。入る気配はまったくなし。
やっぱりだ!
僕は世界で唯一の経験をした人間なのだ!
なんてついてる誕生日だろう。ベリー・ハッピー・バースデー!!
1月19日(日よう日) 日直・橋本
(昨日のつづき)
『テレフォンブレーン』。
‘ブレーン’っつーぐらいだから、よっぽど物知りでなくてはならない。
鬼界さんにとっては、
問題の答えがまったく見当もつかない時に、
自分の代わりに答えてくれる、それこそ‘頼みの綱’だ。
「全幅の信頼を寄せる、頼れる人」
を選んだはずだ。
「番組担当者によると、
テレフォンブレーンには頭の良し悪しよりも、気安い人が最適らしい。」
と鬼界さんは書いている。
「待たされるだけ待たされた揚げ句、出番なし」
がトラブルを引き起こすのだそうだ。
だからって、
自分にとって‘気安い’けど、アホを選んだら、どうなる?
問題をリピートするだけで制限時間の30秒を使いきったドンくさいバカを、
テレビで見たとき、
他人事ながら「このバカ野郎」と思ったよ、私。
「キサマがこんなバカと知ってたら、選ばなかったぜ!」
とかってトラブルになると思うな、それこそ。
特に、
「1000万円をもらえるか否か」
の切迫した状況で、
「徳川5代将軍が、」
「え?徳川よらい将軍?」
とかって電話の向こうで言われたら、
「死んでしまえ」と思うよ、私だったら。
それに、
「なんで、この人、こんな役立たずをテレフォンに選んだのかしら。
こんなのしか友だち居ないのかしら。」
と視聴者に思われるのは必至だ。
そう考えると、
「気安いバカ」より「他人行儀な物知り」の方がイイに決まっている。
鬼界さんは、一体、誰の名前を書いたのか?
その、新年会の宴席で、私達は、
「誰を選んだの?」
と、聞いてみた。
「とりあえず、適当に書いた。変更は可能だから。
これから、頭いい人をゆっくり選ぼうと思って。」
と鬼界さん。
やはり、鬼界さんもアホより物知りを取ったようだ。
Aさんが、言った。
「この中から4人選んでも、結構いい線いくんじゃない?」
マジかよ。
たった今、「“動物のつく都道府県はいくつ?”」を間違ったじゃんかよ、
6人ガンクビ揃えて。
「“このジャンルだけは、人に負けない知識が有る!”という人が4人集まれば、確かに強い。」
と鬼界さん。
「俺の得意ジャンルは、
大工道具・舞台の大道具・重い物の持ち方・・・だな。」
と、我が鬼界事務所の舞台監督・Aさん。
それってジャンルかよ。
そんな問題、出んのかよ。
「私は、100円ショップで売ってる品物について詳しいです。」
と、制作お手伝いのSちゃん。
「眠狂四郎のことなら、なんでも知ってます。」
と、橋本。
「僕は、サボテンの育て方に詳しいよ。」
と照明のMさん。
「・・・・・・・。
僕の不得意分野に強い人が欲しいなぁ。
“・最近のヒット曲&アイドル・ファッション・料理”は、
オーディエンスかフィフティーフィフティーで切り抜けるとして、
テレフォンブレーンには、特に“政治・経済”に強い人が欲しい。」
と鬼界さん。
一同、シ〜ン。
そっちの方の分野に関しちゃ、自慢じゃないが、オレたち、文盲みたいなもの。
「テレフォンブレーンとして鬼界事務所の精鋭集結!」は、
「鬼界さんの番組出演!」よりも、
さらに、はかない夢で終わった・・・。
1月18日(土よう日) 日直・橋本
鬼界さんの連載『クイズ$ミリオネアへの道』を読む限り、
「鬼界さんの番組出演は有り得ない」ような気がする・・・。
1月7日の鬼界事務所新年会の宴席で、
鬼界さんは、突然、
「僕、1000万円もらえるかも。」
と、発表した。
きょとんとする私達に、鬼界さんは、
「ミリオネアに電話応募したこと」に始まり、
「二次選考の“電話でクイズ”がすこぶる快調だったこと」、
「最終選考に残り、筆記試験と面接を受けたこと」、
「今、結果待ちだということ」
などを、順を追って説明した。
「まっ、詳しくは日誌に書くから。」
と、大部分は大まかな説明だったが、
最終選考の筆記試験に関しては、
「ん?まぁまぁ。そこそこ。ぼちぼち。」
と、特にお茶を濁していた。
そのワケがわかった、日誌を読んで。
50問中1問しか答えられなかったってことじゃんけ、日誌によると。
ひっでぇ〜。
そんなヤツいんのかよ。
ワキから冷や汗出してやんの。
手まで震えちゃって。
ダセ〜。
100点満点で「2点」じゃ、
「不合格」に決まってんじゃん。
そう言えば、その新年会の宴席で、
「この問題、解かる?
“動物のつく都道府県はいくつ?”」
と鬼界さんは、私達に、恐る恐る質問した。
「な〜んだ、簡単じゃん。
北海道から順番に思い出していけばイイんだよ。
え〜と、」
宴席、しばし沈黙。
まーだ沈黙。
ずーっと沈黙。
「群馬!」Aさんが叫んだ。
「それだ!」皆も叫んだ。
再び沈黙。
「埼玉!」私が叫ぶ。
「何で?」と鬼界さん。
「サイ!」と私。
「却下。ちゃんと漢字で。」と鬼界さん。
三たび、沈黙。
「熊本!」
Mさんの答えを最後に、
「もう無いね。群馬と熊本で、答えは“2つ”だ!」ということで皆の意見は一致。
それを聞いた鬼界さんの顔が輝いた。
質問した時の‘恐る恐る’した声とは打って変わって、
明るい得意げな声で
「なーっ!そうなるだろー?!結構、解かんないもんなんだよ!
僕だけじゃないんだよ!」
と言った。
「え?“2つ”じゃないの?」
「鳥取の“鳥”、鹿児島の“鹿”。地図帳で確かめたら全部で4つ有った。
なーっ、僕だけじゃないんだよ!」
私達は、その時は、あまり気にとめなかったが、
鬼界さんは「僕だけじゃない、僕だけじゃない」を連発していたっけ。
「筆記試験全滅」だったからなんだ。
なるほど、そういうワケだったのか。
ところで、
‘ダセー鬼界さん’と同等に成り下がった‘ダセー私達’の関心事は、
鬼界さんが最終選考のプロフィール欄に記入したという“テレフォンブレーン4名の名前”だ。
一体、鬼界さんは誰の名前を書いたのか?
(つづく)
1月17日(金よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 番外編
面接を終え、バス停でバスを待っていた。
京浜運河沿いの幹線道路で大型トラックがビュンビュン通り過ぎていく。
クリスマス寒波の冷たい北風もビュービュー吹き過ぎていく。
そんな中で20分待ち、やっとバスが来た。
バスに乗り込み、運賃を払おうとすると、
運賃は200円なのに、小銭が190円しかない。
札を見ると、1万円札しかない。
運転手さんに「1万円しかないんですが・・・」と言うと
「1万円札は使用できません」とやけに事務的に言われた。
「じゃあ、バスカードを買います」と言うと、
「車内では5000円カードのみの販売ですが、よろしいですか?」とやはり事務的だ。
バスには滅多に乗らないのに5000円カードを買うのはもったいない。
僕がバスカードを断ると、
運転手さんはマイクを取り出し
「ご乗車のお客様で1万円札を両替できる方はいらっしゃいませんでしょうか?」
と車内アナウンスしてくれた。
が、車内を見ると、乗客は1人だけだ。
アナウンスするより、直接話しかけたほうが早いのでは・・・?
どこまでも事務的だ。
結局、車内に両替できる乗客は1人もおらず(てゆうか、その人ができなかったってことだ)
僕はあきらめてバスを降りようとした。
すると、運転手さんが
「外は寒いよ。仕方ねえな、この次、乗るときには2回分払ってよ。」
いきなりくだけた口調に変わり、僕を無賃乗車させてくれた。
ちょっと心温まる出来事だった。
次に乗るときは必ず2回分払おうと固く誓った。
ただ、それ以来、バスに乗ってないので、まだ払ってない・・・。
1月16日(木よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その11
エレベーターホールの片隅にソファが10脚ばかり置いてある。
ここで面接の順番が来るのを待つのだ。
ソファはすべてエレベーターに向かうように並べられているので、
まるで病院の待合室みたいだ。
「では、山崎さん、こちらへどうぞ」
トップバッターが呼ばれて行った。
すると、待合室のそこここでヒソヒソ話が始まった。
「どうでした、筆記試験?」とか
「すっごくムツカしかったと思いません?」とか
他人の出来具合いを探っているのだ。
が、話しているうちに、
隣りの人と2人でヒソヒソしていたのが、その隣りの人も巻き込み、3人でワイワイになり、
3人組で会話していたのが、向こうの3人組の会話と合体して、6人組の討論となり、
結局、全員参加の一大‘答え合わせ大会’となった。
なんだか、すごく和気あいあいとしてきたぞ・・・。
その間も、次々に面接は進んでいき、
面接を終えた人が「じゃあ、お先に」と一人一人去って行く。
明るい表情で帰っていく人、舌打ちしながら帰っていく人、さまざまだ。
これぞ人生の縮図・・・などと思っていたら、
「鬼界さん、こちらへどうぞ」
僕はソファを立ち、長い廊下を連れられていった。
歩きながら、担当者の女性が話しかけてくる。
「今日の参加者の方々は和気あいあいとしてらっしゃいますね。」
「え、いつもは違うんですか?」
「ええ、普段は会話してる人なんていらっしゃいません。」
そういうものなのか・・・
突き当たりの手前で突然、立ち止まった。
「こちらです。では、頑張ってください」
優しく微笑むと、彼女は去っていった。
さあ、いよいよだ。
僕は深呼吸をして、ドアノブに手をかけた。 (完)
え?終わり?
って感じでしょ?
面接室で僕がペラペラしゃべった「1000万円の使い道」は、
少々問題があって書けないんです。
今は書くとマズイんです。スッゴク書きたいんだけど書けないんです。
だから、とりあえず、ここで「完」。
で、最大の疑問、「結局、鬼界はクイズ$ミリオネアに出るのか?」ですが、
はっきり言って、まだわかりません。
「最終選考に合格した方にのみ、3ヶ月以内にお電話します」ってことなんです。
出るかもしれないし、出ないかもしれません。
ただ、確率的には90%出ません。てゆうか、出られません。前に書いたとおりです。
もし、幸運にも出ることになったら、
この連載もつづきを書けるのですが・・・。
皆さんもどうか電話のかかってくることを祈っててください。
僕は必死で祈ってます。ホント、マジで毎日祈ってんですから。
1月15日(水よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その10
「では、これから、面接を行なう9階フロアにご案内します。
緊張せずに、楽な気持ちで自己アピールしてください。
どうしても、つい緊張される方が多いのですが、
ここで緊張していたら、収録のときに大変なことになってしまいます。
‘早押し’までは皆さん、けっこう冷静なんですが、
みのさんの前に出た途端、頭が真っ白になってしまうそうです。
こう言っちゃなんですが、貧乏な方と高学歴エリートほど緊張されます。
特に、貧乏な方はハンパな緊張じゃありません。
賞金にかける意気込みというか、背負ってらっしゃるものがフツーじゃないんでしょうね・・・。
そして、高学歴の方。
正解して当たり前というプレッシャーのため悲惨な結果になることが多いです。
ま、それはスタジオ収録に行ってからのことなんで、
今はとにかく、存分に明るさをアピールしてください」
このへんから部屋の雰囲気が変わってきた。
とにかくみんな、しらじらしいくらいに明るく振る舞いだしたのだ。
筆記試験に惨敗したらしく、すっかりうつむいていたオジサンが
急に顔をあげ、担当者の説明にいちいちニコニコ顔で大きくうなづいているし、
地方出身者っぽい若い女の子は
担当者が『貧乏な方と高学歴エリートほど緊張されます』と言った途端、
ウソくさい爆笑をしていた。
そして、エレベーターのドアが開いた瞬間、駆け乗るヤツがいる。
イガグリ頭の、いかにも善人風の男だ。
エレベーター内の操作盤にに飛びつき
「面接は9階ですよねっ?」と、とびきり明るい大声でHのボタンを押している。
バっカじゃねえの?
そんなことは担当者に任せとけよ。
オマエはこのビルに来るの初めてだろ?
どんなことでも、明るくやったら点数かせげると思ってんの?
ほら、担当者も苦笑してるじゃねえか・・・。
欲の塊と化した、そんな人々を乗せ、エレベーターは9階に到着した・・・ (つづく)
1月14日(火よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その9
プロフィールの記入がこれまた一苦労だ。
住所・氏名・年齢・職業に始まって、
趣味(現在やってる趣味と将来やりたい趣味)・特技・資格・好きなテレビ・購読してる雑誌、新聞を書き、
家族構成(続柄、年齢、職業or学校)と、その家族と‘同居’してるのか‘別居’してるのかを書き、
テレフォンブレーンになる4名の名前と自分との関係を書いたのち、
「数学」「文学」「芸術」「スポーツ」などの20ジャンルについて、
<5:とても得意>〜<1:とても不得意>の5段階の自己評価をつける。
さらに、各ジャンルについてコメントも書かなければならない。
たとえば、「歴史」の自己評価を「5」にしたなら、
「司馬遼太郎の全小説を読破しました」などと、
なるべくアピールするようなコメントが求められる。
けっこう大変ッス。
プロフィール記入についての説明で驚いたことが2つある。
まず、‘テレフォンブレーンを誰にするか’について。
身近にいる、とにかく頭のいい人を選びがちだが、トラブルが多発してるのだそうだ。
月に40名がスタジオ収録に参加し、
それぞれが4名のテレフォンブレーンを用意するわけだから、
毎月160名のテレフォンブレーンが誰かの自宅で待機することになる。
が、実際に電話がかかってくるのは、その中の一部。
ほとんどのテレフォンブレーンは数時間ただ待つだけで終わってしまうのだ。
テレフォンブレーンを頼まれた人は
たいてい仕事を休んだうえ、
いつ電話がかかってくるかとワクワクして待っている。
なのに、いつまでたっても電話はかかってこない。
やがて雰囲気は険悪になり、
テレフォンブレーン同士でケンカが始まる。
そして、番組出場者から
「今、収録が終わったところ。待っててもらったのに、出番なくて、ごめんね。」
などという報告の電話が入った途端、
電話越しに大喧嘩が爆発するのだそうだ。
だから、テレフォンブレーンには頭の良し悪しよりも、気安い人が最適らしい。
そして、‘収録に参加する『会場応援者』は番組サイドが決める’のにも驚いた。
当然、誰に応援に来てもらうかは出場者が決めてるのだと思うじゃないですか。
担当者の説明によると
「もちろん出場者の方と相談はしますが、
会場応援者は、番組的に盛り上がる人をこちらで選ばせていただきます」とのこと。
うーむ、さすがテレビ、裏があるなあ・・・。
プロフィールを書き終えると、担当者が言った。
「では、これから、面接を行なう9階フロアにご案内します」
いよいよ最終ラウンドの開始だ・・・ (つづく)
1月13日(月よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その8
「最も重要なのが、‘1000万円の使い道’です。
あなたならではのオリジナル性と、視聴者が応援したくなるユニークさがポイントです。
『借金返済』『マイホーム資金』『旅行資金』に使いたいと考えてらっしゃる方は
要注意です。
最終選考を受ける400人中300人が同じことを考えています。
ですから、『家が古くなったから』とか『ローンを返済したい』といった
ありきたりの理由や
『年老いた両親を世界一周に連れて行きたい』といった
お涙ちょうだい的理由では、決して採用されません。
また、『家をリフォームしたい』とか『ポルシェが欲しい』といった
漠然と高価と思われる使い道もダメです。
うちのスタッフは、
台所のリフォームがいくらかかるとか、屋根の吹き替え費用がどのくらいとか、
ポルシェスパイダース303が1台いくらなのかや、
豪華客船の世界各地への運賃がどれくらいかも
綿密に調べ上げていますので、
あなたの使い道に必要な金額はすぐにわかります。
200万円で済んでしまう使い道では、
1000万円にチャレンジする必要がなくなってしまうわけで、番組的に成立しません。
ざっとこんな感じですが、何か質問は?」
誰も手をあげなかった。
どうやら、“『借金返済』『マイホーム資金』『旅行資金』に使いたいと考えてらっしゃる方”が
相当いらっしゃったようだ。
部屋は少し重苦しい雰囲気になった。
「では、プロフィールを記入していただいてから、面接となりますが、
帰りの時間が決まってる方は、いらっしゃいますか?」
「はい」
と、ひとりのオバサンが手をあげた。
「何時ですか?」
「6時の飛行機で熊本に帰ります」
く、くまもとぉーー?
九州から来てんの?
交通費は自費だぜ!
しかも、まだ出場できると決まったわけじゃないんだぜぇ!!
それどころか、90%の確率で落とされるんだぜぇぇ!!!
次々に手が上がった。
秋田、大阪、兵庫、山口・・・。
なんと日本全国から集まっていたのだ。
僕はてっきり、各地で最終選考会が行なわれてると思っていた。
なんてゴウマンな番組なんだ・・・ (つづく)
1月12日(日よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その7
「皆さん、お疲れ様でした。筆記試験はいかがでした?
難しかった・・と落胆されてる方も大勢いらっしゃるでしょうが、
結果はそれほど気にしなくても大丈夫です。
これから面接を行ないますから。
もちろん、筆記試験の成績も重要なのですが、面接が最終的な決め手となります。
おかげさまで、クイズ$ミリオネアは絶好調で
クイズ番組の中でダントツの視聴率です。
皆さんが想像されるよりも相当多くの出場希望の電話がかかってきます。
昼間はほとんど電話がつながらない状態だそうです。
その中から2次選考を行ない、
最終選考を受けていただくのは月に400名。
ですから、今日この場にいらっしゃるだけでもかなりの幸運といえます。
が、しかし、実際にスタジオ収録に参加してもらうのは、月に40名です。
400名からどうやって40名を選ぶか?
選考基準ははっきり言って2点だけです。
まず、‘人柄の明るさ’。
番組をご覧になってもらえれば、わかると思いますが、
うちの番組はクイズ王のような方には出場してもらってません。
有名人でもない、本当にフツーの人に出てもらっています。
なのに、なぜ、人気番組なのか?
全国の視聴者が、出場者と司会のみのさんのやり取りを楽しみ、応援してくれるからです。
暗い無口な方では、さすがのみのさんでも話しが広がりません。
明るいキャラクターがみのさんに好かれると、
みのさん自身もドンドン乗ってきて、いろんな話しを引き出してくれます。
ですから、実際の収録では放送時間の数倍カメラを回しています。
おもしろいトークも相当カットしています。
涙を飲んで編集するから、番組的にもおもしろいものができるのです。
でも、ただ明るいだけでは選ばれません。
最も重要なのが・・・」 (つづく)
1月11日(土よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その6
ホッチキスで留めた10枚くらいの紙の束が配られた。
1枚目はプロフィール記入用紙になっている。
「お配りした用紙の3枚目以降が最終選考の問題となっております。
全部で50問、すべて4択です。
では、始めてください。時間は15分間です」
電話での2次選考を楽々クリアしたので、
密かに僕は自信があった。
90点以上は取れるだろう。もしかしたら、最高得点が狙えるかもしれない、ウフ。
第1問:徳川幕府の第5代将軍は?
A:家綱 B:綱吉 C:家宣 D:吉宗
ほーら、簡単簡単。
有名な吉宗を一応‘ひっかけ’として加えてあるあたりがカワイイじゃん。
第2問:道元が開いた宗派は?
A:浄土宗 B:浄土真宗 C:曹洞宗 D:法華宗
あれ?なんだっけ?受験勉強で覚えたんだけど・・・・
ま、いいか、次へ進もう。
第3問:次の中で最も早く演奏する音楽記号は?
A:アレグロ B:ピアノフォルテ C:アンダンテ D:ピアニッシモ
あれ?なんだっけ?たしか・・・
ま、いいか、次へ進もう。
第4問:南半球で初めてオリンピックが開催された都市は?
A:シドニー B:アデレード C:ブリスベン D:メルボルン
え?どこ?シドニーじゃないのはわかるけど・・・
とにかく、次へ進もう。
第5問:ケリーで有名なブランドは?
A:グッチ B:エルメス C:プラダ D:ルイヴィトン
第6問:キューリー夫人の生まれた国は?
A:オーストリア B:ハンガリー C:ルーマニア D:ポーランド
第7問:生涯三振数の最も多い打者は?
A:王貞治 B:長嶋茂雄 C:秋山幸二 D:衣笠祥雄
第8問:15番目の元素は?
A:ケイ素(Si) B:リン(P) C:硫黄(S) D:塩素(Cl)
第9問:第一次世界大戦の「3B政策」とは、ベルリン、ビザンティウムとどこ?
A:北京(BEIJIN) B:ブダペスト(BUDAPESUT)
C:バクダッド(BAGDAT) D:ブリュッセル(BRUXELLES)
ひ、ひとつもわからない・・・・
こんなはずじゃ・・・二次選考と全然違う・・・む、むつかしい・・っていうか、いかにもクイズだ・・・・
ど、どうしよう・・・
そのうえ、女の人は「ケリー」なんて、すぐわかるはず・・
ってことは、その時点で1問負けてるわけだ・・・
ま、まずいっ!!!!!!!!!!
ナメてかかっていただけに、ショックは大きかった。
僕はほとんどパニックに陥った。
そのとき、わき腹を「ツツー」と冷たい液体が流れた。
生まれて初めて、わきの下から冷や汗が出たのだ。
「わきの下から嫌な汗が流れる」というのは、文学的な比喩だと思ってたのに、
本当に人体に起こる現象だったとは!
手が震え始めた。
とにかくわかる問題を探さねば。
第18問:ラグビーでトライすると何点?
A:3点 B:4点 C:5点 D:6点
よっしゃあ!わかるぜ!!3点に決まってらあっ!!
ん?チョット待てよ。トライの後のプレイスキックが3点だっけ?
いや、トライが4点でキックが2点だっけ?
トライとキックで6点だよな?それとも、トライが6点でキックが3点?
焦りのために、いつもならわかる問題さえわからなくなっている。
ダメだ、ダメだ、確実にわかる問題を探そう。
第31問:動物のつく都道府県はいくつ?
これなら確実だ。
北海道から順番に思い出していけばいい。
が、四国でつまづいた。
四国は、高知と松山と徳島と、あともうひとつなんだっけ?
どうしても思い出せない。
おい、鬼界浩巳、いったいどうしたんだ!
なんで四国の4県が思い出せないんだよ!!しっかりしろよっっ!!!バカバカ
いや、焦るな、落ち着け落ち着け、3つはわかってるんだ。あと1県思い出すだけだ。
四国は、高知と、松山と、徳島と、
・・・・あ、松山って都市名だ・・
僕は目の前が真っ暗になった。
「はい、そこまでです」
15分間は、あっという間に過ぎ去った・・・ (つづく)
1月10日(金よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その5
「会場へ向かうバス」といっても、番組専用の送迎バスではない。
ただの路線バス。
しかも、バス停4つで終点に着いてしまうシケたバスだ。
出発寸前のバスに駆け乗ると、乗客は5人。
全員極度にこわばった表情をしている。
そうか!ここにいる全員が最終選考に行くのだ。
その証拠に、新たに乗車した僕を、値踏みするように全員がチラチラ盗み見るのだ。
勝負はすでに始まっているのかもしれない。
そんな緊張感あふれる異様な車内で僕は気づいた。
「なんか変だ。なにかが違う。」
乗客をよく見ると、わざと貧乏ったらしいカッコをしているのだ。
部屋着にもならないセーターを着てるオバサン。
ヨレヨレのトレーナーを重ね着してる主婦。
赤なのか黒なのかわからないくらい汚れたジャンバーを着てるオジサン。
よくもそんな服で電車に乗れたもんだ・・
が、羞恥心よりお金が大事だ。
貧乏をアピールして1000万円がどうしても必要なんだと訴える作戦なのだ。
やはり、勝負はすでに始まっている。
指定された入口の前で待っていると、
正確に2時10分前に担当者が現れた。
写真入の身分証明書を提示して本人であることが確認されると、
1日限りの入館許可証が手渡され、
部屋に案内された。
会議用の長テーブルが10個並んでいるだけの殺風景な部屋だ。
そして、やはり時間通り2時ジャストに再び担当者が現れた。
「本日はようこそ。では、筆記試験を始めます」
おいおい、いきなりかよ・・・ (つづく)
1月9日(木よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その4
12月25日の模様をお伝えする前に、
送られてきた3枚のFAXをご紹介しましょう。
まず1枚目。
一番上にバぁーンと
クイズ$ミリオネア最終選考会案内
と書かれている。
そして、
日時:12月25日 水曜日 14時
場所:日本テレワーク株式会社(別紙地図参照)
10分前に会場の方へお越しください。<それ以前は警備の都合上入館できません>
内容:筆記試験及び面接
備考:各自、カラーの証明写真(5cm×4cm)
身分証明書(免許証など)・筆記用具
家族全員の写真(バラバラでも可)
賞金にまつわる資料、写真など
【(例)お店が老朽化している場合は、
お店の全体写真(内と外)と壊れている部分】
また、選考会会場までの交通費は自己負担になります。
なお、御本人様以外の方の会場への入場はお断りしておりますので
原則として同伴者の付き添いなどは御遠慮下さい。
書き写していて今初めて気づいたんですが、
‘備考’欄の日本語オカシイですよね、
てゆうか、日本語になってないっす。
「各自」で始まって、「写真など」まで、名詞がならんでるだけで
動詞がありません。
どうしろっていうんだっ!!
と、言いたくなるはずですが、そのときの僕はぜーんぜん気づきませんでした。
舞い上がってたんですねえ。
このFAXを受け取った人で、そんなことに気づいた人は一人もいないと思う。
ま、だいたい意味通じるしね。
2枚目が会場の地図で、そして、3枚目。
【注意事項】
1.二次選考合格おめでとうございます。
当番組は5人1チームの参加です。
選考会当日、会場にてプロフィールを作成して頂く時に
「テレフォンブレーン」4人の仲間の<名前>・<年齢>・<職業>・<どんな仲間か>を
記入して頂きますが、ただしその方々が、必ずしも出場しなくてはいけない訳ではありません。
2.1000万円の使い道については選考会当日の面接でキーポイントになりますので、
ひとつだけでなくいくつか考えてきて下さい。
3.選考会に参加し合格した場合、スタジオ収録はもちろん
プロフィール紹介のロケ(御本人の自宅や職場など)もある事を御理解してきて下さい。
4.参加辞退の場合は月〜金の夕方6:00〜9:00の間に
日本テレワーク(03−5・・・・・・・)番組担当者まで御連絡下さい。
皆様のお越しをお待ちしております。
なんだかよくわからない注意事項だと思った。
「1」は特にわからなかった。だったら、書く必要ないんじゃないの?
「2」は、作り話をしろってこと?使い道なんてそんなにあるわけないじゃん。
「3」は、当たり前なのでは・・・?
「4」は、ここまできてそんなヤツがいるの?だって、都合悪くなったら選考日を変更してもらえるんだよ。
ま、いいか、とにかく、行きゃあいいんだもんな。
そして、いよいよ、12月25日13時31分、会場へ向かうバスは品川駅を出発した・・・ (つづく)
1月8日(水よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その3
「クイズは以上です。では、結果を申し上げます。
おめでとうございます。鬼界さんは二次選考に合格されました。」
ヤッターっ!!
「最終選考会に来ていただくのですが、12月14日はご都合いかがでしょう?」
「大丈夫ですっ!」
予定を確認もせず即答した。
かまうもんか、予定が入ってたらキャンセル!キャンセル!!
だって、クイズ$ミリオネアの最終選考だぜ!
「11時と14時があるのですが、どちらがよろしいですか?」
「11時でお願いします」
「では、今から地図等をFAXでお送りしますので、お待ちください」
「はーい」
電話を切っても、笑いが止まらなかった。
二次選考のクイズを答えながら高まっていた期待が、現実になったのだから。
クイズは15問あったが、(昨日書いたのは13問。どうしても2問思い出せません・・・)
14問は正解の自信があった。
(ちなみに、わからなかったのは、ミスチルのボーカルの名前。いまだにわからない。)
「ランラランララ〜ン♪楽勝楽勝、ウフ。オレって、けっこうイケてるじゃん、ウフフ。
クイズっていうか、一般的な常識問題ね。任してチョンマゲぇ〜♪オレ様に〜ぃ♪」
僕はすっかり有頂天だった。
この‘おごり’が、後々、伏線になることに気づきもしないで・・・。
さて、
ふと時計を見ると、10分たっている。
「おっせえなぁ〜♪」僕はまだ歌う余裕があった。
さらに10分がすぎた。FAXは来ない。
「あれ?ちょっと遅すぎ・・?」
さらに10分。
クイズを出題する電話は、あんなに慌てていたのに・・・
また10分。
ど、どうなってんだ・・・・
それから10分。
もしかして、手の込んだイタズラにだまされた?
そして10分。
電話が鳴った。
「こちらは日本テレワークと申しますが、鬼界さんですか?
12月14日は定員がいっぱいだったんで、12月25日の14時でも大丈夫でしょうか?
え?大丈夫ですか。じゃあ、地図等をFAXでお送りします。」ガチャ。
30秒後にFAXが送られてきた。
さすが業界人!
こんなに時間がかかった理由も、待たせたお詫びも、謝りの言葉もいっさいなしだ。
ちょっとムカついたけど、ま、いいか、ここまでたどりついたんだし。
そして、12月25日クリスマス、最終選考の日を迎えた・・・。 (つづく)
1月7日(火よう日) 日直・鬼界
クイズ$ミリオネアへの道 その2
その電話は、やたらとガヤガヤしたところからかかってきた。
「こちらは『クイズ$ミリオネア』の制作をやっております日本テレワークと申します。
鬼界浩巳さんはいらっしゃいますか?」
「はい、僕ですが」
「おめでとうございます。鬼界さんは『クイズ$ミリオネア』の一次選考に合格されました」
「えっ・・・・」
「これから二次選考を行ないますが、よろしいでしょうか?」
電話をかけてきたのは、20代前半ぐらいのあきらかにバイトの女の子だが、
突然の知らせを受けた僕の驚きや喜びやとまどいは完璧に無視し
すごく事務的かつ迅速に、てゆうか、慌てるように話しをすすめていく。
周りがガヤガヤしているのは、
何人もの女の子が一斉に電話連絡しているのだ。(通販の申し込み電話をかけたときみたいな感じ。)
なんと、『クイズ$ミリオネア』の二次選考とは、
一次選考合格者にいちいち電話をかけ、個別にクイズを出題する方式なのだ。
だから、バイトの女の子はとにかく電話をかけまくらなければならないのだろう。
なるほど、慌てるように話しをすすめるわけだ。
「クイズを出題します。番組で行なう4択ではありません。
正解をお答えください。わからない場合は「わからない」とおっしゃってください。
では、第一問。」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
僕はおもわず口を出した。展開が早すぎる。
これではあまりにも向こうのペースすぎる。ちょっと落ち着かなきゃ。
「えっとぉ・・・・クイズに答えればいいんですね?」
しまった!よりによってなんてバカな発言をしたんだろ・・・
「はい、お答えください」
と、マジメに返答した女の子もバカみたいだが・・・。
そして、クイズが開始された。
このクイズの出来によって、二次選考を突破できるかどうかが決定するのだ。
・本能寺の変で明智光秀に滅ぼされた武将は?
・エジプト文明が栄えたのはどこの流域?
・松たか子の父親は?
・大日本帝国、初代総理大臣は誰?
・ミスチルのボーカルの名前は?
・英語のサムはなに指のこと?
・西南戦争を起こした西郷隆盛の出身藩は?
・坂本龍一が以前に結成していたグループは?
・法隆寺は何県にある?
・松任谷由美の旧姓は?
・インドはどこの国から独立した?
・試合終了をノーサイドという競技は?
・1776.7.4に独立した国は?
「クイズは以上です。では、結果を申し上げます。」
女の子はどこまでも事務的かつ迅速だった・・・。 (つづく)
1月6日(月よう日) 日直・鬼界
新春特別連載 クイズ$ミリオネアへの道 その1
去年の11月のはじめ、僕は生まれて初めて『クイズ$ミリオネア』を見た。
「これが例の異常に引っ張る‘ファイナルアンサー’なのか・・・。」と感動するよりも、
僕は必死にメモっていた、
出場者募集の電話番号を。
あの番組を見た人全員が
「1000万円は無理にしても、オレが(私が)出場すれば、数百万円は絶対にゲットできる」
と思うように、
僕もそう思ったのだ。
そして、さっそく電話した。
「クイズ$ミリオネアへお電話ありがとう!司会の、みのもんたですっ!」
と例の口調で威勢のいいテープの声が流れ、
まず、一次選考のクイズが出題される。
「ははーん、全国から無数の電話がかかってくるんで、
数を絞り込む為にムツカシイ問題が出題されるに違いない」
僕は気を引き締めた。
「問題です。キリンの体の中で長いのはどこ?
A:クビ B:ハナ
Aが正解だと思うかたは1を、Bが正解だと思うかたは2をプッシュしてください」
はあ?どういうこと?ひっかけ?
と不安になりながらも、1をプッシュした。
すると、
パンパカパーン!!とファンファーレが鳴り、
「おめでとう!みごと正解ですっ!」とみのもんたの声が流れた。
なんじゃこりゃ?
間違うヤツがいるの?一次選考の意味があるの?
ジョージアで「Gウォッチ」を当てるようなもんで、当たるわけがない。
バカバカしい。電話なんかして損したぜ。
一応、こちらの連絡先を登録したものの、
次の日には、電話したことなんか僕はスッカリ忘れていた。
そして、師走に入り、街がクリスマスでバタバタしていた12月8日、
突然、
『クイズ$ミリオネア』のスタッフから電話がかかってきたのだ・・・。 (つづく)
1月5日(日よう日) 日直・鬼界
お正月を田舎で過ごした人々のUターンラッシュにまともにぶつかった。
あんなに混んでる新幹線に乗ったのは初めてだ。
まず、乗れない。
京都駅のホームで、新幹線の到着を待つ列の前から3番目にいたのに、
ギューギュー満員で乗れないのだ。
仕方なく、グリーン車のドアから乗車した。
そこから、自分の指定席へ行くまでが、これまた大変。
デッキはもちろん、トイレの中、洗面台の前、通路、あらゆるところに人がいっぱいで、
東南アジアの電車に乗ってるみたいだ。
席にたどり着いてみると、
僕の席に相当年輩のジイサンが座っている。
「すいません、ここ、僕の席なんですが・・・」と言うと、
ジイサンはとても悲しそうな顔をして、席を代わり、僕の真横に立った。
足腰が弱いらしく、
列車がほんのちょっと揺れるたびに、2,3歩よろけ、
隣りの人にガンガンぶち当たる。
そのたびに、ジイサンは「申し訳ない」と謝り、
ぶち当たられたほうは、チラッと僕を見るのだ。
なんだよ、その視線。
僕が悪いことをしたって言いたいわけ?
自分の指定席に座っただけだ。
お年寄りに席を譲らなきゃいけないの?
こんな混雑ピークの時に、新幹線に乗るジイサンが悪いんじゃないの?
そして、信じられないのは、
あんなに混んでるのに車内検札をしているのだ!
バカじゃねえの、JR東海。
車内は乗客の舌打ちの嵐だぜ。